森永卓郎の意思は俺が継ぐ!森永家長男、闘う経済アナリスト康平「政府よ、実質増税ふざけるな!」

【目次】
00:00 1, オープニング
00:45 2. 106万円の壁撤廃で手取りが減る
03:44 3. 106万円の壁撤廃は大企業優遇
06:52 4. 減税に隠れて社会保険料値上げ
10:38 5. 国民を騙す社会保険料の詐欺
14:04 6. 国民負担率が5割を超えると一揆
16:51 7. 収めた税金が裏金に化ける
(深田)
今回は経済アナリストの森永康平先生にお越し頂きました。よろしくお願いします。
昨年暮れあたりから、『103万円の壁撤廃』について国民民主党の玉木雄一郎氏が張り切って訴えていましたが、私自身は『玉木さん、そんなに強調して言ったら増税もセットできてしまいますよ。』と思っていました。今、蓋をあけてみると『103万円』の数字の部分は上げてもらえそうですが、『106万円の壁撤廃』となると、私たちは一体どうなってしまうのでしょうか?
(森永)
まず、そもそも103万円以外にも100万、106万、130万という壁は沢山あって、今挙げて下さった106万円にしても意外と知られていなくて、103万円と106万円が混同されているくらいなのですよ。
(深田)
そうですよね。ごっちゃになっていて、そもそも106万円の壁を知らない人もいますね。
(森永)
簡単に言えば、従業員が51人以上、週20時間以上の労働、学生ではない.. というような4つほどの条件をクリアすると厚生年金に加入しないといけなくなるのですね。そうなると収入が106万円から125万円くらいまで増えないと、実質手取りが少なくなるのです。そういう事情からパートの方達は106万円に到達する前に働く時間をセーブするのですが、それが旧来型で元々あった106万円の壁だったわけです。
今回、その従業員数や月額の上限などの条件は取り除き、『労働時間が週20時間以上』という部分だけを条件として残すことに決めました。これは、106万円の壁は撤廃するももの『労働時間20時間以上』という縛りのために、厚生年金への加入が必要になってくることを意味します。
(深田)
例えば、時給1000円のパートさん達にしてみれば、125万円分の労働はものすごく大変なことだと思います。
(森永)
ええ、結構大変だと思います。ただ、厚労省の見解を見ていると、いやいや普通の年金にプラスしてもらえる厚生年金なのだからお得でしょう、と言うのですね。ですが、それは 「65歳まで生きて年金受給し、そこから何年か生きれば」の話であって、そもそもそこまで生きるのかは誰にもわからないじゃないですか。
(深田)
そうですよね。我々からしてみたら、未来のお金よりも今日明日のお金の方が大事ですから。
(森永)
間違っているわけではないのですが、その言い方は彼らにとっての都合のいい解釈だという気がします。それに加え、今回、急にそうしたルール変更をするとみんなが一斉に大変になってしまう。その理由のひとつは、労働者側と企業側の両方で年金額を負担するという労使折半ルールにあります。
(深田)
そうですよね。
(森永)
いきなりのルール変更はおかしいのではないか、という声もあり、今回、特例ができるのでは?と言われています。それは何かというと、これまでの「企業側と労働者側が5割ずつ負担」という部分を、特例で「企業側が負担分を決められる」というルールのことですね。
(深田)
それは、働いている側の負担分が増えるかもしれないということですか?
(森永)
ここで言う特例は、どちらかと言えば企業側の負担を増やすということで、例えば、企業側は9割負担してあげるから、従業員側は1割負担でいい、というような「従業員側の負担を減らしてあげましょう」という立場のケースについて話しています。
(深田)
なるほど。そうすると企業側の負担は増えますね。
(森永)
そうなのですよ。僕がこのことで批判している理由は、大企業優遇政策のように見えるからなのです。大企業は資金力があるので、例えば、福利厚生の一環としてパートさん向けに『当社では厚生年金の9割を企業側が負担』と言えたりしますが、中小零細企業にとっては大変な負担増になってしまいます。そこで、『9割も負担はできないから、ウチは5割負担』となれば、パートさんは大きく負担をしてくれる企業を選びますよね。
(深田)
そうですよね!
(森永)
そうするとただでさえ人手不足なのに、人の取り合いになった時にはみんな大企業に行くに決まっているじゃないですか。
(深田)
あぁ、なるほどそうなりますね。106万円の壁撤廃の条件は、今までなら51人以上の比較的大きな会社だけが対象だったものが、その従業員者数という条件を無くすことで、パートさんが週20時間以上働き、106万円以上を稼いだ時には、零細企業も従業員の厚生年金を払わないといけなくなるということですね。
(森永)
そうです、そうです。パートさんを雇っているということは、やって欲しい仕事があるからですよね。
(深田)
週20時間以上なんてすぐに達してあっという間ですよ。私なんか1日16時間くらい働いている時もありますし。
(森永)
あ、それはアウトですね(笑)だから例えば、週5日のパートさんの場合、働けるのは1日4時間でもうアウトということです。
(深田)
そんなのもう午前中だけで終わってしまいますよ。
(森永)
年金の損か得かを考える時、例えば「90歳まで生きれば得」というのは嘘ではないんです。でも、そもそも65歳まで生きられるか、生きたとしてもその先ずっと健康でいられる保証なんてないわけですから。
せっかく玉木さんの「手取りを増やそう」という主張で、これだけの支持を得ているのに、それ以上に社会保障の負担が増えてしまったら目先のお金が減るのですよ。
(深田)
わずかでも所得税の負担は軽減したのに、それ以上に社会保障を取られてしまうということですからね。
(森永)
さきほども言いましたが、この「特例」というのは、人の取り合いになった時には、結果として大企業優遇型の政策になってしまうのですね。だからなぜそれをこのタイミングで実施しようとするのだろうと不思議に思っています。
(深田)
ええ、はい。
(森永)
で、ここからは僕の勝手な見解です。世の中の人たちは、みんな仕事や生活に忙しいからSNSでなんとなくネットニュースをみる人は沢山いますが、政策やニュースをそんなに集中して見ないですよね。そういう人たちの認識って、おそらく『どうやら国民民主党の玉木さんが人気らしい』とか『国民民主党がこんなに盛り上がっているのは、103万円の壁を引き上げようとしてくれているかららしい』『そうすると僕たちの手取りが増えるらしい』という感じだと思うのです。
そういうところに『106万円の壁撤廃』というニュースをポンと聞かされると、あんまりちゃんとニュースを見てない人からしたら『良いことが起こった』と思ってしまう。しかも103万円の壁と106万円の壁は全然違う話なのに似ているので、みんな『あの話ね』と勘違いしてしまいますよ。玉木さんが控除額の壁を引き上げようとしていてそれは国民とっていいことだ、くらいの認識の人が『撤廃』と聞けば、やはり何か良いことをしてくれている、と思うじゃないですか。
(深田)
自民党もよくやってくれた、と今ごろ思っているかもしれないですね。
(森永)
そうなってもおかしくないと思う。このタイミングで似たような話をポンと出してきた背景を考えると、これを狙ってやっているんじゃないかという気がします。
(深田)
いや、本当に財務官僚サイドはいつもこうした騙し討ちをしますよね。
(森永)
萌絵さんの言う通りで、「減税」を打ち出してきても必ず他の何かがセットなのです。岸田政権時にも一度所得減税をしましたが、あれだけなら良かったのに同時に防衛増税を持ち出してきて、こちらで注意をひきながら、裏ではこっそり見えないように負担増も実施しています。
(深田)
減税が起こるたびにトータルで持っていかれる税金は増えていますよね。
(森永)
そうなのですが、今回ややこしいのは「税ではない」という部分です。国民も税制や社会保障制度にそれほど詳しい人ばかりではないけど、さすがに消費税増税すると言われたら怒るじゃないですか。でも今回は社会保険料の話しであって、その引き上げと言われてもあまり気付かれないから、政府もしれっと実施するのです。
(深田)
いや、でも社会保険料も税金ですよね。
(森永)
僕もそう思っています。
(深田)
だって戻ってこないですし。
(森永)
だからといって納めなくてもいいかといったら、差し押さえがあって普通の税金と同じような扱いをされるわけですし。制度として「税金ではない」という説明は理解できますが、僕たち労働者側からすると、所得税とセットで天引きされ、納めなければ差し押さえもあるという点では税金と言えますよ。そこを国民にはわからないように裏でこっそり上げていくのですからね。
しかも面倒なのは、税金の場合なら、自民党が「上げる」と言えば、国民民主党やれいわ新撰組が「下げる」というように、可視化された論議が投票につながる。その一方で、社会保険料については厚労省の年金部会のような所で話し合われていてはいますが、国民がその議事録をチェックするということはないですよね。それを、「読まない国民が悪い」という人もいますが、みんな仕事や暮らしに忙しいわけでそんな時間はありませんよ。我々のわからない所で議論され、わからないまま気付いたら社会保険料がどんどん引き上げられているというのが現状なのです。
(深田)
いや、それ本当にそうですよ。社会保険料がどんどん引き上げられて、はじめは数%だったものが18%位までになっていますから。
(森永)
そうですね。基本、サラリーマンは確定申告もしないし、電子化された今は、そもそも給与明細をあまりよく見ないから、自分がどれくらい税金を払わされているのかが分かってない。
(深田)
私は自分が給与を支払う側なので、こんなに支払っているのだ?!となります。
(森永)
僕も自分が会社経営していて自分に役員報酬を払っていて、企業負担と自分が支払わされている額との両サイドを見ているので、そこでのその額に驚きますよね。
(深田)
そう思いますよ。普通の保険でこんなに払わないよね、という額を取られていますし、年金にしてもこんなに取られるものなの?と。しかもお父様(森永卓郎氏)は、年金を払い続けてきたのに1円ももらえないから、せめてうまい棒くらい欲しいとおっしゃっていました。
(森永)
今のルールで言うと、65歳過ぎてもうちの親父のようにある程度稼ぎがあったりすると「要らないだろう」という扱いになって、年金は全額もらえない。それなら働かなければいいのじゃないかという気持ちもありますけどね。
(深田)
でも、お父様は仕事が趣味ですから。
(森永)
そうですね。親父の場合、働いているからまだ生きているようなところがあるので何とも言えないのですけど。働くっていいことじゃないですか。それなのに頑張って働らいてもうちの親父のように年金が受け取れないとすれば、ふざけた設計になっているということですよ。
しかも、国民年金の財政が悪化しているというので、前には厚生年金の積立金を流用するというような話もあるのです。
(深田)
え、それはちょっとまずいのではないですか?
(森永)
そう会社員からすれば、当然、どうして自分たちが納めている保険料の一部を例えば、自営業やフリーランスの年金に使うのだろう?となりますよ。
(深田)
これ、もしも普通の保険会社が同じことをしたら横領ですね。
(森永)
これを通すにはかなりの反発はあるでしょうけど、そういうレベルの話は新聞などをみれば普通に載っていますよ。
(深田)
サラリーマンはあまり政治的な意見を表では言いにくい立場にあるので、案外すっと簡単に通ってしまう可能性はありますね。
(森永)
そうですね。ただ、やっぱり少しずつ変わって来ていると思うのは、昔に比べたら政治的な話題や税金負担が重いというようなことは話しやすくなりました。テレビに比べればまだ規制の緩いインターネットの動画や記事を見ているからだと思います。
(深田)
それはお父様(森永卓郎氏)のお陰です。財務真理教という言葉が市民権を得たのですから。
(森永)
だからヤフー記事のコメントをみていた親父が自分で言っていましたが、昔とは違って、財務省側に対して結構手厳しいコメントがむしろ増えてきていて、世の中が変わって来た、と。昔は、財務省批判をしたら9割くらいは「そんなことを言って財務破綻したらどうするのだ」という財務省側についたコメントに溢れていたのですから。この流れは止めてはいけないと思います。
(深田)
そうですよね。
(森永)
皆さんの生活で物価が上がり、実質賃金もマイナスが続いていく中、でも増税はする、社会保険料も上げる、ということが続いたら財務省がどうだということとは関係なく、国民も怒りますよ。
(深田)
それはそうですよ。税負担や社会保険料、年金負担が重くなっているからこそなかなか結婚できず、子供も持てないという現実がありますから。
(森永)
今、国民負担率も余裕で5割を超えてしまっていますが、歴史的に見ると5割を超えるというのは一つのボーダーラインで、ここを超えると一揆なのですよ。でも現代社会において暴力手段に訴えることはできません。だけど何か起きるだろうなと言う気がします。どうしてかと言ったら昔から起きていたことだし、そういう歴史を知って今の状況を見れば、それが世論の変化だと思うのですよ。一揆はしないけど、例えばネット上で「いいかげんにしろ」という声が出てくるようなことです。上品な一揆ですよね。
(深田)
そうですよね。
(森永)
確かに、竹やりで突きに行くということはしませんが、ネット言論の中で言論人が言うのではなく、一市民が税負担をなんとかして欲しい、これ以上の増税なんてありえない、という声を上げ始めていて、それがもう若干メインストリームになっていますよね。
(深田)
そうですよね。確かに、地方議会ではインボイス制度反対という声が反映され始めていて、その意見書を中央政府に届けるという決議も取れましたし。
(森永)
国民の声で動かすという本当の意味での民主主義で、徐々に良い流れになっては来たと思います。
(深田)
これからもどんどん発信して、増税をやめ減税して欲しいと声をあげましょう。
(森永)
あとは社会保険料ですが、高すぎますね。みなさん、本当に一回、給与明細をちゃんと見て欲しいです。見てみると「なんの為に働いているのだろう」と思いますよ。
(深田)
だから私は自分の給与を減らしたのです。
(森永)
自分で会社をしている人はそういう方も多いですね。
(深田)
いや、税金を払って良いことがあるならいいのですが、そうではないですから。裏金を作ったり、悪いことをする人たちのためにどうして税金を納めるのだろうと思いますよね。
(森永)
実際、僕たちが脱税したら一撃で捕まりますからね。
(深田)
はい、絶対しません。しかも我々は財務省批判をしているので、脱税なんかしようものなら一発でやられますから。
(森永)
経理的には清廉潔白にしていても、経費の考え方はすごく難しい。例えば、このスタジオに来る途中に和菓子屋さんで和菓子を買って、SNSにそれをアップしたとします。そしてこのスタジオに来るまでの交通費を経費として申請すると、「この日、和菓子を買ってSNSにあげていて、その交通費を経費として申請していますが、これは遊びに行っているので経費ではないですよね?」ということを言われるわけです。
(深田)
え、そんなことを言われるのですか?
(森永)
経費というのは恣意的で何とでも言えるというところがあるじゃないですか。
(深田)
お客様に渡すお土産です、とか言えますよね?
(森永)
でも、それだってわからないし、実際、自分で食べたかどうかも時が経てば証明できないですし。そういうところも怖いと思います。だから、そういう意味で財務省批判は結構、命がけだと思っています。
(深田)
私もアメリカの税務所IRSと戦っていて、日本の財務省とダブルバンチになったらもう頭がおかしくなりそうですね。
(森永)
すごいですね、日米両方で戦うって。ゴジラやキングギドラレベルの話しですよ。
(深田)
皆さん、やはり財務省批判をしていると税務所がやってきて怖いのだけれども、それでも減税は大事です。本日は経済アナリストの森永康平先生にお越しいただきました。
先生どうもありがとうございました。