#296 医師・内海聡氏が語る!脂肪酸と人体への深い関係
(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回はTokyo DD Clinic院長の内海聡先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いいたします。
(内海)
また呼んでいただいてありがとうございます。
(深田)
今回は「健康」や「ダイエット」について、お話をお伺いしたいと思います。私自身、少し太ってきたので、そろそろ体重を落とさないといけないと思っているところです。
(内海)
その様には見えませんが(笑)。
(深田)
やはり「油」が重要なのではないかと思うのですが、どのような摂り方が良いのか、教えていただけますか?
(内海)
そもそも「油とダイエット」という言い方をするのであれば、理論上、断食のような考え方をする人とそうでない人とに分かれます。
RIZAPなどの企業は食事指導も行っていますが、あれは「ローカーボ・ダイエット」なので「糖質制限食」というものです。
その食事法の考え方では「油を摂らないと痩せない」と言われています。それは先住民などの食べ方に近いです。つまり、肉や魚や卵などの動物系食品はタンパク質と脂質が多いのでそれをたくさん食べて、穀類やイモ類や砂糖などは避けて減らします。だから「糖質制限」という名前が付いているのです。すると、体の代謝が活性化して、体内の脂肪が燃焼されて、結果的に痩せていくという考え方です。
断食では、食べないことで脂肪が燃焼するから痩せていきます。
まず、基本方針としてどちらを選ぶのかを決める必要がありますが、食べるのが好きな人は、断食は無理だと思います。
(深田)
私は断食や食事制限は無理です。
(内海)
それならば「糖質制限」のような食事法の方が痩せやすいです。
「肉食女子は肌がきれい」というような本も出ていますが、それらは全て「栄養学」と「アンチエイジング」の話で、医者や歯医者が論争している領域です。
私も「糖質制限」を指導することもありますが、痩せると思います。皆さん、体重が10kgや20kgくらいは普通に減ります。
「糖質制限」の良い点は、糖質中毒の人の治療食にもなるし、食べながら痩せられることです。穀類をあまり食べられないのがキツイかも知れませんが、量にも依ります。
しっかりやるのなら、ご飯もパンも蕎麦もイモも穀類は全然食べなくなります。その代わりにおかず類やおつまみを食べていればいいのです。そうすれば体重は減っていきます。
脂質が大事な食事法なのですが、油には動物系の油と植物系の油があります。「糖質制限」をやるのであれば両方摂る必要があります。
動物系の脂肪のことを「飽和脂肪酸」と言います。例外としてココナツ油も「飽和脂肪酸」です。
一方、「不飽和脂肪酸」に「オメガ3」「オメガ6」「オメガ9」と言われる油があります。
炭素(C)の二重結合がない脂肪酸を「飽和脂肪酸」と言います。二重結合がひとつだけある脂肪酸のことを「一価の不飽和脂肪酸」と言います。そして、二重結合がふたつ以上あるものを「多価の不飽和脂肪酸」と言います。
二重結合があると、火や光などが入ると変性するので、作用がなくなったり別の作用をもたらしたりします。つまり「飽和脂肪酸」が最も熱や料理には強いです。だから、バターや卵の油は強いのです。
そして「一価の不飽和脂肪酸」は真ん中くらいで、なんとか料理に使えます。
一方で「多価の不飽和脂肪酸」で「オメガ3」や「オメガ6」の油は火を入れられないのです。
(深田)
具体的に何の油ですか?
(内海)
「オメガ3」の代表が亜麻仁油(あまにゆ)やエゴマ油です。テレビでも取り上げられていますが、亜麻仁油は生でサラダなどにかけるように言われています。
(深田)
エゴマ油とゴマ油は別物ですか?
(内海)
別物です。エゴマ油は「オメガ3」系の成分が多くて、ゴマ油は「オメガ6」系の成分が多いです。どちらも「多価の不飽和脂肪酸」だから、両方火には使えません。
(深田)
では、ゴマ油の天ぷらとかはダメなのですか?
(内海)
理屈ではそうなります。体には良くありません。
体に良いことだけを考えて生きているわけではないので別に構わないのですが、一応、火にはあまり強くはないです。
だから、トウモロコシオイルやスーパーでよく売られているサラダ油やソイ油(大豆油)やグレープシードオイル、ひまわり油、紅花油などは、基本的に「オメガ6」系の成分が多いので火に弱いです。
弱いものを調理用に使うということは、どんどん病気を増やすということなのです。
(深田)
では天ぷらを揚げるには何を使ったらいいのですか?
(内海)
そもそも天ぷら自体が不健康なので、どうしようもないです。あえて挙げるなら、比較的マシと言えば菜種油かゴマ油です。あとは米油でしょうか。それらが比較的火に強い植物油です。
我が家で料理をするときは米油をよく使っています。洋食だとオリーブオイルをよく使います。あとは、バターなどの動物系の油も意識して食べるようにしています。別にダイエットのためではなくて、飽和脂肪酸は栄養を摂る上で非常に重要なのです。
今、厚生省が出している栄養学では、飽和脂肪酸などの動物系の油は非常に悪いものだと言われています。例えば、先住民は動物系の油をたくさん食べますが病気は全くありません。癌はゼロです。
(深田)
バターは体に良いのですか?
(内海)
古い時代の先住民は、虫歯もアレルギーもアトピーも、肺炎などの病気もありませんでした。結核にもほとんど罹らず、脳梗塞も心筋梗塞もなかったのです。歴史研究から「糖質制限」の食事が見直されるようになっています。
その時代の動物系の油はキレイなのです。それに対して今は、例えば畜産では薬や餌など色々と使いますが、薬は基本的には油系の物質なので、簡単に言うと石油から作っているのです。
そうしたものを使って畜産をすると、餌や薬の影響を受けてバターやラードやフェッドの中に入って来てしまうのです。
(深田)
石油成分が入ってくるのですか?
(内海)
はい、親油性ですから。例えば野生の鹿を狩猟しても薬は一切入っていません。土も植物も汚染されていなのならすごくピュアな油になるはずなのです。
(深田)
分かります。先日、ジビエ料理のお店に大井幸子先生に連れて行っていただいたら、次の日にお肌がピカピカになりました。野生の鴨の料理でしたが、やはり良いのですね。
(内海)
基本的には「飽和脂肪酸」は摂らないと我々の体は動きません。「飽和脂肪酸」にはきちんとした役割があるのです。
よく「動物の油を食べると血栓になる」とか無茶苦茶言っていますが、先住民に血栓症はないですから。
動物系の油は融点が高いので固まり易いです。バターもそうです。植物油は常温で液体ですから、使い易いので使っているわけです。
動物系の油が固まるから「血の中で固まる」とか馬鹿なことを平気で言っているのです。バターの時には塊かも知れませんが、食べて消化されて小腸から吸収されるときにはバターの成分が塊になっているわけではないので、それが血栓症の元になることはありません。
それなのに、イメージだけで言っているのです。栄養学をきちんと勉強している人は誰も言わないと思います。
(深田)
最近、意識高い系の年下の男子たちが「糖質制限」をしていて、筋トレもしていて、朝は「グラスフェッド」のバターコーヒーを飲んでいると聞いたのですが、これは何なのですか?
(内海)
一時期流行りましたね。コーヒーは半分カフェインだから覚醒剤みたいなもので朝に元気になります。そして、砂糖は入れないけれどバターを入れると風味が付くわけです。
「糖質制限」での一番の大敵は砂糖で、その次は穀類です。それらをできるだけ摂らないようにしつつも、美味しいものは何を食べてもいいので、バターでしっかり風味を出しても、ドロドロにして食べてもOKなのです。
(深田)
バターだけ食べても気持ち悪くないですか?
(内海)
バターだけ食べる必要はないので、コーヒーに入れようが料理の風味付けに使おうが何でもいいのです。そのバターがどれくらい良い状態で育っているかは重要なところです。
その辺りを意識すれば良いのであって、油を摂るから太るのではないということは押さえておいても良いと思います。我々の体には必須ですからね。
(深田)
「飽和脂肪酸」ですね?
(内海)
「飽和脂肪酸」はもちろん必要です。また、「不飽和脂肪酸」の「オメガ3」「オメガ6」は必須脂肪酸と言われていて、我々の体の中では作れないことに今の科学ではなっているので、それも食事として摂らないといけません。
(深田)
確かに、断食をする人やベジタリアンやビーガンの人たちはお肌がカサカサですよね?
(内海)
だから油が足りないのです。タンパク質も足りない気もします。
今の断食は普通の断食とは違って、医療的な目的でする人が多いです。水は当然ですが、ミネラル、味噌、発酵食品、油などの必須なものは(点滴などで)横から取ります。ですが食べはしないのです。
(深田)
最近、断食のツアーなどを見ていると、「酵素ジュース」や「具なしお味噌汁」が出ますよね。
(内海)
「酵素ジュース」はよく使われます。理由は、全く糖分が入って来ないと人間は筋肉を代謝して血糖を維持しようとするので、筋肉が痩せ細ってしまいます。すると貧相な体付きになってしまいます。
スポーツ選手もそうですが、「酵素ジュース」を飲んで血糖を維持しながら断食をして脂肪を燃焼させて、必須なミネラルなどはきちんと横から摂っています。
そうすると、ケトン代謝がどんどん進んで脂肪が燃焼して痩せていくのです。
(深田)
最終的に体重を落とそうと思うと、断食系が良いのか「糖質制限」系が良いのかどちらになるのですか?
(内海)
どちらとは言えないと思います。好みですね。
まず、ビーガンやベジタリアンの人たちは常に引き算をしている状態なので、その人が断食をしても今までの延長線上のことになるのであまり痩せません。そして不健康になります。
ビーガンやベジタリアンは、栄養不足で糖質過剰になっている人が多いので、その人が断食をしてもあまり上手くいかないです。
(深田)
ベジタリアンやビーガンの人は栄養が偏っていて糖質が多いのですね。
(内海)
炭水化物中心になってしまっていますよね。そして我々の体に必須なタンパク質や脂質やビタミン、ミネラルは足りなくなっている傾向が強いので、肌がカスカスになっているのです。それは栄養不足の象徴です。
そういう人たちは「糖質制限」をした方がいいと思いますが、彼らの場合、今度は「動物愛護問題」に関わってくるのでそれもできません。当院に来られるビーガンやベジタリアンで病気の人が多いです。
(深田)
多いのですか!?
(内海)
非常に多いです。では「ビーガンなど、草食系の食事には意味がないのか?」というとそうではなくて、例えば焼肉をよく食べていた人が病気になったら、ベジタリアンのような食事をした方が治り易いのです。
(深田)
その人のそれまでの食生活によって全然対処法が違うということですね。
(内海)
あとは好みももちろんあるので、酒や食事が好きで、それがストレス発散になっている人は断食するのは難しいのではないかなと思います。
(深田)
断食どころか、まず断酒が無理ですから。
(内海)
(笑)。それなら「糖質制限」の方が向いているはずです。お酒を飲みながらでもできるので。重要なのは穀類や砂糖、お菓子を食べないことです。つまみを食べながら酒を飲めばいいのです。
(深田)
おつまみは?
(内海)
おつまみは肉でも魚でも卵でも乳製品でも野菜でもキノコでも海藻でもいいですが、血糖がボンと上がるようなイモ、穀類をあまり食べないようにすれば、それで「糖質制限」は全部成立します。
(深田)
私、一昨日肉ジャガイモを食べたら次の日に1kgくらい体重が増えていて、「やっぱりジャガイモはすごい」と思いました。
(内海)
糖分を摂ると水も一緒に持って来ますから、ますます体重が増えます。
(深田)
たった一晩で体重が1kg増えて、次の日に調整して1kg落としたところなのですが、やはり女性の体には糖質がガツンと効いてくるのですね。
(内海)
増えますよね。糖質がダメではないです。「糖質の摂り過ぎが良くない」と言っているだけです。
(深田)
今回はTokyo DD Clinic院長の内海聡先生に「深田萌絵はどうやったら痩せるのか」というテーマでお話をいただきました。どうもありがとうございました。