#317 万博をディスり続けた建築専門家が暴露する大阪万博の知られざる見どころ 森山高至氏
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、プロデューサーの深田萌絵です。今回は、建築エコノミストの森山高至先生にお越しいただきました。先生、本日はよろしくお願いいたします。
大阪万博に行かれたそうですが、たまには褒めていただけますか?
(森山)
今回の万博は、あの丸いリングで空間がまとまっているという事実はあります。
(深田)
そうですね。藤本(壮介)先生がデザインで貢献されていますよね。
(森山)
もしもあの丸いリングがなかったら、何だか分からないですよ。建物もきれいに並んでないから、方向も分からないです。
(深田)
まるでスラム街みたいです。なぜリングの中の建物はぐちゃぐちゃに配置されているのですか?
(森山)
リングの中に「静けさの森」という池と木のこんもりとした場所を作りました。まるで古墳のような感じです。現地に行くと感じますが、それは全然要らないものです。あれは、上から見た時に「丸の中に丸ポチがある」というビジュアルには効き目があるけれど、地上面から見るとあの森は邪魔です。
今回行ったのは春先で、葉が芽吹いていないからある程度は見通せましたが、これから夏に向けて葉が茂ってくると全然見えなくなってくると思います。今でも迷路のようなのに。
ですが、緑が増えることで雰囲気は良くなると思います。「あんな埋立地なのに、公園のような空間ができた」と感激するかもしれません。ただし真夏になると、床がコンクリートやアスファルトなので、照り返しがかなりきついと思います。
だから、季節のいい時期なら良い雰囲気が味わえる場所ではあります。
(深田)
夏は灼熱になりそうですね。でも「水上ショー」は結構評判が良かったと聞きました。
(森山)
はい、評判は良かったです。ただ、あれは海水を使っているので、海の塩の混じった水蒸気が飛んできます。
近くには「null2(ヌルヌル)」という建物があります。メタリックな外壁によって建築物が消えてしまうように見える面白い建物なのですが、落合(陽一)さんは「潮が付くからやめてほしい」と思っているでしょう。
(深田)
サビの原因になりますからね。
(森山)
「落合館」は汚れたら終わりです。鏡面であるからこそ、現実と非現実が混じったようなバーチャルリアリティー感を感じられるのですから、そこに塩や錆が付いたら台無しなのですよ。
(深田)
そもそもゴミの埋立地なのに、ゴミのエキスが染み出した海水を使用しても衛生上良いのですか?
(森山)
そこが問題です。元々はあそこに溜まっている水を使う予定だったのですが、「ダイオキシンとかいっぱいあるからやばい」ということになって、地下の水が来ないように1回防水処理をしてから、海水を汲み上げて溜めているのです。だから、一応問題ないようにしているとは思うのですが、1〜3区のうち、海水の近くの1区と2区は海水に繋がっているから、完璧かどうかは分かりません。だから、人によっては気になると思います。
いずれにしても「海風に煽られた海水の霧がパビリオンに押し寄せて錆びるからやめてほしい」という現状です。
(深田)
いや、本当にすごいですね。
(森山)
そうですね。このちぐはぐさを見ると、誰も全体を指揮していなかったのではないでしょうか。
(深田)
「ウォーターショー」で使う水が海水なんてことは普通ありますか?
(森山)
おそらく、あの場所に大量の水道水を持って来ていないからではないでしょうか。だから、海水をポンプで汲み上げて水溜りを作って、下に流したらまたポンプで汲み上げてぐるぐる循環させているのかも知れません。
(深田)
海水を使うと排水管にも良くない気がします。
(森山)
結局、あの場所に水溜りを作ろうという考えはビジュアル狙いでしょう。「安芸の宮島」のように「木の柱が水辺から立ち上がって水面に映っている」というビジュアルが欲しかったのだと思います。
ビジュアルのことしか考えないで、そこから海水や塩が来ることは全然予想していなかったのではないかと思います。海なのに(笑)
(深田)
なるほど(笑)
ところで、会場内のトイレには行かれましたか?
(森山)
みんなが「2億円トイレ」と呼んでいる赤、青、黄色のやつですね。行きました。僕が行った時は使えました。ちょうどリングから降りた所にあったから、もう速攻で行きました。やはり目立ちます。すぐ分かったからあれは良かったです。
他の場所にもトイレやその関係のものもあるのでしょうが、黒いものは目立たないのですよ。
(深田)
おしゃれ過ぎて分からない?
(森山)
脇役に回そうとしているのかも知れませんが、もっと統一的に「ここがトイレですよ」とサインをはっきりさせた方が良かったのではないですかね。
(深田)
「途上国のバラック小屋」スタイルが…
(森山)
目立って良かったです。
行ってみて驚いたことは、ちょうど雨が降り始めていて、濡れてしまうことです。トイレのブロックには屋根がそこにしか架かっていなくて、各々のトイレの間は屋根が抜けているのです。
あのトイレのコンセプトが「積木」ですから、全体を大きな屋根で覆えないのです。屋根も「三角の積み木」という設定なのです。 だから「トイレブロック」の間は雨がバンバン降っているのです。
(深田)
トイレの個室の中は大丈夫ですか?
(森山)
個室の中は大丈夫です。
トイレは「大」と「小」の2種類あって、少し不思議な感じなのですが男性用小便器も個室なのですよ。もし、トイレ行こうとする人がどんどん来始めた時に、分からなくて並んでいた女性の人がドアを開けたら「小便器」みたいな現象があるのではないでしょうか。
小さなマークはどこかにあるのですが、「男子」とか「女子」とかはっきりと書いてなくて、全部個室になっているからとても分かりにくいです。
(深田)
それは困ります!
(森山)
更に言うと、待合スペースがないのですよ。
トイレは普通、入り口で「男」「女」が分かるようになっていますね。そして、中に入ると洗面台があります。そこは手を洗うだけではなくて、ちょっとお化粧直しもできますし、ポーチを置けるカウンターのようなものもありますよね?その時点で便器は見えないでしょう?
そこから更に廊下のような箇所を通って行くと便器が並んでいる、これがトイレの構成です。だからプライバシーが守られていく構成になっているわけです。
だけど、あのトイレはダイレクトで外なのですよ。だからトイレの扉を開けたら外なのです。そして手洗いのボウルはないです。
(深田)
えっ!ボウルがない?
(森山)
壁に蛇口がポンとあって、床にジャーと出す。
(深田)
ちょっと待って!跳ね返りますよね?
(森山)
一応、下にゴムみたいなのが敷いてあるけれど跳ね返りますね。何よりも最初に「えっ?」って思いますよね。
(深田)
手を洗う所に荷物を置く場所がないのですか?
(森山)
ないです。だからみんな手を洗う時に、荷物を持っていない方の手で蛇口を開けて片手ずつ洗ったり、もしくは荷物を口で加えて手を洗ったりしていました。「なんだ、これは」と、みんな怒っていましたよ。
(深田)
化粧を直すところがない?
(森山)
ないです。だからもう「パビリオン」として作ったのですよ。トイレじゃない。
(深田)
「トイレ風パビリオン」?
(森山)
そう思っておけばいい(笑)
(続きは動画で!)