No.61 深田萌絵×柴田哲孝「『暗殺』著者が語る元首相銃撃と自民党の闇」(前編)
【目次】
- 00:00 1. オープニング
- 00:41 2. 幾つもの奇妙な点
- 03:48 3. 演説の場所が不自然
- 06:40 4. 少なすぎる警備
- 10:16 5. 撃ってくれと言わんばかりの場所
- 13:46 6. 地元民も上から撃ったと言う
- 17:03 7. 主要五紙のタイトルが一語一句同じ
(深田)
自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。
今回はミステリー作家の柴田哲孝先生にお越しいただきました。先生のご著書「暗殺」はフィクションですよね。
(柴田)
はい、フィクションです。
(深田)
こちら「暗殺」というフィクションの小説なのですけれども、もう4刷で、6万5000部ですか。
(柴田)
ええ、発売から9日目の時点で6万5000部で、この先はまだちょっとどうなるか分からないです。(原注:7月16日時点で14万5000部まで増刷が決定しました)
(深田)
すごいですよね、本当に。今の時代、発売からたった10日弱で6万5000部ってないですよね。
(柴田)
ええ、そうです。僕も小説家をやって長く、もう30年を超えているのですが、既に自分の過去の記録を抜いてしまっているのです。初めての経験、未知の領域にもう入っていますから。
(深田)
この「暗殺」なんですけれども、元首相の安倍さんの事件を題材にして……
(柴田)
そうです、モチーフにしていることは事実です。
(深田)
モチーフにして、フィクションの小説を書かれたという事で、今回どうして元首相の暗殺について、改めて小説にされようとお考えになったのですか。
(柴田)
皆さん、深田さんもそうだと思うのですけど、あの事件が起きた時に「何かこれ変だな」っていう疑問を感じませんでしたか。
(深田)
あれは「おかしすぎる事件」ですよね。
(柴田)
そうですよね。私もそうなのですけど、他のジャーナリストの方も小説家仲間もみんなおかしいと言っていたのです。ただ、どこがおかしいのか分からない。でも、確実におかしいところと言うのは、解剖した時の奈良医大の……
(深田)
橿原の、はい。
(柴田)
あの医大の解剖所見と警察の解剖所見が全然違うという事とか、それから銃弾の方向が、下から撃たれている筈なのに上から来ている事とか、そもそもなんで急に、前の日に応援演説の場があそこに決まったのかと、おかしい事がいっぱいあるのです。ただ、全部偶然と言えば偶然なのではないか、と何かどこかで片付く話だったのです。そこに「アレはおかしいぞ」という情報提供がちょっとあって、それで自分で調べ始めたら、確かにおかしいなという事でこれを書き始めたのです。
(深田)
ネット上では色々、陰謀論めいたものが出ていたのですよね。「でもこれは言い過ぎかな」とか「これは信憑性あるかな」みたいな言説が色々出ている中で、リアリティある一冊に仕上げるというのは大変だったと思うのですけど。
(柴田)
そうですね。リアリティってすごく重要だし、みんなリアリティのあるものを書きたいのですよ、小説家というのは、特に推理作家はね。ただ、これが出来ないのですみんな。ハッキリ言って難しいのですよ、リアリティのあるものを書くというのは。
(深田)
どういう点で難しかったですか。
(柴田)
まず徹底的に調べるという事。そして自分自身、何が起きたのかを理解している事。つまり最初におかしいと思うことは好奇心なのです。次にそれを調べる調査力というか、調べる能力があって、今度は調べた事を分析する分析力が必要になります。で、最後に来るのが文章力というか表現力で、全部が揃わないとリアリティのあるものは書けない。
(深田)
先生の表現力すごいなと思いました。この小説を最初に読んだ時、あっという間に160頁ぐらい進んでですね、字を読んでいるという感覚がないのですよ。映像が見えてきて物語に引き込まれていくという感覚があって、あっという間に160頁進んだところで、私は先生の才能に嫉妬しました(笑)。
(柴田)
すいません、ありがとうございます(笑)それはお褒めの言葉として。
(深田)
私も10歳から、いつかは作家になりたいと思っていて、子供の頃はベストセラーのランキングに入ったものは大体読んでいたのですよ。あと、明治の私小説が好きだったり、その後はミステリー小説がすごく好きだったり、という時代があって。でも、どうやったら人を物語に引き込むだけの描写ができるのだろうって……。
(柴田)
それ、そもそも……何なのでしょうね、分からないですけどね。僕はたしかに本が好きだったので、子供の頃からたぶん数千冊は本を読んでいる、それはあるかと思いますね。もう一つはやはり、向いているかどうかという資質みたいなものもあるのかも知れないですね、基本的にね。
(深田)
でも本当に、情景が浮かび上がるような描写で、本当にそこが、先生の表現力がこの一冊のリアリティ、この物語のリアリティを引き出していらっしゃるのかなと思いました。
(柴田)
情景描写に関してはね、僕、昔カメラマンやっていたのですよ。
(深田)
カメラマンですか。
(柴田)
はい、物書きになる前はずっとフォトグラファーだったのです。だから何でもかんでも映像にして頭の中に思い浮かべる癖があるのです。それを言葉に置き換えているだけです。それで情景描写からリアリティに繋がっている部分があるのかも知れません。
(深田)
なるほど。今回この一冊を仕上げるのに、西大寺の現場にはどれくらい行かれたのですか。
(柴田)
2回行きましたね。1回は結構長く、徹底的にあの辺を歩き回って調べましたね。
(深田)
北口が現場だったわけですけど、あそこが演説する場所としては不自然だと思われました?
(柴田)
見た瞬間におかしいと思いましたね。日本以外だったら、元首相などという地位のある人が、ああいう所で演説する事はまず許されないと思うのですよね。周りがガラ空き、どこからでも狙える場所ですよね。実際、後ろから歩いてきた人間にも誰も気がつかなかったわけですから。
(深田)
私は子供のころに西大寺幼稚園という、駅から少し歩いたところにある幼稚園に通っていました。だからあの事件があった時に、実家に帰って、すぐに母と一緒に朝6時ぐらいの電車に乗って西大寺まで行ったのです。やはりその時に、ここで演説をやる必要があったのかなと思ったのです。
(柴田)
そうですよね、そこ疑問に感じますよね。それで調べてみたら、あそこで演説をやる事が決まったのが前の日だったのですよ。しかも、県警にそれが通達されたのが夜の7時になっている訳です。まあ、時期的にはまだ明るいかもしれないですけども、そんな事があり得るのかと言う。実は警察関係者から、これは情報提供というわけではないのですけど、警察OBの知り合いがいるのでその話をしたら「いや、アレは絶対にありえない」と。本省の警察庁からOBになった方ですけども「絶対にありえない、何かある」とは言っていましたね。
(深田)
以前に元環境大臣の応援演説に行った事があるのですけれど、高市早苗さんがいらっしゃったのです。その時ですら物凄い警備員の数で、高市さんが入られる前に車で、警備の車が何回も何周も駅前のロータリーを回って、安全確認をしてから高市元大臣が現われて、そして壇上に立つという光景を見ていたのです。あの光景を思い出すと、西大寺の北口にはバスのロータリーがあって、その前に細い対向車線が通る道があって、歩道すら狭いわけです。
(柴田)
そうですよね、後ろに車置けないですからね、選挙カーも置けない訳ですから。ハッキリ言って駅の上からでも狙えるのです、逆側からでも。周り360度から狙えるような場所じゃないですか。
(深田)
はい、だから、えっ、こんな所、高市さんですらあれだけの数のSPが付いていたのに、元首相クラスでこんな杜撰な警備……
(柴田)
数人ですからね。
(深田)
ですよね。私ちょっと詳しくないので教えて頂きたいのですけど、通常の首相の警備だとどれくらい居るのですか。
(柴田)
僕もはっきり何人とは分からないですけど……僕、じつは昔安倍さんの演説を新宿駅で見ていた事があるのですけども、やはりパッと見ても、50~60人はいたなという印象はありましたね。イヤホンを耳に入れているから私服を着ていたって分かりますよね。
(深田)
そうですよね。
(柴田)
もうみんなそうですよね。観衆も多かったけれども、警備の数はすごく多かったです。今回の10倍ぐらい居たのではないですかね。
(深田)
元首相で、しかもこれだけの長期政権を支えてきた首相なので、何十人規模の警備がつくのが……
(柴田)
その方が自然かなとは思いますね。だからそういう意味で、今回の事件はまずおかしいと思いました。
(深田)
しかもどうして西大寺なのだろう、というね。
(柴田)
そうですよね、なぜあそこに……この本にいろいろ書いてありますから。
(深田)
ええ、拝読しましたけれど、人が集まる場所だったらもっと別の所があってですね、もう少し開けている所もあるので、あそこに安倍さんを呼ぶ必要があったのかと言うと、やはりおかしい。
(柴田)
おかしいですね。あの西大寺駅の南口の方、暗殺現場と反対側は新しく開発されていて大きな広場もあり、大きなショッピングセンターもあり、人通りが北口の10倍ぐらいありますよね。僕両側行って見ていたのですけど、なんで北口でやるのか、その必然性が全然ないのですよね。
(深田)
そうなのですよ、北口にはイオンというかジャスコというか、今は奈良ファミリーと言うのかな、デパートが一つあるだけで。南口の方が道も広くて、アーケードがついていて雨にも濡れなくて便利なのですよね。それなので地元の人などは結構南口側を使うのですけれど、なぜ北口なのだろう、というね。
(柴田)
そうですね、だからこれ以外に何か理由があるのだったら教えて欲しいぐらいですね、こうこうこうだという理由をね。それで、それを調べてみたら「結構あそこも人が集まるから」という報告が党の方からあったのですね。でもそういうものではないだろうと思うのですけど……もっと人の集まる所いっぱいありますよね。
(深田)
人通りはあるのですけど、あそこは立ち止まれないのですよ。ロータリーにバスが出入りするのですけど、側道が、人が通る歩道がものすごく狭くて、立ち止まったら他の人が前に進めなくなってしまうのです。
(柴田)
そうですよね。ゼブラゾーンがあって、その両側に道路がありますよね、その道路の両側に八の字に、人が一列ぐらいしか並べないのですよね。
(深田)
そう、並べないのですよ。だから安倍さんが亡くなられた跡に、あそこに記念碑を立ててほしいという声は出ているのですけども、勿論そうなればいいかなとは思いますが、地元の人間として、あの道はそもそも事故が多い場所だという事を考えると、あそこに人が立ち止まるような場所を作るのはあまり相応しくないのではないかなって。
(柴田)
しかもね、工事中だったでしょう、あそこ。
(深田)
工事中……そういえば!
(柴田)
そうなのですよ、一昨年の今頃あそこは工事中だった。僕が一昨年の秋に行きましたけれど、その時も工事やっていましたし、あんな工事中で、穴を掘っていて黄色と黒のバリケードがいっぱい並んだ所で、そんな所で演説するという事自体がおかしくないですかね。
(深田)
しかも、ガードレールの中のゼブラゾーンにちょっと箱を置いて乗るという。
(柴田)
45センチの箱にね。そんな事、見たことないですよね。
(深田)
見たことないですよね、元首相ですよ。
(柴田)
しかも日本で最長政権を保ってきた元首相ですよ、ね、おかしいですよね。
(深田)
おかしいです。私あの第一報を聞いた時……すいません私、カレーを食べていたのですけど、一口食べただけでお店出ました。もう食事できないと思ったので。自分の地元だし、思ってもみない……民主主義国家の日本という、銃などなくて安全な国なのだと……アメリカとは違うわけではないですか。アメリカだと大統領選で毎回、銃の規制をするのかどうかという事がテーマになりますけど、そんな事がテーマにならないぐらい、銃規制どころかそもそもこの国に銃はないのだという……
(柴田)
そういう認識ありますよね。私などもそうです。僕は車を運転していてラジオで聞いていたのですが「安倍元首相が銃撃を受けた模様」という事をいきなりラジオから言ってきた。「何それ?今の日本でそんな事がありえるのか?」と思ったところからずうっと車を止めてラジオを聞いていたのですけど、そこが第一報でしたね。あれね、後から現場を見て思ったのですけど、たぶんあの場所でアメリカだったら、例えばトランプ元大統領が立って演説を始めたら、銃弾が20~30発飛んでくると思う。いや本当に、たとえは良くないけれどもそういう場所ですよね。
(深田)
そう思いますよ、だって何処からでも狙えますから。そういう場所をまず選んだという事と、駅の逆側はもっと使いやすい場所があるのに、あんなガードレールの真ん中に箱を置いてチョンと元首相が乗るなんて、こんな情けない事はないなと思いました。
(柴田)
ないですね、僕もまずそれは思いましたね。
(深田)
で、私はずっとこれ「ビルの上から撃たれたな」と、多くの人もそう見ていたと思うのですけど、あのビルについてはどのようにお調べになったのですか。
(柴田)
ビルは中に入って行きましたね。実は地元の人、おじさんおばさんの間でも「ビルのあそこから撃ったのだろう」というような噂がもう出ているのです、話していくと。例えば変な話が、地元で居酒屋に入るとそこの主人が「だってねえ……」というような事を言ってくるのです。もう僕が調べる前に、そういう噂が地元で立っている。だからそのビルの推測狙撃場所に行っても「ああ、なるほどね」と思うだけですよね。地元でそれだけの噂が立っているという事は、ちょっと、なにかね、おかしいですよね。
(深田)
そうですよね、小さな街なので一寸でも何か変な事があると「あれは……」とみんなで話しますものね。最初は、ビルの屋上にスナイパー小屋があるみたいなね……
(柴田)
そうそう、そういう情報がありましたよね。ただあれは建築小屋だったとなっているのですけど、屋上まで上がってみたら「あれはちょっと無いかな」と思いましたね。
(深田)
あの角度では狙撃は無理と。
(柴田)
ちょっと無理。もう少し下かなと思います。
(深田)
でも、あの事件の翌日の、新聞主要5紙の一面が全部同じだったというね、あれを見た時に、やはりこの国終わっているなって。
(柴田)
それは僕も感じましたね。いくら言論統制といったって、ここまであからさまにやるかなという気持があって。偶然と言えば偶然でこれも片付けられるのですけれども、そうやっていくと「偶然だ偶然だ」が今回すごく多いでしょう。新聞5紙が瓜二つのタイトルなのも偶然、下から撃ったはずの弾道が何かの拍子で上からみたいになったのも偶然、あそこで演説する事になったのも偶然。でもね偶然ってね、1つだったら偶然ですよ。2つだったらこれは怪しむべきです。3つだったらこれ必然なんですよ。今回3つどころじゃない、偶然がいくつ重なっているのか、ですよね。
(深田)
あの主要5紙が一面全部同じ見出しで出た時に、アメリカの大統領選の時のSNSの言論統制で、大統領のSNSやメールシステムが凍結されるという、あの事件をちょっと思い出しましたね。
(柴田)
ああ、そうですね、体温的には似ている部分がありますよね。
(深田)
そうなのです。今まで自分は民主主義国家に住んでいて、ちょっと政治家は変だけど、民主主義って腐っても仕方がないよね、と思っていたところが、あの日の朝の5紙の見出しを見て、なにか自分はお伽の国と言うか、ファンタジーを見ていた、いま目が覚めてしまった、という。
(柴田)
そうですよね、なにか誰かが「○○のつもり」と冗談でこの国を作ったのではないか、そういうノリですよね。
(深田)
そうなのです、映画「トゥルーマン・ショー」の中で「自分は本当に存在する世界の中で生活している」という風に信じていたのが「あ、違ったんだ」という。
(柴田)
そうですよね、こちらがフィクションだったみたいなね、逆にね。
(深田)
そうそう「私達、フィクションに住んでいたのだ」と思った瞬間でしたよね。
(柴田)
うん、確かにそうなのですよ、うん。
(深田)
……これ、犯罪ですよね、元首相が殺されるという犯罪。どうしてこれを人前でやる必要があったのかと、ここが一番ね。
(柴田)
そうですね、それに関しても私の本の中で書いていますけれども、やはり「劇的な終わり方」というのが必要だった、という事なのでしょうね。その部分に関しても、やはりフィクションですからね、僕なりの考えで書いているのですけどね。やはり僕の頭にポーンと浮かんだのが、僕まだ小学生でしたけども、ケネディ大統領のね、真夏のダラスで撃たれた、あの時の事が浮かびましたね。だから「暗殺」に出てくる、主人公を撃ったとされる人間はリー・ハーベイ・オズワルド(と同じ囮)だ、という風に僕は書いていますけどね。
(深田)
ケネディ元大統領の暗殺事件の時も、ジャクリーンが車から逃げ出そうとする姿、あれもやはりおかしいなと。
(柴田)
後で分かった事で、ちょっとグロい話になってしまいますが、オープンカーのトランクに飛んだ大統領の脳を拾うのですよ、ジャクリーンが、慌てて。拾って、くっつけたからどうなるというものでもないのでしょうけど、本能的な行動だと思うのですけどね、なんとか救いたいという。あの時の光景がポーンと頭に浮かんだのは事実ですね、安倍さんの事件があった時に。
(深田)
本当に誰もがアッと思って、ケネディ暗殺事件の時をオーバーラップさせたと思います。そう思うと、真犯人は見つからないのではないのかな、もしかしたら意図的に隠蔽されるのではないかと私は思ったのです。
(柴田)
そうですね。
【後編につづく】
(深田)
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