#327 石破首相の就職氷河期政策は絶対コケる! 一番の問題はXXだった!?
(深田)
皆様、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。本日は雇用ジャーナリストの海老原嗣生先生にお越しいただきました。前回は、就職氷河期問題で、本当に困難な状況にあるのは単に就職氷河期世代ではなく、主に高卒者や女性が苦労されているとお話しいただきました。本日はその続きをお願いします。
(海老原)
はい、続きを見ていきたいと思います。まず、幻想の2つ目は、既卒者は大学を卒業すると、もう正社員にはなれないと思っている人たちです。先ほどデータで示しましたが、12万人ほどが正社員、そして経営者となっています。
これがどのようなプロセスを経たのかをデータで示したいと思います。まず、こちらの表(既卒未就業者の一般労働者への入職)を見てください。一般労働者とは、短期のアルバイトやパートなどを除き、長期雇用される人を指します。その中には契約社員も含まれており、全てが正社員ではありません。その区分けは後ほど行います。単位は「万人」です。
20歳から24歳は主に大学や高校を出たばかりの人たちです。つまり、既卒無業者という場合、高卒者は少なく、大卒無業者がほとんどとなります。 19歳以下の層は高卒者が中心です。これを見ると赤い線(20~24歳)ですが、2000年や2001年といった最も厳しかった時期でも、現在でも、毎年14~15万人が無業から一般労働者へと就職しています。まずここを頭に置いてください。
ただし、このうち半分程度は非正規雇用です。 次は、入職状況(表:20~24歳の既卒未就業者の採用状況)です。青い部分が零細企業、赤い部分が小規模企業、緑色が中堅企業、紫色が準大手、そして水色の部分が大手です。中小企業ばかりが受け入れているように思えますが、大手の割合は2割、準大手の割合が16.8%、そして中堅が28%です。300人以上の企業で5割には届きませんが、かなりの数です。このように見ると、中小・零細企業が全てを受け入れたわけではないことが分かると思います。
そして、こちらの表(既卒未就業者から一般労働者になった人の雇用形態)は最近のデータだけですが、この中で何割程度が正社員なのかを見ると、20歳から24歳では、2022年のデータでおよそ半分が正社員です。
2023年のデータでも半分弱が正社員となっており、およそ14万人が動いていました。つまり、14~15万人のうち半分程度は、正社員として入職しています。既卒無業者でも7~8万人が毎年、一般労働者、正社員として入職しているという事実を理解していただきたいのです。このような話は知られていません。
ちなみに、これは JILPT(ジルピーティー、独立行政法人労働政策研究・研修機構、The Japan Institute for Labour Policy and Training)のデータにあります。第二新卒の実態調査が2005年に行われています。これを見ると、従業員5000人以上の超大手企業でも、第二新卒の採用を半分程度が行っています。大体半分はどこでも行われています。
第二新卒として採用された人々の前職の企業の規模を見ると、5000人以上の超大手で採用された人たちも、前職企業は300人未満、つまり中小企業から第二新卒としてステップアップ転職している人が非常に多いのです。
(深田)
そうですね。非常に多いですよね。
(海老原)
このような話も全く触れられていません。多くの様々なデータや資料が、政府主導でかなり調査されているにもかかわらず、これらは全部捨てられているのです。
(深田)
捨てられているのですか?
(海老原)
全く使われていないです.
朝日新聞などの報道機関は「9割の企業が既卒者を採用しない」と書いています。1割の企業しか既卒者を相手にしないというデータを出すのです。しかし、これはインチキです。既卒者だけでなく新卒も採用していない、つまり採用活動を停止している企業が世の中の8割なのです。これを除いた中で、フリーターを採用した企業の割合は5割です。フリーターの採用は5割に過ぎないのかと思われますが、フリーターの応募がなかった企業を除くと、その割合は7割になります。つまり、中小企業や規模の小さい企業は、新卒採用ができないため、ほとんどが中途採用で無職者を採用しているのです。
(深田)
そうですよね。
(海老原)
このような話は当然のことです。しかし、雇用や労働を専門とする学者はこのような話には非常に弱いのです。論文を読み、データの研究を行い、海外の状況ばかりを調べているのです。
(深田)
このミスリードの記事の資料を見ると、ほとんどの企業が既卒者を採用しないと言っていますが、そもそも8割の企業は採用活動を行っていないということですね。
(海老原)
そういうことです。採用活動を行っている企業に限れば、その半数がフリーターもしくは無業者を採用しています。
(深田)
したがって、50%の企業が既卒者を採用しているというのが、正しいデータの読み方となりますね。
(海老原)
そういうことです。さらに、これらの企業で、フリーターの応募がなかったために採用できなかったという企業を除くと、応募はあったが採用しなかったという企業は3割しかないのです。
こういう話では、労働経済学者は、このような データを全く示さずに、パネル調査として、自分の知り合いに質問を投げかけ、それがどのような状況であるかという無駄な調査を1万人、2万人規模で行っているのです。私は、現在の学会に対しても、本当に危機感を感じています。
(深田)
政府の審議会や有識者を集めた会議は、その時の政権がやりたいことに「はい、そうですね」と同意する人が主に集められますね。
(海老原)
全くその通りです。まず、諮問委員会のようなところで政策を作る時に、そのような人たちを集めてきて、自分たちの都合の良いものを作りますよね。結局、審議会は場繋ぎです。労働者代表と学会代表と企業代表が全て参加していますが、そこで異議を唱える人は誰もいません。自分のところに関わるところだけは「この言葉を修正してください」と言うだけで、法案自体を全部変えるようなことは一切ありません。
(深田)
そうですよね。
(海老原)
私だけでした。そのようなことをしているのは。
(深田)
私も通信委員会に、意見を述べるために参加しようとしたところ、参加の申し込みが締め切られていました。募集すると言いながら、実際には募集していなかったということです。
(海老原)
それは恐らく、向こうは深田さんが面倒だと分かっていたのでしょう。
(深田)
そうです。目をつけられているのです。
(海老原)
企業は本当に自分のことばかりです。例えば「ANA(全日本空輸)がコロナ禍において、上手な出向のさせ方をしていた」と、良い話をしているのに「ANAという名前は出さないでください」とANAの人が注文をつけるのです。企業は自社に関わってくると、意見を出してきます。
(深田)
そうですか。それだけなのですか。
(海老原)
では、零細企業に就職したのかどうか、今度は企業規模別に表(氷河期世代の就職企業規模を)見てみましょう。 企業規模別に見ると、このようなグラデーションになります。その他団体は、財団などが含まれます。その他団体、官公庁、そして1000 人以上のいわゆる超安定系で、大体50%ほどになっているでしょうか。それが20代後半でも30 代でも30代後半でも40代でも40 代後半でもほぼ同じで、むしろ上位(大人数)の規模の企業に勤める割合がどんどん増えています。これは氷河期対策が相当行われているからなのです。
(深田)
そういうことですか。結構優遇されているのですね。
(海老原)
それで、従業員29 人以下のいわゆる零細企業に多いかというと、大卒の人たちは1割程度です。どうしようもなく、中小や零細企業ばかりに行っていたわけではありません。他の世代と比較してみましょう。いわゆる1996年~2000年の氷河期世代と、2006年~2010 年のポスト氷河期世代と比較するとどうでしょうか。2~3%の差ですよね。つまりこの程度の差です。
上位の企業規模を見ていただきたいのですが、大企業や官公庁を合わせると、ポスト氷河期世代の人々は、これは大体53%から54%で、氷河期世代の人たちは51%程度でしょうか。確かに損をしている可能性はありますが、1~2%のグラデーションの差が続いているだけであって、そこに何十億も税金を投入してどうにかしなければならないというよりは、少しずつ皆が損をしていたという程度の話なのです。
(深田)
ただ、就職氷河期世代の人は、他の世代の人よりも、金融資産が100万円ぐらい少ないと言われていますね。
(海老原)
まず、金融資産が少ないという点ですが、そのデータは年代別に行われているため、高卒者が含まれています。高卒の人たちはかなり厳しい状況にあります。バブル世代と比較すると。そして、バブルよりもさらに1世代前と比較すると、もっと厳しくなっています。 高卒の人たちには、昔は農業も建設業も工場もたくさんありましたが、1990年代から2000年代、2000年代から2010年代にかけて減少していきました。
バブル世代の人は、入社時は良かったものの、その後どんどん状況が悪化していったため、入社時の良かった数年の差だけ得をしているのです。バブル前になると、かなり得をしています。このような差があるため、高卒の人たちに大きな差が生じています。それ以外の人々がどれくらいの差があるかというのは、3回目のテーマにしましょう。
(深田)
分かりました。
(海老原)
キャリア形成に関して、それほど大きな差はありませんでした。これはバブル世代とも比較しています。キャリア形成において、どのくらいの企業規模に勤めているのか。40代前半で言うと、確かにバブル世代の方が大企業や官公庁に多いですね。
(深田)
というよりも、官公庁が非常に多いですね。
(海老原)
ここでは、官公庁以外の数字はほぼ変わらないということに気づいてほしいのです。むしろ、大企業の数は少なかったりするのです。
(深田)
就職氷河期の頃に、官公庁が雇用を絞っていたということですか。
(海老原)
これは、やはり行財政改革があり、総定員法というのが定められていて、官公庁は人員を増やせなかったのです。だから、官公庁の官製非正規職員が増えているわけです。
(深田)
それは、就職氷河期とは関係のない要因ですよね。
(海老原)
関係のない要因です。そういう意味では確かにかわいそうですが、それは官公庁の施策が理由だったのです。別に景気とは関係ありません。
(深田)
官公庁の何という政策でしたか?
(海老原)
例えば、総定員法で定員が決められ、その定員以上は増やせないということが一つあります。このようなことで、減っているのは官公庁だけです。1000人以上の企業が、氷河期世代は逆に30%で増えていますよね。1000人以上の企業では、氷河期世代が40歳から40 代前半になった時と比較してみると、氷河期世代は30%で、バブル前世代は29.9%でしょう。45~49歳で見ても氷河期31.8%で、バブル前は31.9%でしょう。40代になるとむしろ、大手に勤めている数は氷河期世代の方が増えています。なぜなら、氷河期世代の頃はeコマースの黎明期だったのです。例えば、楽天やソフトバンク、DeNAなどは、皆中小企業だったわけです。これらに入社して、どんどん大きくなって大企業になっているというケースが多いのです。
(深田)
ああ、そうですね。確かに。
(海老原)
ニトリやユニクロも、あの頃はそこまで大きくなかったのです。みんな早い段階で入社して、大卒はあまりいないですから、結構良い就職ができて、良い給与になって、そして大企業にいるというパターンが多いのです。
(深田)
会社が勝手に大きくなってしまったというような。
(海老原)
それは彼らも頑張ったのだと思います。しかも先に入ったのだから偉いと思います。重厚長大なところに行かないで、そこに賭けたということは偉いと思います。でも、こういう状況なのです。
(深田)
このグラフを見ていると、要因は官公庁が雇用を絞っただけということで10%ぐらい差が出ていますね。10%もないか、7~8%ですか。
(海老原)
一番大きく変わっているのはここ(100~299人企業)ですね。しかし、それは本当に行財政改革の問題もしくは総定員法の問題だったわけですよね。
(深田)
行財政改革ですね。
(海老原)
今、官製非正規職員が非常に多いのです。正職員は採用してはいけないことになっているため、非正規で採用するということで、非正規問題は今、官公庁が非常に大きいです。
(深田)
あの時は竹中平蔵氏が「行政はすごく非効率だ」と批判して「全く働かないから民間を入れろ」と言って、そこに非正規雇用の人をたくさん入れましたよね。
(海老原)
まあ、定員法の方が大きいですよね。
(深田)
定員法の方が大きいですか。
(海老原)
もうひどい状況です、こんな話は。
つまり、キャリア形成を見ても、中小企業ばかりに入っていたわけではありません。既卒後もきちんと雇用されるということはデータで示されています。そして、このような形で20年、30年かけて広げてきたのです。そして、私たち雇用ジャーナリズムの人間は、これをしっかりキャッチアップして何回も伝えています。私は何冊も書籍を出しています。しかし、政府は一切読まず、マスコミは今でも「何社受けても非正規のままで、50歳まで非正規でした」という人ばかりを取り上げています。
(深田)
そういうニュースを結構見ます。
(海老原)
そのようなものばかりですよ。
(深田)
でも、私も就職氷河期世代として、自分はかわいそうだという思いが今でも結構あります。
(海老原)
でも、何かそれよりも結婚氷河期とか、男性氷河期世代の方が大きいのではないでしょうか?
(深田)
結婚氷河期⁉...
(海老原)
かわいそうですね。
(深田)
ここまでです。皆様、次回もお楽しみに。