No.57 深田萌絵 × 森功「日本を操る黒幕列伝第二弾『官邸を操った男たち』」

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【目次】

  • 00:00 1. オープニング
  • 00:53 2. JR会長葛西氏が安倍長期政権を作った
  • 04:23 3. 検察の人事まで介入するシステムを作った
  • 08:21 4. 岸田は安倍ほど警察関係を掌握できていない
  • 13:00 5. 葛西氏子飼いの官僚たちが安倍を支えた
  • 16:28 6. 葛西氏は若手官僚を見出して育てた
  • 21:01 7. 支持率低下の安倍がリニアを目玉に頼んだ
  • 24:32 8. 狭い日本ではリニアは採算がとれない

(深田)

自由な言論から学び、行動できる人を生み出す政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回はノンフィクション作家の森功先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。

語ってはいけない日本の黒幕列伝シリーズ第2弾ということで、今回は元JRの会長の葛西さんのことをお話しいただきたいです。安倍さんがあれだけ長期政権を維持できたのは、やはり葛西さんがいたおかげだと多くの方がおっしゃっていますが、その背景は何かあるのですか。

(森)

僕も最初は気づかなかったですけど、第二安倍政権を取材する中で、いろんな人が安倍さんを支えているけれど、第一次政権と顔ぶれがあまり変わらなかったりするわけです。一体誰が支えてきたのだろうと取材している中で、はたと気づいたのが葛西敬之さんだった。よくよく考えてみると、第一次政権を作ったのは葛西さんだったということが、取材の課程の中で浮彫りになってきたというか分かりました。

(深田)

保守派の中ではこのJRの葛西会長は、もの凄く尊敬されている方で、いろんな保守の言論会の方が葛西さんとついに会えたと自慢するぐらい著名な方ですけれども、どういう風に国商と呼ばれるぐらいになっていったのですか。

(森)

要するに葛西さんの成り立ちというか生い立ちについては、『国商』ではあまり触れる必要もないと思い、今現在の葛西さんの有り様にフォーカスして書いています。こちらの『日本の黒幕』の方では、生い立ちのところも触れて書いています。もともと葛西家は佐渡出身の家柄で、お父さんが国語の先生で、そういう中で万葉集だとか漢文だとか、いわゆる古典に触れて本人が保守的な思想を持つようになっていたと感じました。

(深田)

なるほど。一次安倍政権が短命に終わり、第2次安倍政権が長期政権になれたのは葛西さんの警察官僚との関係があったからという話もよく聞きますが、第一次から既に葛西さんは安倍さんとかなり深い関係にあったというか、第一次政権の時から関わっていたんですか。

(森)

安倍政権を作ったのが僕は葛西さんだと思っています。ご存知のように第一次政権は1年の短命で終って失敗しているわけです。それはやはり葛西さんの教えが実現できてなかった。または安倍さんが若過ぎたというのもあるでしょう。保守的な思想、憲法改正だとか、いわゆる安保的な要素、または富国強兵ではないけれど再軍備みたいなことを打ち出して、美しい国を前面に打ち出したのが第一次政権で、これも葛西さんの受け売りですけれど。そこをあまりにも打ち出すばかりに経済政策が多少疎かになってしまっていたのではないか。

結果的にそれが失敗して短命に終わっているということです。それを踏まえて第二政権に望んだ。ほぼほぼ同じ布陣で望んでいるけれど、ひとつ違うのが葛西さんが送り込んだ官邸官僚の中心人物として、杉田さんという警察庁出身者を官房副長官として送り込んでいるわけです。この人が随分機能している。マスコミ捜査だとか、いろんな事件が起きても、結局 森加計問題みたいな事件が起きても、何の広がりもなくなんとなく政権を続けられたのも、杉田和博さんという警察官僚の情報管理というか危機管理の賜物です。逆にマスコミからすると、全部封じ込められてしまった8年7ヶ月だったのではないか。

(深田)

どういう封じ込め策があったのですか。

(森)

簡単に言うと人事です。要するに霞ヶ関人事が、安倍一強政権の力の源泉と言われるのが人事局という霞関の中央館長の部長以上、または部長候補を入れると860人いますけど、その人事を内閣人事局で一手に握って、如何様にもコントロールできる。その内閣人事局の局長についていたのが杉田さんで、霞ヶ関は幹部人事の全てを握られてるわけだから、それはもう震え上がっちゃうわけです。だから言う事を聞かざるを得ないというのがひとつ。そういうコントロールできる力を持っていたということです。

(深田)

杉田さんが内閣の人事を制御していたので、省庁からリークされてくる情報がガクンと減ったということですか。

(森)

それもあります。簡単に言うと一番は公安的な事件にならないということです。加計学園にしても森友学園にしても、結局事件として封じ込められたわけです。今になって当時の森友学園の捜査指揮を取っていた大阪地検の検事生が猥褻罪で逮捕されて、5年も経って明るみになるというのが象徴的な話だ思います。

その時には分かっていたはずです。5年前の猥褻事件だけど、彼は当時森友学園捜査の最高責任者として森友学園事件を封じ込めた1人です。確かに難しい捜査だったと思うけれど、できなくはない捜査だというのは取材の中で何人もの検察関係者も言っていたし、あの程度で終わって良かったのかというのは検察にとっては忸怩たる想いがあると思います。官邸対検察というような対立というか、捜査対象になった官邸の主である安倍さんと検察との対立構造の中で、公務検察の人事まで介入できるシステムを作り実際に介入してきたわけです。

(深田)

2014年の公務員の制度改革があった後からそうなったっていうことですよね。

(森)

もっと前です。2013年です内閣人事局がスタートしたのは。元々官邸強化の一環として、内閣人事局構想は橋本政権の時からありました。何度も自民党はチャレンジしてきたけれど、なかなか実現できない。それは難しいですよ。官邸に権力を一極集中させるとまずいという意見が霞ヶ関の中からも出てくるので法制化するのは難しいし、部所を作るのも難しかったけど、それを2013年に実現したわけです。

つまり12年に第二次安倍政権スタートして、その直後からそれが実現できて、その後に杉田さんが局長についた。それまでは加藤勝信さんだとか、萩生田さんとかの副長官がやっていた部署です。だけど加藤勝信さんや萩生田さんは政治家なので霞ヶ関のことはよくわからない。一方で杉田さんは警察エリート官僚だから、霞ヶ関を全て把握している立場なので1番適任ではあるわけです。

(深田)

なるほど。やはり官僚としても杉田さん敵に回すとまずい。

(森)

そうです。まずいです。実際にまずいし、例えばマスコミにしてもマスコミに介入していったのが官房副長官として人事とは違うけれど、官房副長官という立場でのN H Kでの介入を菅さんと杉田さんでやっていく。民間放送局は、放送法で守られているけれど、逆に言うと放送法で縛られてえるわけです。免許制度だから、それは総務省が実権を握っている。総務省をコントロールすることによってテレビ局をコントロールできる。そういうコントロールシステムを作ったということです。その頂点にいたのが杉田さんに菅さんです。

(深田)

なるほど。今回、裏金事件が明るみになってから、よく記事で見かけるのが、安倍政権時代だったらもっと捜査の内容とか漏れ伝わってくるものがあるのに、岸田さんが警察関係のグリップが弱いので捜査関係の情報が全然入ってこなくて困るみたいことを聞きますが、やはり違うのですか。

(森)

そこが岸田官邸は弱いと言われるとこです。今の粟生さんも警察庁あがりの官房副長官で実態としてはコントロールする立場の人だけど、あまりグリップできてない。杉田さんほどグリップできてない。だから今回の派閥パーティー問題で、岸田さんは何の情報もなく突然岸田派にも捜査が入ってしまった。あれは岸田さん知らなかったわけです。首相が知らないということは、なかなか有り得ない。東京地権が捜査内容をあそこまで知らないことは有り得ない。少なくとも官房副長官クラスがその情報を掴まなきゃいけないけど、岸田さんのところは掴んでなかったから官邸に上がらなかった。岸田さんが慌てるひとつの要因になっている。朝日新聞から取材を受けた岸田総理は、慌てて派閥の解散しようと、自分とこの派閥もやられるわけだからという風に踏み切っていくということだと思います。だから今の官邸官僚たちは弱いといえば弱い。

(深田)

今回、岸田さんが派閥解散をするとか、政治資金規制法の改正でパーティー券が、これまで20万円分まで買えたのが5万円になって、菅さんや麻生さんが怒ることになって、岸田下ろしの風が吹く。この流れになっていますが、そんなに岸田さんが警察をグリップできないのは、人でそんなに変わるものですか。

(森)

霞ヶ関はそうでしょう。霞ヶ関をグリップするのは官房副長官の役割であり、長田町にグリップするのとは、また別の話です。

(深田)

別なのですか。

(森)

 別です。官僚と政治家は違うから、政治家をグリップするには政務の官房副長官がちゃんと働かなければならない。または政務秘書官です。政務秘書官として優秀だったとされるのが今井さんっていう人です。

(深田)

今井尚哉さん。

(森)

官邸官僚で、経産省出身です。安倍内閣が経産内閣と言われたのは今井さんがいたからです。今井さんが安倍さんに政策を授けて、今井さんが霞ヶ関だけじゃなく政治家までグリップしていった。政治家のような役割を果たしていったわけです。政務秘書官として。小泉政権の時の飯島さんみたいな存在です。官僚の秘書官と金庫番の両方を兼ねていくような政務務書官として存在したし、今井さんは首相補佐官にもなったし、絶大な権力を握っていったわけです。もう少し言うと、そのバックにいたのが葛西さんです。

それらの人たちを安倍政権の中に配置していったのが葛西さんで、今井さんにしても杉田さんにしても葛西さんの盟友というか、葛西さんが若い頃から可愛がってきた官僚です。第一次政権の時にから同じ顔ぶれ。杉田さんは違いますけど。例えば、今井さんにしても警察関係では北村さんがいたりとか、経産関係で言うと長谷川さんっていう人がいたり、そういう人たちはバックに葛西さんがいて、葛西さんと政策協議をしているわけです。その官僚ですから政策には長けているので、それを安倍官邸に授けるシステムを作った。第二次政権でそれは完成した。だから安倍政権は強かったというか長く続いたのは、そういう力の背景があったと思います。

(深田)

葛西さんがそこまで官僚に対して人脈が持てていたのは、何か秘訣があるのですか。

(森)

葛西さん自身は官僚なわけです。元々国鉄官僚なのです。国鉄官僚というのは、すごいプライドが高くて、一般にはJRは今民営化されているから、そんなに感じないけど、国鉄だったわけです。官僚のトップは国鉄マンなのです。

(深田)

え、そうなのですか!

(森)

そうです。鉄道は国家なりという時代ですから、明治以降、国鉄キャリア官僚というのが日本を引っ張ってきたわけです。葛西さんはその国鉄に入って自負がある。しかもその後、JR国鉄民営化を経ていく中で、警察の重要性、つまり労動組合との戦いというか、はっきり言えば革マル派という過激派と戦っていくわけです。

革マル派や国労や、そういう労働組合と戦っていく中で、公安警察を使わざるを得ないというか、公安警察を頼らざるをえないし、公安警察に守られてきた。だからその公安警察の情報網を熟知しているわけです。官僚の使い勝手がいいというか使い道もよく知っている。

その中でJR東海のトップに立った時に若手官僚を見出して育てていく。葛西さんが育てていった官僚というのは財務省です。旧大蔵省・外務省、安全保障上の警察、防衛省、経産省、その辺りです。その辺りの優秀な官僚たちを毎月接待というか飲み食いしながら政策協議をされてきた。その中で優秀な人たち、これぞという人たちを安倍官邸に送り込んだのです。

(深田)

なかでも今井尚哉さんは、東芝がウェスティング・ハウスを買うように進めたと言われていますが、M&Aの提案ができるのですか。

(森)

もちろん。要するに東芝救済に動いたというか原発です。ウェスティング・ハウスを買って、東芝に原発をやらせる。東芝も国作企業なので、原発で東芝を救済というか、救済または企業として利益をもたらそうとした。官僚時代、経産省時代から原発推進派ですから。今の岸田政権の中にいる島田孝志さんも今井さんも葛西さんの盟友です。原発推進派で、そのバックには葛西さんがいるわけです。葛西さんが原発推進論者で原発再稼働論者。これは賛否別れて、どっちとも言えないと思いますけど、少なくとも原発推進派を授けているというか共闘してるのが葛西・今井・島田で、経産官僚の中でそれを進めてきている。

(深田)

確かに、東芝って白物が全然ダメで長らく原発部門とメモリの部門の二本建てで利益を出してきて、原発がダメになったというのもあると思います。

(森)

今、半導体ですよね。

(深田)

そうです。でもそのメモリも売っちゃったわけです。これでどうやって東芝やっていくのかと思いましたし、ゴタゴタして低迷して粉飾だ何だのと言われていましたけれど。あの時、面白いことをホリエモンさんがおっしゃっていて、自分は東芝と比べたら少額の粉飾決算で、自分は東京地検に追われて豚箱行きになったのに、どうして東芝はいいんだみたいな文句を言っていたことがあって、確かにそれは言えているなと思いました。

(森)

それは巨大だからです。国策の会社だからです。原発は、国として進めてきたわけですから、輸出も結局ダメになっていますけど、トルコにしてもイギリスにしても、それを進めてきたのは今井さんです。その原発の輸出だとか、もっと言えば鉄道の輸出です。それは、葛西さんが得意とするところで、これもダメになりましたけどアメリカのテキサスに新幹線を走らせるという事業をずっと進めてきて大赤字で問題になっていました。あとリニアです。リニアは葛西さんの悲願だけど、海外に輸出するためにやっているわけです。日本で走らせて成功させて海外に輸出するというのが葛西さんの悲願でしたが、今の状況だとかなり難しい。やることやるのでしょうけど、その実現に至るまでは相当な資金が必要です。

(深田)

国からもっとお金を融通してもらったりとか、静岡で揉めていましたよね、水脈にあたるとか。

(森)

静岡問題はリニア問題の本質ではないです。本質はお金です。安倍政権時代に財政投融資を3兆円引っ張ったわけです。それは、葛西さんの本意とするとこではなかったけど、安倍さんのアベノミクスがヘタってきた時、安保法制で安倍さんの指示率が下がってきた時のアベノミクス第2弾の目玉としてリニア先行前倒しというか、最初は東京―名古屋間を先に走らせて、その間に東海道新幹線で稼いで、更に名古屋から大阪までと、もっとゆったりとした計画を立てていて、それは全てJR東海の東海道新幹線で賄う前提だった。

でも安倍さんがそうではなくて、アベノミクスニアとしてリニアの前倒しをやると、一辺に大阪まで行くことを葛西さんに頼んで、葛西さんはそれを受け入れて、結局3兆円もの資金を、財政投融資をリニア計画に引っ張っていった。これはもう国の政府のプロジェクトになっちゃったのです。今まではメインはJR東海だったが体質が変わった。

(深田)

JRは国鉄からJRとして民営化されたのに、国からお金をもらってやることになった。

(森)

それだけでは多分済まないですよ。つまり3兆円だけでは済まない。1番の問題はそこだと思っていて、今9兆円って言われていますが、少なくとも10兆円。多分20兆円以上かかります。そんなに金を使ってリニアが成功するとは思えないのです。つまり赤字の元凶になってしまう。旧国鉄の二の前になりはしないか、僕はそこが1番の問題だと思う。無理に日本でリニアを走らせる必要があるのかどうか。そこの議論をする必要があると思います。

(深田)

私自身は、リニア鉄道の技術が進むのは、技術屋さんとして楽しみだなと思っています。でも試乗させていただいてリニアに乗った時に、ちょっと頭が痛いっていうか、電磁波なのかわからないですけど、短い時間だったのにちょっと頭痛がしたり、それが長い時間になった時にどうなるのかというのは心配になったのです。

(森)

なるほど。技術的には相当進歩している。技術的な問題を言う人はいるけれど、多分僕が取材出題した過程では、技術的な問題よりも採算的な問題は必要かどうかの議論です。多分、技術的にはかなり進んでいる。東海の人にも取材しましたので、それは可能なんじゃないですか。トンネルはまた別問題です。トンネルは掘ってみないとわからないので、それもどれだけ難行するかはまた別問題だけれど、例えばアメリカみたいな大きなところで走らせる分には、多分そんなに問題ないのじゃないか。日本は狭いからトンネル ドーンと通さなきゃいけない。あんな無理してみたいなところには問題があるだけ、そもそも走らせる場所を間違っているのじゃないか。

(深田)

オーバースペックっていうことですね。日本でもIT業界で開発を進めて進めてとやります。4Kとか8Kって技術はかなり進んでいますけれど、その一方で大画面よりも多くの方が小さなスマホとかタブレットで画面を見るようになってきたので、そこまでの高解像度が必要とされなくなった。オーバースペックだったので4Kがこけちゃった。4Kが始まったけど、4Kでそのバリューを課金ができないという問題があります。

そういうことを考えるとリニアも採算の問題は出てくるかもしれません。今回も官邸官僚がどれだけ猛威を振ってきたのか、そのバックには葛西さんという元国鉄が、JRが民営化をしてJR東海の社長になられた方が、これだけ安倍さんが長期政権を生み出すまでに活躍してきたことを森先生からお話をいただきました。森先生、今回もありがとうございました。

政経プラットフォームでは、毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。日本を変えるため行動できる聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では、皆様のご意見をお待ちしております。また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。

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