ハザール王国 偽ユダヤ陰謀説の真相とは? 宇山卓栄氏 #395

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【目次】

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。今回は、著作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。

私、「ユダヤ・ハザール陰謀論」が面白くて好きなので、今日はとても楽しみにしていました。正式な本ではないのですけれど、ネットで詳しく書かれているブログもあるのですが、あの「白いユダヤ人ハザール説」はどうなのでしょうか。

(宇山)

この「ユダヤ・ハザール説」とは、「偽ユダヤ人である説」なのですよね。結論から言うと、大嘘です。その偽ユダヤという枠組み自体が、もう陰謀論なのですよ。

(深田)

ですが、イスラエルに行くと、褐色の肌の人たちがタクシーの運転手やお土産屋物さんなどの下層階級にいて、オフィスワークや政府の仕事は白いユダヤ人がやっているのですよ。ああいうのを見ると、陰謀があるように思ってしまいますよね。

(宇山)

そうですね。肌の色が全然違うので、一体どれが本当のユダヤ人なのだろうかと思ってしまうでしょう。そういうところから、「この人が偽ユダヤなのだ」というような陰謀論が入り込む余地が歴史的にずっと今までもあったのです。

(深田)

でも、ユダヤ人は褐色の肌ですよね。イエスキリストも白く描写されていますが、元々は

褐色の肌ですよね。

(宇山)

その通りです。アラブ人の容貌です。アラブ人とユダヤ人は、遺伝子的に同じ「セム系民族」なのです。そして、ディアスポラ(離散)以降にユダヤ人の中に白人の血が入り、白人化されていくのですが、やはりルーツはパレスチナにあったのです。

それを、そうじゃないと言っているのが、この「ハザール・ユダヤ説」なのです。

(深田)

ハザールとは一体何なのですか?

(宇山)

このハザール王国というのは、7世紀から9世紀に、現在のウクライナ地域一帯に栄えた王国です。トルコ人やモンゴル人たちが西側へと走っていく。「トルコ人の西走」と言うのですが、どんどんウクライナ地域やアナトリア半島にも入ってきて、これが現在のトルコ共和国の元になるわけですよね。そのトルコ人たちは、元々はモンゴル高原の西の端にいたのです。この遊牧民たちが、中央アジアを超えて7世紀にウクライナにもやってきました。そして彼らは、トルコ系遊牧民国家の「ハザール王国」を作ったのです。その当時の王様が、「自分たちは、ヨーロッパ人と付き合うべきか、それとも中東のイスラムの人たちと付き合うべきなのか」という話になって、つまり自分たちの国の宗教をキリスト教にするのかイスラム教にするのかで揺れたのです。ウクライナは地政学的にも、ちょうど中間地点になりますからね。

(深田)

どちらを取っても、攻められそうですよね。

(宇山)

そうなのです。どちらかに与するともう一方から攻められる可能性があるので、この王様は第3の道を考えたのです。キリスト教でもイスラム教でもなく、ユダヤ教というのがあるぞということで、ユダヤ教を国教に掲げました。どちらにも与しないというメッセージだったわけです。

ユダヤ教というのは旧約聖書ですね。そこから派生して新約聖書も出てきましたし、ムハンマドのような預言者も出てきたのです。大元のところはユダヤの旧約聖書という聖典にあるということで、「これを選べば、どちらも文句はないだろう」という判断を、当時の王様がしたようです。

繰り返しますけれども、ハザール王国の支配者層はトルコ系の遊牧民です。ユダヤ人とは全く関係がありません。このハザール王国が、9世紀にキエフ公国(キエフ・ルーシ)によって滅ばされるのです。白人のルーシ族がキエフ全体、つまりウクライナ全体を統一していく中で滅ぼされていくわけです。

(深田)

ということは、そのユダヤ人がキエフ公国の中に入ってしまったのですか?

(宇山)

キエフ公国にも入り、さらにはヨーロッパの方にも渡って「アシュケナジムユダヤ人」になったのです。白いユダヤ人のことですね。ハザール王国から派生しているのがユダヤ人の本当のルーツなのだというのが「ハザール・ユダヤ人説」なのですが、これは嘘です。

(深田)

そこが嘘なのですね。

私たち日本人からすると、ユダヤ人が褐色の肌の民族というイメージが全くなくて、色が白くて揉み上げが長くて帽子をかぶっているイメージです。でも、イスラエルに行っても、そういう人は少ないのですよ。

(宇山)

そうなのです。いわゆる正統派と呼ばれる人たちですが、全体の中の何割かしかいないのですよ。ほとんどの人たちは普通に世俗の人として暮らしていますし、アメリカでも普通の恰好で働いています。

(深田)

でも、ニューヨークには正統派の人が結構いますよね。おそらく金融街にいるのだと思うのですが。

(宇山)

ウォール街のところにシナゴーグもありますから、そういう人たちもいるにはいますが、多数派ではないのです。

では、どうして、この「ハザール・ユダヤ人説」が流布されていったのかという背景を、よく見ていかなければならないと思うのですね。まず、1943年にアブラハム・ポラックというユダヤ人歴史学者が書いた「ハザリア:ヨーロッパにおけるユダヤ人王国の歴史」という本を出してから、急速に「ハザール・ユダヤ人説」が広まっていくのです。このアブラハム・ポラックはユダヤ人とは関係ない人です。

そして、当時の反シオニズム運動をやっていた人たちが、このポラックの説を活用していくのです。シオニズムでやっている「イスラエルに帰れ」、「パレスチナに帰れ」と言っているあのユダヤ人の連中は、パレスチナにルーツなどない嘘ユダヤ人なのだ。彼らのルーツとはハザール王国で、さらに正体を明かすとトルコ人なのだと。遊牧民国家ハザールですからね。

嘘ユダヤ人が嘘のシオニズム運動をやっているから、シオニズム運動全体が嘘なのだと言ったのです。

(深田)

なるほど。そういうプロパガンダを流して、イスラエル建国の反対に回るということですね。

(宇山)

そういうことです。反イスラエル、反ユダヤ、反シオニズムの運動に、このポラックの説が使われていったのです。

(深田)

それが偽ユダヤ人の起源になるのですね。

(宇山)

前にも申し上げた通り、私は、「ユダヤ人のプロパガンダがけしからん!」ということをよく言いますよね。このプロパガンダによって、イスラエル国家が建国されていくという話も前回しましたけれども、その私ですらこの説には飛びつきません。

なぜならば、DNAの遺伝子解析をすると、アシュケナジムユダヤ人がハザールの人たちとは何の関係もないことが証明されるからです。「ユダヤ・ハザール人説」が陰謀だと言うのは、そこなのです。

(深田)

ということは、ハザールにいた人たちはトルコ系だけど、アシュケナジム系はセム系が散っていって混血が進んだ結果白くなっているのですね。

(宇山)

そういうことです。元々のルーツはセム系のパレスチナにあるのです。セム系の遺伝子がかなり残っています。

(深田)

肌の色は違うけれど、かなり残っているのですね。完全に騙されていました。ハザール説は面白いなと思っていて、結構読んでいたのですよね。

(宇山)

どちらかというと私もユダヤに対して思うところがあるので、「このユダヤ人の言っていることは嘘なのだ」と飛びつきたいです。でも、遺伝子解析をすると違うのですよ。

その遺伝子解析を詳しく話しますと、まず「アシュケナジム」という言い方ですが、ユダヤ人には大きく3つのグループがあるのです。

ひとつがこのアシュケナジム、これは東欧やドイツを中心とするグループのことなのです。これがアメリカのユダヤ人にもルーツ的に拡がって行く。

もうひとつはセファルディムというグループがある。セファルディはヘブライ語でイベリア半島を意味する言葉で、スペインやポルトガルが中心になる。

もうひとつはミズラヒム、「東方の」という意味で、これがパレスチナに残った原ユダヤ人なります。この三つがあります。

アシュケナジムの東欧のグループの人たちに、ハザールのルーツがあるという理解をしていたという話ですよね。

(深田)

そうなのです。アシュケナジム系というのは、ハザール・ユダヤ人なのだと、今まで勘違いをしていました。

(宇山)

それが遺伝子解析によって否定されたのです。

(深田)

先生に来ていただいてよかったです。

(宇山)

それで話に乗って行くと、反シオニズム運動に加担してしまうことになります。それでもいいのですが、それが図らずも陰謀論のルーツによって反シオニズムになってしまいますよということです。

そうしたら、アシュケナジムのユダヤ人の遺伝子の構成は主にどうなっているのかを申し上げると、これはセム系に非常に特徴的なハプログループJという染色体の遺伝子が3,4割観測されています。いわゆるアラブ人やパレスチナ人がたくさん持っている、男系のY染色体の遺伝子Jが一番多いのですよ。

さらにベルベル人に多いと言われる北アフリカ系の人たちのハプログループEという遺伝子があるのです。アシュケナジムはこのEの遺伝子も2、3割持っています。

さらにヨーロッパ系のハプログループRの遺伝子も2、3割を持っています。このR系のヨーロッパ系白人の遺伝子が大きく作用して、白人のような容貌になっていく、ヨーロッパ人とも混血していく形になると思うのですが、この遺伝子の構成の中に、アシュケナジムユダヤ人の、ハザールに起源があるとされるトルコ人の遺伝子はあるのか無いのかが問題です。あればハザールにルーツがあるということになり、無ければハザールにルーツは無いことになりますが、無いのです。

トルコ系のY染色体の遺伝子はハプログループO、C、Nという形になるのです。これらがまったく含まれていません。今のアシュケナジムユダヤ人の中には含まれていないのです。

ですからハザールとアシュケナジムユダヤとは遺伝子的に関係が無く、むしろ彼らはセム系の民族としてパレスチナにルーツがあって、だからパレスチナに帰るというシオニズム運動なのだということには、一定の正当性があるのです。残念ながらと言うべきか。

だから私は陰謀論で反シオニズム運動をやってはいけないと、もっとシオニズムに対しては怪しからんと、今のガザの侵攻を見て、あんな事が正当化できるのかということを正々堂々と議論をすればいいと思うのです。

(深田)

ジョージ・ソロスは白いユダヤ人ではないですか。彼は反シオニズムですよね。そしてウクライナを応援していますよね。あれは何なのですか。

(宇山)

ユダヤ人にも様々な考え方があります。シオニズムを賛成する人もいれば、反対する人もいる。私はユダヤ人を一括りにすることはできないと思っています。

(深田)

日本人にも親米派もいれば、親中派もいますものね。

(宇山)

いろんな人がいるでしょう。ウォール街のユダヤの金融資本という一括りにした言い方があるけれども、しかし、実態は様々な考え方をもったユダヤ人がトレーディングをしているのですよ。

私は実は大学生の頃に、メリルリンチ証券にアルバイトで小間使いをしていたことがあります。

(深田)

時給が良かったでしょうね。

(宇山)

いや、そんなに全然よくなかったですよ。コピーをとる小間使いだから千円かその辺りでした。私は個人の投資家だから、当時から投資に興味があったので、それでアルバイトをしたことがあって、当時はベンジャミン・フルフォードなどの、いわゆるユダヤ陰謀論みたいな話がすごくあったのです。そんな話をメリルリンチ証券の人たちに言うと、鼻でせせら笑われました。そんなことを俺たちは気にしたこともないし、とにかく銭儲けに忙しいのだと言われました。イデオロギーがまったくない人がほとんどの中でも、一部やはりイデオロギーがある人もいました。

そのイデオロギーがある人たちが、お金をドンドンと共和党に、民主党にもぶち込む。たとえばAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)のようなところにロビイスト団体として大きく関わりながら、アメリカの政治を金の力で背後から操るとしているグループもありました。

ジョージ・ソロスのように空売りを仕掛けて、国家の通貨を崩壊させることを得意とするようなトレーダーもいます。いろんなものの考え方をしたユダヤの人たちがいるのだけれども、私がひとつ思うのは、ユダヤ人というのは国家を持たない存在であることは事実です。

そのユダヤ人にとって、金儲けの手段として、常に世界に騒乱と混乱と分断を引き起こさないと銭儲けにならないということがあるのですよ。

(深田)

共産主義と資本主義はそこから生まれた。

(宇山)

そういうところもあります。ロシアの共産主義革命を取り仕切ったのは誰か。やはりジェイコブ・シフやロスチャイルド、レフ・トロツキーとか、レーニンは四分の一がユダヤ人の血が入っていると言われますけれども、こういう人たちが世界に騒乱をもたらす。今のウクライナもそう、イスラエルの中東問題もそうです。この騒乱をもたらすことによって、お金儲けをする。ジョージ・ソロスなどはまさにその代表格です。

世の中が安定していたら儲からない人たち、ネオコンという形で世界の標準化・均質化ということを、いわゆるグローバリズムを主に推進したい人たちは誰なのかと言われれば、やはりユダヤ人なのです。そのような漠然としたコンセンサスはあると思います。

しかし、ユダヤ人の考え方もバラバラで、一括りに何でもかんでも金融資本だと、何でもかんでもディープステートだという考えには一概にはできません、ということも事実なのですね。

(深田)

いろんな人がいますよね。

(宇山)

いろんな人がいます。そしてこのハザールのユダヤ人のような反ユダヤの陰謀論も、実は1940年代から続いております。

(深田)

ハザールに居たトルコ系の人たちがユダヤ教に改宗しました。それは事実だと。その人たちはそのあと、いったい何処に行ったのですか。

(宇山)

雲散霧消したと言われています。もうユダヤ教を捨てたと思いますよ。

(深田)

もともとユダヤ教ではないですものね。

(宇山)

本当の信仰などをしていません。

(深田)

安全保障のためのユダヤ教ですものね。標ぼうしていただけのユダヤ教で、決して信じていたわけではなかった。

(宇山)

だから方便のためだけにハザール王国の人たちは、ユダヤ教を使っただけです。トルコ人がさまざまな地域に入り込んでいき、その時にユダヤ教をもっていたというわけでは全くないです。ましてやアシュケナジムのユダヤ人と何か関係を持ったということでもありません。

(深田)

なんと、ハザール・ユダヤ陰謀論は間違いだった。

(宇山)

違うのですね。だけどいつも思うのですが、ユダヤ人に関する陰謀説というのは、ずっと20世紀だけではなく、19世紀にも、18世紀にも、実はルターの時代からずっとあったのですよ。もっと言うと、シェイクスピアの時代からありました。一定の割合で必ずどこかでユダヤ陰謀論が湧くのです。これはもう歴史的に世界各国で、ヨーロッパ各国で繰り返されてきました。それはひとつひとつ追求していくと、荒唐無稽なことを言っていることが、もう全部共通して言えるわけなのです。

遺伝子の検査の科学的は論証ツールがありますから、もう一発でおかしいことが判ります。

ただ私はユダヤというのは悪いと思います。非常に悪いけれども、それを陰謀論で切って行くと、こちらが切られる。こちらがバカだと思われるということを言いたいのですよ。ユダヤが政策的にどう悪いのか、どう世界に対して悪事を働いているのかの政策論をきちんと。だってガザのあれは悪いでしょう。あのような無茶苦茶な事をしてですね、他国に侵攻するような、他国に工作をしていくことが良いとは言いきれないでしょう。

ジョージ・ソロスのような、他国に大被害を与えて、己が利益を儲けていることは悪いでしょう。そういうことをきちっと物事を個別に見極めて、アメリカの政権に対しても、おかしな歪ませ方をしているのかを、一つずつ丁寧に物事を言っていく努力を、言論人であるならばしなければならないのに、何でもかんでもディープステートで一括りにするという今日の言論環境というものに、私は非常に危惧を感じます。

(深田)

確かにそうですね。私も結構DSと言ってしまっているので。汚職官僚とか汚職政治家がその正体ではないのかなと。

(宇山)

DSというのはユダヤだけではなくてですね日本にも居るわけですよ。DSというのはひとつのシステムかと思います。これはエスタブリッシュメント達が、自分たちの利権とか、経済利益をどう守っていくかということの、ひとつのコンセンサスの意識として捉えるならば、DSという言葉が有効なものだと思います。ただそれがウォール街のユダヤ人だと言い始めたら、それは何処のユダヤ人ですか、ウォール街の何丁目の何番地にあるだという話になってきてしまいますからね。よくよく気を付けてものを言わなければならないかと思います

(深田)

ありがとうございます。ハザール・ユダヤ陰謀論は面白いと思っていたのですが、全くのデタラメだったということで、今回は著作家の宇山卓栄先生にお越しいただきました。先生、どうもありがとうございました。

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