#52― 深田萌絵×藤和彦『ウクライナ混迷で欧州の脱・脱炭素へ』

(深田)

自由な言論から学び行動できる人を生み出す、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。

今回は経済産業研究所コンサルティングフェローの藤和彦先生にお越しいただきました。よろしくお願いします。

普段は深田萌絵テレビに出演していただいていたのですけれども、ついにこちらの政経プラットフォームにご出演いただきましてありがとうございます。

やはりエネルギーといえば藤和彦だと田村秀男先生からもお墨付きをいただいています。藤さんはどうしてエネルギーの専門家になられたのですか。 

(藤)

たまたま1990年代の後半に、当時の石油公団に出向しまして、あまりにも暇だったものですから石油の勉強をして「面白いな」と思って、なぜか今や「なんちゃって専門家」になっております。

(深田)

そういうことなのですね。今は経産省の研究所に該当するのでしょうか。

(藤)

そうです。 

(深田)

深田萌絵テレビとか、こういう深田萌絵が絡んでいる番組に出演して、経産省の人から怒られたりしないのですか。

(藤)

全然無視じゃないですか。あの親父はしょうがないと、さじを投げられているのではないですか。

(深田)そうですか。萩生田議員から色々と文句を言われる人もいるみたいなので、私のチャンネルに出るのは要注意ということなのですが。

(藤)

その方は大物ですから。小物は大丈夫ですし、出過ぎた杭は打たれませんから大丈夫です。

(深田)

日本政府があれだけ「ウクライナ、ウクライナ」と言っている中で、どちらかというとロシア寄りですものね。

(藤)

ロシア寄りというか、正直に言ってウクライナが嫌いですから。

(深田)

どうしてウクライナが嫌いなのですか。

(藤)

どうしようもない国じゃないですか。

(深田)

そういう意見を経産省のエリートが言うのですか。

(藤)

昔エリートでしたね。

(深田)

今はエリートではなくなってしまったのですか。

(藤)

もう今は単なる年寄りです。

(深田)

だからこそ自由な言論ができていいということなのですね。

これまで脱炭素で向かってきた世界ですが、今、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格がとんでもないことになって、揺り戻しが来ているということで、ヨーロッパの欧州議会選挙では、実は左派というか、環境政策を推進してきたリベラル政党が負けてきているということなのですけれども、この辺りを少し教えていただけないでしょうか。

(藤)

これは当たり前でして、特にドイツは10年間で電気料金が2倍になっているのです。

ドイツは不動産バブルを含めて景気が良かったですから、所得が増えて少々電気代が増えても構わないと思ったのですけれど、所得が横ばいから下がっていけば、もうそんなものに金を使っているのはおかしいということになる。

日本でも、1980年代はまだ環境問題に関心があったのですけれど、不景気になったらもうほとんど日本人は関心を持たなくなりました。今でも、若い人も含めてほとんどが、環境問題にあまり関心がないですよ。

(深田)

そんなことないですよね。

(藤)

いや、国際的な世論調査でも最近出ていますが、日本の若者は環境問題について「分からない」という回答が多いのです。反対はしないのですけれど「分からない」がやたらに多いのです。

(深田)

そうですか。それには景気は関係あるのでしょうか。

(藤)

もちろんあります。なぜなら環境問題は必ずコストアップになります。環境問題というのはある種の贅沢品であり、富裕層の見せびらかし商品みたいなものですから。

(深田)

エコは富裕層の見せびらかしですか。

(藤)

そうです。

(深田)

確かにテスラは、そういうことですよね。

(藤)

はい。それを持っているとブランドになる。

1990年代ですが、カリフォルニア州で高速道路が渋滞するものですから、省エネ車だけの専用レーンがあって、それを目当てに金持ちがやたらと省エネ車を買ったりしていますから、そういうところから始まっていますよね。

(深田)

なるほど。エコ商品が金持ちの見せびらかしというのは初めて聞きました。

今、ヨーロッパで揺り戻しというか、これまで「炭素脱、脱炭素」で来た欧州議会で、緑の党が負け始めているのは、贅沢をする余裕がなくなってきたということなのですか。 

(藤)

そうだと思います。だから「衣食足りて礼節を知る」ではありませんが、衣食が足りなくなったら礼節どころではないということで、極めて当たり前の揺り戻しだと思っています。何も騒ぐことはないと思います。

(深田)

今回、欧州議会で16歳から選挙権を与えることになりました。これは元々、グレタ・トゥーンベリさんが「子供たちは学校に行かずに環境デモをやろう」と言って、ティーンエージャーの中で環境に対する意識が高まってきたから、16歳に投票権を引き下げましたね。

(藤)

緑の党はそういう狙いでやりましたよね。

国際的には今、世論調査で明らかになっていますが、16歳から24歳では女性はすごくリベラルなのです。そして男性はすごく保守的になっています。

私は男だから分かりますが、平和な時代になり、頭だけで勝負すれば女性が勝ちます。今アメリカでは、確か学位を取っている65%が女性です。要は男が負け組です。

(深田)

頭だけでは女性に勝てないと男の人が思い始めているということですか。

(藤)

私はそう思います。

だって我々男なんて注意力は散漫だし、記憶力も弱い。男が女性に勝てるのは、最初からもう暴走老人化していますけれど、革命と戦争の時だけですから。

(深田)

そこまで男の人を否定する気はないですけれど、そのように感じている若い人が多いということなのですね。

(藤)

若ければ若いほど、就職の面でも不利ですし、大学に行かなくて高卒で職業についている男性が増えています。

ですから、トランプさんとか、例えば今回の極右政党の28歳ぐらいのイケメンに流れていくわけですよ。

(深田)

そういうところに若い男性票ですか。

(藤)

はい。

(深田)

では若い女性票は。

(藤)

リベラルですけれど、どちらかと言うと緑の党系でしょう。

男も女も含めて緑の党に来ると思ったら、男はほとんど極右に行ってしまい、おそらく女性の一部の貧しい人たちは「そんな環境問題よりは日々の生活をなんとかしてくれよ」ということで、いわゆる右の方に行ったのだと思います。

(深田)

なるほど。日本でも意外と弱年層が自民党を選んだりするとか。

(藤)

それは保守的になりますよ。やはり人間は、自分が置かれている環境が厳しいと思ったら冒険なんかできないですから。だから保守に走るのは極めて当たり前です。

(深田)

これまで欧州が脱炭素や環境問題を推進して、EV車や太陽光パネルを推進して来たわけですけれども、ドイツは内燃機関車全面禁止から少し変わってきました。

(藤)

そうですね。水素自動車を含めて、液体自動車については復権みたいな話になっています。

(深田)

今後、そういった流れはどうなると思いますか。

(藤)

これほど中国からEVや太陽光が過剰輸出されて、デフレ輸出が起こると思っていなかったですから、そこで飯を食おうと思ったら全部中国に持ってかれてしまったということになりますので、多分大きな形で変わっていくと思います。

(深田)

どういう形で変わっていくと思いますか。

(藤)

逆にヨーロッパは「EVなんかダメだ」という話をしかねないですよ。

深田さんが前からおっしゃっているように、ライフサイクルで考えたらEVは決してエコではないですから。

(深田)

そうですね。その辺りから、中国に対抗する方向に欧州も意識が向き始めているということなのですか。

(藤)

中国に対抗するというよりも、彼らはEVとか太陽光で新しい産業を作ろうとしたわけです。最初の目的は「打倒アメリカ」ですよね。

(深田)

「打倒日本車」だと思っていましたけれど。

(藤)

日本車もそうですが、アメリカもありますよね。「日米に対する打倒」だったのが、結果的には全部中国に持っていかれてしまったとなれば、EUの方たちは平気で自分たちでルールを変えますから。

(深田)

そうですよね。今回も、太陽光とEVに対する関税を引き上げようという話が先鋭的に進んでいるのが欧州で、アメリカはそこまででもないですよね。ということは、欧州は「中国にばかり儲けさせてはいけない」と考えているということですか。

(藤)

トンビに油揚げを奪われてしまったという話ですから、当然彼らは非常にしたたかというか、意地の悪い人たちが揃っていますから、ルールを変えていくのではないでしょうか。

深田さんがおっしゃっているように、トータルのライフサイクルで考えたらEVも太陽光も決してエコではないですから、多分そういう話をし出すと思います。

(深田)

今後、欧州はどちらかというと右傾化していくと読んでいらっしゃいますか。

(藤)

右傾化というか、この過去30年のグローバリゼーションで、政治の軸が左にずれてしまったのです。それがまた30年前に戻る。

今の極右と言われている方たちは、30年前は中道右派でした。私はそう見ています。

極右だとか、あまり心配することはなくて、「グローバリゼーションで、あまりにも一方的に左に触れた座標が30年前に戻る」と考えればいいのではないかなと私は思っています。

(深田)

そうですよね。

自分で言うのもなんですけれど、若い時はかなりリベラルだと思われていました。20代の女性が株式投資をして、自分で会社を起こして、自分でお金を儲けるということだけで、「女性がそんなことしてはいけない」とかなり叱られたことがあります。

20年前、25年前のその頃はものすごかったです。「女の子がパソコンを持って何に使うのか」と言われ、かなり前衛的だと思われていたのが、今の時代では自分が右翼に見えるというのは、よほどおかしな時代が来たなと思うのです。

でも、世界中が左傾化しすぎて、その揺り戻しが来ているとお考えになっていると。

(藤)

左傾化、右傾化という言い方もいいですが、ナショナルかグローバルかということを考えた場合に、この30年間、特に日本はすごく財政政策で財政出動をしましたが、今の財政支援策はほとんど金融じゃないですか。

だから、マネーで何とかしようとすれば、グローバルマネーが世界を席巻する。

我々日本も含めてアメリカもそうですが、なるべくグローバルなマネーに我が国に来てもらいたいと阿ったが故に、どんどん政治も資本に対して非常に友好的な政策を取った。

だけど考えてみれば、そこにいる人はどうなのでしょうか。

特に先進国では、ジョブを含めて全部が発展途上国に行ってしまいましたから、割を食ってしまう。

あまりにもバランスが崩れたところを、また元に戻していこうと。

グローバルかナショナルかと考えたら、あまりにもグローバルに行き過ぎてしまったところが、ナショナルに戻ってきている。

ただそれは、グローバルのマネーからすれば非常に活動がしにくくなります。

だから、メディアをかなり支配しているマネーが、そういうプロパガンダをやっているのだと思います。

(深田)

ただ、グローバリズムの震源地は基本的に、スイスのジュネーブにあるダボス会議から来ているわけじゃないですか。ああいったものは欧州の影響がかなり強いと思うのです。

その欧州議会の中で、ドイツが内燃機関車の禁止をやめるであるとか、緑の党が大敗するというのは、グローバリズムの流れに対しても何か影響が出てくるとお考えですか。

(藤)

私はスイスのダボス会議がそんなに力を持っていると実は思っていません。

グローバリゼーションのエンジンは2つあると思っていまして、1つはエネルギー、もう1つは金融です。

この30年間、冷戦が崩壊してマーケットが1つになりました。その流れにうまく乗ろう、さらには加速しようとする人たちが、いわゆるグローバリズムということを言い出したわけです。

経済の下部構造で、エネルギーと金融が世界のワンマーケットで自由に活動できるようになったので、多分そういう流れになってしまった。だから下部構造が変われば、当然上部構造のグローバリズムもほとんど力を持たなくなるのではないかと。

(深田)

今回のグローバリズムの動きが、脱炭素の辺りから崩れ始めているというきっかけを作ったのはロシアですよね。

(藤)

そうです。2年前のロシアのせいで、30年続いたグローバリゼーションがものすごい勢いで逆モードになっています。

(深田)

ロシアを中心とした資源国と、資源国を封じ込めようとしていた脱炭素の動きが、完全に今回割れたということですよね。

(藤)

そういう見方もできるのですが、私の見方からすると、おそらくエネルギーと金融がグローバル化の先兵だったわけです。

エネルギー市場は、ロシアをある意味でヨーロッパとアメリカが敵視したことによって、市場が分断されてしまいました。

金融は、ロシアに対する金融制裁で、金融市場も分断されました。

そして結果的に、グローバル化によるディスインフレではなくて、グローバル化がどんどん崩れていく中でインフレが起こりつつあるということです。インフレになったらマネーは非常に活動がしにくくなりますから。

(深田)

インフレが起こるということは、マネーの価値が無くなるということですね。

(藤)

はい。だから70年代、80年代のスタグフレーションの頃は、ウォール街は今と全く違って青息吐息の状態でした。

(深田)

ということは、ロシアは今そういったことを狙っているということですか。

(藤)

それは結果論ですね。プーチンさんはそんなことは考えていないと思います。

ウクライナという国を、アメリカで言えばキューバみたいな、中国で言うところの確信的利益と言うのでしょうか、欧米がゼレンスキーさんをうまくたぶらかして挑発して、本当にやばいと思ったから侵攻したということなのではないですかね。

それによって結果的に、エネルギーも金融も分断されてしまい、グローバリゼーション自身の全体の底が抜けてしまったということが、今起きていることだと思います。

(深田)

グローバリズムを推進していた欧米というか、G7、NATOというこのチームは、ウクライナとロシアを戦争に引きずりこんで、勝つつもりなのですか。それとも単に戦争を引き起こしたかっただけなのですか。

(藤)

これは2つの誤算があると思っています。

まず、ロシアはウクライナなど1週間あれば全部占領できると思ったわけです。

元々ウクライナは、戦争する以前は3つの地域に国が分断されていましたし、ウクライナという国ができて以降、多分1000万人以上が海外へ移民で出てしまったのです。ある意味では一種の破綻国家なわけです。

だからこんな国なんて鎧袖一触だと思ったけれど、なぜかゼレンスキーさんが頑張って、欧米が応援して、なかなか負けていないことは1つ目の誤算です。

2つ目の誤算は、欧米の今回の金融制裁というのは史上最高レベルです。史上最高レベルの金融制裁をやったら、ロシアの経済は1ヶ月で破綻すると思ったら破綻しなかった。ダラダラと続いて現在に至っていることが2つ目の誤算だと思います。

(深田)

ロシアからすると、欧米から金融制裁を受けたことによって、逆にロシアの石油や天然ガスが欲しい国家と直接取引するようになったわけです。

すると、ロシアの通貨の価値が高まり、ドルという通貨の価値、実需が減る。そこまではアメリカは考えてはいなかったのですか。

(藤)

そうなる前に、ロシアはすぐに白旗をあげると思っていましたから。それぐらい今回ものすごく厳しい金融制裁を課しましたので。

(深田)

ロシアがそこまでアメリカからの金融制裁を受けても、自分たちの経済が破綻しないというところまで持っていけたのは、どういった要因があったのですか。

(藤)

要因としては、やはり2014年にクリミアを併合した時に、かなり欧米から制裁を食らっていますから、それでかなり準備をしていたというのは1つです。

ロシアは原油と天然ガスを輸出していますけれど、原油と天然ガスの輸出収入は4対1で原油の方が天然ガスより4倍多いです。

それで多分、原油の行場がなくなったら困るということだったのですが、ロシアにとって最もラッキーだったのは、インドが爆買いしてくれたことです。それによって生きながらえられた。

インドが買わなかったら、もしかしたらロシアはやばかったかもしれません。

(深田)

インドが欧米とは歩調を合わせなかったのには、何か背景があるのですか。

(藤)

インドは元々非同盟主義ですから、決して欧米なんかに追従しない。

また、やはり実理主義です。国内はインフレですので、なるべく安いロシアの原油を買いたいということで爆買いしたのだと思います。

(深田)

なるほど。日本は全然そういう合理的な判断ができていないですよね。日本と欧州と言うべきですかね。

(藤)

合理的どころか、教条主義的ですよね。「ロシアは悪い」、「あいつはけしからん」と。

それから呪文のように、「ウクライナの後はアジアも同じことになってしまう」とアメリカから言われて、その通りに行動しているのは非常に情けないと感じます。

(深田)

今回のロシアのウクライナ戦争で、1番経済的なダメージを受けたのはドイツかなと思うのです。

(藤)

間違いなくドイツです。

(深田)

ドイツが弱体化するというのは、ロシアの狙い通りということなのですか。

NATOの中でドイツの経済が弱くなると、NATOの結束力が弱まるということをロシアは計算していたということですか。

(藤)

いや、ロシアも相当打撃を受けていますから。パイプラインで天然ガスを輸出する「ガスプロム」という会社があるのですが、これが25年ぶりの赤字になってしまったのです。大赤字で無配です。

(深田)

原因はやはり「ノルドストリーム1」、「ノルドストリーム2」ですか。

(藤)

はい。ヨーロッパに対するガス輸出ができなくなったので、もう大赤字です。

(深田)

ロシアとドイツを結ぶパイプラインは…

(藤)

それも含めて、それ以外のパイプラインもありますけれど、どんどん買うのをやめました。

「ガスプロム」という会社はソ連崩壊の時もずっと営業してきまして、あとリーマンショックでも全く赤字にならなかったのに、今回で本当に赤字になってしまった。プーチンさんからしたら、1番大事な企業が赤字になったという意味では、打撃は被っています。

(深田)

そうですよね。

プーチンさんが大統領になった2000年の初期ですけれど、まず「ガスプロム」を接収しましたよね。

(藤)

ホドルコフスキーが持っている「ユコス」という石油会社は接収しましたね。

(深田)

「ガスプロム」の経営者を追い出していませんでしたか。

(藤)

「ガスプロム」は元々国営企業のままずっと来ていますから、ずっと政府のコントロール下の会社です。そういう意味では非常に大事な会社なのです。

そこが今大赤字ですから、結構それなりに打撃は被っています。

(深田)

では、ロシアは今後どうなっていくと思いますか。ロシアとウクライナの紛争は、この後収束していくのか長引くだけ長引くのか、どういった方向に進んでいくと思われますか。

(藤)

最近のアメリカのメディアでも出ていますが、来年の上半期までに、多分ゼレンスキーの代わりの人間を立てるのではないかと言われ始めていますね。

(深田)

ゼレンスキーを替えたいというのは、どういった動機から来るのでしょうか。

(藤)

ゼレンスキーが「領土は全部完全に回復する」と、ほとんど現実不可能なことを言っていますから。

もう1つは、3月で彼は大統領の任期が切れましたけれど、選挙をやらなかったことも大きいですね。

だから、これは非常に皮肉でして、ロシアでプーチンさんは仮初めにも選挙をやったわけです。そして、ゼレンスキーはやっていない。「どちらが民主主義の国ですか」となる。非常にある意味では格好がつかないのです。

(深田)

ゼレンスキー大統領が3月に選挙をやらなかった背景は、やはり今自分は人気がないというのを…

(藤)

そう、やったら負けるかもしれないと。それはやはり独裁者ですよね。

(深田)

はい。そうやってゼレンスキー大統領が3月に行うべきだった大統領選挙をやらなかったことも、ゼレンスキーを取り替えようというアメリカの動きを引き起こしていると。

(藤)

彼の戦略を続けていたら、10年経っても20年経っても、今の占領されている4つの州なんて回復できっこないですから。

それをしようと思ったら、アメリカを含めてNATOが直接介入しなくてはいけないわけです。そんなことをアメリカはする気はないと思います。

(深田)

そこまで介入する気はないと。

(藤)

ただし、今はそういう状況になってきていますよね。

最近、アメリカの安全保障の大統領補佐官のサリバンさんが、「ウクライナに提供した武器は、ハルキウ以外のロシア全土に使っていい」なんて言い始めています。

安全保障のジレンマではありませんが、どんどんエスカレーションが起きていて、アメリカ国内でも「やはり危ないのではないか」と言われて、どちらかというと左系のメディアがそういう情報も流すようになってきているのではないでしょうか。

(深田)

それまでは「ハルキウだけで使っていい」となっていたのを、「ロシア全土で使っていい」となったのは、アメリカは介入したくないということなのですか。それとも、ウクライナを以前よりもっと応援しているという姿勢をロシアに見せているということではないのですか。

(藤)

そうは言っても、ロシア側はそういう風に受け取らないですよね。

アメリカが準交戦国だということになると、どこを狙うか分かりませんよね。アメリカの特殊部隊がおそらくもうウクライナに入っているでしょうから、特殊部隊を狙うことで、直接対決になっていく可能性は出てきますよね。

(深田)

今後、アメリカとロシアが直接対決する可能性が出てきたということですか。

(藤)

はい。だってウクライナを支援して提供した兵器を使って、ロシア全土を攻めていいという話は、もう交戦国と同じです。同盟国ですから。

(深田)

そうですよね。どうしてアメリカは、そこまでウクライナに肩入れすることになったのですか。

(藤)

元々、バイデン政権が出てきた時からそういうことがありました。今のバイデン政権は、おそらく過去20年、30年の政権の中で、1番ロシアが嫌いな政権なのです。

まず、バイデンさんがプーチンさんを大嫌いですよね。もう平気で罵倒しています。ブリンケンさんも、サリバンさんもそう。

先日、国務副長官を辞めたヌーランドという女性が筋金入りでした。旦那がネオコンの重鎮です。

とにかくロシア大嫌いの人たちが全部揃った政権ですから、なんだか嫌だなと思ったら、想像を超えたことが起きてしまったというわけです。

(深田)

このまま、ロシアから見てアメリカが「これはもはや事実上の準交戦国だ」という風に見られることが、アメリカにとって得なのかどうかと言えば、決して得ではないですよね。

(藤)

はい。だから戦略的な発想がないのです。

先ほども言いましたように、元々戦争が起きた時には2つの誤算があり、長期化したくないのに長期化してしまったので、ロシア側も結構困っていますし、アメリカと西側も困っています。

どこを落とし所にするかなんて考えていないですから。膠着状態なんて想定していませんでしたから。

(深田)

ただ、今後ゼレンスキー大統領をすげ替えるとなると、アメリカは着地点を模索したいのではないですか。

(藤)

それは、もう朝鮮戦争の時と同じですよね。

朝鮮戦争の終結は、李承晩大統領を全部パージして、アメリカが勝手に停戦をしました。多分そういうことになるのではないでしょうか。

当時、李承晩さんが「徹底的に戦う」と言っていました。アメリカが手を焼いて、最後は李承晩さんをパージして一方的に停戦した。その停戦交渉には、一切韓国は関与していません。

そういうことが、今後ありうるのではないかと思います。そうでもしなければ、もうまとまらないですね。

(深田)

そうですよね。「着地が見えないような膠着状態になってきたかな」と、かなり前から見ていました。

今回、ロシアのウクライナ侵攻でエネルギー価格はかなり不安定になり、それがヨーロッパにも…(後半へ続く) 

政経プラットフォームでは毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。

日本を変えるため行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では、皆様のご意見をお待ちしております。

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