#107―安藤ひろし×深田萌絵「インボイス倒産急増の犯人」

(深田)

自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回は前衆議院議員で税理士である安藤ひろし先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。ついにやってきたインボイス倒産激増の恐怖についてお話いただければと思います。

(安藤)

インボイス倒産然り、景気が悪いですよね。

(深田)

そもそもそこが問題ですよ。

(安藤)

インボイス倒産はこれからじわーっと来ます。

(深田)

輸入物価が上がり、コストが増えてきています。

(安藤)

しかも、実質賃金はマイナスになっているので、物が売れない状況です。値上げもできず利益が圧迫され、企業が倒れていきます。そこにさらに、コロナ禍のときのゼロゼロ融資の返済が本格的に始まっています。これまでは借り換えができたけれども、その支援策もなくなりました。

(深田)

支援が打ち切られたのは6月ですよね。

(安藤)

これから、企業の選別が始まります。

(深田)

西田昌司被害者の会を作らないといけない ということですね。

(安藤)

本当にそうですよ。中小企業、特にコロナで被害を受けたところは、市場からの退場を促されるでしょう。政府はそういう企業は潰す方針ですから、

(深田)

もう最低ですね。

(安藤)

もう企業倒産が増えている数字が出ていますが、政府としては想定通りなのですよ。

(深田)

この計画倒産って、政府が計画した倒産だったのですか。

(安藤)

そういうことですね。計算して本当ならば、コロナの時にさっさと潰したかったのだけれども、みんながうるさいから一応融資しました。

(深田)

今の政権は、銀行の貸し剥がしを批判している割に、「お前たちが貸し剥がしているのではないか」と言えます。

(安藤)

結局、生産性の低いと言われるゾンビ企業淘汰論は永田町・霞が関で、すごく根強いのですよ。

(深田)

「いや、ゾンビを作ったのはお前らだよ」と言いたいところです。経済成長していないので、生産性も上がるわけありませんし、価格に転嫁できません。

(安藤)

ゾンビ企業を潰したいのならば、景気を良くすることです。

(深田)

そもそも「生産性が最も低いお前らがこの世から消えてなくなれ」という話ですよね。

(安藤)

では、データを見ていきましょう。2024年の1月から6月の上半期の倒産件数は4,887件と2014年以降で最多で、負債額が小規模な企業の倒産が目立ちます。前年同期比22%増です。

(深田)

うわ、ひどいですね。

(安藤)

前年同期は4,006件でした。負債総額は6,810億円(前年同期比24%増)です。要するに、小さい企業が数多く潰れている状況です。真面目にやっている企業さえ潰れています。

グラフで示すとこのようになります。

(深田)

コロナのゼロゼロ融資がある頃は良かったけれども、途切れた頃から倒産が増えていますね。円安進行で輸入インフレが始まった頃から、増加しています。

(安藤)

分かりやすいですよ。コロナ禍では融資をどんどん受けられたから、企業倒産が減った事実はあります。結局、企業の経営は資金繰りですから、資金繰りさえできれば、どんな状況でも、企業は潰れません。

業種別に見ると、全7業種6業種で、倒産件数が前年同期を上回っています。帝国データバンクのデータによると、興味深いのですが、不況型倒産が合計4,029件で全体の8割を占めています。要するに。景気が悪いということですよ。不況型倒産のうち、主因別に見ると、販売不振が3,951件です。売れないのです。

(深田)

増税に増税が重ねられ、手元にあるお金がないのに、消費できませんよ。

(安藤)

そうなのです。この数字を見ても、販売売上が伸びておらず、本当に景気が悪いのだとよく分かります。また、燃料価格の高騰と人手不足が深刻化し、道路貨物業者の倒産も最多ペースで推移しています。燃料価格が上がっているのにも関わらず、政府の無策のせいで、ガソリン税を下げません。

(深田)

業界にパーティ券を配っているだけだろと言いたいです。

(安藤)

無いよりはマシだけれど、ガソリン税をなくしたら、もっとガソリン代は下がりますよ。

(深田)

業界に補助金を出したけれども、ガソリン代は下がっていません。「その金を君たちが飲み食いに使っただろう」と。

(安藤)

働き方改革という余計なことをやったから、人手不足になってしまい、倒産に拍車をかけています。ゼロゼロ融資後倒産も、上半期最多ペースで増加しています。焼肉店の倒産件数が急増しています。円安で牛肉価格が高騰し、打撃となりました。

(深田)

なるほど、国産牛ではダメなのですか。

(安藤)

むしろ国産牛の方が今、安いみたいです。国産の黒毛和牛より輸入の牛肉の方が高くなっています。

(深田)

では皆さん、国産焼肉に行きましょう。

(安藤)

物価高インフレによる倒産も過去最多です。インフレの影響で、仕入れ物価が右肩上がりなのですが、価格に転嫁できないので、潰れていきます。このような苦しい状況になっていますから、本当に中小企業はどんどん潰れています。

以前の神田財務官の報告によれば、「自力存続が見込めない低収益・低賃金企業の退出が増加する」とあります。

(深田)

いやいや、自力で存続が見込めないのではなく、原因はお前らが作っているだろうと言いたいです。

(安藤)

このような企業が潰れていくのを歓迎する方針です。

(深田)

頭がおかしいとしか思えません。国民は生活するために働いているのであって、生産性を高めるためにやっているのではありません。

私も会社経営をしていますが、国全体から見た生産性を高めるためではなく、誰も雇ってくれないから、生活のためにやっているのですよ。あくまで生活のために働いている人たちを、完全に潰していますよね。

(安藤)

そうですね。潰していって、みんなが高賃金の仕事へ労働移動し、そこの企業が成長するから、日本全体が経済成長するビジョンを描いています。

(深田)

転職したことがない人の夢物語です。30半ば以降の転職はそれほど簡単ではありません。

(安藤)

よほど腕に覚えがあって、独立して頑張るというのなら別だけれど、なかなか大変ですよね。

(深田)

そうです。だから、それだけスキルがある人は個人事業で、自分で会社経営をするので、転職市場に出てきません。できる人は放っておけば良いのです。

(安藤)

そうなのですよ。会社勤めから、外に出て試してみよう、一旗揚げようとする人もいます。そういう人を支援する必要がないのです。

(深田)

わざわざ中小企業を潰して、そこで働いている人を追い出さなくて良いのです。中小企業で10年、20年働いた人にとって、転職して新しい仕事に馴れるのも大変です。

(安藤)

安定して、将来の見通しがある雇用こそが、少子対策にも一番効果的です。「どんどん転職しろ」「潰れるところは潰していく」という政策は、みんなが安心してできません。

(深田)

結婚もできないし子供も作れないです。

(安藤)

こういう冷たい考え方でやっているから、少子化が進んでいきます。上半期倒産件数が過去最大なのに、ニュースにもならないし、政治家の中でもほとんど話題に上がらないのです。不思議だと思いませんか。

(深田)

いや、本当に不思議です。GDP成長マイナスなのに、日銀レポートで景気は回復していると言ってのけています。恐ろしい国ですよね。

(安藤)

与党だけではなく、野党の政治家も、「倒産がこれほど増えています」と言わないのも不思議でたまりません。なぜなのでしょうか。

(深田)

利上げしたいのでしょう。だから、「景気が悪い」なんて口が割けても言えないのでしょう。

(安藤)

立憲は利上げがうまくいって喜んでいるのでしょうか。

(深田)

彼らも結構ザイム真理教と仲良しなのです。

(安藤)

そうなのです。結局、与党も野党も財務省の支配下に置かれています。

(深田)

そうなのですよね。だから与党になっても、野党になっても、あんまり変わらないのだろうと思います。官僚が政策を書いて、与党と野党で少々文言を調整して、みんなで仲良く賛成するので、与党と野党が連携しているのです。こんな時代だと、「果たして投票に行く意味があるのだろうか」と真剣に思ってしまいますね。

(安藤)

本当は与党と野党で調整をして、より多くの人が良くなるのならばともかく、今は財務省が書いているシナリオの通りです。

(深田)

「誰の利権をどこに入れるか」だけ話し合って、法案が出てきます。

(安藤)

庶民の方は全然向いていません。立憲民主党も、優良企業の労働組合ですから、中小企業の草の根の人たちの労働組合の代表ではありません。結局、どっちを向いているのかと言ったら、大企業向きなのです。

(深田)

労働組合のトップがやはり大企業の経営人の言いなりになった方が、自分が出世できるから、労働者を見ていません。これがアメリカとの違いです。

(安藤)

このせいで、倒産が増えているのに、全然警戒心がありません。大企業は中小企業に仕事を発注していますから、中小企業に支えられて事業が成り立っています。だから大企業にとっても、中小企業がなければ困るのです。今後どうやっていくのか、中小企業が潰れていくところに、神田財務官のレポートに限りませんが、「外資を呼び込んで、どんどん買収させると、経済安全保障上に問題があるかもしれないが、そんなことを言っている場合ではない」という論調になるかもしれません。

また政策で最低賃金を上げると、企業倒産が増えますが、それも歓迎しているのです。企業が倒産していけば、より生産性が高くて高賃金が支払う企業への労働移動が促進されるから、みんなの賃金が上がりますと言っています。どれだけお花畑なのですか。

(深田)

考え方がありえません。

(安藤)

この後に、アメリカの例が出ているのです。「国際的に見ても、労働市場が流動的である国ほど、生産性が高く賃金が上がりやすいことが確認されている。」「最近の顕著な事例として、米国では、コロナ禍において一時的に失業が急増した一方、これを契機として成長分野への労働移動が活発化した結果、生産性・賃金が上昇したことが指摘されている。」

これは本当でしょうか。

(深田)

ちょっと違うのではないかと思います。アメリカは物価が上がると、すぐに賃金に反映させます。コロナ禍は失業というより働くのを控える人が増えて、移民も自分の国に帰ったので、労働者不足になり、賃金が上昇しました。コロナ禍という特殊な期間だけを切り出すのも、ちょっと不思議な気がしますね。

(安藤)

アメリカは、その時にものすごい金を配ったでしょう。

(深田)

ものすごく配っています。申請しなくても、小切手が送られてくるのですよ。

(安藤)

だから、日本は1回10万円配ったきりだけれど、アメリカはバンバンと配っています。景気良くなりすぎて、利上げした流れです。日本と状況も対応策も違います。「コロナ禍で失業したからみんな成長分野へ移動した」と言うのは牽強付会だと思います。

(深田)

屁理屈ですね。

(安藤)

だから、アメリカの例を引き出して、「失業させたら、経済成長した」と言うのは断じて違います。

(深田)

違いますね。

(安藤)

「アメリカがうまくいったから、日本もどんどん潰して転職させれば良い」というどれだけ乱暴な話をしているのですか。

(深田)

そもそも環境が違いますよね。雇用環境も文化も違います。そもそもかなり昔からアメリカの方が労働市場の弾力性が高く、アメリカの方が、転職が活発だったのですよ。働く人に対する付加価値の評価が正当にされる文化が背景にあります。

日本って、「私はこれだけ売上げました」と言っても、それに見合う給料をくれる会社はないので、外資に行かざるを得ないですよね。

文化的な背景の違いも考えると、アメリカのコロナ禍の例を引き合いに出すのは乱暴すぎると思います。

結局、大学に入る人はまず、奨学金という名の借金を負うのです。卒業するまでに百万円の借金を抱えたまま就職するのは嫌だと言って、ギャラ飲みなどの夜のバイトに行く女の子も多いのです。そうすると、月収50万、100万を女子大生の時代にもらい、卒業して年収300万、400万円になると、外資に行くか、キャバ嬢にするかという選択になってしまうのです。「どうせ結婚するのなら、キャバ嬢でいいや」「自分は美人だしセールスに行ったらバンバン売れるから、外資の金融機関に行こう」とする人も多いと思います。日本企業は働く人に対して正当な評価をしてくれませんので、外資に行くマインドの人もいます。そもそも日本の企業が高い給料を払わないのはなぜなのか解明しないといけない問題ですよね。

(安藤)

そうですね。日本では低賃金労働者でないと企業がやっていけないから、低賃金労働者を求めている状況になってしまっています。ましてやアメリカ型を目指しているのですが、アメリカはとにかく超株主資本主義で、経営者は超高給取りで、配当金もバンバン入ってきて、ストップオプションで儲けるので、低賃金労働者との格差がすごく拡大している国ですよね。だから、結局この世代の人たちは、アメリカを真似するケースがすごく多いと思うのですが、アメリカみたいにして果たして良いのでしょうか。

日本は「1億総中流社会」がやっぱり一番経済成長をしていた時代なです。

(深田)

そうですね。

(安藤)

本当は1億総中流を取り戻していくべきなのですが、今はとにかく企業も潰して、転職させて、自分でなんとか稼いで這い上がる人にだけ手助け考え方になっています。そういう人にだけ手当をするとなると、すごく冷たい社会になってすさんでいくと思いますね。

(深田)

外資の仕事はノルマがすごいので、甘くないですよ。自分が外資に勤めていた時、朝の6時、7時にはもう会社にいて、家に帰るのは11時、12時過ぎで、寝るのは2時、起きるのは5時という生活を何年続けられますか。それが高賃金の仕事です。

国民にとってそういう生活が幸せなのか、外資系の働き方が日本の働き方改革と合致しているのか、それを考えると、労働基準法を完全に無視していますからね。労働関係の法律を全く無視してその暴論を吐くなんてすごいと思います。

(安藤)

働き方改革は大失敗だったと思います。働き方改革を入れる前の労働基準法は一応上限規制がありましたが、運用として一応上限を書いてありましたが、曖昧だったのですよ。

もちろん、ブラック企業や過労死はあったらダメだと思いますが、成長期には無理しなければいけないときもあります。お金を稼ぎたい人、残業したい人もいるから、そういう人が働けたのですよ。

渡海の社長はブラック企業の代表者で有名ですが、あの人が起業する時だって、佐川急便で、とりあえず半年で300万資本金を貯めると決めて、半年だか、1年だかとにかく死ぬように働いていたのです。佐川急便の働かせ方が良いとは言いませんが、お金が欲しい人にはチャンスがあったのです。結局、働き方改革で潰されたのです。

(深田)

そうですよね。

(安藤)

だから、働き方改革は、相当に日本経済にとってマイナスです。ブラック企業を許さないという建前も確かにその通りだと思うのですが、大義名分として正しすぎて、ちょっと無理しなければいけないのに、「働いてはダメだよ」と止めるのです。さらには「お金欲しいのなら副業したら良い」と意味不明なこと言うのです。

(深田)

だから働いているではないかとツッコミたいです。こういう意味不明な政策のために倒産件数が激増しているにも関わらず、「我が国は景気が回復をしているので利上げしましょう」と嘘を吐く政府との戦いはこれからも続いていくという素晴らしいお話をいただきました先生、ありがとうございました。

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