#342 来年もコメ不足は続く。4年前から始まっていたコメ問題を政府が隠ぺいした真相とは?  山田正彦氏

(深田)

皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は、元農林水産大臣の山田正彦先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。

今年はひどい米不足ということで、お米の価格が高騰しています。ですが、政府は米不足を認めておらず、「お米は足りている」と言い続けています。来年はどうなってしまうのでしょうか?米不足は解消されるのでしょうか?

(山田)

来年も続きますね。実は政府の統計でも、4年前(2021年)から、米の生産量よりも消費量の方が多くなっているのです。

(深田)

えっ!本当ですか?

(山田)

はい。農水省は「米余りだ」と言ってきたのですが、農水省の作ったデータでも、4年前の米の生産量は664万トンで、消費量は704万トンです。

(深田)

では、不足していたということですか?

(山田)

そうです。しかも40万トンほどの不足です。

(深田)

やはりそうですよね。政府は嘘をついていますよね。

(山田)

はい。なぜこうなったのか、私もいろいろ調べてみました。米の出来高を示す「作況指数」という言葉を聞いたことはありますか?

(深田)

はい、あります。

(山田)

毎年公表されます。昔は「坪刈り」といって、実際に田んぼの1坪を刈って収量を量り、それらのデータを集めて正確に算出していました。それを今はドローンで観測しています。

そして、ここ2年連続で作況指数は「101」です。ところが、私が農家や農協の集荷業者と話をしてみると、どう考えても作況指数は「94」か「95」くらいしかないのです。

(深田)

それでは、実際の収穫量は前年よりずっと減っているのに、政府は「増えている」と言っているのですね?

(山田)

はい。農家自身でさえ、自分の生産量を正確に把握するのが難しいのに、全国の集計で正しい米の収穫量が出るわけがありませんよね。政府の今までの数字も、あくまでも単なる予測であって、非常に曖昧なものだったのです。

(深田)

曖昧というよりも、ドローンで観るだけでは適当ですよね。

(山田)

そうです。かつては、農政事務所がきちんと現地で「坪刈り」をしていたので、ほぼ正確なデータでした。ところが、最近の政府による「今年は充分に米が収穫されています」という発表は全部嘘だったのです。

(深田)

しかも、気温の上昇でお米の質が悪化して白濁したりもしたのですよね。

(山田)

高温障害に加えて、カメムシの発生もあって、クズ米が2~3%増えたというのが事実です。だから、深刻な米不足は4年前からあったのですよ。

しかも皆さん、米の消費が減っていると思い込んでいるようですが、実際は5年前から米の消費量は増えています。

(深田)

えっ!みんながお米に回帰しているということですか?それともインバウンドですか?

(山田)

日本人の需要です。

(深田)

5年前はコロナ禍だから、インバウンドがまだない時期ですね。その頃からお米を皆さんが召し上がっていて、昨年以降はインバウンド需要も加わり、さらに需要が伸びたのですね?

(山田)

インバウンドのことは詳しく把握していませんが、そういうことかも知れません。いずれにせよ、農水省の統計に4〜5年前から出ています。

(深田)

農水省が出しているなら「分かっているでしょう!」ということですよね。

(山田)

そうです。米余りではなくて、すでに米不足に陥っていたのです。

農家は米を作りたいと思っています。今でも300万ヘクタールの水田は生きているのですが、減反政策で4割は作らせません。とても広大な面積です。今年はそれを2%だけ増やしたのですが、本当は10%増やさないといけませんでした。

(深田)

空いている水田はあって、使えるのですよね?そして農家は作りたいのに、政府は「作るな」と言っているのですね。

(山田)

そうです。だから農政が間違っています。今の日本は、農水省の米政策によって米不足に陥っているのです。

4年前から減反を止めて増産に転じていれば、今の米不足は起きていなかったはずです。それなのに今年になってようやく、4割だった減反を2%だけ減らして38%にしました。しかし、これでは全く足りません。少なくとも(減反を)10%減らす必要があります。来年も必ず米不足になります。

(深田)

そうなのですね。

今、田んぼがたくさんあっても、農家が高齢化していて成り手がいないという問題もありますよね?

(山田)

それは違うと思います。

今、農家は150万戸ほどあります。高齢化したと言っても、300万ヘクタールの農地で米を作ることは可能だし、作りたいと思っています。ところが、政府から減反を命じられていて、減反しないとお金は出ません。だからそれに従っているだけです。

ここで思い切って、減反面積4割のところを3割にすると、米不足は一気に解決します。

(深田)

ですが、「今年は増反しろ」とは言わないですよね?

(山田)

2%だけ政府は初めて増反します。

(深田)

2%では全然ダメですよね?

(山田)

ダメです。政府の農政の失敗は未だに続いているから、来年も米不足になることは間違いないと私は思っています。

こういう時に「米の輸入をしろ」と小泉さんが言うのではないかと心配しています。私は大臣の時から一生懸命取り組んできましたが、輸入には断固反対です。日本人は米を作れるのだから、食料安全保障の観点からも米だけは100%を意識して、アメリカからの輸入に頼ってはいけません。

(深田)

アメリカの米は「グリホサート米」ですよね。ちょっと怖いですよね。

(山田)

そうですね。日本でも農薬を使っているとはいえ、やはりできるだけ農薬は無くしていきたいのです。安全なものを安心して食べられるような農業政策を今やらなければなりません。

(深田)

そうですよね。

(山田)

今回、農水相に小泉氏が就任しましたが、逆の方向に行くような気がしています。むしろアメリカから米を輸入して、更に、企業に農業をやらせようとするのではないかと危惧しています。

(深田)

「もう小規模農家ではダメだから、大規模企業にやらせましょう」と?

(山田)

もしそうなったら、大企業は農薬と化学肥料をバンバン使います。我々の健康への影響が懸念されます。

私は実際に大規模化の農業をやってみましたが、本当は大規模化の効率は良くありません。

(深田)

どうしてですか?

(山田)

4町歩(4ヘクタール)くらいまでは良いのですが、それを超えると難しくなります。やはり、作物というのは微妙なものです。水廻りの加減や、時々の気温や天気の変化など、常に見ていないといけません。だから、私は大規模農家を奨励しません。

(深田)

確かに、農林水産省の統計でも、1~2ヘクタール程度だと生産コストは2万円台で、20ヘクタールくらいまでは減っていきます。ですがそれを超えると、逆にコストが上がる傾向があると示されています。日本の地形の関係でそうなるようです。

(山田)

それもあります。

私は最近、韓国に行って農業事情を視察してきました。韓国は合理的で、市町村単位や農協が中心となって、農機具の貸し出しを行っています。

(深田)

「韓国版JA」が農機具の貸し出しをしているのですね。それは素晴らしいです!

日本の農家のコストが高くなる最大の要因は、農業機械の価格ですよね。コンバインやトラクターが1,000万円で、それらをローンで購入しているため、毎年の収入がほぼ返済に消えてしまいます。自転車操業です。実際には1年のうち使うのは数日だけなので、必要なときだけ農機具をレンタルできれば、みんなが助かりますね!

(山田)

それを韓国はやっています。

(深田)

韓国の農協は優秀ですね。日本の農協もレンタルをやったらどうでしょうか?

(山田)

その調査のために韓国に行って来たばかりです。韓国では、農協や自治体や市町村が農機具の「無償貸し出し」や「実費のみでの貸し出し」を行っています。農家はすごく助かります。

(深田)

農家の経費は人件費の他は、ほとんど農業機材の支払いなので、それが無くなれば充分やっていけます。例え米の価格が下がっても利益は出ますよね。

(山田)

その通りです。

今も市町村などの地方自治体は農業振興政策に予算を付けて取り組んでいます。農協も同様です。これからは、実費など無料に近い形で農機具を貸出する「センター」を作るべきです。そうすれば農家はやって行けます。

(深田)

農協改革をその路線でやるとすごく良さそうですね。

(山田)

小泉氏がやるとは思えませんが、農政はそうするべきだと思っています。

(深田)

私も「農業をどうしたらもっと効率化できるのだろうか」とずっと考えてきました。実は最近、2反ほどの田んぼを借りて、実際にお米づくりにも取り組んでいます。農家さんからいろいろ教えていただいている中で、機材コストがあまりにも高額である事を実感しました。例えば、コンバインは30年前と比べて2倍以上の価格になっています。確実にコストは上がっているのに米の値段は下がっています。農家にとっては正に地獄のような状況です。

(山田)

私が農水大臣だった時も、農機具の価格が高すぎると感じていました。そこで、農機具メーカーに来てもらって、「私は農機具が高すぎると思っている。今まで政府が出していた補助金を辞めようと思う。但し、農家に無担保無保証で20年間の融資をするので、それを利用して農家に自由に買ってもらう」と言いました。メーカーは青くなっていました。

(深田)

農業向けの補助金が、意外と農家ではなく、農機具メーカー出ていたということですね。

(山田)

そうです。補助金の多くが農家のためではなくて、実際には農機具メーカーや肥料、農薬会社の利益になっている気がしていました。

(深田)

気のせいではないです。確実に儲かっていますよね。

(山田)

そこを解消するために、当時そうした言動をしました。

(深田)

それなのに、民主党政権から自民党政権に戻ったら全てがお釈迦になってしまったのですよね。

どう考えても、米不足の原因は自民党ですよね。

(山田)

そうです。今の農政は間違っています。ですが自民党は、農薬や化学肥料や農機具などの大企業から献金を貰っています。これでは日本の農業はダメになります。

(深田)

良くなりようがないですね。

来年も米不足が続くということですが、どうしたら良いのでしょうか?

(山田)

まずは思い切って減反政策を辞めることです。来年は少なくとも10%の増反をさせれば米不足は解消できます。

(深田)

ですが、小泉農林水産大臣では期待できないように思います。ですから私は自分で農地を借りて、農作業は依頼をして、勝手に一人で増反しています(笑)

(山田)

全国民の方々が、それぞれ30坪の農地を持って米や芋や野菜を作ると、日本の食料安全保障は達成できます。健康にも良いですし、食育にもなります。

(深田)

私は今回、一反は除草剤を使っていますが、もう一反は玄米で食べたいので無農薬で栽培しています。今年の夏は草刈りに行く予定です。

(山田)

頑張ってください(笑)

日本は無農薬栽培の技術も優秀です。最近では紙マル(紙マルチ)というトラクターがあって、除草が容易にできます。他にもいくつかの方法が開発されているので、無農薬でもできます。政府はそうしたものに対して、少しでも良いので補助金を出したり奨励したりすれば変わると思います。

(深田)

今は健康志向も高まっているので、「無農薬米」という付加価値を付けて認知されていけばいいですね。

(山田)

「六次産業化法案」(六次産業化・地産地消法)で、農家が保健所に届け出るだけで独自のブランドとして売れるようになっています。これは私が大臣の時に携わった法案です。農家が良いものを作って自分たちが直販所で売ることができます。今、全国で2万5千ほどの数になっています。

(深田)

直販をすることで「億プレーヤー」も出て来たと話題になっていますね。

(山田)

農家も農協だけに頼らずに自分たちで販路を築き、付加価値を高めていくことで、少しずつ光明が見えて来た気がします。

(深田)

そうなれば米不足も解消できますね。但し、今の自民党の政策のままだと、来年も米不足になりそうです。

(山田)

基本的なことをやろうとしていませんね。

(深田)

「打倒、小泉大臣」ということで、今回は元農林水産大臣の山田正彦先生にお越しいただきました。先生、どうもありがとうございました。

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