「中国崩壊で日本経済は復興する」田村秀男 × 深田萌絵 No.99
【目次】
(深田)
自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回は産経新聞特別記者の田村秀男先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。今回は、「脱中国で日本経済は蘇がえる」という景気のいいテーマでお願いします。最近、日経平均が4600円安になりましたが、本当に、蘇れますかね。
(田村)
株の暴落は、私もズッコケましたね。僕は元々、日銀の植田和男総裁が「超円安はダメだから、早くもっと利上げしなければいけない」と言い続けてきました。何をたわけたことを言っているのかと、かなり批判されていました。急速に利上げすると、日本から出ているお金が逆流してしまいます。
(深田)
キャリートレードで円を借りて、外国に投資をするということですね。
(田村)
キャリートレードの規模が半端ではないのですよ。「アベノミクスのせいだ」「異次元緩和のせいだ」と言う人が実に多いのですが、実際にキャリートレードの規模を示すデータを探してみたところ、財務省のオフショア勘定残高という統計資料を見つけました。オフショアでは銀行などが外外の取引をやっており、主に短期のお金をやり取りしています。
(深田)
外外取引とは何でしょうか。
(田村)
オフショアです。例えば、日本のUFJ銀行が国内のどこかにお金を融資するのではなく、外国の銀行の支店や外国の銀行とダイレクトに外外取引します。つまり、その取引は日本国内の経済と無関係なのですが、お金は勝手に動きますから、結局投機筋のお金になります。その残高が急速に膨らんで、300兆円ぐらいになりました。ウクライナ戦争は2022年の2月24日に始まりました。3月にアメリカのFRBが金利をどんどん上げるようになりましたから、急速に膨らんでいきます。今、残高でいうと、おそらく150兆円ぐらいあります。このお金でほぼ外国系の投資ファンドあるいは金融中心にキャリートレードが行われています。そのお金を供給しているのが日本の銀行ですよ。
(深田)
そうですよね。2000年代の日本のキャリートレードの様相と似ていますよね。
(田村)
ほぼ共通しています。
(深田)
元々、緩和をしていたところ、日米の金利差が拡大すると共に、キャリートレードも拡大しました。
(田村)
日銀がゼロ金利政策を解除したのは2000年の8月、リーマンショックが2008年9月、さらに2006年8月にゼロ金利政策を解除しました。
(深田)
そうですよね。
(田村)
2000年にゼロ金利政策を解除した後、アメリカのITバブルが崩壊しました。そして、2008年のリーマンショックの前に、日銀がゼロ金利政策を解除したら、アメリカの不動産市場がおかしくなりました。
(深田)
なるほど。
(田村)
結局、それがリーマンショックに結びついてまいったと推定できます。背景にこのキャリートレードが膨らんでいたところ、日銀のゼロ金利政策解除や利上げにより、流れが一挙に逆転して、あのような崩壊になったのだから恐ろしいですよ。
(深田)
恐ろしいですね。
(田村)
植田さんは何にも知らないと思っていましたが。
(深田)
世界大恐慌の引き金は植田さんが引くのですね。
(田村)
今回もそれに近い、本当にやばい状況ですよね。
(深田)
副総裁の内田さんがもみ消しに走っていますよね。
(田村)
内田氏は日銀の生え抜きで、学者上がりなのです。日銀の生え抜きの連中から、いつも教えてもらっている植田総裁は、内田さんの言う通り「利上げする」と言ってきましたね。今度は慌てて、内田副総裁が北海道に行ったとき、「金融市場が不安定なときは、利上げするつもりありません」と言って、打ち消してしまったのです。
(深田)
節操のない言動ですね。
(田村)
どういう根拠でもってこの発言をしたのか疑問です。日銀はダメな機関ですね。そもそも分かっていなければいけないことですよ。
(深田)
そうですよ。「円安なんとかしろ」と圧力がかかったので、利上げで対応しようと考えたのでしょうか。
(田村)
「円安は悪」という印象を植え付けていたのですね。要するに、「円安が全て悪い」「円安になれば物価が上がる」「円安は行き過ぎだ」と言って、良い面を全部知らんふりしているのですよ。私は日銀の政策はグローバルなお金の流れに影響します。それから円安は、日本の設備投資を増やしたり、企業収益を増やしている側面もあります。今回の賃上げだって、円安を受けて行われたことです。これらの側面を一挙に消してしまう考え方はあまりにも稚拙ですよね。
(深田)
よく練られておらず、行き当たりばったり
(田村)
メディアもメディアで「円安が悪い」とばかり言っています。政治の方も岸田さんが「早く是正すべき」と言っています。財務省は円安が大好きだから、後ろで色々と仕掛けています。日銀はそれに押されて、植田さんはここぞとばかり「俺の出番だ」と利上げしようとしています。すっかり全部歯車が逆になってしまったのです。
(深田)
今回、円安から円高に向かっているのですが、先生は円安に向かうことで実は日本経済が良くなるとおっしゃっていますよね。ここで「脱中国」がキーワードになりますね。
(田村)
「脱中国」と非常に関連があります。僕はなんでも「円安をやれ」と言っているのではなく、あくまでグローバル金融における日本の位置で考えたものです。せいぜい円安と言っても、一定の水準で安定していれば別に問題がないのです。1ドル150円の水準であったら、日本で物を作ったり投資したりする方がより高い収益を得られる可能性が出てきます。
(深田)
そうですよね。これまでは、人件費の安い海外で作っていましたが、日本の製造拠点を戻せば、今のGDPの全体の2割くらいを占める貿易がまた伸びる可能性があります。
(田村)
経済でよく出てくるたとえ話として犬と犬の尻尾の関係があります。尻尾が犬の胴体を振り回すようになればおしまいでしょう。経済もそうなのですよ。この日本経済の尻尾が円相場なのだろうけれども、円相場に振り回されることは非常にまずいです。本体の方がしっかりしなければいけないのです。尻尾がどんどん下がってくれば、それに応じて体力つければいいのです。
円安のメリットは、多大なるものがあります。特に国際競争力が高くなりますし、日本で投資して作った方が良いに決まっています。ただし、これが永続的に続くかわからないので、企業も日本に投資して、日本に帰ってきていいのか、今ひとつ信用が置けないのです。1ドル100円であろうと、120円であろうと、150円であろうと、その水準でできる限り安定的に推移できるマクロ政策を取るしか方法はないのですよ。
(深田)
なるほど。ただ、1ドル110円、120円の時代でも、海外によく行くのですが、中国製品が意外と安くないのです。香港も上海の物価も高いので、出張費用もますます嵩みます。
(田村)
そうですよね。アメリカに出張すると大変ですよね。アメリカのニューヨーク、ワシントンDCのホテルを取ろうと思ったら、ぼろホテルで「こんなに値段するの」と驚くようなことがあります。
(深田)
そうですよ。今、アメリカで朝ご飯トーストに卵やコーヒーをつけると、大体3000円を超えます。
(田村)
そうなります。
(深田)
大して美味しくもないのに3000円くらいします。
(田村)
「円安で大変だ」と言うのですが、100円から150円にいって50%円安になったら、賃金も50%上げれば良いのです。
(深田)
そうですね。そこまで単純には上がらないと思います。部品を輸入しているので、コスト高にきています。
(田村)
でも、政策の当事者や企業の経営者が円安に対して、賃金や価格を上げる意識を持つのが当然とするシステムになればいいのです。確かに、すぐにはこうならなくとも、円安のマイナス部分はかなり取り返せると思います。
(深田)
個人消費が回復しないと、消費税増税が効いています。
(田村)
財政で締めていますね。私の本でも、中国がせっかくズッコケているこの機会に中国に依存しない、強みを十分発揮するチャンスだと書いています。中国に依存すると、ロクなことにならない側面もあります。
(深田)
そうですね。しかし脱中国をしようとする前に、まずは脱自民党をしなければならないのではないでしょうか。
(田村)
脱自民・脱公明です。自民党の方がまだ色んなグループがあります。私の話は結構、自民党の多くの人たちは理解しますが、やはり政治の世界は、なかなかそうはいかないのです。親中の塊である公明党をなんとかしなければなりません。
(深田)
岸田首相は、本日8月14日の11時半に「脱岸田」を発表されました。
(田村)
もう辞任されるということで、それは何よりですが、岸田氏よりひどい方が出てくる可能性もあります。
(深田)
そうですね。セクシー路線ですか。
(田村)
日本のビジョン、財政や金融、中国問題、対米関係について、しっかり自分の口で語れるべきです。要するに日本の経済は再生できると確信を持って、ビジョンを語っていただきたいですね。
(深田)
多分、その人にビジョンを語ってもらったら、10年後の日本や、その頃僕は一体何歳なのだろうかと語りそうですね。
(田村)
本当に政治の役割は大事です。
岸田さんはその会見の冒頭で、「30年のデフレから完全に脱却できるチャンス」を今迎えていると言っていました。まったく脱却できていないのですよ。
(深田)
インフレで苦しんでいるのに需要が落ち込むという最悪な事態を言い代えていますね。
(田村)
脱デフレと言ったこと1点においては評価したいのですが、その脱却のチャンスに「その脱却する最後の一押し」ができない人だと苛立つ思いがありましたね。
(深田)
ああ、なるほど。今後総裁選で自民党が新生するのではないでしょうか。
(田村)
今度またデフレに戻すような人が出てきはしないかと思っています。ポスト岸田が逆に悪くなる可能性だってあります。
(深田)
そうですよね。結局、財政政策はずっと財務省が握っているので、財務省がそこを離さない限りは難しいのかもしれません。
(田村)
その場合、「財務省不要論」になってしまいます。財務省はあくまでも、省の一つなので、強大な権限を与えると弊害が起きるに決まっていますよ。
(深田)
どのような方法で財務省の力を削いでいけるのでしょうか。
(田村)
アメリカは非常に良いケースだと思います。議会が予算の権限を持ち、アメリカではホワイトハウス、日本では内閣で決めることが民主主義の基本です。アメリカの財務省は予算の単なる原案は作るのですが、あくまで草案であり、参考資料です。しかも、最終的にその草案を作るのはホワイトハウスです。ホワイトハウスはその草案を印刷して、議会で審議にかける。要するに「デッド・オン・アライバル」でして、その草案は議会に持って行った時点で「死んで」います。アメリカの予算なのですよ。
(深田)
つまりどういうことが起こるのでしょうか。
(田村)
議会がこれから決めるので、参考資料があるけれど用がないということです。
(深田)
なるほど。そこがやっぱりアメリカと日本の違いですよね。
(田村)
それほど予算は大事なのです。
(深田)
日本の議会は何も戦っていませんし、審議していません。予定調和の原稿を読んでいるだけですが、アメリカの議会は真剣に戦いますよね。
(田村)
議会ではスタッフとしてエコノミスト集団を抱えていますから、しっかりデータ分析をして、マクロ経済の見通しや予算をやります。
(深田)
向こうはすごいですものね。議員一人に何十人も秘書を雇えるだけの予算がもらえるので、それが日本の議員との違いですね。
(田村)
こっちは、とにかく役所にお願いするしかないです。
(深田)
そうなのですよ。そのような部分が、日本がなかなか浮上できない要因でもあるかもしれません。
(田村)
内閣府は本来エコノミスト集団でして、マクロ経済部門は経済企画庁でしたから、発言力をもっと持っていいと思います。
(深田)
そうですね。とにかく内閣主導で「脱中国」をしましょう。
(田村)
とにかく中国製EVの原材料サプライチェーンも全部押さえられてしまっていますから、中国に頭が上がらない状況です。「習近平さんのおっしゃる通り」に結局なってしまいますから、本当にやばいことです。
(深田)
そうですよね。「脱中国」「脱EV」「脱太陽光パネル」で日本はガソリン車を推進していただきましょう。
(田村)
やはりハイブリット車でしょうね。トヨタ方式がやはり一番リーズナブルで理にかなっていますからね。
(深田)
今回、田村秀男先生に脱中国で日本経済は蘇るというテーマでお話いただきました。先生、ありがとうございました。