「不動産バブル崩壊は近い!?」深田萌絵×牧野知弘 No.83
【目次】
- 00:00 1. 政治家の発言を信じると不幸になる
- 03:55 2. 金融と不動産が一気に崩れる恐怖
- 08:17 3. 金融は信用せずに警戒せよ
- 11:38 4. 不動産業者や銀行は無責任
- 15:14 5. チョイ悪な不動産世界の裏話
- 19:20 6. 改装業者の家賃保証のカラクリ
(牧野)
日銀が世の中をコントロールできているのであれば、もっと日本経済は良くなっているはずです。彼らはコントロールできていません。
(深田)
彼らが自分自身で金融政策を取っているとはとても思えません。中央銀行の独立性というものが全く保てておらず、日銀総裁という出世頭の最高位につくためにどうしても政治家にすり寄らないといけないという構造を考えると、非論理的な動きをするというのはあり得ますね。
(牧野)
ですから、私たちは直接国の政策に関わることはもちろんできませんが、自分たちとしてちゃんと経済や金融の流れというのは、勉強はできますので、決して国が言うから大丈夫とか、あるいはなにか偉い人が言うから信じようというのではいけません。実際のマーケットをよく見て、どんな事態になっても対応できるように考えながら投資をする、あるいは自分の住宅を持つということを考えていただきたいと思います。
(深田)
政府発表を信じる、政治家のいうことを信じると、いくらでも不幸になれると思うので、政治家の発言の逆を行くぐらいの気持ちでいないと—
(牧野)
マーケットでもよく言いますね。みんなが買っている時というのは逆に危なくて、みんながちょっとリラクタントになって覚めている時に賢い人は買う。これは不動産でも全く一緒なのです。私のすごく親しい不動産の訴訟役をなさっている方で地方の富裕層なのですが、今のように不動産が非常に高騰している時は、彼は大人しい。それで不動産がリーマンショックの頃でしたか、ちょっと下がった時、電話がかかってくる。「牧野君そろそろいい物件ない?」みんなが困っているとみんな売り急ぎます。そうすると安くなっていくのです。それでこれを思いっきり買い叩く。今ウハウハです。それで高くなったら当然売ります。
(深田)
彼はそろそろ売り始めていますか。
(牧野)
もう売っています。もう大体売ってしまったのではないでしょうか。
(深田)
東京都内のマンション価格の上がり方がここ数年で普通ではありません。しかも金利も上がりそうな予兆が見えているし、売り時ですよね。
(牧野)
あともう一つ言っておきたいのは、よく使われる論法ですが、東京の不動産価格はまだまだ安いという人がいます。それはどういう比較をしているかと言うと、香港とかあるいは シンガポール、こういったところと比較して安いと言っているわけです。
(深田)
外国人投資家目線で、我々土着の人がサラリーもらって投資できるかと言えば、そうじゃないですよね。
(牧野)
そうです。だから、昔々まだまだ東京が元気で、日本が世界の経済を回している時には、そういう比較というのはある意味正しいという側面はもちろんあるのですが、今は残念ながら日本の国力とそれからアジアの経済の勢いを比較すると、情けないぐらいに日本は元気がない。だから当然元気がないから今後元気になるだろうと思って買いももちろんあります。しかし、なかなか元気になる要素がありません。
(深田)
ありませんね。今円安が進行していますが、製造業ももう90年代に工場を全部海外にやってしまっていて、貿易の依存度も17、8%なので、円安でこの輸入物価が上がって逆にこうダメージを受けているような状態で恩恵を受けられていないのです。
(牧野)
これで日銀が金利上げられないということをずっとやっていたら、日本はどんどんダメ、円安になります。間違なく。
(深田)
でも今ものすごく難しい状況で、需要不足でものすごく経済環境が悪い中で輸入物価の上昇なので、にっちもさっちもいかないというのが今の日銀の現状なのではないかと思うのです。
(牧野)
だから上げるに上げられないでずっと指をくわえていると、では状況は良くなるのかと言うと状況はさらに悪くなる。これをずっとやり続けていると、今のところ金利が低いままなので、不動産会社はまだもっとアクセル踏んでいても大丈夫かも知れない、だけどどこかでブレーキを踏まないと厳しい。大手の不動産会社あるいは不動産関係者は全員そう思っているはずです。
(深田)
そうですよね。今かなり微妙な時期ですよね。
(牧野)
チキンレース状態ですね。
(深田)
いつでも収益を上げないといけない、前年よりも売上を伸ばさないといけないという思い込みがあるとなかなかブレーキもかけにくいところはあるかも知れません。
(牧野)
そうですね。特に会社の組織が大きくなって、毎年、当然上場カンパニーなので、投資家から配当を求められるというような立場になればなるほど、さっきで言う住宅論ではありませんが、みんな無理をしてしまいます。みんな無理をしてやっぱり一年一年でしっかりとした数字を作らなければならないという使命感があって、皆さん真面目ですから、これでやり続けてみんな疑心暗鬼になっているのですが、もうちょっとできるのじゃないかと思ってやり続けると、リーマンショックではありませんが、どこかで沸点を超える。不動産マーケットが非常に怖いのは金融と完全に今リンクしていますから、金融と不動産が一気に崩れると、これはちょっと怖い。
(深田)
リーマンショックの時もそうでしたが、2006、7年も金利の動きが0.何パーセントですが、日本でもちょっと上がりました。そして不動産価格もバブルだという風に言われていた時期で、アメリカの不動産市場のフレディマックとかあの辺りがメザニン系の債券を作って、しかもサブプライムローンとかで不動産価格が上がった分だけお金を貸してあげますよということもやっていた。だから、一回弾けた時に収集がつかなくなった。それを機に日本にも波及したっていうことですね。
(牧野)
その通りです。私はあの時はJーREITの社長をしていたのですが、サブプライムローンの話というのは、実は2007年ぐらいからもう当然知っていました。
(深田)
そうですよね。私も2007年はサブプライムローンをウォッチしていました。
(牧野)
それでその頃、色々情報はもちろん得ていましたが、まさか日本に来るとは思っていませんでした。アメリカも随分突っ張ったことをするなと、住宅ローン債権を証券化して、小口化して、多少金融をかじっていましたので、「そりゃあダメになるよね」と私たちは社長同士というかリートの関係者同士、みんなで言っていました。「やりすぎだよな」とか言っていたら、ものの半年ぐらいで今度日本にも来ました。
(深田)
あれは2008年の9月ですね。私もその当時、ちょうど金融機関にいて金利のトレーダーの隣でずっと金利マーケットを見ていました。クレジット・デリバティブズを扱っていたので。
(牧野)
あの波というのは来る時には一気に来るので、もう対処の仕様がないのです。
(深田)
しかも日本の銀行がずるいのは、ほぼゼロ金利で金利を提示して、オーバーナイトものとか出してきますが、それを叩きに行っても絶対に貸してくれません。
(牧野)
そうですね。
(深田)
これって自分たちが金利を払いたくないから、低く金利を提示して、でも貸してくれと言ってきた人には絶対貸してあげないという、これは金融商品取引法違反とか、法令違反になるのではと思っていました。
(牧野)
そういった意味では金融というのは非常に恐ろしいものなので、私も今不動産をやっていますけれども、金融というのは、全然信用していないというとあれですけれども、ものすごく警戒しないといけない。
(深田)
私も金融商品全く信じていません。デリバティブズ商品を前の会社で取り扱って、設計して売っていたのですが、その上司のあくどさを私は見ていて、そんな商品をお客様に売ったら危ないでしょというものをやっぱり売っていたので、はっきり言って、詐欺ではないけれど不道徳な商品を売っていた。だから、お客様から訴訟されているわけです。ああいうものを見ているので今新NISAだなんて言われても、これは政府が私たち国民を騙そうとしているのではないのかとすごく警戒してしまいます。
(牧野)
そうですね。どこまで警戒するかというのは人によって違うかもしれませんが、常にそういうリスクというものを考えないといけない。金融もそうですし不動産もそうなのですが、なんとなくその場の雰囲気でみんなが買うからとか、国が言っているからとやって大体成功した例はありません。
(深田)
私もそう思います。国が進めるものは罠です、本当に。
最後に一つ質問が来ています。
「年収200万円台の非正規雇用者です。地方でお勤めをしていますけれど、1000万円台のワンルームマンションを不動産業者からローンを組んで買うように勧められています。ただし私は非正規雇用で年収200万円台なので、マンションは欲しいのですけれどもちょっと怖いかなと思っています。先生はどのようにお考えでしょうか。」
(牧野)
なるほど。その1000万円のワンルームマンションはどこなのかというのが不動産を考える場合には最も重要なことで、イエスもあればノーもあるのです。ただ一般的にお答えすると、やらない方がいいです。やらない方がいいというのは、このワンルームを借りる方、昔は若い人という刷り込みがあるのです。今は、お金のない高齢者が主体です。
(深田)
そうなのですか。
(牧野)
はい。もちろん新しくて立地が良くて、いいワンルームであれば、独身で十分なお金を得ているサラリーマンの方であったり、学生さんであったりというマーケットももちろんあるので、それが一概に言えないというのが理由です。しかし、価格がどんどん下がっていくようなワンルームマンション、例えば中古を無理くりローンを組んでお買いになると、テナントがなかなかつかない。テナントがつかないと誰が入ってくるのかと言うと当然経済的に困窮している人たちが入ってきます。そういう人たちに貸してしまうとまず解約してくれません。
(深田)
家賃を払わないのに解約してくれないとかですか。
(牧野)
最悪は。つまり、入っていただくことはありがたいと思うかもしれませんが、家賃の値上げはまずできません。日本は借家権が非常に強いので一旦入れてしまうとなかなか出すのは難しくなります。
(深田)
借りている人の方が立場は強いと。
(牧野)
強いです。従って逆に言うと借り手側は借りた者勝ちです。借りた者勝ちだから、賃料の値上げ交渉など無視しても大丈夫です。よっぽど世間相場から大きく乖離して裁判を起こされて負けるということがなくはないですけれども、今全体的に家賃相場はそんなに急激に上がらないですから、 値上げの要求はほとんど撥ね付けても大丈夫です。
(深田)
それでは、年収200万円台なのに無理して買うことはない。
(牧野)
そうですね。逆に大家側からするとそういった人たちが入ってなかなか値上げにも応じてくれない、あるいは家賃の滞納が続く、それから、嫌な話なのですけど高齢者になると孤独死をされたりとか、そういった事故物件になってしまう。その1000万円、銀行は金を貸すことに目的があって、オーナーさんあなたの人生を保証してくれるものではないですから貸せればいい。不動産を売る側からすれば売れればいいと思っているだけで、誰もオーナーさんの今後を保証してくれるわけではない。そういった意味では1000万円のワンルームマンション、ちょっと感覚的に聞いてるだけなのですけれども、多分あまりいい立地でもないでしょうし、築年の浅い優良な物件ともあまり思えませんので、考え直した方がいいかと思います。
(深田)
なるほど。私もこのご相談を伺った時、これはちょっと危険な案件ではないのかなと思いました。売り込んでくるということは向こうにとって有利な案件であって、私たち一般庶民にとって有利なものではないはずです。
(牧野)
ちょっと業界の裏話をしましょうか。あまり報道されてはいませんが、一部の金貸し屋さんと、そこを中立ちするような不動産業者とかいろんな人が結託する。そして飲食店とか物販店などで働いているような、例えば調理師の方とかアルバイト等でそれこそ非正規で働いているような人で、あまり年収のない方でも、マンションが買えるようにします。
源泉徴収票を偽造して、例えば年収が300万しかないのに700万にする。それで金融機関にもそれを持ち込む。金融機関は全部チェックすればいいではないかと思うでしょう。ところが例えばフラット35とかいろんな公的な機関を含めた融資制度を使うと、これあまり言っていいかどうかわかりませんが、意外と融資の審査は甘い。この偽造したものをほとんど見抜けない。
(深田)
えっ、見抜けないのですか。
(牧野)
実はそれで貸してしまった、買ってしまったマンションというのは世の中にたくさんあります。
(深田)
それはどうなってしまうのですか。
(牧野)
それでもう一つちょっと罪深いのは、「いやいや俺そんなマンションなんか買いたくねえしさ」というような人のところに持って行く。「大丈夫です。いや萌絵さんが住まなくてもいいんです。貸せばいいのですよ。貸したら今住宅ローンの金利うんと安いからこの返済は全部賃料でなんとでもなります」と言って誘うわけです。住宅ローンというのは自分が住むためのローンです。賃貸用の不動産であればいわゆるアパートローンになるので金利水準が全然違います。それで、金利が高いと当然危ないので、自宅に住んでいることにします。自宅に住んでいることにして住宅ローンを引っ張ってきて、要はインチキをやっているわけです。それで住宅ローンの金利で人に貸す。それであなたは資産持ちになれますよと、こういうセールスをしている人は実は世の中にたくさんいます。
(深田)
そうやって投資している人は結構いますね。
(牧野)
今回の晴海フラッグでも問題になっていますが、あれは全部住宅ローンで調達して貸そうとしている人がいるという噂です。
(深田)
バレたら何かの罪になるのですか。
(牧野)
バレると、住宅ローンが全額返済を求められます。
(深田)
えーっ、怖い、それ怖いです。
(牧野)
もちろんアパートローンに切り替えればいい。ですが、嫌でしょうね。
(深田)
アパートローンに切り替えたら金利が—
(牧野)
上がります。大体今でも4%ぐらいではないでしょうか。
(深田)
そうですか、恐ろしいですね。
(牧野)
それをやっているに違いないと、私の知り合いで晴海近辺の不動産さんも言っていました。「みんな住宅ローンで借りてさ、買ってさ、賃貸に出しているのだよな、けしからんよな」とか言っても別にそれを喋っている人たちに何の責任もありません。やっている人が悪いのですから。ここは世の中の面白いというか良くないところで、売っている人から見れば、そんな知らなくて別に売っただけですと—
(深田)
そそのかした人はしらばっくれる。
(牧野)
しらばっくれる。
(深田)
恐ろしい。
(牧野)
「いや、知りませんでした。そんな賃貸に回すなんて僕は全然知りませんでした」と。大体不動産の世界というのは、こういう—
(深田)
ちょっとチャラい、チャラいと言ったら悪いですが。
(牧野)
ちょい悪の人が多い。でもそれに乗っかってしまう人もたくさんいるのです。
(深田)
あともう一つ質問が来ています。その方は30代半ばの女性ですけれども、お父様が亡くなられてお母様がその小さなアパートを引き継ぎました。それを業者さんが改装して貸しに出しましょうと言う。その時に自分たちで改装してあげるしお客様も自分たちがつけてあげるし、最初の2年間は家賃保証もします、と。だから改装しませんかと言われているのですが、どうしましょうかという質問です。
(牧野)
別に悪くないお話ではあるので、仮に乗ったところで大きな損失が出るかどうか分からないです。分からないですけれども、業者の立場からすれば、当然自分たちのところでリフォームをして、それであとはオーナーさんに2年家賃保証するから大丈夫ですよというセールストークなのでしょうが、工事費の調整は一切しません。
(深田)
工事費の調整。
(牧野)
その業者さんは工事で儲けるということが目的なので、例えばその相談されているお客様からすれば本来であればA社、B社、C社ぐらい相見積もりをとって、一番リーズナブルでちゃんとやってくれる業者を選択できるはずなのにその話に乗ってしまうと、本来例えば500万円ぐらいで出来た工事が700万円ですと、800万円ですと言われてももう拒否できません。
業者さんから見れば2年ぐらいの家賃などというのは、改修して全部綺麗にすれば大体借り手がつきやすい。そのくらい保証しても全然痛くも痒くもない。アパートとかそういったところというのは、大体築5年、6年、10年ぐらい経過するとだんだん家賃も下がってくるし、テナントもつきづらくなります。この辺を彼らはよく知っていますので、当初二年だったらほとんど保証してないも同然なので、それで高い工事費をいただきましょうと、こういう業者もいますので、ちょっと注意された方がいいです。
(深田)
なるほど。本当に勉強になります。やっぱり、お金持ちの人はいいですが、なけなしのお金でアパートを買うとか投資をするとか、親からの財産を受け継ぐとなると、どうしていいかわからないというのが現状ですから、こうやって色々と教えていただいて本当に勉強になりました。
今回はオラガ総研の代表取締役、牧野知弘さんに色々と不動産市場の表と裏について教えていただきました。先生ありがとうございました。