#328 闇バイトにハマる若者 軽い気持ちで始めたら〇人罪。衝撃の実態とは? 鈴木傾城氏
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は、ノンフィクション作家の鈴木傾城さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
先日、「チャンネル桜」で闇界隈についていろいろとお話されていて、私も興味を持ちました。以前、政治家のパーティーで「闇バイトをして逮捕された」という20代前半の男性に会ったことがあります。私は「闇バイトはどういう人がやっているのか?」と疑問に思っていました。
メディアでは「騙されて闇バイトにハマっていく」という報道が多いですが、その人は「闇バイトでオレオレ詐欺の受け子をやって逮捕されたから、今は資金洗浄の仕事をしている」と言っていました。それを聞いて「騙されたのではなくて、むしろ自ら選んでないか?」と感じました。実際のところ、若者は本当に騙されているのでしょうか?
(鈴木)
騙されてやっている人が大半です。SNSで「高収入」「1回で15万~50万円」などと宣伝されて、それに釣られて何千人という人が応募しています。
(深田)
しっかりした求人媒体ではなく、SNSでそのまま応募してしまうのですか?
(鈴木)
今の若者はTwitterなどで募集がかけられると、そこへダイレクトメッセージで連絡を取ってしまうのです。仕事内容は示さずに「誰でもできる簡単な作業で1日50万円」とだけ書かれていたら、心が動いてしまいそうですね。
(深田)
何も知らなければそうなるかも知れないですね。
(鈴木)
先日、銀座で強盗事件がありましたが、他にも今いろいろと起きています。そして16歳~19歳くらいの子たちが関与しているケースが多いです。
(深田)
やっている内容は、ただの強盗ですよね。
(鈴木)
そうなのですが、仕事の詳細はギリギリまで明かされず、ファミレスなどに集合したときに初めて「実はタタキ(強盗)です」と告げられるのです。
最初に「1回50万円、必ずあげます」という言葉で釣った際に、まず「あなたの顔写真、免許証、住民票、家族構成を全部出して下さい」と言われて、仕事内容を何も分からないまま渡してしまうのです。
後から断ろうとすると、「家族に危害を加える」などと脅されて、逃げられない状況に追い込まれるわけです。
(深田)
警察に相談しないのですか?
(鈴木)
「相談すれば殺す」と脅されたり、「自分のバックには極道や半グレがいる」と言われたりして、逃げられないようにするのです。それと同時に「でも大丈夫。捕まらないから」とも言います。
(深田)
どういうことですか?
(鈴木)
「きちんと逃げれば50万円貰えて捕まらない。1回だけ仕事をして50万円貰ったら、後は関係ないから」と言葉巧みに誘導していくのです。
(深田)
警戒しないのですか?
(鈴木)
もちろん警戒心も常識もあります。ですが「釣られる若者」はとにかくお金がないし、今の学歴社会で落ちこぼれてしまったり、家庭が貧困だったりして、社会に踏み躙られている感覚があるわけです。「自分が何をやっても報われない。でも50万円を稼げるのなら、1回くらいやってみてもいいかも知れない」という思考になってしまうのです。
(深田)
私も若い頃、非正規のOLで貧乏だったので「チャンスがない」と思っていた時期がありました。でも怪しい高給バイトの話があっても、「親に相談したら何て言われるだろうか」と考えて思いとどまった記憶があります。そういう「親ファクター」は今の若者には効かないのでしょうか?
(鈴木)
やっている人は、親と縁が切れていたり、家庭が壊れていたりする子が多いです。要するに「機能不全家庭」で育っていて、尚且つ、親にも学校にも社会にも見捨てられていて、「自分は何者でもないし何者にもなれない」という感覚があるのです。そうなると、目の前の高給の仕事に釣られてしまうのです。
(深田)
それは仕事ではないですよね。
(鈴木)
はい。ですが、政治家は30年間も日本を成長させることができず、貧困層をどんどん作り出すような社会にしているので、社会の底辺で生きる人たちがどんどん増えてきているのです。
(深田)
それはお金だけの問題ではないですよね。
(鈴木)
違います。社会のあり方がどんどんおかしくなってきています。
(深田)
家庭崩壊がものすごく蔓延しているのでしょうか?
(鈴木)
はい。経済的な問題が原因です。1990年ぐらいからバブル崩壊や消費税の増税などもあり、貧困層が増加しました。それが「機能不全家庭」や「家庭の崩壊」を招き、闇バイトを増長するという構図になっています。
(深田)
私の子供の頃は、皆がつつましく生活していて、家庭も機能していたように思います。
(鈴)
それは「幸せな家庭」です。ところが、今は父親の収入が減ったり、共働きで子供が放置されたりして、親子の会話もない状態です。もしも貧困であれば欲しいものも買えずに、「自分は見捨てられた」と感じてしまいます。そうなると、「世の中、金がすべてだ」という感覚になり、闇バイトに惹かれてしまうのです。
(深田)
最近の若い女性に人気のYouTuberも「整形して綺麗になったら稼げるようになった」という内容を発信していて、登録者数も多いです。安直なものに飛びつく人が増えてきたのかなと思います。
(鈴木)
そうですね。そして「金こそすべて」という考えになると、今度はそれを誇示するようになります。ブランドものや札束を見せて自慢する人もいます。実際には札束風の小道具だったりもしますが。
(深田)
それは、子供の頃に見た雑誌にあった「ネックレスで運が良くなった」みたいな広告と変わらないですよね。
(鈴木)
それを今はYouTubeでやっているのかも知れませんね。そうした「金こそすべて」という考えが、世の中のさまざまな歪みを生んでいる原因だと考えています。
(深田)
闇バイトをしている人たちには、集まる拠点のようなものがあるのでしょうか?
(鈴木)
基本的に、闇バイトをしている若者たちは孤立しています。あらかじめ打ち合わせがあるわけでもなく、当日にファミレスなどに集まり、初対面のまま「じゃあ行って来い」と指示を受けて動くのです。組織ではないのです。
(深田)
怖いですね!それを裏で操っているのは何者ですか?
(鈴木)
警察では「匿流(とくりゅう)」と呼ばれています。「匿名の流動型の犯罪グループ」が裏で指示を出しています。これは「半グレ」です。
昔は「ヤクザ」という組織がありましたが、1991年の「暴対法」によって「ヤクザ」の活動がどんどん締め付けられていきました。そして、「ヤクザ」ではシノギ(稼ぎ)が出来なくなってしまいました。
そこで、似たようなグループを作って「ショバ代」を取ったり、人身売買やドラッグの売買をしたりと、非合法な活動をするようになったのです。それが「半グレ」です。「ヤクザ」とは関係ないのですが、挨拶程度はするようです。今の闇バイトや特殊詐欺を裏で操っているのは、そういった組織です。
(深田)
闇バイトに加わる人たちは、男性と女性のどちらが多いのですか?
(鈴木)
圧倒的に男性が多いです。受け子などで女性もいますが、8割から9割は男性だと思います。
(深田)
その男性たちが、女性を出稼ぎ売春に誘うケースはないですか?
(鈴木)
それはまた別の話になります。同じ裏社会でも別の世界です。女性を扱うのは、ホストやスカウトなど、合法の中にグレーゾーンが存在する職業に従事している人たちです。
(深田)
では、闇バイトを防ぐ方法はあるのでしょうか?
(鈴木)
「若者への啓蒙」といったことがよく言われますが、それだけでは限界があります。根本的に日本社会を成長軌道に戻し、「きちんと普通に働けば生活できて、給料も上がって家庭が築ける」という状態にすることが必要です。そうすれば自然と闇バイトはなくなると思います。
(深田)
学歴も影響しているのでしょうか?
(鈴木)
学歴は低めです。中卒や高卒、高校中退の人が多いです。今は学歴社会なので、その時点で「自分は社会の底辺だ」と感じてしまいますよね。
(深田)
昔であれば、そういう人たちには建設業や農業、物流といった仕事の受け皿がありました。しかし今は、外国人労働者に体力的に負けてしまっていますよね。
(鈴木)
体力もなく気力もなくて、おまけに仕事を選んだりもしますよね。
(深田)
経済的に恵まれていない国から来た低学歴の人たちは、逆に「日本にはチャンスがある」と思っています。農業を頑張ったら意外と儲かるし、建設業でも一生懸命に働いて自分で会社を持てば稼げるぞと希望を持っています。
けれども日本の若者にとっては、そこに希望は見えなくなっているのでしょうね。
(鈴木)
そうなのでしょうね。彼らは「社会に居場所がない」と感じていて、「居場所がないからチャンスがない」と思ってしまい、刹那的になって闇バイトに手を出すのです。そして、「1回で50万円、2回で100万円、数回やれば1年ぶらぶらと暮らせる」と考えるのです。
(深田)
そこまで考えるのですか?
(鈴木)
はい。実際に1回やって捕まらなかった人が、「これなら大丈夫だ」と思って2回目、3回目と続けてしまうパターンもあります。逆に、1回目で捕まる人、あるいは抵抗されて人を傷つけてしまう場合もあります。
狛江市の事件(2023年1月の事件)では、闇バイトで入った先でおばあさんを殺してしまったのです。そうなると取り返しがつきません。懲役20年とかになると、もう人生が終わってしまいます。
しかし、成功体験を持ってしまった若者は「楽に稼げる」と思って繰り返してしまいます。そして2000人、3000人、あるいはもっと多くの人が応募しているのです。
先日、ミャンマーで特殊詐欺グループが逮捕された事件では、数千人が確保されました。拠点がミャンマーにあって、中国人のリーダーが逮捕されたのですが、保護されたのは数千人です。
(深田)
日本人ですか?
(鈴木)
日本人もいましたが、世界各国の数千人が確保されました。隔離された「犯罪工場」で仕事をさせられていました。
(深田)
ええっ!
中心にいるのはいずれも中国人なのですね。
(鈴木)
先日、カンボジアでも同様に特殊詐欺グループの中国人が逮捕されたのですが、そこには日本の「関東連合」が関わっていました。「関東連合」の連中がフィリピンやカンボジアやミャンマーなどに行って、闇バイトや闇ビジネスをやっているのです。犯罪も国際的になってきています。
(深田)
驚きです。
(鈴木)
「関東連合」の裏には極道がいます。だから、日本の裏社会は今や国際的になっています。そういう時代なのです。
(深田)
皆さん、「闇バイトは犯罪」です。この認識を日本で広げていかなければなりません。「バイト」という言葉が付いていると「ちょっと悪いバイト」という誤解を与えかねませんね。
(鈴木)
軽い感覚はしますよね。
(深田)
例えば、「売春」も「パパ活」と言い換えることで、犯罪感が薄められてしまいます。
(鈴木)
そうです。
(深田)
もしも、「闇バイト、ホワイト案件です」などとあった時には、「ホワイトと書かれている時点でおかしい仕事だ」という感覚を持てるような教育も必要だと思います。
(鈴木)
そうですね。
(深田)
今回は、ノンフィクション作家の鈴木傾城さんに、闇バイトの驚きの実態についてお話しいただきました。どうもありがとうございました。