#73―山崎拓×深田萌絵 自民党元副総裁 山崎拓氏が語る『自民党総裁選の行方』

(深田)

自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵です。今回は元自民党副総裁の山崎拓先生にお越しいただきました。先生、よろしくお願いします。

山崎先生に今日お越しいただいたのは、私たち一般国民にとって非常に気になる「これからの自民党はどうなるのか」について、お話を伺いたいからです。

去年の暮れから裏金問題があり、そして派閥解消と、いろんなことが起こってきましたが、今後自民党は一体どうなるのでしょうか。

(山崎)

自民党が今ピンチにあることは間違いありません。それは、4月の国政選挙の補欠選挙で3連敗し、さらに東京都議会議員選挙でも2勝6敗という惨憺たる結果に終わり、非常に評判が悪いのです。ですから、仮に総選挙、いわゆる衆議院選挙があれば自民党は惨敗し、公明党の力を借りても過半数を取るのは難しいかもしれません。そうなると、政権交代もあり得ます。

岸田政権は6月に解散を目指していましたが、あまりの自民党の評判の悪さに選挙ができず、幸か不幸か総裁選を9月に迎えることになってしまいました。そのため、総選挙は延期されましたので、実際の時期は総裁選で決まった新しい総理が決めることですが、早ければ秋頃になると思います。

(深田)

いま、岸田政権の支持率が非常に低迷していますが、山崎先生はその最たる要因をどのようにお考えでしょうか。

(山崎)

自民党の支持率が低下しているのは、岸田政権に対する国民の評価が非常に低いからです。これは失政によるものではなく、自民党の不祥事や裏金問題などが原因で自民党の評判が悪くなり、責任者である岸田総理の評判も悪くなっています。その結果として、岸田内閣の支持率が非常に低い状況に立ち至っていると思います。

(深田)

なんとか挽回しないと、自民党は非常に危険な状態ですよね。

(山崎)

そうですね。自民党は以前も政権を失ったことがありますが、今回が3度目の危機になると思います。

(深田)

国民としては、岸田政権に不満がある一方で、野党が政権を取って民主党政権のような時代が再び来るのは避けたいという思いもあります。

現政権がもたない場合、新しい自民党の顔は誰になるのでしょうか。

(山崎)

新しい顔は9月に行われる総裁選で選ばれる新しい総理になります。岸田総理の続投、もしくは別の人になるのかですが、最有力候補は石破茂さんだと思います。

(深田)

国民感情としては、岸田さんにはそろそろ交代していただきたいところです。

他にも加藤勝信さんや河野太郎さん、小泉進次郎さん、小林鷹之さんなどの名前も上がっていますが、その中でも石破さんが強いということでしょうか。

(山崎)

総裁選では国会議員の票と、それと同数の党員投票がありますが、党員投票では石破さんが圧倒的に強いと思います。派閥がなくなりましたので計算が難しいですが、岸田さんが出れば、国会議員の票については少なくとも2〜3割を取ると思います。

(深田)

そんなに得票率が高いのですか。

(山崎)

国会議員だけですよ。たくさん候補が出れば、あるいは1番手になるかもしれません。党員投票では、岸田さんはかなり低位になると思います。

(深田)

党員投票と国会議員投票を同時にやると、一般党員の票が多い石破さんに有利ということでしょうか。

(山崎)

もちろん国会議員の票が分かれるので非常に微妙なところはありますが、石破対岸田で互角になる可能性はあります。

石破さんは党員投票では圧倒的に強いと思います。

(深田)

最近の報道を見ていると、石破さんが台湾を訪問されるということなのですが、総裁選を前に台湾を訪問するのは、何か意味があることなのでしょうか。

(山崎)

私も今朝、新聞記事で見て驚いたのですが、あまり総裁候補としては賢いやり方ではないと思います。

総理になれば日中関係は非常に重要です。台湾海峡を巡って米中が戦うことになれば、日本は巻き込まれるので、巻き込まれないようにしなければならない。米中が戦わない状況を作らなければならないのです。

そのためには日本が仲介役として非常に重要な役割を果たすので、中国側と対等に話し合うことが重要です。そして「台湾の武力解放はやめろ」と言える立場にならなければ、米中戦争を回避できません。

そういう意味で、いま台湾に行ってしまうと、仮に総理になっても、中国側に対して「台湾の武力解放はやめろ」と言える立場をなくしてしまうので、まずいなと思ったわけです。

(深田)

以前、高市早苗さんも台湾を訪問されていますし、ほかにも自民党の国会議員で重要なポジションにいる人たちが台湾を訪問していて、台湾が、まるで自分たちがキングメーカーだというような顔をしているように見えるのですが、その辺りはどう思われますか。

(山崎)

だいたい右寄りの人が台湾に行っているわけです。私も右寄りの人間ですから、台湾とは深い関係にあります。

ですが、台湾を武力解放しようとすると、アメリカが出てきます。その場合、在日米軍が出動しますが、基地のある沖縄や岩国、横須賀などが中国側の攻撃対象になってしまいます。日本の国内が攻撃されるとなると、日本は専守防衛ではありますが対抗せざるを得ません。そうなると、米中戦争において、日本は米側あるいは台湾側に立って加担することになってしまいます。

米中戦争になれば第3次世界大戦で、結局人類の死滅に繋がってしまいます。これは何としても避けなければなりません。

ですから、次の総理の最大の課題は中国を説得するということです。「武力解放はせず、現状維持で行け」と中国に言える立場でなければならないのです。そういう意味で、石破さんがなぜこの時期に台湾に行くのか、今朝の新聞を見て危惧を抱きました。

(深田)

総理候補としては軽率だったのではないかということなのですね。

ただ、「台湾有事は日本の有事」と安倍元首相が頻繁におっしゃっていましたが、このキャッチフレーズについてはどのようにお考えですか。

(山崎)

「台湾有事は日本有事である」と直結はしませんが、それに発展する可能性は確かにあります。台湾有事になれば、先ほど申し上げたようなシナリオで米軍が出ていくことになります。米軍が日本にある基地から出ていくということは、日本領土が中国の攻撃対象になってしまうので、日本有事になるというロジックはあります。しかし理論上は、日本は台湾が国家であるとは認めておりません。日本が国家として認めているのは中国だけです。

台湾とは経済的、文化的な関係が非常に深いことは間違いありません。しかし、国際法上は、日本は台湾と国交がないのです。ですから、台湾の日本における外交機能は「経済文化弁事処」という表現になっていて、大使館も領事館もないのです。日本も、台湾には大使館も領事館も置いていません。同盟関係にないのですから、台湾有事は日本有事ではないのです。

例えば、同盟関係にあるアメリカの有事は日本有事です。安倍政権では、いわゆる集団的自衛権をアメリカとの間で発効できるように法改正をしたので、そういう意味においては、アメリカ有事は日本有事と言えます。

しかし、台湾有事は日本有事とは国際法上は言えないのです。発展する可能性はありますが、それが法的に確立されているわけではありません。

(深田)

では、なぜ安倍元首相はそういったことを繰り返しおっしゃっていたのでしょうか。

(山崎)

あまり法律に詳しくないので、情緒的に言ったのだろうと思います。国際法上はありえません。

(深田)

総裁選の話に戻りますが、岸田さんと石破さんの一騎打ちになった場合、五分五分と思われますか。それとも、どちらかというと石破さんが強いのでしょうか。

(山崎)

これからやってみなくては分かりませんが、石破さんに国会議員の票がどれだけ集まるかによりますね。例えば、石破さんに国会議員の票が5割近く集まるというようなことがあれば、それはもう石破さんに決定です。私は20人の推薦者は間違いなく集められると思いますが、集められないのではないかという見方もありますね。

国会議員の総数は380人なのですよ。そのうち半分だと190人ですが、190人も石破さんを応援すれば石破さんは100%になります。100人だとしても、石破さんは必ずなると思います。

(深田)

100人も集まりますでしょうか。

(山崎)

そこはわからないですね。例えば、元首相の菅さんが石破さんを応援すると表明すれば、それぐらい集まる可能性はあります。

(深田)

菅さんは、いろいろな候補を揃えていますよね。小泉進次郎さん、小林鷹之さん、加藤勝信さん、そして石破茂さんなどがいて、票が割れる方向に向かっているように見えるのですが、その辺りはいかがでしょうか。

(山崎)

いま名前の挙がった人たちは、例えば菅さんがこの人がいいと言えば、後の人たちは消えますね。

よく言われるのは「小石河連合」といって、小泉さん、石破さん、河野さんです。出る可能性があるのは、その3人と高市さんぐらいだと思います。

私は、小泉元首相と非常に親しいのですが、小泉進次郎さんについては、「絶対に出さない」と言っています。まだ40歳そこそこなので未熟だし、いま総裁選に出ると将来出られなくなる。政治家として成熟してからでも遅くはないのだから慌てることはないと、絶対反対の姿勢です。

あとは河野さんですね。河野さんは、麻生派に属しているので、菅さんはその点は評価していないと思います。菅さんは元々派閥を持たないし派閥解散に賛成だったので、なぜ麻生さんが派閥を解散しないのかについては疑問に思っているのではないでしょうか。その麻生派に残っている以上、可能性は低いでしょうから、そうすると残るのは石破さんになります。

(深田)

もし石破さんが総理になったら、日本はどのような国になると思われますか。

(山崎)

私は外交安全保障を長くやってきたので、石破さんの外交力に非常に期待していました。しかし、今回の台湾訪問の話を聞いて、タイミングが悪すぎるのではないかと外交的センスを少々疑っています。

(深田)

どこの国を訪問すれば、100点だったのでしょうか。

(山崎)

どこの国も行く必要はないですね。9月の総裁選があるので、それに選ばれればいいのです。

いま国際政治は大国のトップリーダーによって動かされています。例えばプーチンのウクライナ侵攻や、習近平の台湾進攻の懸念などがあります。また、中東の問題ではアメリカの大統領がイスラエルの味方です。これはバイデン大統領もトランプ前大統領も同じで、アメリカはユダヤ人が人口的には少ないですが圧倒的な力を持っています。イスラエルを支持するため、ガザの民衆が多く殺されている状況を放置するのは許されないと思いますが、国連決議ではアメリカが必ず反対します。ウクライナについてはロシアが反対します。

安保常任理事国の五大国に、アメリカ、中国、ロシアが入っていて拒否権を持っているため、国連は機能していない状況です。

ですから、今度の総理大臣は、プーチン大統領や習近平首席、ひょっとしたらトランプ前大統領などの強権型のトップリーダーと対等に渡り合える人物でなければなりません。そういう意味で石破さんしかいないと思っていましたが、なぜこの時期に中国が拒否するような行動を取ったのかが疑問です。

私は台湾との関係を深めることには賛成ですが、これから総理になろうとする者が、外交力を自ら放棄するような行動を取るのはおかしいと思います。

(深田)

タイミングが悪かったということですね。

本日は、元自民党副総裁の山崎拓先生に、今後の自民党総裁選については石破さんの可能性が非常に高いというお話を伺いました。先生、ありがとうございました。

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