#371 温暖化より危険な寒冷化!人類を救うのは二酸化炭素だという不都合な真実 藤和彦氏×深⽥萌絵

(深田)

みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム・プロデューサーの深田萌絵です。

今回は、経済産業研究所コンサルティング・フェローの藤和彦先生にお越しいただきました。なお、本日からは私のことを「萌絵ピー」と呼んでいただければと思います。

(藤)

そうですか? 少し驚きました。すみません。

(深田)

プロデューサーの“P”という意味です。

(藤)

なるほど、了解しました。

(深田)

それでは、今回も「お上」に物申すという趣旨でお話を進めたいと思います。先生は現在、経済産業省から給与を受けておられる立場にありながら、経産省の利権ともいえる「賦課金」に対して廃止を主張されていますね?

(藤)

はい、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」、いわゆる再エネ賦課金ですね。

(深田)

その賦課金を廃止すべきだという主張に加えて、実は地球温暖化よりも「寒冷化」のほうが深刻なのではないか、というご指摘もされています。

(藤)

はい、そうです。

(深田)

では、そのあたりのご見解について、ぜひ詳しく教えていただきたいと思います。

(藤)

少し調べればすぐに分かることなのですが、地球の長い歴史を見てみると、現在の地球は「氷河期」に分類される状態にあります。氷河期かどうかを判断する目安は、北極および南極に氷が存在しているかどうかです。両極に氷がある状態であれば、それは氷河期とされます。

(深田)

つまり、今は氷河期ということなのですか?

(藤)

はい、まさに氷河期です。ただし、現在はその氷河期の中でも比較的暖かい時期にあたります。これを「間氷期」と呼びます。氷河期の大半は「氷期」と呼ばれる寒冷な期間であり、間氷期はその合間にある短い温暖な時期です。間氷期は通常、約10万年に一度訪れ、数千年程度で終わるとされています。しかし、今回の間氷期は非常に長く、すでに1万年以上継続しているのです。

(深田)

そうだったのですね。

(藤)

なぜ間氷期と氷期が10万年サイクルで繰り返されるのかについては、ある程度の解明が進んでいます。セルビア出身の学者であるミランコビッチ氏は、すでに故人ですが、近年再び注目されています。彼が唱えた説によれば、地球と太陽の距離は約10万年周期で変化し、それに伴って気候も変動するというのです。

(深田)

それは、地球の公転軌道が楕円形になったり円に近づいたりするということですか?

(藤)

その通りです。軌道が楕円形のときには地球が太陽に近づくため温暖になり、逆に円形に近づくと太陽から遠ざかるため寒冷になります。この軌道の変化が、おおよそ10万年周期で起こっているのです。

(深田)

つまり、軌道の形が周期的に変化しているのですね。

(藤)

はい。楕円から円へ、そして再び楕円へと形を変えていきます。円軌道に近い時期は長く続きますが、その間は寒冷な気候が支配的になります。一方、軌道が再び楕円に近づくと、温暖な気候となり、間氷期が訪れるのです。そして実は、現在の間氷期は本来であればすでに終わっていてもおかしくない時期にあります。これは、学術的にも大きな疑問とされており、多くの研究者が注目しています。

(深田)

しかし現実には、1万年以上も間氷期が続いているわけですね。それはいったいなぜなのでしょうか。

(藤)

まだ科学的に確定した説明はありませんが、一部の学者の間では、人類の活動が関係しているのではないかという説があります。たとえば、アジア地域での稲作の開始や森林伐採など、現在主流となっている「温暖化は人為的なものである」とする考え方は、ここ50年ほどで注目されてきたものですが、それに先立ち、実は6000年以上前から人類は気候に影響を与えていたのではないかという指摘も存在します。

(深田)

つまり、人類が地球上に増え、森林を伐採して農業を始めたことが、地球の寒冷化を抑えてきた可能性があるということですね。

(藤)

はい。たとえばアマゾンの熱帯雨林の伐採なども含めて、人間活動によって本来ならば訪れるはずの氷期への移行が抑制されているのではないかという説です。

(深田)

もしそれが事実だとすれば、「CO₂を削減しましょう」という政策が、かえって地球を寒冷化させてしまう可能性があるということになりますね。

(藤)

その通りです。仮に明日から氷期が再び訪れるような事態になった場合、私たちはいったい何をしていたのかと問われることになるでしょう。

(深田)

まさに笑い話のような事態です。寒冷化に備えて火力発電をむしろ増やさなければならない、という状況になりかねませんね。

(藤)

その場合、中国が「自分たちが寒冷化を止めているのだ」と誇らしげに主張するかもしれません。

(深田)

「我々こそ世界のヒーローだ」と言い出す、というわけですね。

(藤)

それは少し悔しい話ですが、あり得るかもしれません。

(深田)

そうですね。寒冷化を防ぐために何らかの貢献をしていく必要があるのかもしれません。

(藤)

おっしゃる通りです。また、地球の46億年にわたる気候の歴史を研究した学者によれば、地球の気候にはある種の偏りがあるようで、寒冷化はとくに暴走しやすい傾向があることが分かっています。

(深田)

寒冷化が暴走するというのは、どういう意味でしょうか?

(藤)

「スノーボールアース」という言葉をご存じでしょうか。これは、地球全体が氷に覆われてしまう現象のことで、過去に何度もそうした時期があったとされています。

(深田)

それは、たとえばマンモスのような時代ですか?

(藤)

いえ、スノーボールアースのような状況になると、マンモスも生き延びることはできません。

(深田)

あの毛むくじゃらのマンモスでさえ、生き残れないのですか?

(藤)

はい。たとえば、6500万年前に隕石が地球に衝突して恐竜が絶滅したという話がありますが、あのときでも死滅したのは地球上の動植物の約75%とされています。それに対し、スノーボールアースの時代には、生物種のおよそ90%が絶滅したと考えられています。地球全体が氷に覆われてしまった時代が、実際に何度もあったのです。

(深田)

それには、何らかの周期があるのでしょうか?

(藤)

はっきりした周期はありませんが、何億年という長いスパンで、一定の頻度で発生しているようです。スノーボールアースのような状態に陥ると、通常は回復が困難ですが、それでも再び氷が溶けるきっかけとなったのが、地球内部からの火山活動だったとされています。火山が排出する温暖化ガスによって、地球の気温が再び上昇し、氷に覆われた状態から回復したという説が有力です。

(深田)

そうだったのですね。知りませんでした。

(藤)

これは、かなり信頼性の高い学説として受け入れられています。

(深田)

火山って、意外と重要な役割を果たしているのですね。

(藤)

その通りです。

(深田)

よく考えれば、地球の内部は非常に高温なのですね。

(藤)

はい。地球内部の温度は6000度以上とされており、そうした内部エネルギーが表面に噴出することで、かつての地球は過酷な環境から回復できたのです。その一方で、地球の気候において、寒冷化は暴走しやすいのに対し、温暖化はあまり暴走しないとする見解もあります。

(深田)

そうなのですか。

(藤)

はい。たとえば、IPCCが警告しているような「海水温が急激に上昇する」とか「海面が著しく上がる」といったことは、現実的には起こりにくいと考えられています。

(深田)

なるほど。地球内部の熱、つまり地熱を活用してもっと発電を進めれば、状況が改善するのではないかという意見もありますが、その点についてはいかがでしょうか?

(藤)

地熱発電には、主に二つの問題があります。まず一つ目は、非常に深い地層から熱を取り出す必要があるため、技術的にシステムが複雑であるという点です。そして二つ目は、風評被害の問題です。

(深田)

風評被害とは、どのようなことでしょうか?

(藤)

一つには、地熱発電を行うことで、地中から有毒ガスのような危険物質が噴出するのではないかという懸念があります。また、特に日本のように温泉資源が豊富な地域では、地熱発電を行うと温泉の湧出量が減るのではないかという不安の声があり、これが導入の大きな障害となっています。

(深田)

確かに、そのような指摘はよく耳にしますね。たとえば、富士山の麓などを地熱発電の拠点にするという考え方もありますが、それはどうなのでしょうか?

(藤)

実は、富士山の麓では、現在ほとんどマグマ活動が活発ではありません。富士山では1709年を最後に大規模な噴火は起きておらず、それ以降、火山活動は沈静化しています。

(深田)

そうなのですね。

(藤)

はい。富士山では1709年前後の3年間にわたって噴火が発生しましたが、その後は活動が沈静化しています。この過去の噴火の影響で、富士山の地下構造にはマグマの通り道が詰まっていると見られており、現在はマグマが上昇してきていない状況です。

(深田)

マグマが地中で詰まっている状態なのですね。

(藤)

そうです。仮にそれがコルク栓のように突然抜けるようなことがあれば、再び大規模な噴火が起こる可能性もありますが、現時点ではそのような兆候は見られていません。

富士山の噴火に関する議論が盛り上がったのは、東日本大震災直後の2011年のことです。たしか、同年3月15日に富士山付近でマグニチュード6.5の地震が発生し、「このままでは富士山が噴火するのではないか」といった不安の声が広まりました。しかし実際には、火山活動の前兆とされる火山性地震なども確認されておらず、科学的にはそのような兆候は見受けられません。現在のところ、地下の状態に特段の異常はなく、噴火の可能性は極めて低いと考えられています。

(深田)

では、富士山は今のところ「お休み中」というわけですね。

(藤)

はい。むしろ、火山活動が活発化すると大きな災害につながります。富士山が噴火すれば、東京にも火山灰が降り注ぎ、広範囲に影響が及ぶおそれがあります。ですから、火山が「仕事をしていない」状態は、むしろ望ましいとも言えるのです。

(深田)

では、地熱発電はどこかで利用できないのでしょうか?

(藤)

地熱の利用自体は可能だと思います。特に温泉地のように熱源が比較的浅い地域では、技術的にも現実的な選択肢となり得ます。

(深田)

やはり温泉地であれば地熱の取得はしやすいのですね。

(藤)

はい。加えて、以前に角田史雄先生と地震に関するお話をした際にも触れましたが、日本列島の地下は全体的に熱を多く含んでいる構造になっています。ただし、現在の状況としては比較的地下の熱が弱まっており、全国的に火山活動が低調な時期にあるのです。

(深田)

そうなのですね。ということは、今は日本中の火山が「サボっている」様な状態でしょうか。

(藤)

そうですね。「サボっている」というよりも、少し大人しくしている、と表現するのが適切かもしれません。

(深田)

では、日本は今後、地熱資源において十分な期待が持てるのでしょうか?

(藤)

地熱については、地球内部の熱エネルギーにも周期がありますので、将来的に再び地下が熱を帯びる可能性はあります。そうなれば、地熱発電の可能性も高まりますが、同時に地震や火山の噴火といった自然現象も活発になると考えられます。

(深田)

現在、地球が今後寒冷化に向かう可能性があると言われていますが、寒冷化と温暖化では、どちらのほうが人類にとって深刻な問題なのでしょうか。

(藤)

この点については、公衆衛生の分野でさまざまな研究が行われており、直近10年から20年といった比較的短期的なスパンで見ると、寒冷化のほうが人体に与える悪影響が大きいということは、すべての調査結果が一致して示しています。

(深田)

つまり、暑さよりも寒さのほうが、人間の生存にとって危険だということですね。

(藤)

そうです。特に日本は高齢化が進んでおり、高齢者にとっては、暑さよりも寒さのほうが健康への影響が深刻です。

(深田)

それに加えて、寒くなると農作物の生産にも支障が出てきますよね。

(藤)

おっしゃる通りです。寒冷化が進めば、作物の栽培が難しくなり、食料生産に深刻な影響が及びます。現在、世界の人口はすでに80億人から90億人に達していますが、もし寒冷化が現実になれば、食料不足によってどれほどの人命が失われるか計り知れません。そうした意味で、寒冷化に対する危機感は非常に大きなものがあります。

(深田)

農作物が育たなくなってしまえば、食料供給自体が成り立たなくなりますね。

(藤)

まさにその通りです。ここ数十年、「温暖化の原因は二酸化炭素(CO₂)である」とする議論が主流になっていますが、それ以前の見方では、CO₂はむしろ植物の生育を促す存在、つまり“正義の味方”とされていました。

(深田)

そうですよね。そもそも光合成にはCO₂が必要ですし、農作物もCO₂を取り込んで成長しますから、なくてはならないものですよね。

(藤)

ですから、もし現在の寒冷化を抑制する一因となっている二酸化炭素(CO₂)を減らしてしまえば、気候がさらに寒冷化に傾き、農作物の生育にも悪影響が及びます。そうした状況を自ら招いているとすれば、「人類は一体何を考えているのか」と問わざるを得ません。将来、50年後の世代から「なぜあの時代の人々はそんな愚かなことをしたのか」と笑われてしまうのではないかと、私は強い危機感を持っています。

(深田)

本当に心配ですね。先日、CO₂の濃度と作物の成長速度の関係を調べた論文を読んだのですが、CO₂濃度が低いと作物の育ちが悪くなるという結果が出ていました。

(藤)

全くその通りです。

(深田)

ですから、CO₂濃度が低い環境では肥料を大量に投入しなければならなくなりますが、逆にCO₂濃度が高ければ、少量の肥料でも作物がよく育つという内容でした。

(藤)

ご指摘の通りです。加えて、化石燃料の使用をやめるということは、代替手段として森林資源への依存が高まるという側面もあります。結果として木の伐採が進み、環境の劣化を招くことはすでに明らかになっています。

(深田)

化石燃料の利用をやめることで、森林の伐採が進むのですか?

(藤)

はい。たとえば、代替エネルギーとして太陽光発電が導入される場合、大規模なパネル設置のために森林を伐採する必要があります。

(深田)

確かにそうですね。太陽光パネルの設置は深刻な問題です。たとえば阿蘇山のような場所では、山肌がパネルで覆われて真っ黒になってしまったという話もあります。

(藤)

その通りです。また、太陽光パネルの下には日光が届かなくなるため、土地の砂漠化が進行するという懸念もあります。

(深田)

たしかに、それは大きな問題ですね。

(藤)

まさにそうです。私も、「いったい何をしているのか」という思いが強くあります。

(深田)

本当にそう思います。

(藤)

それから、以前もお話ししましたが、都市化による気温上昇の問題も見過ごせません。たとえば、東京では1970年代頃までは近郊に多くの水田が存在しており、水田が気温を下げる効果を持っていたことが確認されています。

(深田)

そうだったのですね。

(藤)

はい。しかし、水田が失われたことで都市の気温が上昇したという見方があります。一方で、逆の事例もあります。中国の西部地域、たとえば青海省や四川省などの辺境地で農業開発を進めた結果、水田の拡大によってその地域の気温が下がったという研究報告も出ているのです。

(深田)

それは興味深いですね。そうなると、日本で減反政策を続けている場合ではないように思えます。

(藤)

ええ。むしろ水田を増やすことは、温暖化対策として有効であると考えられます。

(深田)

ただ、水田がCO₂の排出源だと主張する気候学者もいるようです。たとえば、メタンの排出が問題視されているようですが、それについてはどうお考えですか?

(藤)

確かに、メタンは単位あたりで見ると、二酸化炭素よりも温暖化効果が高いガスです。しかし、前回もお話ししましたが、地球の気候において最も大きな影響を持つのは水蒸気です。地表における温暖化の主因は水蒸気であり、メタンの影響は極めて限定的であると科学的に分かっています。

(深田)

つまり、メタンの影響はごくわずか、ということですね。

(藤)

そうです。無視して構わないレベルです。

(深田)

なるほど。そう考えると、現在、地球が寒冷化に向かっている可能性があるにもかかわらず……

(藤)

はい。本来、間氷期というのは1万年ほどで終わるのが自然なサイクルです。現在のように1万年以上も続いているのは、むしろ異常な事態と言えるかもしれません。いつ氷期に戻っても不思議ではありませんし、突発的に移行する可能性も否定できません。

最近では、太陽活動の低下も注目されています。たとえば、太陽フレアによって地球の通信網が乱れるなどの影響も報告されています。太陽の黒点数は約11年周期で変動しますが、その極大期の山が年々小さくなってきているのです。

(深田)

つまり、太陽も少しずつ「サボっている」状態にあるというわけですね。

(藤)

太陽の活動は、いわば呼吸のようなものであり、そのリズムに従って変動しています。歴史的には、18世紀から19世紀にかけての70年から80年にわたる期間、太陽黒点がほとんど観測されなかった時期もありました。こうした事実からも分かるように、太陽の黒点活動と地球の気温とは密接に関係していると考えられます。

(深田)

つまり、太陽の活動が活発であるほど地球は温暖になり、現在のように活動が低下しつつある状況では、寒冷化が進行する可能性があるということですね。

(藤)

その通りです。実際、IPCCの学者が登場する1980年代末以前には、世界中の多くの気候学者が、気候変動の主な原因は太陽エネルギーにあると考えていました。それが今では、「主因は二酸化炭素(CO₂)である」とする見解が主流となってしまいました。

(深田)

なぜ、そのような主張が受け入れられてしまったのでしょうか?

(藤)

一言で言えば、利権の問題です。

(深田)

いわゆるノーベル賞利権のようなものでしょうか?

(藤)

ノーベル賞に限らず、たとえば真鍋淑郎氏のように、温暖化理論において確固たる理論的基盤を構築した研究者が登場したことも大きな要因です。ただし、その理論自体をよく精査すれば、少し批判的に検討するだけでも崩れてしまうような、脆弱な部分も含まれています。それでも、アメリカのエネルギー省や、イギリスのサッチャー首相らを中心とする政治勢力が、この理論を政治的に活用し、気候変動の議論を運動化していったという経緯があります。

(深田)

何となく、いわゆる“ディープステート”的な雰囲気を感じますね。

(藤)

確かに、そうした構図があるようにも見えますが、実態としては、統一的な意志を持った組織というより、むしろ利害の一致によって集まった烏合の衆に近いのではないかと思います。たとえば、太陽光発電の研究に関して言えば、もともと太陽光は発電効率が低いため、たった1%の改善でも論文として成立しますし、研究予算の獲得も容易です。

(深田)

つまり、“蜜の味”を知ってしまったわけですね。

(藤)

ええ、その通りです。他分野の研究であれば、一定の成果を出すためには高い技術的ハードルがありますが、温暖化関連の技術はそもそも成熟していないため、少しでも改善が見られると、それだけで評価され、資金も付きやすいのです。

(深田)

なるほど。その構造自体が、非常に危うく、同時に恐ろしいものですね。

(藤)

私たちもそうですが、政治家や官僚、そして研究者も、もともとの人的リソースはほとんど共通しています。たとえば、首都圏の進学校から東大・京大や有力私立大学に進学し、そこから各分野に進んでいくというパターンです。しかし、政治家や官僚に対する信頼は年々低下しているにもかかわらず、なぜ研究者だけは依然として日本社会において高い信頼を得ているのでしょうか。

(深田)

確かにそうですね。「研究者」といっても、実際には御用学者のような人も少なくありません。政治評論家にも同じような傾向が見られます。

(藤)

さらに言えば、組織のトップになると、部下の生活を守る責任もあります。そのため、どうしても時代の空気や政治的潮流に敏感にならざるを得ません。

(深田)

さすが、予算を司る経産省ならではの視点ですね。

(藤)

恐縮です。それはごく常識的な話かと思います。

(深田)

でも内情を語ってしまって、なかなかに“悪い男”ですね。

(藤)

いえ、私はただ、学者の方が著書などで語っていたことを引用しているにすぎません。それから最後にお伝えしたいのは、「環境原理主義」と呼ばれる思想のルーツについてです。その起源をご存知でしょうか?

(深田)

どこにあるのでしょうか?

(藤)

ナチズムです。

(深田)

それは意外です。どういう意味でしょうか?

(藤)

1930年代のナチス・ドイツは、国民の健康を国家政策として向上させようとしました。つまり、健康という個人の領域に、国家が初めて介入した政権がナチスだったのです。その後、ドイツは第二次世界大戦で敗戦し、マルクス主義者たちがその思想的遺産を受け継ぎました。そして、計画主義的な温暖化対策、たとえば温室効果ガスの排出権取引などが生まれ、これが現在の「環境原理主義」と融合していったというわけです。

(深田)

なるほど。だから左派や共産主義的な思想を持つ人たちが、気候変動運動の中に多く見られるのですね。

(藤)

そうです。冷戦終結時、左派の勢力はアメリカという存在を受け入れ難く感じていたはずです。しかし、彼らの頼みの綱であったソ連が崩壊してしまった。その結果、彼らは環境問題に軸足を移し、アメリカの化石燃料依存に対する批判を強めるようになりました。

(深田)

つまり、気候変動の問題は、アメリカを牽制するための手段でもあったのですね。

(藤)

そのような背景は、確かに存在します。欧州諸国がアメリカに対して優位性を主張する際に、温暖化対策や二酸化炭素排出規制といった環境政策が有効なカードとして使われてきたのです。国際政治の構図としても、そうした力学が働いていると言われています。

(深田)

確かにそうですね。トランプ前大統領もその構図に強く反発していました。

(藤)

共和党はそうした動きに対して敏感であり、理屈抜きに本能的な反発を示しています。「これは欧州によるアメリカに対する政治的牽制だ」と直感しているのでしょう。

(深田)

よく分かります。本当にその通りだと思います。

(藤)

話は少し逸れますが、そもそも冷戦という構図も、欧州とソ連の問題にアメリカを無理やり巻き込んだ形とも言えます。

(深田)

そうだったのですか。

(藤)

はい。たとえばチャーチルのフルトンでの「鉄のカーテン」演説。あれが冷戦の象徴とされていますが、当時のアメリカはあまりにも強大で、欧州がその力を頼らざるを得なかったという事情がありました。結果的に、アメリカも冷戦構造に組み込まれていったのです。その意味で、トランプ氏が冷戦的枠組みから距離を取ろうとしているのは、極めて自然な流れだと思います。

(深田)

なるほど、そういうことだったのですね。ではもう、「地球温暖化は嘘だ。今はむしろ寒冷化が進んでいる。だから太陽光パネルは即時撤去し、再エネ賦課金は廃止せよ」と、はっきり言うべき時なのかもしれませんね。

(藤)

はい。単なる批判のための主張ではなく、いまは国家的な危機、すなわち“国難”の最中にあると捉えるべきです。

(深田)

まったく同感です。電気代の高騰も深刻ですし。

(藤)

自動車の関税交渉にも余地はありませんし、現在のように国民が家計の逼迫を背景に政治に対して声を上げている状況は、かつてない事態です。そのような時に、たとえばEV車政策を見直し、ガソリン車へと戻す。石炭火力の復活を図る。そして、国民生活に負担をかけている再エネ賦課金を撤廃する。こうした提言は極めて現実的で当然の流れだと思います。

(深田)

おっしゃることに非常に説得力があります。

(藤)

私としては、いわば“不良官僚”という立場ですから。

(深田)

お上から給料をもらいながら、その政策に正面から反対するとは。

(藤)

ですが、たとえ給料をもらっていても、組織が誤った方向に進もうとしているならば、忠臣たる者はあえて諫言すべきだと思うのです。それが忠誠というものでしょう。まあ、そこまで高尚な動機でもありませんけれど。

(深田)

やっぱり、忠臣というより“不良”でしたね。というわけで、今回は「不良官僚・藤和彦先生に聞く地球は温暖化ではなく寒冷化している」というテーマでお話を伺いました。ありがとうございました。

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