#369 【大阪万博】ユスリカからレジオネラ菌まで、真夏の公衆衛生リスクがヤバすぎる!? 森山高至氏

(深田)

みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は、建築エコノミストの森山高至先生にお越しいただきました。先生、今回は大好きな大阪万博のお話です。

(森山)

ほうっ、また。

(深田)

まだやるのかと。

(森山)

僕は、大阪万博といえばEXPO’70イメージが強すぎて、未だにあの万博が大阪万博ですよ。

(深田)

私の母がコンパニオンをしていました。

(森山)

そうおっしゃっていましたね。

(深田)

今、大阪万博をAIで検索すると、昔の大阪万博の駅が出てきたりするのですよね。みなさん、間違えてあっち(吹田)に行って、岡本太郎の『太陽の塔』を見て、感動して帰る人もいるようです。現代の大阪万博は夢洲という危険な島で開催されているのですけれども、ついに、虫の大量発生から菌をばらまくというような生物兵器テロのような話が出ています。

(森山)

これは全て水が原因なのです。そもそも、あの場所は元々海で、水に浸かっているような湿地で中途半端な埋立地です。そして、雨が降るとすぐにぬかるんでしまうような場所で、そこに水が溜まり、溜まった水が汚れているからいろいろな問題が起きているのです。

(深田)

ああ、なるほど。そこをどうすれば良かったのでしょうか。

(森山)

まず、あそこで開催しないのが一番良いのです。

(深田)

そうですよね、まずそこで開催しないのが一番いいですよね。

(森山)

そうです。しかし、もう開催してしまって水が溜まっているわけでしょう。水を貯めると、閉鎖された水系は必ず汚れてくるのです。汚れるというのは人間にとっての汚れですが、やはり自然界の有機物なので、それを分解するための生き物が入ってきます。太陽の光が当たれば光合成で藻が繁殖します。

例えば、きれいな小学校のプールが、夏が過ぎてそのままに放置すると、次の年にはすごいことになってしまうでしょう。夏になる前に見に行くと、緑になっていたということがあります。あれは何もないはずの水の中でも藻が発生し、その藻が太陽光で光合成をして増えていくのですが、結局夜になると酸素呼吸になり、みんな増えすぎて酸欠で死んでしまうのです。その後沈み、また増えて死んで、沈んでいくということを繰り返して、どんどんヘドロのようなものが溜まっていくのです。

そこに溜まった有機物のヘドロを食べに様々な微生物が来て、その中の代表的な1つがユスリカというものです。幼虫の時は水中でアカムシと呼ばれ、釣りの餌にするような小さなミミズのようなものです。彼らは水の底にあるデトリタスという有機物を食べて大きくなり、見た目は蚊ですが、本当は蠅です。そういう昆虫が舞い上がり、ものすごく大量に発生しているということですね。

(深田)

イタリア館のゾーンにも大量に付着していますね。

(森山)

彼ら自身は別に何か悪さをするつもりはありません。成虫になるとだいたい、1日か2日で死んでしまうらしいです。その間、たくさんと舞い上がって、みんな彼氏や彼女を求めているのです。

(深田)

恋をするのですね。

(森山)

そうです。その後死んでしまうのですが、その前に卵を産みます。その時に、蚊柱というものすごく雲のようなかたまりになる。スマホの動画でもわかるくらい真っ黒な状態になっていますよね。

(深田)

そうですよね、スマホの解像度であそこまで映るというのはかなりの量ですね。

(森田)

そうです。したがって、水辺なのではやむを得ないのですよ。滋賀県の琵琶湖の周りでも大量発生しています。茨城県の霞ヶ浦など、水が溜まって、ある程度温度が上がる場所で、彼らは大量に発生しますよね。

(深田)

あそこの水は、流れるようにしておけば良かったのではないでしょうか?

(森山)

そうですね、循環させるとか、流れるようにしておけば良かったのです。近くにあるユニバーサルスタジオジャパンやディズニーランドにも水はありますが、ユスリカがたくさんいるという話はあまり聞いたことがないですね。それは、やはり水の管理をしているからなのですね。

ただ、あれだけの水量です。万博の会場でリングが水面から上がっていたら、安芸の宮島のように見えて「かっこいいじゃない」という風に見た目は良かったのですが、水はただの飾りではないのです。やはり水の中には水の中の世界があって、昆虫も発生すれば、いろいろなものも発生します。だから、魚を入れるしかないのではないですか。

(深田)

ああ、魚を入れたらいいですね。おたまじゃくしなども。ただ、おたまじゃくしを入れたら次は蛙が大量に発生します。

(森山)

それもある。今後、真夏に向かって温度が上がりすぎて魚が死んでしまうかもしれない。やはり自然環境は、人間が思っているように見た目だけというわけにはいかないのでしょう。

(深田)

ああ、確かに。金魚とか鯉とか放して、そしてそれが増えたり死んだりしないようにするために、次は猫を放つ(笑)

(森山)

だから、これは半年の間なので、この夏これからも大量に発生します。なにか見た目が気持ち悪いとか、口とか目に入ってしまったら大変なだけではなく、アレルギーがある人にとっては、結構危険なようです。

(深田)

アレルギーがあるのですか⁉

(森山)

甲殻類アレルギーなどがあります。昆虫と甲殻類は同じでしょう。基本的にタンパク質のキチン質が反応してしまいます。ユスリカは体はすごく小さくて脆いから、死んで乾燥すると粉のようになってしまうのです。そうすると、粉末のように舞い上がり、鼻や口から吸い込んでしまう。思いのほか吸い込んで、それがアレルギーになるということがあるようです。

(深田)

えー、怖いです!

(森山)

それで咳が止まらなくなるということもあるので、怖い人は「怖い」と言っているのですよ。

(深田)

ハウスダストアレルギーのようなものですか?

(森山)

そうです。ダニなどもそうです。その中の何に反応するのかはわからないけれども、あれだけ大量に舞い上がって空気中に粉塵のように散らばってしまうと、それによって健康を害する人も出てくるのではないかということです。

(深田)

それは怖いです。健康を害するといえば、水上ショーで、何か菌が発生しているのですか?

(森山)

ああ、レジオネラ菌ですね。

(深田)

レジオネラ菌とは何ですか?

(森山)

レジオネラ菌というのはどこにでもいる菌なのです。昔、アメリカで在郷軍人病というものが発生しました。

(深田)

在郷軍人病ですか?

(森山)

退役軍人が各地域で同窓会やOB会のようなものをやっていて、それが在郷軍人会です。そこの大会に200人ぐらい集まった時に、みんな肺炎など呼吸系の病気になって、30人ぐらいが亡くなったという出来事が、1970年代にあったのです。当時、僕は小学生ぐらいで、そのニュースを覚えています。在郷軍人病と怖そうな名前なので覚えているのですが。その在郷軍人の「レジオン」を基に「レジオネラ菌」と名前がつけられました。その菌は本来、土とか水の中にどこにでもいる菌なのですが、なにかの拍子にすごく増殖して、それを吸い込むと肺炎になってしまう。

(深田)

ええっ、怖い!

(森山)

すごく怖い病気です。

(深田)

私は3回ぐらい肺炎になっています。

(森山)

ああ、そうなんですか。それならば、レジオネラ菌には注意した方が良いです。それで、この菌は通常そんなに増えないのですが、なぜそんな菌が発生するのかということです。水が溜まっていて、水温もある程度高い。その菌にとっての栄養物が入っている水があると増えるのです。さっき増えてしまったユスリカも、水が溜まっていて温度が上がって有機物が増えた場合と同じで、レジオネラ菌もそれが好きなのですよ。

(深田)

では、その水辺というところは、レジオネラ菌とユスリカには楽園になっているということですか?

(森山)

多少、条件は異なります。昔24時間風呂が流行った時に、風呂の水を循環させている間にレジオネラ菌が増えました。

(深田)

ああ、ありましたね。あれで亡くなった人がいましたよね。

(森山)

そうです。あとは温浴施設でもそういうことがあります。

(深田)

岩盤浴などでも不衛生なことになっていましたよね。

(森山)

そうです。一定の温度で、同じ水がぐるぐる回り、多分人間の体から出る汗など、いろいろなものが栄養になっているのだと思うのですが、それで増えてしまうのですよ。9:41それで今、温泉などでは、すごく厳しく管理するように言われているのです。だから、それが万博会場で増えているというのは「なぜだ?」ということです。特に真ん中の池のようなところで増えているのでしょう?『静けさの森』のところですね。

(深田)

『静けさの森』といっても、全然賑やかですよね。

(森山)

普通は自然界でそれほどたくさん増える菌ではないのです。したがって、なぜそんなに増えているのだろうということです。

(深田)

やはり地中からゴミの栄養分が、湧いて出てきた?

(森山)

それとなにか熱があるとか、とにかくあそこではレジオネラ菌が繁殖する条件が成立してしまっているということなのですよ。それは本当に心配な話です。

(深田)

水に塩素とかカルキのようなものを入れたらいいだけの話ですよね?

(森山)

入れたらいいです。塩素消毒ですね。レジオネラ菌は、水に入っているだけでは大丈夫なのです。問題は、在郷軍人病の時はエアコンの中にミストのように入ってしまって、その会場の空気の中にレジオネラ菌が大量に広がり、みんな肺炎になってしまったらしいのです。今回「水上ショーをやめよう」と言っているのはそれが理由です。水をかき回して一斉に噴き出したりすると、やはりそれがミストのようになったりするではないですか。それを吸い込んでしまうと、たまたま体が弱い人や抵抗力のない人とか、何らかの基礎疾患がある人であれば、発病するかもしれないので「こんな濃度でレジオネラ菌が発生しているのはまずいぞ」という話です。

(深田)

いやあ、怖いですね。

(森山)

怖いです。だから、早く解決しないといけないのです。

(深田)

大阪万博の公衆衛生の問題は、その2つだけですか?

(森山)

いやいや、前からあるメタンガスの問題もあります。そういえば最近すごいガソリン臭がしたという報告もありましたよね。あれは多分、硫化水素という硫黄系の匂いが出たのではないですか。有機物がある埋立地に土を被せると、その部分は空気がない状態になります。空気がない状態になると、嫌気性発酵といって酸素がないところで活躍する菌が「ヤッホー」となります。それでどんどん増えるのですが、彼らは硫化水素という物質を作ってしまうのですが、硫化水素は猛毒です。

(深田)

ああ、そうなんですか。吸ったらどうなるのですか?

(森山)

吸ったら死にますよ、濃度が高ければ。ただそこまでの濃度になっていない段階で、多分人間は本能的に危険物だと感じるのです。「ドブ臭い!」と言って、みんな嫌うでしょう?

(深田)

そうですよね。

(森山)

ドブの匂い、ヘドロの匂いは硫化水素が含まれています。あと、温泉などに行った時に匂う硫黄成分も、そういう匂いがあります。それに敏感になって「これ臭い!」というのはそういう匂いなのです。

(深田)

臭いとか気持ち悪いというのは人間の健康を守るためですか?

(森山)

そうです。守るために「嫌だ」と言って警告しているわけです。確か、カビ嗅では、人間は犬よりもすごく感知する力があるらしいですよ。

(深田)

カビはやはり悪いのですか?

(森山)

うん、危険です。カビもやはり病気の元なので、それをコントロールして良い発酵をさせて、いろいろな食品も作られてきているわけですよね。やはり細菌は細菌で押さえ込んでいかないといけない。それを殺菌のために、なにか薬品を入れ混ぜようとすると、今度は薬品の害も出るではないですか。水上ショーをやるために殺菌しようというのですが、どうするのかなと思います。そもそもレジオネラ菌の発生源は一体何なのかということを見つけなければいけないと思いますが、まだ発表になっていない。

(深田)

今、水上ショーは止まったままですか?

(森山)

止まったままですね。

(深田)

あれが一番の見どころですよね。

(森山)

そうですよね。皆さん、あそこに行ってしまうのですよ、以前ご説明しましたが、会場に行くと、どこに行っていいかわからなくて迷い、上を見るとリングが回っている。すると、あの水辺になにか吸い寄せられるように人は行ってしまうのです。そこで、水上ショーがあると、みんな「素敵だね、綺麗ね」といって見ているのだと思います。

14:11

(深田)

それで、落合陽一さんが「水を飛ばさないでくれ」と言うのですね。

(森山)

そうです。「錆びるからやめろ」と。落合さんのnull²(ヌルヌル)もやばかったけれど、今後は人体にもやばいことが起こる。水上ショーによる水の粒が飛んでくるとそうなります。

(深田)

なるほど、落合先生、安心してください。水上ショーは止めましたのでのnull²館は錆びずに済みそうです。

(森山)

ただ、止めた後、水の問題をどうするのかというころですよね。

(深田)

そうですよね。

(森山)

風が吹くと、また飛んできたり蒸発したりする。ユスリカもいます。したがって、あそこはもうビオトープにするしかないのではないですか。

(深田)

ビオトープ?

(森山)

ビオトープです。自然に近づけるということですよね。さっきの蛙も入れようということですが、半年後に今度は引き上げなければならないですよね。

(深田)

その時に大量の蛙、金魚、鴨、猫などをみんなで持って帰るしかないですね。

(森山)

そう、持って帰るしかない。持って帰らなかったら、それはそれで動物虐待とか言われて怒られますよね。

(深田)

蛙などは逃げ出してそのまま住みついてしまいそうです。

(森山)

したがって、すごく安易に考えたのでしょうね。あとは自分たちの都合のよいことだけを想像した。「水を溜めたらかっこいい、水上ショーや噴水をすると喜ぶ、綺麗だな」と。しかし、それを成り立たせるためには何をしなければならないのかということが抜けていた。

(深田)

確かにそうですよね。

(森山)

水の浄化も入札に入っていたのです。会場には水の浄化工事を発注しているのですよ。

(深田)

本当に浄化しているのですか?

(森山)

そこですよ。本当に浄化しているのか?1億何千万ぐらいの発注をしていたと思います。だから、どの程度浄化しているのでしょうかね。

(深田)

そうですよね。水しぶきを上げるような水辺はどこにでもあって、そこでは別に問題が起こっていないですよね。

(森山)

そうですね。例えば、さっき出た旧万博会場も、やはり水を溜めた公園のような所もあり、噴水もあった。大阪城もそうですね。そういうところでは特に問題を起こしていないのに『今回はどうなの?』という話でしょう。

(深田)

ガバナンスの問題ですよね。

(森山)

「知りませんでした、気づきませんでした」ということでしょう。これも、結局「民民(民間企業同士の発注工事)です。会場じゃない、水のことですから」と言うのでしょう。「いやいやこれは会場でしょう?」というと「いや我々はパビリオンだけで水は知りません」と言うのではないですか?

(深田)

言うでしょうね。これは維新の会の責任問題ですよね、

(森山)

これから夏場に向けて、またどうなるのかという話がありますよね。

(深田)

いやあ、怖いです。怖いもの見たさで行ってみたいと思ったけれども、やはり、行くのはやめておこうかなという気持ちになりました。

(森山)

呼吸器系が心配ですよね。

(深田)

私は、喘息とか肺炎とかアレルギーがあるので、外からちらっと観るぐらいにします。

(森山)

行く前に専門の方に相談された方がいいのではないですか。

(深田)

その前に建設費用の未払いの人に会いに行こうかなと思います。

(森山)

そうですね、わかりました。それは調べておきます。

(深田)

はい、よろしくお願いします。今回は建築エコノミストの森山高至先生に大阪万博の公衆衛生問題についてお話をいただきました。先生、ありがとうございました。

(森山)

ありがとうございました。

【配信動画はこちらをご覧ください】
ーー校閲ver. (尾形)ーー

(深田)

みなさん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は、建築エコノミストの森山高至先生にお越しいただきました。先生、今回は大好きな大阪万博のお話です。

(森山)

まだ続けて取り上げるのですね。僕は、大阪万博といえばEXPO’70イメージが強くて、未だに“あの万博” が大阪万博なのですよ。

(深田)

昔、私の母がそこでコンパニオンをしていました。

(森山)

そうおっしゃっていましたね。

(深田)

今、大阪万博をAI検索すると、昔の大阪万博の駅名が表示されて、みなさん、間違えてそちら(吹田)に行ってしまい、岡本太郎の『太陽の塔』を見て、感動して帰る人もいるようです。現在の大阪万博は夢洲(ゆめしま)という危険な島で開催されていますが、ついに、虫の大量発生から菌をばらまくというような生物兵器テロのような話が出ています。

(森山)

これは全て水が原因なのです。そもそも、あの場所は元々海で、水に浸かっている湿地で中途半端な埋立地です。そして、雨が降るとすぐにぬかるんでしまうような場所で、そこに水が溜まり、溜まった水が汚れているからいろいろな問題が起きているのです。

(深田)

ああ、なるほど。そこをどうすれば良かったのでしょうか。

(森山)

まず、あの場所(夢洲)で開催しないのが一番良いのです。

(深田)

そうですよね、まずそこで開催しないのが一番いいですよね。

(森山)

そうです。しかし、すでに開催されていて、水も溜まっているのでしょう。

水を貯めると、閉鎖された水系では必ず水が汚れてしまいます。その「汚れ」は人間にとっては不衛生なものですが、自然界から見れば有機物です。その有機物を分解するために、さまざまな生き物が入り込んできます。さらに、太陽の光が当たると、光合成によって藻が繁殖します。

例えば、きれいな小学校のプールが、夏を過ぎてそのまま放置されると、翌年には汚れてしまいます。水泳の季節の前に見に行くと、水が緑色になっていて大変なことになっているのです。これは、水の中に何もないように見えても藻が発生し、その藻が太陽光を使って光合成を行い増殖するためです。しかし、夜になると藻は酸素呼吸に切り替わり、増えすぎた藻が酸素不足に陥って死んでしまいます。その死骸が水底に沈み、また藻が増えては死に、沈んでいくというサイクルを繰り返します。これが積み重なって、どんどんヘドロのような汚れが溜まっていくのです

そこに溜まった有機物のヘドロを食べに、さまざまな微生物が集まってきます。その中でも代表的なのが「ユスリカ」という生き物です。ユスリカは幼虫の時、水中で「アカムシ」と呼ばれ、釣りの餌にも使われる小さなミミズのような姿をしています。彼らは水底にある「デトリタス」と呼ばれる有機物を食べて成長します。成虫になると見た目は蚊に似ていますが、実はハエの仲間です。このような昆虫が大量に発生し、大量に発生しているということですね。

(深田)

イタリア館のゾーンにも大量に付着していますね。

(森山)

とはいえ、彼ら自身は別に何か悪さをするつもりはありません。成虫になるとだいたい、1日か2日で死んでしまうらしいです。その間、飛び回って彼氏や彼女を求めているのです。

(深田)

恋をするのですね。

(森山)

そうです。その後死んでしまうのですが、その前に卵を産みます。その時に、蚊柱という雲のようなかたまりになる。スマホの動画でもわかるくらい真っ黒な状態になっていますよね。

(深田)

はい、スマホの解像度であそこまで映るというのはかなりの量ですね。

(森山)

そうですね、水辺なのでやむを得ないのです。滋賀県の琵琶湖の周や茨城県の霞ヶ浦など、水が溜まり、ある程度温度が上がる場所なら、彼らは大量に発生するのです。

(深田)

あの万博会場の水は、流れるようにすれば良かったのではないでしょうか?

(森山)

そうですね、循環させる、流れるようにするなどにしておけば良かったのです。近くにあるユニバーサルスタジオジャパンやディズニーランドにも水はありますが、ユスリカがたくさんいるという話はあまり聞いたことがないですね。それは、やはり水の管理をしているからなのです。

ただ、あれだけの大量です。万博の会場でリングが水面からせり上がる様子は、まるで安芸の宮島のようで「かっこいいじゃないか」と見た目はとても良かったんです。でも、水は単なる飾りではありません。やはり水の中には水の中の世界があって、昆虫が発生したり、さまざまな生き物が現れたりします。だから、魚を入れるしかないのではないでしょうか。

(深田)

魚やおたまじゃくしを入れるのはいいですね。ただ、おたまじゃくしを入れてしまったら、次は蛙が大量に発生します。

(森山)

それもありますし、今後、真夏に向かって温度が上がりすきたら魚が死んでしまうかもしれない。やはり、自然環境は人間が思っているように「見た目」だけというわけにはいかないのでしょう。

(深田)

確かにそうですね。金魚や鯉を放して、それが増えたり死んだりしないようにするために、次は猫を放つ(笑)

(森山)

大阪万博は半年間なので、この夏、これからもこうした虫は大量に発生します。見た目に気持ちが悪いとか、口や目に入ってしまったら大変なだけではなく、アレルギーがある人にとっては、結構危険なようです。

(深田)

アレルギーがあるのですか⁉

(森山)

昆虫と甲殻類は同じ節足動物で、どちらも体をキチン質というタンパク質でできた外骨格で覆われています。そのため甲殻類アレルギーの人は昆虫にもアレルギー反応を起こすことがあるのです。ユスリカは体が非常に小さくて脆いため、死んで乾燥すると粉のようになってしまいます。この粉末が空気中に舞い上がると、鼻や口から吸い込んでしまい、それがアレルギー症状を引き起こす場合があるようです。

(深田)

え、怖いです!

(森山)

それで咳が止まらなくなるということもあるので、「怖い」と言っているのですよ。

(深田)

ハウスダストアレルギーのようなものですか?

(森山)

はい、ダニなどもそうです。その中の何に反応するのかはわからないけれども、あれだけ大量に舞い上がって空気中に粉塵のように散らばってしまうと、それによって健康を害する人も出てくるのではないかということです。

(深田)

それは怖いです。健康を害するといえば、水上ショーで、何か菌が発生しているのですか?

(森山)

ああ、レジオネラ菌ですね。

(深田)

レジオネラ菌とは何ですか?

(森山)

レジオネラ菌というのはどこにでもいる菌です。昔、アメリカで、退役軍人が各地域で行う同窓会やOB会『在郷(ざいごう)軍人会』の中で、在郷軍人病というものが発生しました。1970年代、その会に200人ぐらい集まった時に、肺炎など呼吸系の病気で30人ぐらいが亡くなったという出来事があったのです。

当時、僕は小学生ぐらいでしたが、在郷軍人病という怖そうな名前の影響でそのニュースを覚えているのです。その在郷軍人の「レジオン」を基に「レジオネラ菌」と名前がつけられました。その菌は本来、土や水中などどこにでもいる菌なのですが、なにかの拍子にすごく増殖した際、それを誤って吸い込むと肺炎になることがあるのです。

(深田)

ええっ、怖い!

(森山)

すごく怖い病気です。

(深田)

私は3回ぐらい肺炎になっています。

(森山)

そうなのですか。それならば、レジオネラ菌には注意した方が良いです。この菌は通常そんなに増えないのですが、ではなぜそんな菌が発生するのか?ということです。水が溜まって、水温もある程度高く、その菌にとっての栄養物が含まれている水があると増えるのです。さきほどの“増えてしまったユスリカ”にしても、水が溜まり、温度が上がり、有機物が増えたケースと同じで、レジオネラ菌もそうした条件を好むのです。

(深田)

では、その水辺というところは、レジオネラ菌とユスリカには楽園になっているということですか?

(森山)

多少、条件は異なりますよ。昔、24時間風呂が流行った時に、風呂の水を循環させている間に「レジオネラ菌が増える」ということがありました。

(深田)

ありましたね。それで亡くなった人がいましたよね。

(森山)

そうです。あとは温浴施設でもそういうことがあります。

(深田)

岩盤浴などでも不衛生なことになっていましたよね。

(森山)

そうです。一定の温度で、同じ水がぐるぐる回り、人間の体から出る汗など色々なものが栄養になっていると思うのですが、そうした条件もあって増えてしまうのですよ。 それで現在、温泉などでは、すごく厳しく管理するように言われているのです。 それなのに、「万博会場で(そうした菌が)増えているというのはなぜだ?」ということです。特に会場の真ん中の池、『静けさの森』 のようなところで増えているのでしょう?

(深田)

『静けさの森』は、賑やかですよね。

(森山)

自然界の中で、普通はそれほどたくさん増える菌ではないのです。たから、なぜそんなに増えているのだろう?と思うのです。

(深田)

地中からゴミの栄養分が湧いて出てきた?

(森山)

それとなにか「熱」が関係するとか。とにかくあの場所は、レジオネラ菌が繁殖する条件が成立してしまっているということなのですよ。これは本当に心配な話です。

(深田)

水に塩素やカルキのようなものを入れたらいいだけの話ですよね?

(森山)

レジオネラ菌は、水の中に存在しているだけであれば、基本的に大きな問題にはなりません。しかし、問題となるのは、例えば在郷軍人病の集団感染のように、空調設備や加湿器などで水がミスト状になり、その空気中にレジオネラ菌が大量に拡散されてしまう場合です。このような状態になってしまったために、在郷軍人病では多くの方が肺炎になってしまったのです。

今回「水上ショーをやめよう」というのはそれが理由です。水をかき回して一斉に噴き出したりすると、やはりそれがミストのようになったりするではないですか。それを吸い込んでしまうと、たまたま体が弱い人や抵抗力のない人、何らかの基礎疾患がある人であれば、発病するかもしれないので「こんな濃度でレジオネラ菌が発生しているのはまずいぞ」という話です。

(深田)

本当に怖いですね。

(森山)

怖いです。だから、早く解決しないといけないのです。

(深田)

大阪万博の公衆衛生の問題は、その2つだけですか?

(森山)

いやいや、前からある「メタンガス問題」もあります。そういえば最近、ものすごいガソリン臭がしたという報告もありましたよね。あれは多分、硫化水素という硫黄系の匂いが発生したのではないでしょうか。有機物がある埋立地に土を被せると、その部分は空気がない状態になります。空気がない状態になると、嫌気(けんき)性発酵という酸素がないところで活躍する菌が活発になるのです。それでどんどん増え、そして、硫化水素という猛毒物質を作ってしまうのです。

(深田)

そうなのですか。吸ってしまったらどうなるのですか?

(森山)

濃度が高いものを吸ってしまったら死にますよ。ただ、そこまで高濃度ではない段階で、人間は本能的に「ドブ臭い!」という風に嫌な感覚として反応し、それを危険物だと感じ取るのです。

(深田)

そうですよね。

(森山)

ドブの匂い、ヘドロの匂いは硫化水素が含まれています。 温泉などに行った時の硫黄成分にもそういう臭いがあります。それに敏感になって「これ臭い!」というのはそういう臭いなのです。

(深田)

臭いとか気持ち悪いというのは人間の健康を守るためですか?

(森山)

そうです。身を守るために「嫌だ」と警告されているわけです。確か、「カビ臭」については、犬よりも人間の方に感知力があるらしいですよ。

(深田)

そうなのですか。カビはやはり悪いのですか?

(森山)

はい、カビもやはり病気の元になるので危険です。ですが、それをコントロールして「良い発酵」をさせ、様々な発酵食品も作られてきているのですよね。ただ、やはり細菌は細菌で押さえ込んでいかないといけないわけです。だから、その殺菌のために薬品を混ぜ込もうとするのですが、そうすると今度は薬品の害が出ることもあるのです。

万博の水上ショーを続けるために、「殺菌しよう」という話なのですが、どうするのかなと思います。そもそもレジオネラ菌の発生源は一体何なのか?を見つけなければいけないと思うのですが、まだ発表になっていない。

(深田)

今、水上ショーは止まったままですか?

(森山)

止まったままですね。

(深田)

あのショーは一番の見どころですよね。

(森山)

そうですよね。以前ご説明しましたが、会場に着くと、どこに行っていいかわからなくて迷う中、上を見ると大きなリングが回っているのが目に入るのです。だから、あのリングのある水辺に吸い寄せられるように向かってしまうのです。そこで、水上ショーがあると、みんな「素敵だね、綺麗ね」と喜んで見るのだと思います。

(深田)

それで、落合陽一さんが「水を飛ばさないでくれ」と言うのですね。

(森山)

そうです。落合さんのnull²(ヌルヌル:パビリオンの一つ)も影響を受けそうだったので、「錆びるからやめろ」とおっしゃってます。 水上ショーによる水の粒が飛んでくれば、人体にも危険なことが起こることがあるかもしれないですし。

(深田)

なるほど、落合先生、安心してください。水上ショーは止めましたのでのnull²館は錆びずに済みそうです。

(森山)

ただ、止めた後、水の問題をどうするのかというころですよね。風が吹けば、飛んできたり蒸発したりしますし、ユスリカもいますし。あの場所はもうビオトープにするしかないのではないですか。

(深田)

ビオトープ?

(森山)

ビオトープ、つまり、「自然に近づける」ということです。さっきの「蛙も入れよう」という話ですが、半年後、今度は(万博会場を)引き上げなければならないわけですよね。

(深田)

その時に大量の蛙、金魚、鴨、猫などを皆で持って帰るしかないですね。

(森山)

そう、持って帰るしかない。持って帰らなかったら、それはそれで動物虐待という風に言われて怒られますよね。

(深田)

蛙などは逃げ出してそのまま住みついてしまいそうです。

(森山)

ものすごく安易に会場作りを考えたのでしょうね。「水を溜めたらかっこいい、水上ショーや噴水をすると喜ぶ、綺麗だな」という風に、自分たちの都合のよいことだけを想像した ー しかし、それと環境整備の両方を成り立たせるために何をしなければならないのか?ということが抜けていた。

(深田)

確かにそうですよね。

(森山)

水の浄化も入札に含まれていたのです。会場は水の浄化工事を発注しているのですよ。

(深田)

本当に浄化しているのですか?

(森山)

そこですよ。本当に浄化しているのか?一億何千万円ぐらいの規模で発注していたと思いますが、どの程度浄化しているのでしょうかね。

(深田)

そうですよね。水しぶきを上げるような水辺は他にどこにでもあって、そこでは別に問題が起こっていないですよね。

(森山)

そうですね。例えば、さっき出た旧万博会場も、やはり水を溜めた公園のような所があり、噴水もあった。大阪城もそうですね。そういう場所では特に問題を起こしていないのに、「今回はどうなの?」という話でしょう。

(深田)

ガバナンスの問題ですよね。

(森山)

「知りませんでした、気づきませんでした」ということでしょう。これも、結局「水のことですから、民民(民間企業同士の発注工事)の問題です」と言うのでしょう。「いやいやこれは会場(運営側)の問題でしょう?」というと、「いや、我々はパビリオンだけで水のことは知りません」と言うのではないですか?

(深田)

言うでしょうね。これは維新の会の責任問題ですよね、

(森山)

これから夏場に向けて、またどうなるのかという話がありますよね。

(深田)

いやあ、怖いです。怖いもの見たさで行ってみたいと思ったけれども、やはり、行くのはやめておこうかなという気持ちになりました。私は、喘息とか肺炎とかアレルギーがあるので、外からちらっと観るぐらいにします。

(森山)

呼吸器系が心配ですよね。行く前に専門の方に相談された方がいいのではないですか。

(深田)

その前に(大阪万博での)建設費用が未払い被害という方に会いに行こうかなと思います。

(森山)

そうですね、わかりました。それは調べておきます。

(深田)

はい、よろしくお願いします。今回は建築エコノミストの森山高至先生に大阪万博の公衆衛生問題についてお話をいただきました。先生、ありがとうございました。

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