#72-井川意高×深田萌絵「カジノ誘致で国民はギャンブル依存症に?」

(深田)

自由な言論から学び行動できる人を生み出す政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回は大王製紙元会長の井川意高さんにお越しいただきました。井川さん、よろしくお願いします。

実は大阪でIRが始まるということで、私はずっとギャンブル依存症の課題が残っているのではなかいということを色々議論してきました。井川さん、ギャンブル依存症と言えば第一人者ですね。(笑い)

この国でトップクラスじゃないですか。

(井川)

そうですね。私はあまり時事に乗ってYouTubeの視聴を稼ぐのが好きではないのですが、私のYouTubeのプロデューサーが、大谷翔平さんの通訳の水原一平さんの件をやれやれというので、いやだと言ったところ、「日本で井川さんがやらないで、誰がやるのだ?」と言われてやったら、再生回数が160万回ぐらいになりました。

(深田)

すごいですね。どうしたらそんなにカジノ依存症になれるのでしょうか。私自身はギャンブルにはあまり興味がないので、カジノにはまるとか思わないのですが、どうやってはまり込んでいくものなのですか。

(井川)

ギャンブル依存症と言いますけれども、アディクションというのは誰にでも何にでもあるのです。分かりやすく言うと、例えばお金が稼ぎたいからやっているわけではない。お金に見える人は依存症にはなりません。

(深田)

そういうことですか。

(井川)

例えば100万円持っていて、それが200万円になったら、稼いだ100万円であれができるこれができると思う人はもうそこでやめてしまいます。

(深田)

お金ですらないのですか?

(井川)

要するに得点、ポイントなのです。任天堂のゲームをするようなものです。例に上げて申し訳ないですが、あのソフトバンクの孫正義さん。あの人は昔、目指すは売上高1兆円と言っていたのが、次は10兆円になり、100兆円となる。1兆10兆100兆ってまるで豆腐屋さんみたいな感じですけれども、あれは別に何かゴール、終点があるわけではありません。個人資産で言ってもそれに伴って数兆円とかになってもやめません。別にお金が欲しいだとか、会社の売上高が上がったからといっても、そういうことではなく、要するに売上を上げていくことに対する依存症なのです。

もちろん経営は生産的なことですし意味があります。ギャンブルというのは消費でしかないので、比べるとやっていること自体の価値は別にして、例えばサイバーエージェントの藤田社長も麻雀も好きですが依存症ではない。麻雀仲間でやっていても私たち残りの人間は明日9時から役員会があっても8時まではやりたい方なのですが、彼は、もう今日は12時で終わり、と言ったら勝っていても負けていても12時でパチッと止めて帰ってしまいます。だから彼は麻雀をやるけれども依存症ではない。彼の場合は多分「経営依存症」でしょうか。しかし、経営さえももうやめるとか、これから次の社長を育てようとかいうのは、それも含めてやっぱり彼はちゃんとエンドを決められるタイプだと言えます。

孫さんとか、名前を出して申し訳ないですがニデックの永守(貴樹)さんとか、死ぬまでやるタイプっていうのは依存症です。

例えば藤田君の話をどうして出したかと言うと、昔一緒にカジノに行ったこともあったのですが、「井川さんの打ち方を見ていて、やはりいつかこうなるんじゃないかと思っていた。どうしてそうなるの?」と、同じような質問をされました。

私はこう言うわけです。「藤田君、釣り好きだよね。じゃあ例えば数釣りで今回はアジを一日かけて30匹釣れたと、でも、アジを30匹食べたいから釣っているわけじゃないでしょ。30匹釣ったら次回は50匹釣ろうとか思うのじゃないの?」とかですね。あるいは、数釣りではなくて大きいものであれば、カジキですね。「今回は100kgのカジキを釣ったから次は150kgのを釣りたいとか思うのじゃないの?」と言うと、「あ、それで分かった」と自分が釣り好きだからそういうものだと納得するわけです。

(深田)

なるほど。私もワーカホリックというか、YouTubeで毎日ライブをやっているのですが、やめる勇気がない。休む日は休みますと言いながら、ライブをしてしまうという、もう病気ですね。

(井川)

そういうものだと思います。もっと別の例えで言えば山登りです。私の親しい福永活也弁護士は、ガーシーさんの弁護とかをした人なのですが、あの人はエベレストを初めとして世界7大陸の最高峰を全部登っています。命の危険さえあり、お金と時間をかけて別に何か稼げるわけでもない。ただ、世界最高峰を登ったという達成感です。アディクションとはそういうものなのです。

(深田)

そうですね。でも、その山登りとか釣りの依存症に比べるとギャンブル依存症は本人の人生を、(笑い)ごめんなさい—

(井川)

いや、山登りもやっぱり死んでしまうことがあります。福永さんに聞くと、ヒラリー・ステップの横には死体がゴロゴロ転がっている。回収するところまでもいかないそうです。

(深田)

死体が置きっぱなしですか。

(井川)

置きっぱなしです。持って帰るのは大変ですから。

(深田)

登山ルートって死体が目印になっていると言いますね。

(井川)

それもあるかもしれませんが、ヒマラヤだともう年中寒いですから、そのまま腐らずにそこにあるという話ですから、それは一緒なのです。別に私はギャンブル依存症の人間をかばう気もありません。私はすごく個人主義者、自己責任主義者です。そこで、それでは家族とか周りに迷惑をかけるだろうと言われるとそうなのですが、それだって海に釣り行って磯で遭難すれば、やっぱり周りに迷惑はかけるわけだし、山登りして死んでもやっぱり迷惑はかける。言い出したら切りがないかなと思います。

話がそれますが、私は日本でIRができてもできなくても好きにすればいい、という主義者です。どうせ私は行きません。

(深田)

日本のカジノには行かない。

(井川)

行かないです。

(深田)

どうしてですか?

(井川)

顔がさしますから。

(深田)

顔がさす。そこですか。

(井川)

そうですよ。私の事件以来、経営者とカジノというのは、ちょっと食い合わせが悪い感じになっていてレピュテーションリスクが出ている。皆さんあまり公言しなくなりましたが、昔は結構言う人が多かったです。その時はもちろん、今でも日本にはまだないですが、海外で行けるのは、結局ディーラーも全然こっちがどこの誰かも知らない、日本で有名な経営者だとしても向こうの人間から見れば知らないからです。日本だとやはり日本人のディーラーがやることになります。

(深田)

「カモがネギ背負ってやってきた」というような?

(井川)

ディーラーにとっては、ただこうやって配っているだけですから、全然カモでもなんでもありません。ただ、今時SNSの時代ですから、昨日何々会社の何々社長が美女を連れてやってきて1時間で500万負けて帰ったとか、ポロっとSNSとかであげられてしまったら、あまりよろしくありません。

昔、恵比寿のウェスティンホテルの鉄板焼き屋にサッカー選手が彼女を連れてきたのをバイトの女の子がX、当時の Twitterにあげてしまって、誰々がやってきたとか言って、連れている女がブスとか言って大問題になりました。だからウェスティンが謝罪して—

(深田)

(笑い)次から美人だったと言いなさい。

(井川)

(笑い)そういう問題ではありません。私はよく日本にカジノができたらと聞かれますが、日本のカジノはうまくいかないだろうと思います。その理由の一つは日本人のハイローラー、つまりたくさん賭ける人は顔がさすので行かない、大きく賭けているところを見られたくないからです。

私などは韓国に行っても「井川さんですよね」と言って次から次と私のテーブルに人が来ます。

(深田)

有名すぎますね。もしかしてこちらの本が韓国とかでも出版されているのですか。

(井川)

いや、それはありません。韓国に来ているの日本人ばかりです。韓国は本国人は入れません。海外在住者は入れますが。だから韓国のカジノへ行くと日本人、中国人もいますが、日本人かいわゆる海外在住の韓国の方だけです。英語を喋っていたりするので、北米在住らしい人、また日本に住んでいる韓国の在日の方とかもいらっしゃいますけど、そういう中では私は割とヒーローなものですから(笑い)—

(深田)

(笑い)そうですね、英雄ですよね、このギャンブル依存症の世界では。

(井川)

「次どっちですか」とか「ちょっと一緒に張らしてくださいよ」とか言われて「どうぞご自由に」という感じです。

(深田)

事件になった時はどちらのカジノに行かれていたのですか。

(井川)

私はマカオが多かったのですが、最後の1年半ぐらいはシンガポールのマリーナベイサンズでした。あそこがその当時私が知っている中で一番マックスベットが大きかった。私は50万シンガポールドルしか入れないですからね。

(深田)

50万シンガポールドルというのは—

(井川)

当時60万円ぐらいだった。

(深田)

そうですよね。マリーナベイサンズはまだ綺麗ですが、マカオのカジノは、私の20年ぐらい前の記憶だと、ロシア系のミニスカートのお姉さんが立っていて、カジノの台ではアジア系のおばさんが何語を喋っているのかわからないのですが、大阪弁で表すと「カッ、ペッペッ、なんぼじゃ、われ!」みたいな感じでやっていましたが、あのようなところに行かれていたのですか。ちょっと私のイメージが古すぎますか。

(井川)

ちょっと古いですね。それ多分返還前のですね、あるいは返還からしばらくしたぐらいまでの—

(深田)

2000年、2002年、2003年ぐらいですかね。

(井川)

そうですね、スタンレー・ホーの経営するリスボア系列しかなかった頃ですね。その後それこそ、サンズもできましたし、ウィンもできたし、ベネチアンだとか、私が行っていたのはその頃で、ただリスボアの、おっしゃっていたロシア系というか、中国の海遊魚と言ってリスボアの一階だったか地下一階だったか、こうずっとミニスカで歩いている。それをお兄ちゃんなりおじちゃんなりが「どうだ」って声をかけたらホテルの上の部屋に行く。

一回ジャンケットの人間と一緒に見学に行きました。見ていて「ところでみんなどうしてるのだろうな」と言ったら、女性たちでホテルの部屋を借りてシェアしているんだそうです。みんな同時にお客さんを取れることもないし、逆にルームシェアしている女性2,3人の誰か1人がお客さんを捕まえたら、それを待っている間はあそこにあるカフェで昼飯を食べている。「あれ、食っているのそれですよ」とか言っていました。「やだな、他の前の人間が使ったベッドでまたやるのかよ」みたいな感じでした。

(深田)

すごい回転率なのですね。

(井川)

それを見た後、実際にリスボアの昔ながらのカジノに行きました。おっしゃるとおり、もうもう中国人しかいなくて、わちゃちゃって言ってですね、もうパンパンと叩いて、いい目が出ているところに来るともう大勢でこうやってきて、ガチャガチャガチャガって言って、それで目が切れたらパーっといなくなった。まるでイナゴの飛行でした。食い荒らしたら次へ飛んでいくっていう、まさに中国人でした。

(深田)

20年前にカジノを見た時、私の思っていたカジノとすごくイメージが違っていました。ヨーロッパのカジノというのは、正装でドレスにタイでないと入れない。ホテルの一角にあってシャンパンでも飲みながらというのを想像しながらマカオのカジノに行ったら、おばちゃんが唾吐きながらという、本当にあの姿は驚愕でした。井川さんとは似合わない場所なのではないかと思うのですが。

(井川)

私は基本的に個室でやっていました。007のカジノロワイヤルのような世界はヨーロッパでもあるのですが、例えばマカオのグランカジノとかに行くと、個室でないところを「平場」とか「ザラ場」って僕らは言いますが、VIP用でないところというのはあまり変わりません。一回若い頃、グランカジノが有名だからとヨーロッパに行ってみました。その頃当然私は若かったし、たくさん持って行っているわけではありません。一般客としてザラ場でやっていますと、ルーレット一つ取っても、イタリア人とかがこちらが賭けているところが当たったら、自分は賭けていないのにそれは自分のだとか言い出すわけです。そうすると揉めるのですが、カジノは当然監視カメラがついているので、ピットボスがこうやって、いやこれはこちらの人のですとか言います。もう一緒です。

(深田)

一緒ですか。

(井川)

ギャンブルにはまっている人間というのは似たようなものなのです。

(深田)

これから日本でもカジノが始まるということですが、ギャンブル依存症になる人のためのアドバイスは何かありませんか。

(井川)

アドバイスの前に、深田さんもそちら側かもしれませんけれども、ギャンブル依存症の前にパチンコを一掃するべきです。

(深田)

そうですよね。本当にそう思います。

(井川)

世界中の外国人が日本に来てみんな驚きます。

例えばアメリカでもカジノができるエリア、カジノを経営できるエリアというのは全部厳しくコントロールされています。ラスベガスのホテルの中で、ロビーにスロットマシンを置いていたりするのですが、そこはちゃんと線を引いている。21歳未満はそこに踏み入れてはいけない、ただ通るので入ろうとしてもすぐにガードマンがこれはリストリクトエリアだからだめだと言うぐらい厳しいのです。

それなのに、世界から見れば日本では駅前にカジノがあるということになります。

(深田)

カジノですよね。

(井川)

駅前に三つも四つもあって、そこに年齢確認もなく、高校生とかが、私も中学生ぐらいからやっていましたけれども、パチンコをしているとか、信じられない話なわけです。

その挙げ句、レジ袋からネギが覗いているこういうのを背中にかけた主婦がやっていたりだとか、買い物ついでにやったりとか夢中になっているうちに、軽自動車の中で子供が熱中症で死んでいるとか、そういう問題をほったらかしにして、たかが日本に2つ、3つカジノができることを問題視するというのは、結局既存の勢力、利権が反対する。田舎で競馬のウィンズとかできる時に反対運動がすごかったのですが、反対運動をしている連中は、地元のノミ屋から金をもらっている人間です。「のみや」というのはお酒を飲む方ではなくて、競馬のノミ屋、ヤクザのしのぎですから、実際にウィンズができてしまうと、昔はネット投票もできない、ネットで買うこともできないし、結局田舎の方だとノミ屋が受けていたわけです。そこに本物の、正規のウィンズができてしまうと、 自分たちの商売がなくなるのではないかということになるわけです。

私も小学校の時、四国に会社があって田舎に住んでいましたから、田舎の事情は耳に入ってきました。高松でどこそこにウィンズができるといったらすごく反対運動しているけれども、あれを裏で煽っているのはノミ屋、ヤクザですからということを地元の人間から聞きます。

(深田)

私、パチンコこそギャンブルであるはずなのにどうして取り締まれないのだろうとずっと思っていました。知人が15年ぐらい前にパチンコ屋でパチンコして、景品をもらって現金化してそれを持って、「おまわりさん、僕はさっきギャンブルやったので賭博罪で逮捕してください」って自首したのですが絶対に逮捕してくれなかったらしいのです。

(井川)

IR法案が議論されていた時に、与党の議員が警察庁の生活安全局生活安全課の課長に「パチンコはギャンブルですよね」と質問すると、「違います」と15分間否定し続けました。なぜなら警察の天下り先だからです。

(深田)

その答弁を私は見たことあるような気がしますが、三店方式は現金化できるから実はギャンブルですよねという風な質問をした時に、その三店方式というものを警察は認識しておりません、というひどい答弁を見てああダメな国だなと思いました。

(井川)

警察に限らず全てみんなが認識していることを、全部言い逃れというか、もう120%嘘だということを平気で公の場で言う。この間の蓮舫さんも、あのRシールについて「知りません、意味が分かりません」とか言っていました。これがまかり通るのかということです。役人だとか政治家が平気な顔をして言う。その辺りで根本が腐っているということですね。話が大きくなってしまいました。

(深田)

わかりました。ありがとうございます。では最後に一言、これからギャンブルを始める人に対して何かアドバイスをお願いします。

(井川)

今までギャンブルをやったことのない方は、ギャンブルはやめた方がいいです。やっぱり身上を潰すこともありますから。それでもやりたいという人はやったらいいでしょう。身上を潰すぐらい楽しいですから。(笑い)

私のサロンのメンバーさんと話していて、「何故私のサロンに入られたのですか?」と聞いたら、実は自分も色々とギャンブルにはまってしまって、知人友人から借りまくった挙げ句にもう絶対に手をつけてはいけないお金をつまんでしまった、これがバレたらもう自分は命も危ないのではないかという、歌舞伎町界隈で仕事をされている方ですけれども、思い詰めている時にちょうど私の最初の本『熔ける』を手にして読んだ。この本は幻冬舎から出ていて、おかげさまで第16刷りまでいっていますが、その人がこれを読んでみた。すると「106億8000万か!俺なんてこれに比べたらちっぽけだ。これでまだ生きて本まで出している人間がいる。まだ希望を失う必要はないのじゃないかと思いました」、「そこから頑張って今日があるので感謝しています」、「それで一回ぜひ井川さんのサロンに入って直接話をしてみたかった」と言っていました。

多分その方だけではなくて日本中で何人かの命を救ったのではないでしょうか。(笑い)106億使った甲斐がありました。

(深田)

(笑い)人命ほど尊いものがないので、本当に素晴らしいと思います。

ということで、今回は106億円を溶かした男、現在も溶かした数字更新中の—

(井川)

まあ、ちびちび更新していますが。

(深田)

井川意高さんにギャンブル依存症についてお話いただきました。どうもありがとうございました。

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