なぜ欧州の社員は17時に帰れる?  知られざる階級社会の裏を暴露! 海老原嗣生×深田萌絵

普通の日本人だと、ヨーロッパというのは仕事以外のいろいろな趣味があったり、近所の付き合いがあったり、ライフバランスが取れていると言うけれど、そうではなくて帰る理由は単にお腹が空くから。外じゃとても高くて食べられない。ヨーロッパ的な働き方は緩くていいけど、でもその裏には階級社会というものがある。日本は厳しいけれど、階級社会の厳しさというものを日本人知らない。

(深田)

皆さんこんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は雇用ジャーナリストの海老原嗣生先生にお越しいただきました。

今回は『静かな退職という働き方』という海老原先生の新刊を、なんと3冊いただきましたので、今日のこの動画を見て1番いいコメントをくださった方3名にプレゼントしたいと思っています。

(海老原)

はい深田さんが選んでくださいね。俺はあまりコメントを読むのが好きじゃないので、怖いから。

(深田)

いやいや読んだ方がいいですよ。

(海老原)

この『静かな退職という働き方』というのは、日本の働き方が本来あまりにも忙しすぎて、真面目すぎて、やりすぎているという話なのですよ。

日本人は給料が安いと思うと、もっと頑張らなければと言うじゃないですか。でも欧州に何度も行っているけど、欧州のサービスはひどいでしょう。

(深田)

ひどいですね。

(海老原)

あんなもので日本の倍とか3倍とかの給料をもらっているわけじゃないですか。

(深田)

この時間で終わりとなると、もう銀行窓口だろうが何だろうが、目の前でバシャンと切る。オイオイ自分はここに並んでいるだろうっていうね。あんなひどいのはアメリカとヨーロッパぐらいですよね。中国でもまだもう少しやってくれます。

(海老原)は

いや中国とか逆に怖いから、そんなことしたら客に怒られちゃうじゃないですか。やはりヨーロッパ・アメリカはひどいですよ。大体スーパーのレジも携帯いじりながら、こうやって打っていたりするじゃないですか。ビニール袋をくれと言ったら、俺投げつけられたことあるものね。そんなレベルですよね。

(深田)

本当ねヨーロッパはそんなものですよ。

(海老原)

そうすると、結局僕らは働き方の何がいけないのかということを、しっかりと考えないといけないだろうという話なわけなのですよ。

(深田)

つまりそれはどういうことなのですか。

(海老原)

ではヨーロッパの話をもう少し見て行こうか。ヨーロッパはどんな働き方をしているのか。これは私の本の中にも書いてあるので読んでみますね。これロナルド・ドーアという有名な比較文化の巨匠が、1987年に書いた本の一説ですが、40年が経っているけれど今も変わらないわけですよ。向こうの工場でどんな方をしているかというと、

「遅刻と欠勤の増加に対して、我々は大いに憂慮しており、事態はもはや放置できない段階に達している。普段の日で遅刻者は1600人を下らないし、さらに、従業員の10%が何らかの理由で欠勤している。病気及び通常のはっきりした理由による欠勤は5%を超えないということは既知に属する。」

つまり5%以上が無断欠勤していると言っている。

「今後は遅刻の続く者、もしくははっきりした理由もなく欠勤する者に対しては、極めて厳しい処置をとる。」「月に遅刻6回か、ちゃんとした理由のない欠勤が3回あると、出勤常ならざる者とみなされ。これが半年続いた場合に首にしますよと予告して、それでも態度が変わらなかった人は首になる言い渡し5ヶ月間で5.3%の従業員が解雇されている」

(深田)

宣告されてもダメなのですか。

(海老原)

イーロン・マスクが従業員に「先週は何をやったのか書いて来い」そして「書いてこない奴は首だ」と言っていましたよね。

(深田)

半分書いてこなかったらしいですよ。

(海老原)

あれは労働組合のせいもあったと思うのですよ。でも一般職ワーカーはそのレベルですよ。

(深田)

うん、いやそれ本当ですね。もう何を聞いても「That‘s not my business」(自分には関係ない)で何の対応もしてくれない。

(海老原)

それで会社に入ったら、アメリカくらいまでは新しい人に教えてくれるけど、イギリスとかヨーロッパだと、インターン生に何にも教えてくれないとか、こういう話はいくらでも出るしさ。だから日本人はね真面目にやり過ぎるのですよ。

1個目の定時になればサクッと帰宅する理由「お腹が空くから」についてですけどね。

(深田)

何ですか。お腹が空くからとは。

(海老原)

俺がフランスで取材をしていた時の話だけど、もちろん2時間も3時間もするのが嫌なのはわかるけど。彼らは本当に1分も残業しないわけですよ。自分なんかは、日の高い内に帰るのもおかしいから、1時間ぐらい残業して残業代で飲みに行く。それぐらいでいいんじゃないの、と思うけども。日本人だとさ、6時ぐらいまで残業するのは普通。ヨーロッパは仕事以外のいろんな趣味があったりね、近所の付き合いがあったり、文化的な・・・・

(深田)

ライフワークバランスを取れている!?

(海老原)

という風に言われるけど、そうじゃなくて帰る理由は単にお腹が空くから。外ではとても高くて食べられないから、家に帰って、帰で食べなきゃいけないのだよという理由で帰っていたのですよ。

(深田)

いやそうですよ。自分もイギリスの金融機関で働いていましたが、夕方4時になったら銀行員は皆バーに行って、おつまみを食べずにビール飲んでますよ。

それでね5時になったらみんなパーっと帰って、家に戻ってご飯食べる。

(海老原)

いや、そしてそれともう1つあって、ハッピーアワー(17時から店が混む19時)が終わるとパーッと帰るのですよ。

(深田)

そうそうハッピーアワーが終わると帰る!

(海老原)

そしてですよ、そこでキャピタリストとかファウンダーとかは、ものすごい金をもらって、もう二重社会になっているじゃないですか。

(深田)

なっていますね。

(海老原)

この辺りですよね。僕らはいわゆるキャピタリストとかファウンダーの話ばかりを見聞きしているから、アメリカ人はみんなすごく金を使って、何万円もするものを食べているだと思うけれども、一般的な社員の人たちはそうではなく、みんあこんな感じですよね。

(深田)

いや本当にニューヨークとかでね、この間たいして美味しくもないステーキを食べに行きましたが、1人ね5万円ぐらいかかりましたよ。

(海老原)

給与を2倍もらっても、それは行けないでしょう。

(深田)

無理です。

(海老原)

2倍もらっていたからといって、そこに行けませんもん。だから結局お腹が空くから家に帰るという働き方をしているのですよね。仕事はまあ適当にやって早く帰って、それで家でご飯を食べると。

(深田)

健全ですね。

(海老原)

この辺のデータの下の方が、赤い線が一般的なフランスでの大卒の人たちの給与体系ですね。20代後半の25歳が3万ユーロで480万円。50代50歳で3万8千ユーロで600万円。ということで100万円しか年収はアップしないのですよ。

(深田)

本当に全然上がらないのですね。

(海老原)

アメリカでMBAを出ているようないわゆるエリート層の人たちは、入社時から給与が1000万円で1200万円、1300万円というようにすぐに上がって行くわけですよ。

(深田)

確かに、自分がイギリスの会社に就職した時は、金融機関で年収800万円ぐらいでスタートでした。そのまま2000万円,3000万円、イギリス系だったから給料はショボかったけど、アメリカ系だと1000万からスタートです。

(海老原)

それもリーダーシッププログラムなどに入っている人たちだったら、トントンと、30歳前でマネージャーになり、30少し過ぎで役職が付いて昇給するから、すごい上がり方ですけど、いわゆる窓口をやっている人なんて給与は一生上がらないわけじゃないですか。

(深田)

それはそうですね。窓口の人は一生5、600万円ぐらいでしょうね。

(海老原)

でも日本などは窓口やっていても年功昇給していくわけじゃないですか。こういう違いなのですよね。

それで「こんなホテル初めてなので」という話も少ししたいです。その頃は取材ですごく海外に行ってる時だったから、VIPルームにも入れたのですね。これは私がオランダの取材で、シェラトンに泊まっていた時のことですが、VIPルームだと飲み食い全部ただなのです。僕は、いわゆる大卒の普通のワーカーの人たちをターゲットに、何十人も取材をしているわけですけど、彼らはこのような場所に来たことがないらしくガクガクブルブルして、まともに話をしてくれないわけですよ。

それを見て、「どうしたのですか?」と聞いたら、ちょっとこんな所へ来るのは初めてですのでと言うのですよ。

(深田)

そのホテルで食事するのが初めて?

(海老原)

VIPルームなどに入るのは初めてで、どうしたらいいのか本当にただでいいのですか?みたいな感じになっているわけですよ。

(深田)

エグゼクティブラウンジを使ったことがないのですね。

(海老原)

そうなんです。わからないからもうガクガクブルブルしているわけですよ。

(深田)

1杯5000円とか取られたらどうしようみたいになってしまっているんですね。

(海老原)

僕が「全部ただですよ。」と言うと、彼らが「え、ただなのですか?」と言って、今度は何かたくさん持ってきたりするわけですよ。でも日本だと、それでも年に1回2回、例えば、何か娘の結婚の相手とはそういう良い場所でご飯を食べようとかありますよね。

(深田)

「ハレの日」というものがありますしね。日本は。

(海老原)

でも、向こうでは、40代50代の人にインタビューしているのに皆ブルブルしているわけ。

(深田)

それ20代の話ではなくて40代50代ですか。

(海老原)

今までヨーロッパはいわゆるノンエリートの人の取材で、大卒のエリートの取材ばかり40人ぐらい見ているのですが、そんな感じです。

次に、この「籠の中の鳥 箱の中の鼠」という言葉ですけどね。

(深田)

何ですかこれ。何か皇室の姫君が言っているような?。

(海老原)

真逆です、真逆。向こうはこういう仕組みでできているのですよ。まずどの仕事をやるのでも資格が必要なのですよ、ヨーロッパは。例えば営業だったら営業の資格が必要で、それも例えば求人営業と人材バンクの営業では免許が違うのですよ。さらに営業の中でも学歴によってランクがつくのですよ。そうすると資格のせいで横展開ができない。学歴のせいで上にはいけないというので、限られた枠内で、生きて行くしかないのですよ。そのことを「籠の中の鳥」とか「箱の中のネズミ」と彼らは言うのですよ。

(深田)

もう学歴社会でガチガチなのですね。

(海老原)

学歴で上下が決まって、さらに資格で左右が決まるから、左右上下の全部がガチガチなのですよ。

(深田)

転職ができないじゃないですか。

(海老原)

転職するためには、職業訓練校に行って、再度、資格を取り直さないといけないのです。

この様なシステムになっているので皆もう絶望的。だから決められたことをやって、出世もできず、もう私はやる気もないからすぐ帰る、という現象が起こるのです。

(深田)

箱の中のネズミとは、そういうことですね。

(海老原)

箱の中のネズミというのはオランダ。それから籠の中の鳥はフランスで、ドイツだとおでこにラベルを貼られた人と言う。

(深田)

皆その国それぞれユニークな言い回しがあるのですね。

(海老原)

そう、それで彼らは皆は、「¥アメリカに生まれたかった」と言うのですよ。アメリカはそのような職業資格などは無いですから。

(深田)

でもそれを言うなら日本だって結構・・・

(海老原)

日本はユルユルじゃない?しかも職業資格が無いだけではなく、大卒で入れば初任給から上がっていって、半分以上が課長になり、昇給せずヒラのままでも、後で出しますが給与が結構上がるという奇跡のような社会ですよ。

(深田)

そうですよね。何か私は日本に生まれてよかったなと思います。大卒で手取り12万円ぐらいからスタートを切っているので。

(海老原)

「アメリカに生まれればよかった」というのが今の話ですね。そして、この左側のところを見て欲しいのですが、これが何かと言うと、義務教育の間に落第する人の比率ですね。

(深田)

義務教育で落第しちゃうのですか。

(海老原)

これを見ていただくと、大体ヨーロッパの国々の落第比率は20~30%ですね。

(深田)

義務教育をどうやって落第するのですか。

(海老原)

まずね、これも右側に書いてあって、1番最初の小学校のとこにありますが。これドイツだと9歳、フランスだと11歳ですけど、勉強がどれぐらいできるかと、学習態度の良し悪しで、親と自分と先生の三者面談の際、学習態度が悪く、授業についてこれない人には、君は全然勉強をしていないから、中学を出たらもう高校に行けないよ。高校行きの免許は出さないよ。中学で終えて出ていきなさい。あと職業訓練校へ行きなさい。」になるのですよ。

(深田)

ああっ、私もやばかった。私は年間100日ぐらい遅刻をしていたので。さっきのリバプール工場みたいな人ですね。

私はなぜか間に合わないのですよ、どうしても。

(海老原)

でも勉強できたわけじゃないですか。最終的に早稲田大学まで行っているのだから、勉強ができたら何とかなるのですよ。だけど、態度が悪いのに勉強もできないと、「はい。さよなら」になるわけです。

(深田)

なるほど。自分の場合は悪さはしないのですが、間に合わないだけですからね。

(海老原)

それならいいじゃないですか。一限には間に合わないけど二限からはちゃんと授業に出ている。ということなわけだから。でも、これを見て欲しいのですが、つまりヨーロッパでは30人学級だとすると、義務教育の中学が終わるまでの間に6人から10人がいなくなっているわけ。これが普通で、だから階級化していくのですよ。ここもさらに見て欲しいのですが、そこを通り抜けて中学で終わったところで、中学でもまた勉強できないと職業リセと言って専門高校に行かされるわけですよ。専門高校に行くと、バカロレア(高校卒業資格および大学入学資格の試験)やアビト(大学入学資格試験に合格することで、希望する大学・学部・学科にも大学修士なしで入学できる制度)の形が普通校と違うので普通大学に行きにくくけなくなるのですよ。

(深田)

ええっ、大学まで行けなくなってしまう?

(海老原)

大学は例えば専門系の大学へは行けるのだけど、普通大学には行きづらくなるのですよ。

(深田)

日本はまだここに敗者復活戦がありますもんね。

(海老原)

日本はいま専門高校、工業高校から早稲田推薦で入れたりしているのですよ。こんな国は日本だけですよ。

(深田)

とてもいい国ですね。

(海老原)

さらにここを見てください。高校1年でまた分かれて、高校1年で出来が悪いと、技術科に行かされて、同じ普通高校でも技術科に行った人は、またバカロリアが違うのですよ。普通科に行けるのが6割ぐらいになってしまって、その普通科から今度はどうなるかと言うと、普通科に行って最後に優秀な1割はグランゼコールになる。この様に分岐して行くから階級社会になってしまうのですよ。

(深田)

なかなか敗者復活が難しい社会ですね。

(海老原)

大変に難しいですね。

(深田)

起業するしかないではないですか。

(海老原)

そしてこれを見ていただきたいのですが、これはもう日本の人も、日本の識者も言ってほしいのですが、60%のところに線が引いてありますよね。これは何かと言うと、大学を卒業できる人の割合ですよ。大学の卒業がなぜこんなに厳しいか分かりますか?

(深田)

なぜでこんなに厳しいのですか。

(海老原)

イギリス、アメリカは違いますけれど、欧州のたいていの大学は無償だからなのですよ。

(深田)

ただで行かせてやっているのだから、きちんと勉強しないと卒業させてやらないよということですか。

(海老原)

そういうイメージです。それともう1つ言えば、日本の大学だと進級させず、もし退学させたら、彼らの学費で大学側の給与を賄っている関係で首(退学)にできないのですよ。向こうは無償だからいくらでも嫌な奴はパッパと首を切れる(退学させられる)わけです。こだから無償化するというのは、こういう厳しい状態になりますよということを日本の社会にもビルドインしないと。それを日本の場合、誰でも無償で大学を出す、と言っているのですよ。

(深田)

そうだから日本で同じように大学とか高校を無償化にしてしまうと勉強しなくても卒業できるよ。ずっと学生でいてもいいよ、ということになりかねないですよね。

(海老原)

そういうことなのですよ。そうするとどうなるかと言うと、いわゆる入り易いEランク、Fランク大学が膨張して、そうした大学出身の人がすごく増えるだけの話なのですよ。

(深田)

そうですよね。本当に。そうしたランクの大学と言ったら失礼だけれども、卒業するのであれば、高卒とか短大卒の方が真面目な人は多いなという気はしますね。

(海老原)

結局その辺のところ、一概に学歴だけが問題とは言えないけれど、日本は「平等化によって、無料で誰でも試験もなく大学に行かせてあげる」という仕組みを作っているだけではダメだという話なのですよね。

ちなみにこれを見て欲しいのですよ。つまり大学まで進学率がそこそこ高くても卒業できないから、卒業した学士の割合を見ると、例えばドイツだと2割で、フランスだって3~4割辺りなのです。日本と韓国だけが突出してこの数字が高いわけなのですよ。

(深田)

すごいですね。

(海老原)

さらに言うと、このグラフには短大も入っていて、短大を入れてこの数字なのですね。大学だけに絞ったとしても、大学の中がさっき言った職業課程専門大学といわゆる普通大学に分かれているので、欧州では職業課程専門大学ではなく、普通大学を出た人は2割そこそこぐらいしかいないのですよ。

(深田)

なんとそうなのですね。

(海老原)

こういう話を知ると、欧州がどうして階級社会になって、何も仕事せずにサボって帰って、やる気のない人ばかりなのかも、やっと分かってもらえるでしょう。

(深田)

そうですよね。何か日本はいいなと思うのは、やる気さえ出せばしがみつくところがある、という部分ですね。

(海老原)

しがみつくところがあるし、それから中卒高卒でも、例えばフードベンチャーを始めて、偉くなっている人だっていますし。それから別に大学のランクが低くても企業に入って、その後は同じ出世競争のラインに乗れていたりして、そういうところは楽でよいですよ。

(深田)

そうですね。雇う方からすると、働いてくれたら別に学歴はどうでもいいと思いますね。

(海老原)

ただその分、日本の軍隊とかでも昔から言われますけれども、いわゆる下の方は結構みんなバリバリ働いて、そこそこ物をよく知っているけど、上層部の方はいわゆる専門家として部下の人たちをコントロールする為の勉強をしていないから、そこはゆるいですよね。

(深田)

ああ分かります。マネージメント、経営のことを学ばないから、ひどい人材が上に登りますよね。

(海老原)

そしてもう1つ言うと、日本の大学も大学院も経営やマネジメントをしっかりと教えないで、勉強しか教えないから、あれではダですよ。

(深田)

そうですよね。私ははじめは美術の短大を出ているのですが、その美大を出ても食べていけませんね。だからやはり美術を専攻する人にも、美術でどうやって食べていくのかということをきちんと教えないといけないと思うのですよ。

(海老原)

本当にそう思います。だから向こうの大学院課程というのは、要するに研究科課程というのは、そのビジネスコースがしっかりあって、芸術でも、もしくは新聞とか文化文学系でもきちんとビジネスコースがあるのですよ。

(深田)

いやそれ大事ですよ。こういう言論空間でも、言論やっている人たちは稼ぎ方が分からない人というのは、いろんなスポンサーの紐付きになって、だんだん言論がダメになっていくのですよね。だからやはり文学をやるにしろ、芸術をやるにしろビジネス感覚というのが必要ではないのかな。

(海老原)

そうです、経営コントロールがしっかりできる仕組みをね。それも学者上がりの人が大学院でビジネスコースを教えるのは、僕はダメだと思いますよ。そうではなくて深田さんがやっているような深田塾(言論人養成講座)みたいな形のものがきちんと大学院にビルトイン(組み込み)されないといけないのですよ。

(深田)

本当にそう思います。何かやはりスキルだけじゃなくて、そのスキルを生かしていかにマネタイズして生活するか、ここまでが大事ですよ。

(海老原)

そう思います。

次に「彼女は職業大学しか出てないから」の話をします。

さっきの職業コースの話しがあったじゃないですか。そこしか出ていないからダメなんだ」という驚異的な話で、これがいつ出たかと言うと、ドイツで行った際に会った建築デザイナーさん達との会話の時ですよ。

その女性の方にインタビューしたら、「いや別に私は金と早く帰れることしか目指さない」と言うのですよ。建築というクリエイティブな仕事だと、お金なんかどうでもよくて、インスパイアされたし、すごく有名な人と一緒に仕事をしたいというようなことを普通は言うじゃないですか。それで、「そういうのは無いのですか?僕も編集を仕事にしている人間だからわかるところがあるけど、ちょっと違うのではない?」と少し言い合いになってしまったのですよ。

そこにこの格好いい別の男が入ってきて、その男が一言二言言ったら、一緒にいた通訳の人が困った顔になってしまって、「俺にたち日本人に言っても分からないだろうな。」という顔をするわけ。それで「何があったのですか?」と聞いたら、彼が言うには、「この女性は職業大学しか出ていないから、そういうことは分からないのだよと言っています。」と言うの。要するに職業大学出身だったら、いくら頑張ってもそんな有名デザイナーと仕事をしたとしても、単なる図面引きしか任せてもらえない。だからダメなのです、と。

(深田)

モチベーションをめちゃくちゃ削がれてしまっていますね。

(海老原)

これ見ていただくと分かるけれど、つまり学位によって、どこまで上に行けるかというのは決まっているのです。

(深田)

それはやはりやる気が無くなりますよね。

(海老原)

そうなると、職業はやはり5時になり終わったら早く帰り、安いお店にしか行けないし、高いお店には行かない、という話になってしまいますよね。それはそれで僕はダメだと思っているのです。今日の話をまとめると、ヨーロッパ的な働き方というのは緩くていいけれど、その裏には階級社会というものがある。日本は厳しいけど階級社会はない。この階級社会の厳しさというものを日本人は知らないから、「ヨーロッパみたいなワークライフバランスを!」と言うけれども、そうはなりたくないというところが今日の話なのですよ。

(深田)

そうですよね。ライフワークバランスとか言っていますが、仕事は人生の一部だよといつも思う。

(海老原)

ワークインしている方ですからね。

(深田)

そうですね。ダメですかねそれだと。

(海老原)

それもいい、という話ですね。

(深田)

だから選択ですよね。どちらもあるって、自分で望んで選んだ結果ですか?ということだと思う。

(海老原)

そうですね。その話がこの本(『静かな退職という働き方』)の主題です。だってワークイン(仕事を人生の一部として捉える)しか日本は無いのですよ。差別もないけどワークインして、もう一生懸命に死ぬほど頑張るしかない社会というのも、これも辛いわけなのですよね。

(深田)

確かに疲れますよね。はい疲れています。

(海老原)

選択して、欧州のような階級社会で、あなたはもう出世は無いのだから自由に遊んでいなさいと言われるのも嫌ですけど、それを選択で選べる社会が1番いいじゃないですか。

(深田)

本当にそう思いますよ。本当に若い時は一生懸命働いて、どんどんね稼いでいきたいと思っていましたけれど、もうこの歳になってくると、誰か代わりにやってくれないかなと思いますし。

(海老原)

私なんて一回り上ですからね。もっともっと大変なのですよ。

(深田)

いやあ今からしっかり働いて、これから生まれてくる子供のために、あと20年稼ぎ続けてください。(笑)

本日は海老原先生からの静かな退職という働き方もありますよというご提案でした。ありがとうございました。

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