No.50 深田萌絵×石田和靖 『バイデン大統領 中東政策の失敗で弱腰外交へ』

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【目次】

  • 00:00 1. オープニング
  • 00:50 2. サウジに弱腰になったアメリカ
  • 04:37 3. サウジはアメリカに核開発を要求
  • 08:30 4. 米国債を発行できなくなり衰退するアメリカ
  • 11:57 5. 世界一米国債を保有する日本が危ない
  • 14:53 6. 新刊『10年後、日本は生き残れるか』

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく。政経プラットフォーム。ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。

今回は「越境3.0チャンネル」石田和靖さんにお越しいただきました。石田さん、よろしくお願いし ます。

(石田)

はい、よろしくお願いします。

(深田)

毎回石田さんの話を聞くのを楽しみにしているのですが、今日はとても気になったニュースがあります。アメリカがあれだけサウジアラビアに対して結構偉そうな態度を取ってきたにも拘わらず、ついにサウジに防衛協定を提案しに行ったというニュースが出てきました。これは、バイデンが今弱腰なのではないのかと勘ぐっているのですが、どうでしょう。

  • サウジに弱腰になったアメリカ

(石田)

おっしゃる通りですね。弱腰であってそこにつけ込んでいるのがサウジアラビアという構図ですね。

(深田)

そうですよね。

(石田)

なぜこういうことを始めたかと言うと、元々、バイデン政権が考えていたのはサウジアラビアとイスラエルの国交正常化合意、この仲介をバイデン政権がやってワシントンへの土産にするという構想だったわけです。

ワシントンの中でも、民主党・共和党問わず、やはり中東和平の実績というのはたいへん評価が高い。これまでだと1979年、エジプトとイスラエルの国交正常化をやったのがカーター大統領です。その後1994年、イスラエルとヨルダンの正常化、これはビル・クリントン大統領が仲介した。アメリカ国内の政治業界の中で、両方とも極めて高い評価だった。

その後ずっと暗礁に乗り上げていて、2020年にトランプ大統領が「アブラハム合意」という形でイスラエルとアラブ諸国の国交正常化を成し遂げました。スーダン、UAE、バーレン、モロッコの4カ国とイスラエルの国交正常化でした。これまではカーター大統領もエジプト一つだけ成し遂げた。ビル・クリントン大統領もヨルダンという国一つだけイスラエルとの正常化を成し遂げた。それ以外の大統領はできなかった。それをトランプさんは一人で4つもやってしまった。だからこれはものすごく評価が高いのです。アラブ圏でも評価が高いし、もちろん、イスラエルでもアメリカのワシントンの中でも評価が高い。

そういうことが起きていたのですが、では次はサウジアラビアか、と言われているところで、アメリカはバイデン政権に代わってしまいました。

バイデンも同じく、中東和平で一つ大きな実績を残そうと動いていましたが、バイデン政権はアラブ諸国に対してとんでもない外交をやってきたのです。だからはっきり言って中東和平どころか、逆に不信感を与えてしまいました。それで、信頼を取り戻すための一つの戦略として、イスラエルとサウジアラビアの国交正常化の仲介をしようとしました。バイデンもブリンケン国務長官も、ものすごく動いてはいましたが、アメリカはそもそもすでにサウジアラビアの信頼を失っていたわけです。

では、今なぜサウジアラビアとアメリカでそういった安全保障協定の話が出てきているのか。これが実現しそうだなどということを、なぜアメリカが発表しているのか。これはさっき言ったイスラエルとサウジの国交正常化はもう無理です。

ガザの攻撃から始まってラファの虐殺まで起きてしまっている。パレスチナの大義として、パレスチナ国家国民の主権をまず先に作ろうと言っている、その考えを「パレスチナの大義」と言うのですが、その「パレスチナの大義」の最前線に立ってるのはサウジアラビアなのです。アラブの盟主と呼ばれているサウジアラビアはアラブ圏のリーダーなので、サウジアラビアとしてはもうこのような状態でイスラエルとの国交正常化など、もうできるわけはないだろうというスタンスなのです。

このような戦争をやっていて、パレスチナ人が3万8千人も殺されている。だからはっきり言ってバイデンが考えていたイスラエル・サウジアラビアの正常化合意というのは、もうほぼ白紙というか、それ以下に戻ってしまったという感じなのです。

  • サウジはアメリカに核開発を要求

(石田)

ただ、サウジアラビアとしても一つ思惑があります。単刀直入に言うと、核が欲しいのです。

(深田)

核が欲しい。

(石田)

核兵器が欲しい。去年の3月にサウジアラビアとイランが国交正常化をしました。これは中国の習近平の仲介で行われた。ですから、一応表向きはイランとサウジの対立が解消されて握手をしているように見える。握手をして経済協力なども始まったけれども、でもお互い100%信頼感があるかというと、そうではなくて不信感もすごく残っている。

(深田)

それはそうですよね。

(石田)

これまで対立していた相手であり、しかもサウジアラビアからしてみると相手は核開発をしている。中東のこの二大大国、しかもイスラム教シーア派の盟主であるイランとスンニ派の盟主であるサウジアラビアは、面積ももう巨大な面積で、両方ともそこそこの人口規模で、世界地図で見るとペルシャ湾を挟んで向い合っているという構図です。

だからやはりお互いにすごく意識しているわけです。サウジアラビアからしてみると、シーア派のイランの革命の波がサウジアラビアに押し寄せてもらっては困るから、その影響力は排除したい。これが本音で、イランというのは1979年にイラン革命でパフレヴィー王朝が倒されて、イラン・イスラム共和国になった国で、イスラム共和国なのです。

しかし、サウジアラビアというのは、サウード家の王国ですから、絶対君主制の王朝の王国で、その王様が倒される、しかもシーア派の波によって革命が起きて倒されるということを一番恐れているわけです。ですから、サウジアラビアは、イランとは最低でも対等でありたい。対等であると考えた時に、イランが核を持っているのに、我々が核を持っていないのは、これはどうも納得がいかない。

(深田)

そういう文脈なのですね。

(石田)

やはり、中東の盟主、アラブの盟主、湾岸協力会議の盟主である、そのリーダーたるサウジアラビアは、イランに攻め込まれた時に太刀打ちできないという状況はできるだけ避けたい。これまではアメリカがいましたが、もうアメリカは信用できない。だから自国防衛を考えた時に、もう核戦略の方向には向かっているわけです。

核を配備する上で、アメリカにサウジアラビアの核開発をアメリカが支援してください、そうすれば色々とアメリカと話し合ってもいいですよ、という感じで、確かにバイデンが弱腰になっているところにうまくつけ込んでいる。サウジアラビアの核開発を手伝うなら、もう一回関係修復してもいいと。アメリカは今、中東でプレゼンスがないでしょう、孤立化してるでしょう、サウジアラビアがいろんなところを取り持ちますよ、ひょっとしたら場合によってはイスラエルとの国交正常化も考えてやってもいいですよ、あなたの成果になるでしょう、というような、そういうことが起きているわけです。

(深田)

なるほど、そういうポジションですか。確かにバイデン大統領も今、大統領選を控えて何か成果を出さないという立場ですから、弱いですよね。

(石田)

そうですね。ブリンケンが中心に動いていると思いますが、サウジアラビアとアメリカの安全保障条約のようなものを進めて、アメリカ側としてはそれをワシントンへの土産にしたいのでしょうが、今のところ、イスラエルとの正常化がもうほぼ無理なので、なかなかワシントンへの土産にもならない気がします。

(深田)

ここが意外と難しいのではないかという。

(石田)

アメリカがサウジによってうまく使われるだけ使われて、それでいいとこ取りされてしまうのではないかというのが、私の予想なのですが。

  • 米国債が発行できなくなりアメリカは衰退する

(深田)

この協定を提案される前に、アメリカは、一番大事なドルと石油の協定ですか、あれも—

(石田)

それも終わってしまいました。6月の9日(2024)です。50年間の契約でした。

(深田)

50年契約のものを延長しなかった。

(石田)

このペトロダラー(Petrodollar)協定をアメリカは延長すると思ったのではないでしょうか。しかし、サウジアラビアはその協定の契約終了が来る前々から、ドル以外の通貨でも石油決済できると、いろいろな国に声をかけてきた。中国には元で取引できますよと言っています。今、実際、現状はサウジアラビアは中国と話し合いをして、ペトロダラーに代わるペトロレンミンビ(Petro-Renminbi)、その話し合いがなされているのです。

(深田)

ええ?では、もうますます アメリカの権威失墜ですね。

(石田)

失墜ですね。アメリカというのは、国も国民も借金がすごいです。何か欲しいものがあれば、どんどんどんどん借金をするという体質ですが、これまでは、それだけお金を刷って、お金を使ってもドルの価値はちゃんと担保されてきた。これだけドルを刷ると普通はインフレが起きてしまいます。

しかし、ドルの場合は前半の動画でも話したように、石油決済のドルの需要とか、それ以外いろいろな国際取引のコモディティのドル決済の需要があって、前半で話したバングラデシュのような国は、石油を買うためにその都度、その都度ドルに両替しなければ石油が買えないわけです。これまでドルのニーズがあったわけです。

(深田)

必需があったのですね。

(石田)

必需があったから、みんなドルを買う。石油を買うためにドルを買わないといけない需要があったのですが、今度その需要が、ニーズがなくなるわけです。

(深田)

石油を買うのにも、もういちいちドルにしなくてもいいとなると、高いドルを維持できなくなりますね。

(石田)

暴落するでしょう。米国債はどこかに巨額需要があったから、世界のどこかにそういう需要があったから、米国債を発行すれば誰かしら米国債を買ってくれたわけです。最後の最後は別にもう日本を小突けば日本は買ってくれると思うけれども、そういうニーズがあったから米国債は発行できたが、もしも発行できないとなると破綻ですね。借金を続けることができない。

(深田)

米国債が発行できないところまでは行きますかね。

(石田)

分かりません。だからそのペトロダラーの石油決済としてのドルのニーズは、なくなりはしないと思いますが、徐々に減少していくのは確実な流れです。

(深田)

そうですよね。いきなりゼロになるっていうことはないけれど。

(石田)

いきなり世界中の国が、はい今日からもうドル決済をやめた、とはならない。いきなり全部の国がそうなったら、それはもちろん相当やばいことですが、そうはならない。少しずつ二国間取引の中で、この国とこの国はもうドル使わないことになった、では次、こっちとこっちはドル使わないことになった、とか。それがサウジと中国だったり、例えばUAEとインドとかいろいろな組み合わせが考えられます。いろいろな組み合わせの国際取引の中でドルを使わない、そのラインがどんどんどんどん増えてくるというのは、これは確実な流れです。

(深田)

そうすると徐々にそのドルの実需が減っていく。

(石田)

減っていく。その後、基軸通貨としてのドルの立ち位置というのはもう維持できなくなると思います。

  • 世界一米国債を保有する日本が危ない

(石田)

それではどこの誰が基軸通貨を担うのかとなるのですが、それが今読めないのです。

BRICSとしてはブリックス新通貨という話もあります。これも今、金本位性になるのではないかとは言われていますが、その金本位制のそのブリックス共通通貨というのは本当にできるのかどうか、無理だと言う人もいるのです。

(深田)

そうですよね。金本位性だともう柔軟な金融政策が取れないというところがあるので、難しいという方もいらっしゃいますね。

(石田)

しかし、確実に向かっていると言えるのは、やはりインドも中国もロシアも中央銀行が金を積み増しています。だから今、金価格がもうこう(右肩上がりに)なっているではありませんか。

あれは個人投資家の金の需要ではなくて、今言ったBRICSの中央銀行の金の需要なのです。彼らは金をとにかく買い込んで買い込んで、どこかのタイミングで売るかと言ったら売らない。要は自分たちの通過発行の担保として機能させるのですから、売らないわけです。とにかく持っておく、持っている分だけ通貨発行できるという考えだから、売らない。そうなると多極化していくと思います。基軸通貨というものがドル一強だったけれども、そこに多極化の波が訪れる。

いろいろな国でいろいろな種類の通貨の国債決済というのが、ずっと当分続くのではないでしょうか。

(深田)

なるほど。今回、アメリカのサウジ防衛協定でそこまで見えてきてしまうということなのですね。

(石田)

さらにやばいのは日本です。

(深田)

日本が危ない?

(石田)

なぜなら、日本は米国債を世界一持っている国で、しかもそれが自由に売れる米国債ではない。売らせてもらえない。

(深田)

そうですね。売ってはならないですね。

(石田)

売ってはならない。「売るなよ、売るなよ」って脅されているわけです。

(深田)

そうですね。ということは今後ペトロダラーが崩れ、ドルの価値が、実需が徐々に下がってくることによって日本が保有している米国債の価値にも影響が及んでくる可能性があるということですね。

(石田)

そうです。ですから、私の知り合いが言っているのは、ここのところずっと、円安基調が続いてきた、だからこの日本政府が保有している米国債も相当為替差益が出ている。だから本当に売ることができれば売ってしまって、何兆円という利益が出るので、それを国民に全部還元しよう、能登半島に還元しようといった—

(深田)

そうですよね。本当にそう思いますよね。

(石田)

いいアイデアだと思うのですが、でも親分が売らせてくれない。

  • 新刊『10年後、僕たち日本は生き残れるか』

(深田)

国民のためにお金を使うことはできないということですね。

(石田)

悲しいかな。

(深田)

こんな日本の未来をどうしましょう、ということで『10年後、僕たち日本は生き残れるか』のテーマで石田さんが本を書かれたということですね。

(石田)

はい。こちらKADOKAWAさんからの新刊で、かなり今回も気合いの入った一冊なのですけれども。

(深田)

今までの石田さんと違う本ですよね。

(石田)

ちょっとテイストが違うでしょう。ドラマとか映画とか小説チックな、『君の名は』的な、そんな感じの、すごくマイルドなイラストですけれども。Amazonの予約特典がついています。

発売日は7月31日ですが、それよりも前にAmazonで一冊ご予約いただくと、この本書の中では載せることもできなかった「激変するサウジアラビア写真集」ということで。

(深田)

素晴らしいですね。

(石田)

私が撮ってきたサウジの写真ですので、ライセンスフリー、ブログとか動画とかSNSとかでも好きに使ってください。二つ目の特典が二冊以上予約していただいた方には、このサウジの写真集を私自身が動画で徹底解説をします。

(深田)

すごいですね。

(石田)

この特典をお配りしていきたいと思いますので、萌絵さんのこのページの概要欄のリンクの方を覗いていただいて、その特典の方を是非皆さん受け取って本を読んでみてください。

(深田)

是非とも皆さん、概要欄のリンクからお申し込みいただければと思います。そしてこれだけではありません。実はこの出版記念講演会で石田さんが全国を巡ります。こちらお願いします。

(石田)

はい。8月4日東京、25日大阪、9月の8日名古屋、9月14日八戸、9月15日札幌、と伺います。お近くの方是非遊びにいらしてください。八戸以外の会場で、書籍参加者全員にプレゼント、参加費は3、000円という形の講演会になっております。

八戸だけは参加費が無料なのですが、参加者の中から抽選で何名かの方に書籍をプレゼントさせていただくというイベントになっております。是非ご参加 ください。

(深田)

そういった豪華な講演会の情報、こちらもお申し込みは概要欄のリンクからしていただけるようになっています。

ということで、今回も石田さんから、本当に中東とアメリカの関係が危なくなると実は一番危ないのは日本だと—

(石田)

そうそう、我々なのです。

(深田)

そうなのですね。10年後僕たち日本はどういう風に生き残っていくのかというところも含めて、ご解説いただきました。石田さん、ありがとうございました。

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政経プラットフォームでは毎回様々なゲストを招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。日本を変えるため行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では、皆様のご意見をお待ちしております。また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。

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