#60― 深田萌絵×藤川晋之助「石丸旋風の仕掛け人に都知事選の裏を聞いてみた」

(深田)

自由な言論から学び行動できる人を生み出す、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。

今回は、政策アナリストで選挙プランナーでもある藤川晋之助先生にお越しいただきました。藤川さんよろしくお願いします。

(藤川)

お招きいただきましてありがとうございます。

(深田)

藤川さんは今や時の人です。以前に友人からご紹介いただいた時は、「なんだか変わったおじさんがいるな」と思ったのですけれども、最近の都知事選での石丸旋風で、「隣にいるのは選挙の神様、藤川晋之助だ」というニュースを見る度に「あれ、この人こんなに偉い人だったの」と思っていました。申し訳ございません。

(藤川)

とんでもありません。自分ではそんな風になるとは思ってもみなかったことです。

私は別に、「よし、彼を応援しよう」と思って選挙を引き受けたわけでは全くなくて、確か5月28日だったかな、僕の友人から「ちょっと紹介したい人がいるから会ってくれないか」と言われて、会ってみたらそれが石丸さんで、「YouTuberとして有名だな。どこかの市長だな」という程度の認識だったのです。

(深田)

そうだったのですね。

今回、藤川さんが石丸さんの応援に入ったというのが私にはすごく意外でした。以前から「王道の政治家を応援したい」とおっしゃっていたのに、石丸さんは王道という感じではないですよね。

(藤川)

全く王道ではないですね。会った時も、何を考えているかちょっと雰囲気がよく掴めない人でした。お願いされて来られたのだけれども、自分の第一印象で「ちょっとどうかな」と思ったので、「今日は考えさせてください」と言って、やんわりお断りしようと思ったのです。

そしたら、次の日の朝早くに、ドトールの創業者の鳥羽会長から電話があって、「藤川君、一生のお願いだ。頼む」と言われて、「何ですか、一生のお願いなんて」と言ったら、「彼がいい男なので、是非彼をサポートして欲しい」と直接頼まれて、今までの人間関係があるのでお断りすることができないなと思った。

そこで、うちのスタッフに「受けてもいいか?大変だぞ。明日から徹夜だぞ」と言って、「分かりました」と言うから、「よし、分かりました。受けます」となった。

それで、それまでちょっとマイナス思考だったのを完全にプラス思考にして、この選挙戦で、まさに初めてこういうタイプの人の応援をするということになったのです。

(深田)

やはり今までとは全然違うタイプの方ですよね。ネットで石丸さんの評価はすごく割れていて、私もどちらかというとあまりいい印象がないというか。

(藤川)

どういう点で。

(深田)

レポーターに対する受け答えがちょっと冷たいというか。

(藤川)

不遜ですよね。

(深田)

サービス精神ゼロというか、「えっ、この人こんな受け答えをするの」と。

(藤川)

それはスタッフに対しても誰に対してもずっとあんな感じです。だから、ちょっと今までのタイプと違うのです。それゆえに興味深かったですね。

僕らは選挙プランナーとして、実は144回目の選挙だったのです。143回やってきて、非常に厳しい人を当選させるのが私の趣味みたいなところがありまして、勝てる人を当選させるというのは全然面白くなかったです。そして、結構いい成績を上げてきたから、初めからもう負けると分かっている人を応援するのは辛いところがあるわけです。

ですが、彼と話をしていたら、宗教的と言ったらおかしいけれども、感性とかが我々の感覚とは全く角度が違うのですよね。

(深田)

どういうところが違うのですか。

(藤川)

選挙をやろうとするのに、選挙に対する準備が何もできていなくて、もうお任せみたいなものでした。

「この人は何を思ってやるのだろうか。普通に考えれば、何億円もかけて戦う都知事選挙みたいな大きな選挙を突然頼みに来て、もう後わずか1か月しかないのに、どうやって準備するのだろうか」と思ったのです。

何よりもその時に、「私はこれから9日まで任期がありますので、それを終わって10日か11日に来ますから、よろしくお願いします」と言って帰って行ったわけです。

「えっ、何をやったらいいのだろう」となるじゃないですか。

だから何にも揃ってない。何もない状態です。しかもブレーンも誰もいなくて1人でポツンと居られる。そこをどう組み立てるかというところからスタートしたわけです。

ある意味では面白かったです。要するに自分でやりたいようにやれるわけですから。それでバっと組み立てて、まさに藤川事務所が主体になって選挙をやったのです。

ただ、その時に1つだけオーダーがありました。

「藤川さん、ボランティアの方々をなんとか集めて、その人たちにポスター貼りをしてもらいたい」と。

ポスター貼りは1万4000箇所あるのです。それを朝1番に、番号が決まったら貼らなくてはだめなのです。何百人という人間がいなければ貼れないのです。それをボランティアにやってもらいたいと。

普通は業者に頼んだりするわけで、ありえないことです。

しかし、「そうであるならば、ボランティアを集めてみよう」となり、すぐに「ボランティア説明会をやります」と言って、みんなには「今日は300人来てくれたらすごい。彼だったらそれぐらい来るかもしれない」と話していたら、なんと1000人を越してしまったのです。会場が600人ぐらいしか入らないから、下のところに300人ぐらいの列ができていた。

本人がトコトコと歩いてきて、「藤川さん、すごい人ですね。なにか新しいドーナツ屋でも出来たのですか」と聞くから、「君のボランティアだよ」と言ったら驚いていました。そこからスタートしたのです。

(深田)

その人気は何なのですか。私は石丸さんという人の存在を最近まで知らなかったです。

(藤川)

私もそうでした。ところが、それだけ多くの人たちが集まって、みんな熱心なのです。

「ポスターを貼ってください」と言うとボランティアリーダーが生まれてきて、そのリーダーたちを中心に全部貼ってくれるようになったのです。

普通の選挙ではこんなことはありえないです。だからとても驚きました。こういう奇跡ではないけれども、彼の場合はすごいことが起きてくるのです。

「なんなんだこれは」と思って、過去をずっと振り返って彼の軌跡を見てみると、今までのオールドメディアに対して、YouTubeなどの新しいメディアを熟知していて、見せ方というものが本当にうまい。

だから、スタートする時点で既に、石丸さんが都知事選に出るということで、どんどん「ボランティアをやりたい」と言う人が集まってきて、なんと5500人まで登録が増えたのです。

(深田)

そんなに集まったのですか。今回の選挙は石丸さんの力でなくて、藤川さんの力なのかなと思っていたのですけれども。

(藤川)

いや、うちはもちろんコーディネートをして、そういう人たちをまとめて動かして、日程を決めて取り仕切りをやりましたよ。でも、それは大きな選挙であろうが小さな選挙であろうが同じで、基本的な骨格作りはやりましたけれども、動いてくれたのはボランティアです。

だから今回の選挙は、藤川事務所プラスボランティアです。この体制であれだけの大きな選挙ができて160万票をいただいた。

今から考えたら想像もできないスタートでした。

彼にも初めにはっきり言ったのですけれども、取れて50万だと。そこはなんとか取るだろう。政党でいうと、維新さんが取っている票が大体50万から60万ぐらいなので、そこは取れるだろうなと私は踏んでいたのです。

だけど、そこから上は相当頑張らないといけない。あれだけの政党である維新さんでも取れない票を、1匹狼でどこまで取れるのかという選挙になるわけです。

初めは渋谷でスタートしたのですけれども、「都会でやるのは当たり前だ。もう少し周辺部に行こう」と言って周辺部を回ったら、上野で2500人、錦糸町で1000人、三鷹で2000人、八王子で1000人など、どんどん集まるのです。

(深田)

石丸さんは、そもそもそんなに有名人ではないですよ。

(藤川)

だから、みんなYouTubeで見て予備知識を付けて来ていた。

私が声をかけたら、半分以上が選挙に今まで1度も行ったことのない人たちで、政治に無関心だった人たちだった。

「今回だけは、この人が政治をやってくれるかもしれない」という期待感を持って集まっているのを見て驚きました。

選挙中に集まった人数が、なんとのべ10万人を超えたのです。10万人なんて集まらないですよ。小池さんも蓮舫さんも一生懸命頑張られて、1日に1、2回は1000人ぐらい集めていますけれど、何回やっても1000人以上集まるわけです。これはどういうことでしょうか。

(深田)

そんなに人気があると私は知らなかったです。

(藤川)

だから、ある種の地殻変動が起きているなと思ったのです。

(深田)

自民党の裏金事件がものすごく効いているのでは。

(藤川)

影響ありましたね。しかも、「恥を知れ!」というあの啖呵がみんなをスカッとさせた。

(深田)

あの動画は何万回ぐらい回っているのですか。

(藤川)

どこかの新聞社が、この選挙中に石丸氏の演説などを聞いてくれた人の動画を全部計算していったのですが、1億2000万回ですよ。だからあれだけの票が出たのです。

(深田)

彼は元々、SNSを駆使するようなテクニックは持っていたということなのでしょうね。

(藤川)

しかも、このSNSを使った選挙が解禁されたのがちょうど10年前なのです。ちょうど10年の節目に降臨したとしか言いようがないですね。

落とし子のようにトンと出てきて、それを駆使してあれだけの票を取ったということなので、僕らの今までやってきた選挙の常識では全く考えられない。

(深田)

私は石丸さん良さがあまり分からない。冷たい感じがするというか。

ただ、結果を見ると10代、20代、30代の若い人から人気ですよね。

(藤川)

だから、言葉をあまり語らないでも通ずるものがあるのでしょうね。ある種の波動が彼らの世代を網羅するというのかな。僕らのように古い経験値がありすぎる人間から見ると、訳が分からないのですよ。

彼の演説は、僕らから見ると、普通の演説と比べてうまいとは言えないのです。しかも、内容は政策なんかほとんど語らない。何を言っているかと言えば、自己紹介なのです。

「私はこういう風に今まで生きてきました」、「私はこういうことをしたい」、「だからよろしく」ということをものすごく短い時間でやる。彼は、「人間の集中力なんて15分から20分だ。だからそれ以上やっても意味がない」と言うのです。

「本来ならば、マニフェストで政策を見て、この人を応援しようという政策のための選挙をマスコミがやるべきだが、現実の今の日本の政治はそうなっていない。政策なんか語ったところで、まともに聞いている人はいない。だから人柄なのだ。人への信用なのだ。だから私は、『東京都のために、日本を動かすために頑張ります』ということで信じてもらう」

そして、「一生懸命アピールをする方が大事だから」と言って、彼は240回ぐらい選挙中に演説会をしたのです。その240回で、ほとんどぶれることなく、同じことをずっと繰り返して話をした。

僕は途中で、「プロから見たらこれは物足りない。中身を入れないといけない。だから、もっと高齢者問題とか少子化対策とか、そういう政策のボールを投げた方がいいのではないのか」と言ったら、「藤川さん、違いますよ。そんなことを期待している人は、本当はいないのです。それはプロ、要するに政治を分かっている人はそう思うのです。でもそんな人たちが今までの政治をどうしたのですか。何も変わらなかったじゃないですか。しかも公約なんか語ったところで、公約を実行した人なんて見たことないです」

(深田)

それは言えています。

(藤川)

「私はそんな嘘はつきたくない。公約なんか要らない。やるのは『本気になってやるぞ』ということを伝えることなのです」

(深田)

彼は何をやるのですか。

(藤川)

彼なりに東京を動かそうと言っている。

私も調べたのですが、安芸高田市でのわずか4年間の動き見ていると、彼なりに極めて明確に、様々な予算を切って、例えば教育に投資をした。

それは、既得権益を守っている人から見たら「いけ好かない人間だ」となって、あれだけの対立が生まれてくるわけです。

橋下徹さんによく似ているスタイルを取ったし、橋下徹さんも選挙が終わってから「彼のやり方は僕によく似ているよ」という言い方をしていた。

だから、ちょっと危なっかしいところもあるけれども、具体的に4年間は成果を出してきているので、もちろん批判面もあるかもしれないけれど、東京都のこともすごくよく考えていて、東京都の議会の議録は1年間分全部読んだというのです。

頭がいいし直感力がすごく優れているので、本当は投げるボールを結構持っているのに、彼はあえて、そうではないことを言っている。

まさに、今の政治のあり方に対するアンチテーゼで、「藤川さん、選挙らしい選挙はやらないでくれ」と。

だから、為書きも要らないし、事務所はサロン的にいい雰囲気にして、「選挙らしい選挙にしないでくれ」と。喋り方も「演説口調は嫌だ」というのが、彼のポリシーなのです。

初めのうちは少し反発もしましたよ。だけど、それでこれだけ人が集まるわけです。だから文句を言えないですよね。10万人集めているのを見たら。

(深田)

私は、宗教でもバックに付いているのかなと思っていました。

(藤川)

某団体が付いているとか、色々と噂をされたけれど、本当に個人個人の集合体なのです。見事ですよ。

だから、選挙が楽しくてしょうがなかったです。144回やってきた中で、最高に楽しい選挙でした。

彼はいつも最後には、「皆さん、ご一緒に選挙を楽しみましょう」と言うわけです。初めは「何を楽しむねん。真剣にやらんかい」と思うじゃないですか。それが、自分も「なんか楽しいなあ」という雰囲気になった。

3時間ぐらいしか寝ないで2週間、3週間とやっていましたけれども、全然疲れもしないし、面白くてしょうがなかったです。それぐらい毎日が新しい経験でした。だって奇跡がずっと毎日起きるのですよ。

最後、東京駅には5000人以上が集まって、「最後だから、ちょっとマシな事を言うだろうな」と思ったら、また同じことを言って終わった。すごいでしょ。

(深田)

私は、「石丸さんはよく分からない人だな」と思っていたのですけれど、お話を聞いていても、多分弱年層に受けているから、もうすでにジェネレーションギャップで感覚を掴めてないのだと思います。

(藤川)

天才肌でもあるし、直感力と感性が僕らとかけ離れてすごい。

(深田)

私は橋下徹さん自体がもうすでに嫌いです。

(藤川)

狂っているからね、人間が。

(深田)

狂っていますよね。

(深田)

でも、政治を変える人間は狂っていなくてはだめなのですよ。

僕は高杉晋作を好きなのですが、「狂」という字をいつも書いていたのです。やはり自分が狂わない部分があるから、狂わそうとしたのでしょうね。

そして若くして死んでいくわけですけれども、そういう志士たちがいたから政治は動いたし、戦後も米軍に負けてGHQによって日本は支配されたけれども、そこにレッドパージではないけれども、古い世代が全部1回パージされたので、田中角栄みたいな若い人たちがバーっと育って、戦後復興というのが成り立ったわけです。

今もやはりそういう時代なのです。

だけども選挙をやっていて分かったのは、お年寄りはなびかない。高齢者は「なんだ、あの若造は」という感覚です。だから、高齢者の方だけを調査してみると、蓮舫さんの半分ぐらいしかないです。女性でもそう。

だから勝つのは難しいなというのが、折り返し点ぐらいで分かってきた。

(深田)

でも、勝てない勝負だというのは最初から分かっていたわけで。

(藤川)

本人は勝つと思ってやっていますからね。

(深田)

本人は勝つと思っていたのですか。

(藤川)

前の日に、「申し訳ないけれども、150は読めたけれども、それ以上は難しいかな」と言ったら、「藤川さん、大丈夫ですよ。勝ちますから」と。

だからショックだったのですよ。ショックで、マスコミにあれだけ冷たい態度を取ったのは、要するに「あなたたちが日本の政治をダメにした。あなたたちは民が思考能力を失うような報道ばかりしてきた」と。

だから、「オールドメディアが今の日本の政治を作った責任の一端がある。それがなんでそんな質問をしているのだ、バカ野郎」みたいな意識を持っているわけですよ。だからニューメディアなのです。

(深田)

そこは少し共感するものがあります。

今回の都知事選もたくさん候補者が出ていて、10万票以上を取っている人も何人かいたのに、その人たちのことは全く報道されなかったですよね。(続く)

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