#154-元農水大臣 山田正彦 × 深田萌絵 タネを守ろう!! 自民の農家苛め「種子法廃止・種苗法改正で日本は〇〇に!」
(深田)
皆さんこんにちは、ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は元農林水産大臣、弁護士でいらっしゃる山田正彦先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。
実はですね、私、この山田先生の『種はどうなる!?』という本を、なんと私のカリスマ美容師から勧められたのです。彼は、CanCamで髪の毛を切っていたときに先生の本を読んで、コロナが流行り始めた頃、「種子法廃止、種苗法改正で日本の食は危ない」と感じ、青山の店舗を捨てて地元に戻り、今は農業をしながら、その隣の掘っ立て小屋で髪を切っているのです。彼が「絶対に『種はどうなる!?』を読んで、種について勉強してほしい」と言ってくれたので、読んでみました。すると、日本の食料自給率はカロリーベースで38%ですが、種子については9%しかないのですよね。それが、もし種子法が廃止されたら、米などの作物はどうなってしまうのでしょうか?種子法廃止が2018年、種苗法改正が2020年4月に行われてから、今日に至るまでどのような動きがあったのか、そして日本にどんな悪影響があるのかを教えていただけますでしょうか?
(山田)
ぜひ聞いていただきたいと思います。種子法というのは、私たちの主食である米、麦、大豆といった重要な種を保護するための法律でした。本来、公共の種子として、地方自治体や法律で管理され、その地域の風土に適した種子を各都道府県が開発し、農家に優良なものを安価で提供してきました。
(深田)
それは、国の予算で地方自治体が管理してきた。
(山田)
そうですね、良い種を作って農家に安く提供してきたのです。
(深田)
地方自治体で開発をしてきたのですね。
(山田)
地方の農業試験場で開発された良質な種子を、国の費用で農家に安く提供してきました。例えば、北海道のお米と沖縄のお米は気候が違うため、異なる種が必要ですよね。そのため、各地域の農業研究所で開発された種子が国の費用で農家に安く提供されてきました。これを公共の主食だから、これはアメリカでも他の国でも同じで、主食となる作物については国の責任で支援しています。
(深田)
日本だけが特別ではなく、世界的にも大体国の予算で種の研究をして農家を支援している。
(山田)
それが国の責任です。それを廃止し、今度は米、麦、大豆などの公共の種子を一切やめて、民間である三井化学の「みつひかり」という米の種子や、日本モンサントの「とねのめぐみ」という米の品種など、民間の種子に頼るようになりました。
(深田)
それだと、種の値段も上がるのではないですか?
(山田)
もちろん、上がります。例えば、「みつひかり」という種の場合、「コシヒカリ」の種がこれまで種子法廃止される前は1kgあたり400~500円でした。ところがこの「みつひかり」の種は5000円もします。
(深田)
10倍ですか!?大変なコストアップではないですか!
(山田)
これは農家にとって大きな負担ですし、政府もこれを推奨して一斉に回ったのです。種子を廃止する時に収量がこの種をまくと、普通お米でしたら60キロで換算し米9俵取れたら良い方です。それが11俵取れるのだと全く嘘だったのです。
(深田)
そうなのですか?
(山田)
実際にはそれよりも少なかったし、多収穫だと嘘を言って売って回って、政府が宣伝したのです。
(深田)
農林水産省が宣伝を?
(山田)
チラシ作って、国のお金で。酷い話なのです。実際にどうだったかというと、三井化学は昨年の2月に突然「みつひかり」の種子の提供をやめたのです。
(深田)
「みつひかり」の販売をやめたということですか?
(山田)
はい、提供をやめたのです。その時、約1400ヘクタールもの広い面積の農家が種子を使う予定をしていましたが、何の通知もなく、全く連絡もありませんでした。農家のみんなは泡を食いました。
(深田)
それは農家にとって大問題ですね。
(山田)
予定していて2月だから、3月には植え始めなければいけない。
(深田)
2月の3月ですか?酷い。
(山田)
そうです。みんな苗代を作って待ち構えているところに、全く報道もされない。私も驚いてなぜ提供できないのかと調べてみたところ、三井化学の「みつひかり」は不良品種だったのです。
(深田)
政府が宣伝していたのに、不良品種でできなかったということですか?
(山田)
そうなのです。種になっていなかったのです。
(深田)
種にもなっていなかった!全く話になりませんね。種として機能していなかったので、責任問題です。
(山田)
どういう風に種になっていなかったかというと、普通の種は発芽率といいます。どれくらい発芽するかで、随分違います。調べてみたところ、岐阜県の田中さんたちが非常に困っており、地元の小さな新聞に掲載されたので、直接訪ねて行きました。
(深田)
その方のお話ではどうだったのですか?
(山田)
直接お会いして聞いてみると、今津さんという方が小さな種の販売会社をやっておられました。その方の話によると、実は「みつひかり」はひどい品種であり、ロットによっては全く発芽しないものもありました。発芽しても大体平均7割ほどしかなかったのです。それにもかかわらず、種苗法で発芽率を表示するよう義務付けられているので、発芽率を90%以上と書かれて「みつひかり」を販売されていたのです。
(深田)
とんでもない嘘じゃないですか!
(山田)
種苗法違反です。しかもこの話は後から分かったのですが、今津さんから話を聞いて、その情報を私がネットで発信しました。すると3日で330万人がアクセスしました。農水省に記者が訪ねて行き、農水省もしょうがないので三井化学に報告書を求めました。そしたらなんと、2017年に種子法廃止されるのですが、2016年から「みつひかり」について三井化学は異品種を混ぜて売っていたことを明らかにしました。
(深田)
異品種を混ぜて売ったら、犯罪ですよね?
(山田)
犯罪です。これは重大な種苗法違反です。しかも発芽率90%以上と表示していたにもかかわらず、実際の発芽率はそれに全く及ばなかったのです。
(深田)
本当にひどいですね。
(山田)
産地も偽造していました。それを三井化学は、農水省に報告書で出しました。
(深田)
それがいつの話ですか?
(山田)
それが昨年6月頃だったと思います。問題が発覚したのは2023年の2月頃で、三井化学が突然「みつひかり」の提供を停止したことがきっかけで私が調べ始めたのです。これは大変な問題なので、三井化学はさすがに農水省に提出した報告書の中で種苗法違反を認めました。発芽率の虚偽表示や産地の虚偽表示についても、正式に認めています。
(深田)
認めたのですね?
(山田)
認めました。当然僕は新聞で報道されるだろうと思っていたら、ほとんど報道されず、小さな記事を農業新聞が書いただけで報道しないのです。
(深田)
いや、予想以上の悲惨な事態で驚きました。
(山田)
本当にひどい話だ、農水省はきちんと対処するべきだと批判しました。すると、農水省は一応三井化学を調べ厳重注意をしたので、不処分にすると。これだけの罪を犯して不処分ということに対し許されないと思い、三井化学を鈴木宣弘教授や堤未果さん、国会議員11名と一緒に刑事告発をしました。
(深田)
素晴らしいですね。それでどうなったのですか?
(山田)
記者会見もしました。その時、憲法学者の小林先生も一緒に記者会見に来てくれて、「これは国の詐欺事件だ」と言ってくれました。国が農民を裏切り、三井化学と共謀して詐欺を働いていると。
(深田)
そうですよ、国が詐欺ですよ!国家賠償責任法で責任追求すべきです。
(山田)
やろうと思えば可能ですね。そこで、農水省が不処分としたことに対して、我々は刑事告発をしました。さすがに三井化学もその顛末を農水省に報告しました。自社で偽造を行い、種苗法に違反して発芽率などを偽っていたことを認めました。そしてその原因については「技術的に未熟であった」と説明しています。
(深田)
今度は技術を移転してくれみたいなことを言い出すのですか?
(山田)
どうするかと思ったら、来年から「みつひかり」の販売を停止し、三井化学は種子事業から撤退することになりました。
(深田)
それで米はどうなるのですか?
(山田)
「みつひかり」は1400ヘクタールしか栽培されていなかったので、他の公共の種子で賄えるのです。つまり、我々が勝利したことになります。種子法が廃止された際、これは大変だということで、各都道府県で条例を制定する運動がありました。『種はどうなる!?』の中で読まれたかと思いますが、現在では35の都道府県で種子条例が整備されています。これにより、これまで通り都道府県が責任を持って、自分たちの費用で農家に優良な種子を安価で提供することができるようになりました。条例で守り、しかも不正な事を三井化学とか民間とかがやりました。民間で米の種子は他にも色々ありました。住友化学の「つくばSD」という品種や日本モンサントの「とねのめぐみ」という米の品種を政府は宣伝して売っていました。しかし、みんな大した品種ではなかったのです。
(深田)
つまり、宣伝されていたほどの品種ではなかったということですね。
(山田)
結局農水省も国会で「米の民間品質としては三井化学の『みつひかり』が代表的な品種だった」と答弁していましたが、その三井化学も撤退しました。結果として、民間の米の種子はなくなりました。
(深田)
なくなった!なくなった後、また公共の種にみんな戻った。
(山田)
戻っているのです。
(深田)
この種子法・種苗法のことをずっと心配していたのですが、最終的に国民の声が勝ったということですよね。皆さんの闘いが実った結果ですね。おめでとうございます。ただ、種子法が廃止されてから、地方自治体の農業研究所への予算が減ってしまうのではないかという懸念もありましたが、その点は実際どうだったのでしょうか?
(山田)
実際に予算は減っていますね。
(深田)
政権が代わって今までどちらかというと、外資企業より、大企業優遇の政策を推してきていました。今、石破さんという政治家が、その流れを変えようとされていると聞いたことがあるのですが、どうなのでしょう?鈴木宣弘教授などの意見にも理解を示されているとお伺いしたことがあります。
(山田)
僕は全く信用していないのだけれども。
(深田)
誰も石破さんのこと信用されていないのですね(笑)
(山田)
確かに鈴木先生は悪く言わないです。
(深田)
石破さんも「自分が首相になったら鈴木宣弘先生を農林水産大臣にする」と言っていましたが、残念ながら実現していません。日本の種がしっかり守られるために、種子法が復活するのか、いかがでしょうか。
(山田)
種子法が廃止されたものの、実際には種苗条例で守っています。一応日本の米、麦、大豆の種子は守られたと思っていいのです。
(深田)
今、イチゴやブドウがやられていますよね。
(山田)
これについて一番問題なのは、日本にはブドウでは「シャインマスカット」、イチゴでは「あまおう」という優良な品種がありますが、これが韓国や中国で勝手に栽培されて売られているのです。それで種苗法が改定され、自家採取の禁止が始まりました。
(深田)
日本国内で自家採取を禁止し農家が制限される一方で、海外は自由に栽培している現状ですよね?
(山田)
ところがその前に、種子法廃止の2週間後に「農業競争力強化支援法」という法律が成立しました。その法律の8条4項には、都道府県の農業研究所や国の農研機構で開発された品種、つまり民間、国の優良な育種知見を、民間企業の要求に応じて提供しなければならないと規定されています。
(深田)
それはTPP(環太平洋パートナーシップ協定)の影響もあるのでしょうか?
(山田)
まさにそうです。
(深田)
自民党がなぜこんなにも農家に厳しい政策を推進するのか理解に苦しみます。
(山田)
大企業優先で、大企業の利益しか考えていない。自家採取を禁止して、国際法上も日本が批准した社会権条約においても、米とか種とか、自家採取は農民の権利なのです。自家採取禁止を行っているのは、日本だけなのです。国会で答弁してもらったら、他にそういう国があるのかと言ったら日本とイスラエルだけだと。どこの国でも種は、自家採取が認められています。一度購入した種は自分の畑で自由に使えるのが普通です。許諾料を払わなきゃいけないということはなく、一旦買った種は自分のところで蒔いて良いのです。にもかかわらず、日本では自家採取禁止を取り締まる新しい監視機関が、来年から動き始めるようです。
(深田)
それって、シークレットポリスですか?
(山田)
ええ、「育成者管理機構」というものが国の中に設置され、弁護士事務所なども協力して、種苗法違反を監視する機関を作ろうとしている段階です。
(深田)
酷い話です。反対です。
(山田)
これが始まったら、農家にとって大変なことになる。
(深田)
農家に対する秘密警察ですよね?
(山田)
その通りです。例えばモンサントが遺伝子組み換えの種子でモンサントポリスと言い、訴えて回りカナダや中南米の農家が大変な目にあった話をよく聞きます。
(深田)
よく聞きます。モンサントの種を使っていないのに、その種子が風で農家の畑に飛んできて、それでも訴えられたという話をよく耳にします。
(山田)
モンサントポリスです。それで負けたという事例が世界各地で起こって問題になりました。そのモンサントをやるのではなく、政府が我々の税金でやろうとしています。
(深田)
それを推進したのが、菅さんや萩生田さんですよね。彼らがこの国を悪くしていると強く感じます。
(山田)
安部さんが本当に日本を壊したなと、私は思っています。
(深田)
残念ながら結果的にはそうなってしまったのかなと思います。
(山田)
酷い話ですよね。ですから、これからも私たちの闘いは続きます。
(深田)
山田先生、今回もありがとうございました。