#128-大井幸子 × 深田萌絵 トランプかハリスか?米大統領選でどうなる株式市場!?
(深田)
自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォームITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回は国際金融アナリストの大井幸子先生にお越しいただきました。大井先生、よろしくお願いします。日本の総裁選は石破新総裁誕生ということで、アメリカの大統領選挙を控えていますので、株と為替の展望を教えていただきたいのです。
(大井)
石破さんになりまして、石破新内閣誕生というニュースが出た瞬間に、株がバンと下がったり、円高になったりしました。高市さんか小泉進次郎さんになっていれば、株は上昇していたのですが、裏切られて逆に下がってしまいましたね。
(深田)
石破さんになると誰も思っていなかったのでしょう。
(大井)
そうですね。マーケットにとってサプライズですよね。予想が反転して石破さんになり、下がってしまったのですが、10月1日に少し戻しになりました。円高の影響で日本株は弱気かもしれません。ただ、アメリカの株式は割と強気ですね。
(深田)
そうですか。
(大井)
10月1日になって、オクトーバー・サプライズということで、大統領選挙の年はやっぱり11月のすぐ前の10月に不測の事態が起こる心配があります。大抵リスクオフに動きます。一応、ポジションを持っていても、サプライズに備えてリスクオフの動きがありますが、今のところ割と強気ですね。
(深田)
なるほど。今回のオクトーバー・サプライズは、どのようなシナリオが考えられますか。
(大井)
そこが分からないところがサプライズになるのかもしれないのですが、大体考えられる事態はマーケットに織り込まれてきているので、それ以外の事態が起こるとなると、なかなか難しいですね。ただ9月18日のFOMCで大幅の利下げがありました。それが終わって、10月はFOMCはないので、おそらく利下げがどのくらいあるか、先延ばしの話です。10月は大統領選挙でハリス対トランプのどちらになるかに注目しています。
トランプさんとハリスさんと政策、税制、経済政策がだいぶ違いますので、ほとんど真逆
なので、どちらかを見極めてからではないと、動きにくいところはありますよね。今のバイデン政権は来年の1月まで続きますが。
(深田)
レーム・ダック化しますね。
(大井)
その後に起こることと言えば、ウクライナの問題、イスラエルの問題など国際関係で、アメリカが弱い間に仕掛けてくるところがありますね。また、アメリカの景気がどのくらいリセッションに近いのか、懸念がありますね。0.5ポイントの大幅な利下げになったので、「悪いのではないか」と思う人もいれば、「ソフトランディングのシナリオで、今回0.5ポイント利下げにしました」というFRBの言い分をそのまま信じるか、分かれていますので、見極めが難しい局面ですね。
(深田)
そうですよね。足元の市場が方向性をつかめず、フラフラしている印象があります。
(大井)
そうなのですが、アメリカの株は基本的に今は強いです。世界中の資金がアメリカ株に向かっています。他の投資先よりもアメリカ株に投資しようと、資金がアメリカに向かっています。しかし、為替に関しては、トランプになると、ドル安にしてアメリカに製造を戻して、輸出促進で経済成長を促す方針になるので、トランプ優勢になるとドル安になり円が相対的に強くなる流れになると思います。ハリスは今のところ、為替について、バイデンと然程変わりません。
今後の影響について、トランプシナリオとハリスシナリオで対比したものが以下の通りです。
トランプ勝利
・2025年リセッション
・減税、規制緩和、製造業国内回帰、データセンター増設、など
・株価上昇
ハリス勝利
・20205年、マーケット・メルトダウン
・法人税増税で企業収益悪化、株価暴落
・規制強化、エネルギー産業の縮小、統制経済へ
・価格統制で国民経済を破壊
どちらが大統領になっても、2025年はおそらく景気後退期になるだろうという見通しは共通しています。トランプは減税・規制緩和し、アメリカに製造業を戻そうとしています。やはり今は、データセンターでAI分析しなければいけないデータがいっぱいあります。
(深田)
生成AI用のデータセンターですね。
(大井)
アメリカではかなり積極的に計画されていますね。大量の電気供給や、システムを冷却するための水など、データセンターのインフラの整備が非常に進むだろうと言われています。これが新たな景気刺激策になると言われています。だから、トランプが次期大統領になれば、ドル安と産業構造の変化が起きます。新しいデータセンターも含めてアメリカ経済の新しいステップが見えてくるはずです。
(深田)
確かにトランプが大統領になったら、AIデータセンター関連の株がなかなか良いのかもしれないですよね。
今、ハリスは脱炭素が推進し、電気が足りなくなってくると思うのですが、トランプさんは脱・脱炭素を言っています。データセンターインフラの問題はアメリカ国内の電気不足です。
(大井)
そうですね。スリーマイルの原発を動かす、なんていうすごいことまで言っており、ウラニウムも価格が上がっています。本当に大丈夫かと思うこともありますよ。
(深田)
私も、先日仕事でバージニアにあるワシントンD.C.向けのデータセンターに行ってきたのですが、その一帯はAmazonやGoogleなどの企業が土地を買って、データセンターを作る準備をしています。しかし、電気が足りないので、ウエストバージニアからノーザンバージニアに電気を持ってきています。ノーザンバージニアは石炭を燃やしてはいけないので、ウエストバージニアで石炭を燃やして、発電しているのですが、今度は送電網を増築しようとすると、環境活動家が「環境に悪い」と言って反対運動しているので、全然送電網が増やせないのです。データセンターの準備はできているのだけれども、電気が来なくてデータセンターを稼働できない問題が今あります。トランプになれば、その辺りも解消されるとは思います。
(大井)
そうですね。脱炭素のバイデン政権に、石油業界がかなりいじめられたというか、不当な扱いを受けました。EV業者に助成金を与えて色々やってもEV需要は変わらず増えないままです。
(深田)
高いし、電気は足りません。
(大井)
寒いところを走ったら、凍え死んでしまいます。脱炭素で炭素を目標量まで減らすことを決めたのは、アメリカ人ではなく、国連やグローバルな機関です。国家の上にある人たちの言うことを聞いて、EVを促進して石油業界を弱体化し、エネルギー不足になってインフレに陥るなんてとんでもないことです。アメリカ国民にとって、ガソリンを効率的に消費できるガソリン車に乗って炭素を減らしていくので十分だというのが一般的な考えですよね。
(深田)
そうですよね。
(大井)
カリフォルニアでガス窯規制の動きもありましたが、カマラ・ハリス政権になれば、そのような環境面だけでなく経済面でも、とんでもないことになります。法人税も上げますので、企業収益も悪化し、株価も下落するのが見えています。カマラ・ハリスになったら、価格統制など、連邦政府がすごい大きな権力を持って、経済活動に口出ししてくるでしょう。「ガスストーブはダメだ」「この食料はこの値段にしなさい」といちいち口出しされたら、企業は儲かりません。私は、ハリス勝利はアメリカ人にとってあり得ないのではないかと思っているほどです。
(深田)
うん、そうですよね。ハリスが勝つと、株も確実に弱くなりますし、エネルギーも足りなくなります。ハリスが勝つと株は買えないだろうと思います。為替はバイデン政権と同じ方向性でしょうね。
(大井)
極端な円高になることはないかもしれません。トランプさんの政策も、後に色々調整されて、打ち出される政策が変わってくることもあるかもしれませんが、世界の流れとしてはトランプ再戦で動いているとは思います。トランプさんは、暗殺されなければ、大統領になるでしょう。
(深田)
そうなのですよ。最大のオクトーバー・サプライズは暗殺だと思いますよね。
(大井)
二度あることは三度あると皆さんも思っていらっしゃるでしょう。
(深田)
三度目ももう起きています。
(大井)
トランプだけはダメだという勢力があります。トランプさんに何かあった場合は、副大統領候補のJDヴァンスがいます。彼が大統領になる可能性もあります。ヴァンスになった場合も、経済政策はトランプ路線だと思います。
(深田)
でも今回も大統領選挙が面白いのは、労働組合がトランプ陣営についたことです。前代未聞です。
(大井)
そうですね。
(深田)
すごいと思います。ヴァンスの力なのかと思います。
(大井)
それもあると思いますね。バンスは貧しい家庭から叩き上げで軍隊行って、奨学金で大学に行っています。そういう貧しいところ、ラストベルトから立ち上がって、イエール大学の法学部、ロースクール卒業後、シドリーオースティン法律事務所というニューヨークの中でもすごいピカピカのローファームに就職するのですよね。私はその経歴を聞いた瞬間に、この人は絶対にすごい人だと思いました。頭も切れて、弁説は爽やかです。オーラが出ているような人材でなければ、新卒でシドリーオースティンになんて入れません。
(深田)
副大統領候補とは言っても、まだ40歳ですから若いですよね。
(大井)
若いですよね。その後、金融業界に行って、カリフォルニアでベンチャーキャピタルなどを経験しています。そういう意味で日本のサラリーマンや官僚とは全く違う気質の人たちですよ。
(深田)
そうですよね。今回の日本の総裁選ですごく残念だと思ったのは、アメリカと違って日本では、右派も左派も勤労者の問題については全く触れないことです。普通に働いている人たちの雇用が不安定だったり、会社の給料がなかなか上がらなかったりして、苦しい生活をしているのですが、この声を取り上げてくれる候補者が一人もいませんでした。
(大井)
彼らは分からないのでしょうね。
(深田)
分からないと思いますよ。私も色んな国会議員の先生とお話をしたことがありますが、大体三種類に分かれます。世襲、官僚、タレント・アナウンサー出身です。
(大井)
世襲は多いですよね。
(深田)
皆さん高収入だから、お金の苦労をほとんどされたことがありません。年収300万円以下の生活のリアルを知りません。特に働く女性は男性よりもお給料が少なく、結婚出産してもなかなか休みも取れません。しかしこの実態をお話ししても、「それは左翼の嘘だ」と言います。「この国では絶対ありえない」と言います。なぜかと言うと、官僚・大企業出身の人は法整備がきちんとされている職場なので、知りようがないのです。しかし、年収300万円もない中小企業だと、企業が休みをあげたくてあげられない事情があります。その辺りのリアルが取り上げられない一方で、アメリカの大統領選挙でJDヴァンスがそういった労働者の代弁をしています。
(大井)
色々と物語も見ましたが、ヴァンスはお母さんがアル中で、苦労もリアルですよね。トラックドライバーやタクシードライバーは本来鉄板民主党なのですが、大きな組合のチームスターズが6割以上トランプ支持に回っています。結局、彼らはインフレで生活が立ち行かなくなる危機感を持っています。トラックドライバーの方は一生懸命働いて、日曜日は教会に行って、家族を大事にするマインドの方が多い傾向にあります。
(深田)
日本で言う「マイルドヤンキー」でしょうか。
(大井)
地元で一生懸命に働いて家族を養うメンタリティの人たちだから、どちらかと言うと保守的ですよね。今おっしゃったように、官僚や世襲政治家は、黙っていても給料が振り込まれ、自分で事業もしないので、「明日、給料がなくなるかもしれない」「事業収益がなくなるかもしれない」というリスクの感覚が全くない人たちなのです。アメリカのトランプ政権には、ヴァンス、トランプ、私が非常に尊敬しているマイク・ポンペオさんなど、軍隊経験があって、自分で事業をしている人たちがいます。肌身でリスクが分かり、リスクを恐れない体質が備わっています。日米の一番大きい違いは「リスクを恐れない」とポンペオさんの本に書いてありますし、私もそう思います。ポンペオさんは「我々は、国益のために、恐れずリスクを取る政権なのだ」とはっきり言っています。アメリカにはそのような前提があるのです。
自民党を見ていると、ああだ、こうだと言ったって、結局国益のために何もリスクを取りませんし、国民が何を心配して毎日生活しているのかも分からないのです。
(深田)
総裁選の議論で、左派が女系天皇や夫婦別姓を中心に議論をしていますが、「それよりも国民は生活が苦しいのだから、その話を中心に持ってこい」と言いたいですね。
(大井)
とにかく増税をやめてもらいたいですし、「余計なことをするな」と言いたいですね。自民党と違って、トランプ政権はリスクに立ち向かえる政権です。このリーダーシップの質の違いが非常に大きいです。自民党はリスクを恐れて何もしないので、リスクが降り注いでくるのです。次の時代の変化に耐えられるのか非常に心配ですね。
(深田)
そうですね。すいませんが、今後トランプ政権になり、ドル安に振れるのならば、どのような投資をすべきでしょうか。ドル投資をして良いのですか。
(大井)
ドルで投資すべきだと私は思います。
(深田)
なるほど。分かりました。
(大井)
日本にも素晴らしい企業があるので、合理的に考えて「良い投資先」があれば投資してもいいと思います。自分で研究して、素晴らしい企業の株を選び、ドカッと買うのではなく、少しずつ買うのは非常に良いと思います。円が高くなったら、ドル資産への投資のチャンスだと私は見ています。個人としては、円が高くなったらドルで色んな良いアメリカの商品を買いに行こうと思っています。
(深田)
なるほど。ありがとうございます。今回は国際金融アナリストの大井幸子先生から、大統領選を挟んで株為替の展望についてお話をいただきました。先生、ありがとうございました。