「財務官が内閣を操る恐怖」安藤ひろし×深田萌絵 No.102
【目次】
(深田)
自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。前衆議院議員で、税理士の安藤裕先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。
今回は神田眞人財務官が内閣官房参与になったことにより、一層『ザイム真理教』支配が広がっていくだろうという観測についてお願いします。
(安藤)
びっくりしましたね。神田財務官といえば、この間まで為替介入のニュースなどで顔と名前を見た方も結構多いのではないかと思います。
(深田)
為替介入で名をあげたのですね。
(安藤)
ものすごいエリートで、東大法学部を出て財務省に入って、頭が良すぎる。官僚は結構、政治家を馬鹿にしているところがあります。特に財務省官僚はものすごく優秀で、政治家の方が大体勉強ができない。勉強できないし、政策も勉強していない。
(深田)
事実ですね。
(安藤)
だから、馬鹿にされるのは仕方がないのですけれども、その中でもエリート中のエリートです。財務官というと次官級の役職です。そこに3年間いて、7月31日に退官されました。
-神田眞人前財務官-
・財務官在職中退官直前の7月2日に異例の政策提言(報告書)を公表
・財務官退官とともに内閣官房参与に就任(8月1日付け)
ここで内閣官房参与につくということは、この報告書を受けて内閣官房参与についたと考えるべきだと思うのです。
(深田)
そうですよね。ここに彼の策略というか陰謀が隠されている。
(安藤)
多分、これは完全にシナリオはできています。3月から勉強を始めている。
-『国際収支から見た日本経済の課題と処方箋』懇談会-
・21名の学者、金融関係者により構成(座長は神田眞人財務官)
・2024年3月26日に第1回会合、全5回開催
7月2日に報告書を公表している。ものすごい段取りの良さでしょう。
(深田)
普通このスピードではできないですよね。月1回ペースですよね。
(安藤)
それで1年ぐらいで報告書をまとめるといようなものです。
(深田)
岸田文雄首相のゴリ押しのスピード感を感じます。
(安藤)
勉強会をして報告書を作ったら、その後内閣官房参与にするというシナリオがおそらくあったのだろう。この報告書の処方箋を見ていくと「ああそうか」とすごく納得した。僕が国会議員だった時安倍晋三内閣、菅義偉内閣、岸田文雄内閣ですけれども、その路線そのままなのです。内閣の政策は財務省が書いていたということがすごくよくわかる。
すごく勉強になるので、ご覧の皆さんもそんなに分厚くないから読んでいただきたいと思います。今日はその内容、エッセンスを少しご紹介します。
(深田)
ぜひお願いします。
(安藤)
結局、この方向でこれからも政策をやっていきます。内閣官房参与に就任したので、この方向で岸田内閣は進んでいく。この後自民党総裁選挙がありますけれども、安倍内閣、菅内閣、岸田内閣と内閣が変わっても方向性は変わらなかったのです。ということは全部シナリオを書いていのは内閣とか政治家ではなく、財務省の官僚なのだということです。
(深田)
2014年に公務員制度の改革で人事権を政権が握ることになって、それでも財務省には逆らえないということなのですか。
(安藤)
逆らえないこともあるし、この世代の人は「頑張るものが報われる」という言葉が大好きなのです。「頑張るものが報われる」という言葉を違和感なく、みんながそれはそうだと思いますね。だけど実はすごく冷たい言葉で、裏を返すと「報われないものは頑張っていない」という結論になるのです。
(深田)
そういうことを言う人は多いです。政治家の先生に年収300万円以下の人はどうするのかという話をすると「努力が足りない」と言うのです。
(安藤)
そういう結論に行きます。だから「頑張るものが報われる社会」は保守系の政治家が好きな言葉ですけれども、ものすごく恐ろしい言葉です。
(深田)
恐ろしいです。私は二十歳で社会に出ましたがどんなに努力しても就職が見つからないし、年収200万弱です。自分だけではなく、みんなそうです。真面目に働いていないのではなく、みんな一所懸命働いても年収300万円にいかない。努力はしているのですよ。
(安藤)
個人の努力ではどうにもならないことがいっぱいあって、社会全体の問題を解決するのが政治家の仕事なのに、それをやらないで「努力が足りない」と言うのは政治家の仕事を放棄しているということです。
(深田)
強気を助け、弱気を挫く人々ですね。
(安藤)
そうです。皆さんは「頑張るものが報われる社会を目指している」という政治家には気をつけてください。
(深田)
私も気をつけないといけない。
(安藤)
ものすごく冷たいものを含んでいます。ということで、この報告書の内容を見ていきたいと思います。正しい分析はされているのですれども、処方箋が間違っています。
(深田)
日銀レポートは分析も処方箋も間違っているけれど、今回は、分析は正しいが、処方箋だけが間違っている。
(安藤)
分析はすごく勉強になる。知っている人はいいのですが、知らない人には「ああこういうことになっていたのか」とよくわかるので、是非そういう意味でも読んでいただきたいと思います。
-序文-
・近年、日本の貿易収支は赤字基調となり、デジタル等の先端的なサービス分野では赤字が拡大している。
・所得収支の黒字は過去最大規模となっているが、その多くは海外で再投資されている。
・そして、海外から日本への直接投資は著しく低水準にとどまっている。その通りですよね。
-導入①-
・我が国の経常収支は安定的に黒字を計上し、2023年度の黒字は過去最大となっている(図表1)
・また、2023年末の対外純資産残高は過去最大の471兆円に達し、33年連続で世界最大の純資産国となっている。こういうことだけで日本はすごいと言っている人がいる。
・このように、国際収支面から見た我が国の状況は盤石なように見えるが、その内容を子細に分析していくと、決して楽観できる内容とは言えない。まさにその通りです。
-経常収支の推移(図表1)-
この図を見てもらっても分かる通りですね。利息とか配当とかの所得収支は黄色い部分ですけれども、どんどん増えていっています。日本は海外に投資しているから放っておいても利息とか配当とかバンバン入ってくる。寝ていても豊かになっていく国なのです。
(深田)
お金持ちだけの状況ですね。
(安藤)
貿易収支は東日本大震災から化石燃料の輸入が増えているので、マイナスになっています。前は貿易収支も黒字だったけれども最近は貿易収支が赤字になっている。貿易収支が赤字でも所得収支が黒字だから経常収支は大幅の黒字を保っています。
以前の僕らの年代、深田さんもそうかもしれないけれど、日本は輸出立国というイメージがありますね。でもそのイメージはもう完全に崩れていて、もはや貿易黒字の国ではなく、貿易赤字の国になっている。この分析は正しくて、事実です。日本人が日本に対して抱いているイメージも、ガラッと変わっているのです。
-導入③-
真ん中あたりに書いています。
・必要な改革の実施を怠れば状況は益々深刻しかねない。よくある話です。改革やらないとだめだ。
・逆に、課題に正面から取り組むことで、これを克服できた場合の伸びしろは大きい。頑張ろうということです。
(深田)
身を切る改革などに繋がっていきそうな文言ですね。
(安藤)
それで、この辺が多分日本人に刺さります。
-対内直接投資①-
外国が日本に投資をしてくれる比率です。
・対内直接投資の推進は、イノベーション創出やサプライチェーン強靭化等の観点から重要ではあるものの
・日本への対内直接投資は、対外直接投資よりも圧倒的に小さい。
・国際的に見ても、対内直接投資残高の対GDP比は、OECD加盟国中で最下位となり
・更に国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計では198か国・地域中196位となるなど、著しく低い水準にある。
最悪ですという話になります。198か国あって196位かというイメージになるので、日本にはもっと外国から投資してもらわないといけないという印象を受ける。でも本当は別に外国から投資してもらう必要ないのです。国内で国が投資すればいいだけの話です。
この後ちょっと怖いことを書いています。
・他方、足元では、特にアジアからの対内直接投資は増加傾向にある。
(深田)
これはちょっと危ない国からではないのですか。
(安藤)
名前は出ていないですけれども、これを歓迎している。
・対内直接投資は経済安全保障の観点にも留意が必要であるものの、その促進は我が国経済社会の発展に大きく寄与することは忘れてはならない。
(深田)
これは安全保障に関わる国から投資が入っているけれども、しょうがないということですか。
(安藤)
そんなこと関係ない。促進したら日本経済が伸びるということ。
(深田)
恐ろしいですね。
(安藤)
すごいでしょう。とにかく、なりふり構わず「お金を引っ張ってこよう、俺は出さないけど」と財務省は言う。
(深田)
多分中国ですよね。
(安藤)
言いましたね。経済安全保障には影響あると心配する人がいるから、一応言っておくけれど、構わないのだ。とにかく投資を受け入れたら豊かになるのだから。
(深田)
この国は発展途国ですか。
(安藤)
そういうことです。自分のところにお金はあるのに、それを使わないで「すみません、うちはお金がないのでうちに投資してください」ということです。
(深田)
一帯一路で貸し剥がしに会いそうになり、国ごと取られていきそうになっている途上国の物語の第一歩みたいな感じですよね。
(安藤)
そうですよ。本当にこれを書いているのが不思議で、処方箋で書いているのです。中身をさっと見ていきます。
-処方箋-
新陳代謝の促進です。
(深田)
新陳代謝の促進、いやな予感がします。生産性の低い中小企業は潰れろと。
(安藤)
まさにそう書いてある。
-新陳代謝の促進・労働移動の円滑化による生産性向上-
・今後、金利や賃金の上昇等背景に、これまで温存されてきた、自力存続が見込めない低収益低賃金企業の体質が増加すると想定される。
(深田)
中小企業を潰して大企業だけを優遇しましょうという話ですね。
(安藤)
・これに対し、脆弱な個人を対象とした適切なセーフティネットを提供することは国の重要な役割であるが
・現状維持を思考する政策は採用すべきでない。潰すところは潰していく。
(深田)
個人が職を失っても俺は知りません。個人の職を担保するような政策は採用しません。
(安藤)
一応、セーフティネットは作っておく。見捨てることはしない。適切なセーフティネットは必要だ。でも現状維持は志向しません。潰れるところは潰す。
・むしろ、規制改革により企業間競争を活性化させて新陳対象を促すとともに
・転職に中立的な制度設計等を通じて成長分野への労働移動を円滑化することが重要である。
(深田)
またパソナですか。
(安藤)
そうです、どんどん転職しろ。退職金優遇税制もやめようという話があるでしょう。
(深田)
どういうことですか。
(安藤)
今まで20年というのが一つの区切りで、20年以上務めると退職金が優遇されていたわけです。それも最近やめようという動きが出ています。それも財務省がやっていた。転職をバンバンすると成長分野にどんどん人が移動していって経済成長する。そんなうまい話ありますか。
(深田)
絶対ないです。スキルが習熟していかないのです。転々と転職して成功し続ける人というのはものすごく頭が良くて、ハードワーカーですよ。そうではない普通の人は転職するたびに少しずつ条件が悪くなっていくのが現実なのです。無理やり中小企業を潰して、働いている人を派遣会社の社員にし、派遣会社ばかりが儲かり、大企業と派遣会社が儲かる国にしようという話ですね。
(安藤)
これを書いているのが大学の教授とか金融機関のアナリストとか、それこそ神田財務官とかね。皆さん、そんなに全然違う業種に転職をしたことあるのか。
(深田)
そうです「君達だよ。最も生産性が低く、転職したことがない」というのは。
(安藤)
そうでしょう。仮に会社は変わったことがあるかもしれないけれど職種は変えてないでしょう。
(深田)
同じことやっている人たちで、最も役に立たない人材ですよね。
(安藤)
生産性では測れない部分がありますが。
(深田)
最も生産性の低い人たちですね。
(安藤)
・また、他国と比べ低水準となっている最低賃金を引き上げることは、賃金上昇に寄与するのみならず、より生産性が高くて高賃金を支払える企業への労働移動を促進する効果も期待できる。
だから今、最低賃金上げるという話が出ていますけれども、これをやって企業が潰れていくのはいいのだ。そういう企業は潰れていくべきなのだ。そうするとより賃金が払える企業しか生き残らなくなるからいいのだ。
(深田)
それは外資とか大企業だけですよね。
(安藤)
中小企業潰すという考え方で、中小企業が憎くてたまらない。
(深田)
中小企業が大企業の研究開発を支えているという現実を無視した分析ですね。この中小企業を潰したい路線は岸信介元首相から始まっていて、岸信介さんの演説集を読んでいると「悪いが中小企業には潰れてもらう」と書いてあるのです。中小企業憎しというのはここからずっと来ているのですね。
(安藤)
あの頃はまだ高度経済成長で所得倍増計画をやっていて、それを達成しましたよね。10年位かけてやるところを多分もっと早く達成していると思うのです。そうやって所得を本当に上げていくことが実現できるのであれば、企業が潰れると言ってもいいのかもしれない。それでみんな豊かになるのだから、でも今はそんなことを期待できない。岸田首相は令和の所得倍増と言っていたけれど、引っ込めました。
(深田)
そうですよね。
(安藤)
所得倍増ということは考えていなくて、今の政府や幹部の人たちが考えているのは、低賃金労働者は低賃金労働者のままで据置きなのです。頑張る人だけは高賃金になるので、高賃金が欲しかったら頑張れ、努力しろということ。リスキリングをする人は手助けしてやるけれど、やらない者は知らない、低賃金でいいということ。
(深田)
外資に転職しなさいという話ですね。今の中小企業で直接雇用されるのをやめて、パソナの派遣社員となって大企業に勤める。そうやって大企業を優遇して、中小企業を潰す。転職する際のスキルに関しては「皆さん、ご自身で努力してください」という政策ですね。
(安藤)
それで、この一番下に書いてある文章です。
・加えて流動的な労働市場は労働者に多くの雇用機会を与えるため、個人が最適なキャリアを実現する上でも労働移動の円滑化は望ましい。これはどういうことでしょうか。
(深田)そうです。私は外資に勤めていました。2008年に新卒で外資の金融機関に入って、翌年リーマンショックで新卒の人たちはもう半分以上消えました。新卒1年目でスキルもついてないのに首になる人が続出して、その後は経済環境も悪い、金融環境も悪いから転職先がないので転落していくだけなのです。
そんなキャリアを実現するために、首を切りやすいとかそういう流動的な労働市場はいいというのは夢物語です。世界的に景気が悪い瞬間は、グローバルで大企業が何万人も切るわけです。その時、転職する先はないです。転職できるのはローカルの地元に根差した低賃金企業だけです。夢物語も甚だしい。
(安藤)
結局、そういうお花畑で暮らしている人たちがこれを書いているわけですよね。
-人的資本への投資、技術の開発・活用-
人的資本への投資とありますけれども、リスキリング支援を推進する、学び直しをする人にはちょっと補助金をあげますということです。それから若手研究者の革新的な研究を強力に後押しすると書いているけれども、裏を返すと研究者が若くなかったら見捨てるという話になってくる。40歳を過ぎたら用なしですか。
(深田)
私も用なしの部類に入ってきましたね。
(安藤)
という話ですよ。みんなを底上げするとかみんなに手を差し伸べるとかではなく、やる気のある人、頑張るという姿勢を見せる人と若手・若者だけは支援します。
(深田)
実は革新的な研究は結構シニア層の方が持っているのです。ディープテックは5年、10年でできるわけがなく、ディープテック分野は研究者として習熟して、起業する時点で、30代後半とか40代の人が多いわけですよね。そこからさらにディープテック部門に投資をして、さらに10年はかかるという部門では若手ではないです。中年以降の研究者ですよ。
(安藤)
特に長い研究の場合、一世代では無理で何世代もやっていかないと成果が出ない研究もあります。いろいろなものを研究して次の世代に引き継いで、引き継いでやっと花が開いたというものもある。みんなにお金をばらまけばいいのに、なぜ若手だけなのかという話です。
(深田)
今、半導体分野で若手の研究者と言っていますけれど、やはり半導体の研究とかエンジニアもほぼ50代、60代、70代の人が、知識も熟練度も高く、その人たちの方が優れているわけですよ。最近、インテルでチップの不具合がありました。あれも熟練したロジック設計のエンジニアが減っていて、今までインテルになかった不具合が起こっているわけなのです。
今、日本は半導体を強力に推していますけれど、その半導体の熟練したエンジニアを冷遇している。ITの世界では若手の研究者は上層レイヤーのことしか知らなくて、チップのことなど全然わからないという現実を完全に無視しているのではないかと思いました。これは色々な分野で言えることだと思います。
(安藤)
こういう状況ですごく思うのは本当に根っこの部分をやっている人たちの大切さです。それは熟練や経験が必要だったりするではないですか。その根っこを支える人がいないと上の部分が成り立たない。今は根っこを支える人たちをものすごく軽視している。この人たちがいなくても上だけ支えればいいとう考え方に見える。上を支えようと思ったら根っこを支えないと無理です。根っこをぶち壊しているから上も成り立たなくなってガラガラと崩れていく。
(深田)
そういうことだと思います。
(安藤)
こういう考え方でやっていたら、それはだめですよね。これは深田さんの得意分野だと思いますけれど、デジタル赤字は仕方がないと諦めています。しばらくは海外事業者のプラットフォームを使うしかないという考えです。
(深田)
アメリカはそうなのですけれど、プラットフォーム系は裏で政府が支えているのですね。プラットフォームの企業は若手の人がどんどん出ていってソフトウェアだけでやっていけるイメージがあるのですけれど、あれはインフラ事業です。巨大なデータセンターを作るわけです。アメリカでデータセンターを作るということは町を作ることと同じぐらいの規模の土地と投資の金額が必要です。
アメリカがなぜGAFAを生み出せたのか、本当の理由は国がきちんと後押ししている。そこを無視して「私たちはもう諦めました」という。諦めました宣言をしている。諦めましたという前に「お前、金を出せよ」と思います。
(安藤)
一応、電力が大事だと書いています。電力の安定供給は欠かせないと書いてありながら、ではどうするのかとは書いていないです。
(深田)
だったら、賦課金をやめろ。
(安藤)
原発再稼働を少し書いていたりするが、デジタル赤字は諦めましたと書いています。
(深田)
中小企業が潰れるのも諦めてください、個人が職を失うのも諦めて自分で勉強して転職してください、デジタル赤字も諦めましょうということですね。
(安藤)
-国内投資・対内直接投資の促進-
国内投資をやっていくには今まで言ってきた改革をやらないといけない。国内での投資から得られる期待収益率が低いと認識されてきたから投資が足りなかった。改革をして日本の成長力が高まっていけば、みんな投資をしてくるようになるという話なのですが、TSMC(台湾積体電路製造)は日本にすごく投資をしましたが、あれは何故ですか。
(深田)
ここで言っていいのか分かりませんが、利権ですよね。一部の政治家がこういう企業と癒着して、間に台湾系のフィクサーが入って、そこに金を流す。その一部が色々な関係者に還流されていくということです。単なる利権のために政府が1.2兆円というお金を外資1社に出せるのに、なぜ日本の企業に投資しないのかと私はいつも思うのです。
(安藤)
国が1.2兆円を出すと決めたからTSMCもやるという話になった。
(深田)
国が出すという話をしなかったらTSMCは出さなかった。経産省に問い合わせたら、我が国の歴史以来最高額のお金が外資一社に出ているわけです。日本企業でもこんなにもらったことはないのです。
(安藤)
だから国内に直接投資をするのであれば、政府がお金を出せばいいのです。
(深田)
国内企業に出せばいいのです。国内企業に投資をするから「お前も半分出せ」でいいのではないですか。
(安藤)、
ところが、この後全否定するのです。TSMCの事例を突っ込んでくるだろうと思っている。だから全否定するのです。
・なお成長分野は個々の企業によるリスクを伴う投資により生成・発展するものである。
・不完全な情報しか有さない政府が成長分野を特定して、補助金等を通じて投資を誘導することはモラルハザードやレントシーキングを助長するリスクもあり、慎重に考えるべきである。
(深田)
だったらTSMCの助成金を打ち切れよ。
(安藤)
だから、あんなことはやってはいけないと釘を刺すのです。TSMCは特殊なので「政府が金を出したら投資されるじゃないか」ということは言ってはいけない。政府は不完全な情報しか有しないから成長分野を特定するなどと、政府がやってはいけない。
(深田)
だったら、中小企業のことに口出しをしないでください。
(安藤)
個々の企業がリスクを伴う投資をしないといけない。政府はもう投資をしないということを書いている。
・半導体等の戦略的分野では、他国が多額の補助を行っている現状にも鑑みれば、一定の支援が正当化される場合もあろうが
・今後は国家間の公平な競争条件確保に向けた国際的な取り組みを強化していくことが求められよう。「TSMCみたいなことはもうするな」ということですね。
(深田)
そもそもするな。
(安藤)
「政府は金を出すな」と、そこだけはしっかり財務省らしくやっています。
-結語-
ここで根性論です。
・改革を着実に実施し、市場経済のダイナミズムを強化すれば競争力のある日本経済を取り戻すことは十分可能である。
・我が国企業は370兆円にも上る現金・預金を有するなど、未来に向けた投資のためのリソースは十分にある。
(深田)
「私たちはお金を出しません」といことですね。
(安藤)
そうです「お前の金370兆円使え、俺は出さないけど」とこれは何なのか。
(深田)
最も生産性が低い日本政府から潰していかないといけないですよね。
(安藤)
お金を一番持っていて、リスクを取れる者が「俺は出さない」と宣言する。
(深田)
外資にだけ出す。でもこれ以上は出さない。
(安藤)
もう二度とやらないと言い、日本の企業に「お前、金持っているから貯めこまないで、自分でお金を出してリスクを取れ。損をしたら自己責任だ」と言っているわけですよ。
(深田)
最低ですね。
(安藤)
その人が内閣官房参与に入って、この政策を総理に直接助言をして進めていくのです。
(深田)
早く政権が倒れてほしいです。
(安藤)
冒頭にも言ったように安倍内閣、菅内閣、岸田内閣も全部この路線で、あまり変わらないのです。この路線が染みついていて「これが正しい」と霞が関、永田町の幹部は信じ込んでいるわけです。だから内閣変わったところで、今の自民党が政権でいる限りはこの方向性は変わらない。
(深田)
これが野党になっても大して変わらないのではないですか。
(安藤)
だから、ひっくり返るような政権交代を仕掛けていかないと本当変わらない。
(深田)
そうですね。ということはあまり望みがないのかもしれないのですが、大丈夫でしょうか。何か秘策を持っている安藤先生の実行力に期待をしたいと思います。今回は安藤裕先生から神田財務官、『ザイム真理教』の伝道師が内閣官房参与になってしまったという恐ろしい未来図を教えていただきました。先生、ありがとうございました。