2025年最新トレンドSDVで自動車業界が激変する!? 岡崎五郎氏

ご視聴はここをクリック

(深田)
皆さん、こんにちは。政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回はモータージャーナリストの岡崎五朗先生にお越しいただきました。
先生、よろしくお願いします。

先生はこちらの名著『EV推進の罠』で、「EVばかり推進したら日本の自動車業界全体が危ないぞ」という警鐘を鳴らしていらっしゃいます。今日は、自動車業界の新しいトレンド、SDV(Software Defined Vehicle)について、先生のご意見をお伺いしたいと思います。

(岡崎)
これを書いたのが、2021年から2022年ぐらいです。当時は「世の中すべてがEVになる」と言われていましたが、「それは違う」と主張したのがこの本だったわけです。実際に世の中もそう動いてきました。当時「EVだ、EVだ」と騒いでいた人たちが、最近では「これからはソフトウェア・ディファインド・ビークル(SDV)だ」と騒ぎ始めました。また新たなトレンドを作ろうとしているように感じます。

(深田)
その記事を書いたのは車を作ったことのない人たちですね。

(岡崎)
そうです。「これからの車はスマホにタイヤが付いたようなものになる」と説明する人たちがSDVを推進しているのです。でも、車というものはソフトウェアがなくても走る価値があります。一方で、スマホにソフトウェアがなかったら単なる文鎮じゃないですか。
だから、スマホと車を同列に語るのは、非常にミスリードな話だと思っています。「素晴らしい車があって、そこにソフトウェアの力を加えることで、より良い車、素敵な車になる」という話なら理解できます。ですが「これからはハードウェアはどうでもよくて、ソフトウェアが車の価値を決める」という考え方には違和感しかありません。

(深田)
ソフトウェアはOSの上で動いているので、結論から言うと遅いですよね。時速100km、200kmで走る物体が、OSの遅さに引きずられると事故の原因になってしまいます。だから、ソフトウェアが車を定義するという考え方には疑問を感じていました。

(岡崎)
そうですね。先日、1月にCES(Consumer Electronics Show)に行ってきました。なぜ行ったかというと、「ソフトウェア・ディファインド・ビークルの魅力」というものを世界中から専門家が集まって展示する場なので、「なるほど、これがSDVか!」「すごいな!」と思わせてくれる何かを期待していたのですが、結局収穫なしでした。

(深田)
収穫ゼロですか!ラスベガスのCESは会場が広くて、回るのに何日もかかりますよね。

(岡崎)
分かったことは、例えば「AIを搭載した車をどんどん生産して、それにNVIDIAのチップを使う」など、ハードウェアやAIの内容については色々ありました。でも、「その技術を使って、どのようなユーザーが喜ぶことをやるのか」となると、「それはこれから皆さんで考えましょう」という感じなのです。

(深田)
多分、それは半導体メーカーがトレンドを作るためにビジネス・プロパガンダを流している感じがしますね。NVIDIAとかはよくやります。AIにはたくさんのGPUが必要だというのは事実ですが、ちゃんとしたAIを作ったらGPUはそれほど必要ありません。
でも、「GPUがたくさん必要だ」というニュースが流れると、NVIDIAの株価が上がりますよね。「それを狙っているのではないか」と私はずっと思っています。
実際、Deep Seekが出てきたら、NVIDIAのGPUがそんなに必要ないという話で株価が暴落しました。
半導体の株式市場では、今はAIブームで株価をずっと釣り上げてきたのです。でも、Deep Seekが出てきて「別にGPUは要らないね」という話になると、株価が落ちてしまう。すると「次のトレンドは何だ?」となって、ビジネス・プロパガンダをめちゃくちゃ流すのです。その1つなのではないかと思います。

(岡崎)
その匂いがプンプンしますね。

(深田)
技術的に無理なものをトレンドとしてビジネス・プロパガンダを流すということは何度もありました。
昔は「3D」という言葉で投資家からお金を集めようとしていた人たちがいました。でも「3D」が頓挫したので、次は「VR」という名前になったのです。そして「VRブームだ」と言い始めたのですが、中身は「3D」です。
その次には「メタバースの時代が来ました」と言い出したけれど、「メタバース」の中身は「VR」で、元をたどると「3D」なのです。
だから、名前を変えて無理やり投資トレンドを作ろうとする動きを見ると「ウォールストリートが何か仕掛けているのかな?」と疑ってしまいます。

(岡崎)
EVもそうでしたし、SDVも同じような匂いがします。SDVをユーザー視点から考えてみた場合、「いくらだったら払いますか」と問われたら、「1円も払いたくないです。なぜならスマホがあるから」となると思います。
例えば、ユーザーに月々500円払わせるというのはものすごく大変なことですよね?

(深田)
大変です。全然払ってもらえないです。

(岡崎)
だから、今後SDVにして「車内でリッチなコンテンツを見られる」とか、「OTA(Over The Air)で車がアップデートされる」とかなった場合、そのためにはソフトウェアを開発しなくてはならなくなり、何千億円もの費用が掛かってしまう。そうしたら、どうやって回収するのでしょう。並大抵のことでは回収できないと思うのです。回収できないのなら「やる意味があるの?」という話になってきます。

(深田)
同感です。そもそもEVも技術的に破綻している部分がありました。
今回のソフトウェア・ディファインド・ビークルも、ソフトウェアがOSの上で動いている限り、絶対に車は制御できないことは分かっているわけです。技術的に破綻しているものがトレンドをリードするなんて、勘違い以外あり得ないと思うのです。

(岡崎)
今、欧州では自動車メーカーの間で面白いマネタイズの動きがあります。
元々、シートヒーターの機能を車に組み込んでおきながら、初期状態では機能しないようにして、サブスクリプションで「月々何ユーロ払えばアンロックしてシートヒーターが使えるようにします」といったものが流行っています。でも、ユーザーが本当に納得しているのか疑問に思います。ハードウェアを使わない人でも、あらかじめ機能は付けておくわけじゃないですか。
そういう意味では、「サブスクとか流行りだからやってみた」はいいけれど、ビジネスとしてちゃんと回っているのかというと、おそらく回っていないと思います。「僕はこれ欲しいよ」「僕はいらないよ」というように、今まで通りにやればいいのではないかなと思います。

(深田)
そう思います。あと、ソフトウェアがベースになると、自動アップデートが突然始まることもあります。運転中にアップデートされたら鬱陶しいですよね。

(岡崎)
そうです。もちろん、アップデートはした方がいいです。それをOTA(オーバー・ジ・エア)でWi−Fi環境に車を置ける人は必要になります。
ソフトウェアのアップデートがどのくらいの頻度で来るか分からないですが、例えば半年に1回とか1年に1回だったら、日本には「12ヶ月点検」というものがあるので、そのときにOBD(車載自己診断機能)の有線の端子を使ってアップデートしてもいいのではないかなと思うのです。その方がセキュリティ的にも安心です。
だから、すべてを否定するわけではないのですが、「次世代の車はSDVでなければ戦えない」とか「SDVこそが次世代自動車産業の雌雄を決する」みたいに言われると、「いやいや」と思うのです。

(深田)
自動運転の実験をいろんなメーカーさんと一緒にやっていますが、そもそも、ソフトウェアを作っている人たちは、車に搭載されているセンサーがどのタイミングでどんなデータを出しているのかを分かっていません。
例えば、カメラは33ミリ秒毎に1枚の画像を出します。それから、ライダーやレーダーも各メーカーによって首振りの速度が違うので、それぞれデータが出るタイミングが変わってきます。
更に超音波まで付いていたら、いろんなセンサーからのデータを融合する「センサーフュージョン」という技術が求められます。でも、そもそも各メーカーのデータがどんなタイミングで出ているのか分からないので、それを一つにまとめるのはものすごく大変です。
そうした状況で、ソフトウェアが車に何をしてくれるのでしょうか。

(岡崎)
車作りの現場の人たちに「SDVになったらお客さんはどういうことが嬉しいのですか?」と聞くと、どのメーカーも答えが返ってきません。そこに投資をするのであれば、ユーザーベネフィットから入っていかなければ、投資が焦げ付く可能性もあるように思います。

(深田)
同感です。SDVを推進している自動車メーカーに、「これはどういうメリットがあるのですか?」と聞いてみると、「新しい価値を生み出して、その新しい価値が車の価値を向上させるのです」と答えるのです。「その新しい価値とは何ですか?」と聞くと「今までにない価値です」と言うわけです。
「お前、小泉純一郎かよ!」って、思わずツッコミたくなります。

(岡崎)
(笑)。「新しいことに価値がある」のではなくて、「価値があることに価値がある」わけですからね。そこが、僕がどうしても腹落ちしていないところなのです。だから、専門家の深田さんに話を聞きたかったのです。僕のSDVの価値探しの旅はまだ続きそうですね。

(深田)
価値がないということで、もう止めていいと思います。その話はもう10年以上やっていますから。
10年前から私たち「IT屋」の人間が自動車メーカーさんに呼ばれて、いろいろ話を伺ってきましたが、日本の自動車メーカーさんは新しい価値を求めていても、「その新しい価値が何なのか」が自分たちでも分からないから、「何か提案してください」と言われるのです。
旗を振るのなら「その価値は何なのか」を自分たちの中で明確にしておかないといけないのです。私がエレクトロニクス企業に行っている時も似たようなことがあったので「これは日本の文化なのかな?」と思っていました。ですが、CESにおいても、誰もどんな価値があるか分からないままSDVに投資させられている。それは「ブラックロックに言われたから」という話でしょうか?

(岡崎)
そうです。いろんなコンサルからも「そういう流れだ」と言われて、「やっておかないとうちの企業は危ない」と焦って投資してしまった。これはEVのときと同じパターンです。

(深田)
小さい国で電気代が安い国なら良いと思います。但し、国土が広いインド、中国、アメリカでは、州すら超えられません。

(岡崎)
EVもSDVも、現場で開発をしているエンジニアに話を聞くと、正直に「ノーアイデアです」と言います。でも、その上流にはコンサルや金融関係の人たちがいて、大きな流れを作ってお金を儲けようとしていて、それに足元を掬われ過ぎている今の世の中の形は、よく考え直した方がいいと思います。
自動車を開発する人たちはユーザーが何を望んでいるのかを日々考えて、既存のユーザーにインタビューもしているので、結構地に足がついた人たちだと思っています。
そういう人たちが「自動運転はまだ出来ません」とか、「SDVではスマホに勝てません」と言っている現実を、我々はもう少しきちんと聞かないと、また道を誤ることになると思います。

(深田)
そうですよね。投資家に求められているから「会社としても多様性を推進します!」という企業もありますが、「なぜ多様性が必要なのですか?」と聞かれたら言葉に詰まってしまいます。
なぜ自分がそれをやるのか理解しないまま、洗脳されて始めてしまったのがEVとSDVだと思います。

(岡田)
まさにおっしゃる通りだと思います。

(深田)
ということで「ソフトウェア・ディファインド・ビークルの未来はどうなるのか?」「EVと共に終わりになる」と思います。

今回はモータージャーナリストの岡崎五朗先生にご解説いただきました。
先生、ありがとうございました。

Visited 12 times, 1 visit(s) today

おすすめ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です