No.41―深田萌絵×田村秀男 『日中韓FTA締結は日本が負け組に!』

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【目次】

  • 00:00 1. オープニング
  • 00:21 2. 安値攻勢の中国と関税撤廃
  • 04:20 3. 中国の狙いは日本の中小企業買収
  • 07:26 4. このままでは日本が中国の下請けに
  • 10:04 5. 中国の対外膨張戦略の一環
  • 13:38 6. 岸田政権のわきの甘さ
  • 17:40 7. 技術を守る

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト深田萌絵がお送りします。今回は「日中韓FTAは正気の沙汰ではない」というテーマで、産経 新聞特別記者である田村秀男先生にご解説いただきます。先生よろしくお願いします。

さて、日中韓FTAがどうも始まりそうなのですが、どのような問題があるのでしょうか。

(田村)

以前、政治問題で一旦中断していた話でしたが、今回ソウルで開かれた日中韓首脳会議で、中国の李強さんという習近平氏の番頭さんで言いなりの首相、ユン韓国大統領、岸田さんの三者会談が行われ、中国から「もう早く、日中韓FTAを再開しましょう」と言われたので、岸田さんはノコノコと乗ってしまったのです。これが第一の問題です。中国は今や、ドンドン大津波のごとく安値攻勢をしかけてきており、「岸田さん、あなたは中国を取り巻く貿易や通商、全体的な国際情勢を、よく分かっているのか」と問いたくなるのです。

(深田)

安値攻勢とは何ですか。

(田村)

つまり、中国の過剰生産攻勢のことで、今、世界中から非難の合唱が起きています。中国の狙いは、出来るだけ早くFTAなどを結んで、韓国や日本のサポートも得て、「国際社会の貿易ルールを守って、自由貿易をやっています」と宣伝することです。単に交渉開始と言うだけでも「ああ、中国は結構まともにやっているのではないか」と思わせることができるので、岸田さんは、日中韓の自由貿易協定交渉の場で、まんまと乗せられ、宣伝材料に利用されました。

もう一つの大きな問題は、中国は、世界貿易機関(WTO)から終始一貫して特別待遇を受けているので、それを利用して、政府の補助金で国有企業を中心に、やたらと過剰生産し、余ったモノをどんどん世界に売りつける攻勢を平気でかけてきました。

(深田)

それは今、欧州でも問題になっていますよね。

(田村)

だから、欧州もアメリカも最近、「これは大変な事になる」と見て、動き出しています。特にアメリカはバイデン大統領が「この8月から、電気自動車の関税を100%にする」と言ったり、リチウムイオン電池あるいは太陽光パネルなど安値攻勢が凄まじい品目の関税率を50%以上にしたりするなど、世界的に見ても、とにかく中国からの安値攻勢、洪水輸出をなんとか食い止めようと必死になっている時なのです。

(深田)

そうですよ。欧州なども今、「中国がデフレを輸出している」とかなり批判をしている情勢にもかかわらず、日本だけが今「中国様、ウェルカムです」と歓迎ムードです。

(田村)

FTAとは、要するに経済連携協定のことを指し、例えば関税などをゼロにして完全に撤廃するということです。もちろん双方向ですから、中国自身も本来は貿易障壁を撤廃しなければならないのですが、これまでの中国を振り返ってみてください。中国は、EVを始めとする様々な製品に必要なリチウムイオン電池、その材料のレアアースや鉱物資源、その部品などを独占していますので、気に入らない相手に、すぐに輸出制限をします。このような横暴な仕打ちを平気でやるような国は、FTAを結んだとして、「今後はそのような報復は絶対やりません」と約束するかどうか疑問があります。

福島の原発処理水に対して、「汚染だ、汚染だ」とさんざん騒いできた中国ですが、どの口が言うのでしょうか。中国の原発からいつも出てくる処理水の方が、はるかにトリチウム(三重水素)の含有量が多いのです。日本の場合、丁寧に処理して、環境に影響がない程度にまで充分希釈していますが、中国の場合、何の手立てもしていないのです。それなのに、福島の処理水を「汚染水だ」とガンガン騒いで、日本の水産物の輸入を止めるなども平気でやってのけるのです。そのくせ、中国人が日本へ来たら、真っ先に行くのがお寿司屋さんだという実態です。

(深田)

そうですよね。本当に汚染水だと思うのなら、「その近隣の海で取れた魚は怖くないのですか」と気になりますね。

(田村)

中国近海で取れる魚の方がはるかに怖いですよ。

(深田)

そんな環境の中で、この日中韓FTAが進むのですが、日本にとってのメリットは本当にあるのでしょうか。

(田村)

日本にとってはほとんど無いでしょう。しかし、中国にとってはFTA締結のメリットがあります。特に「良い技術」を持っている日本の中小企業をピンポイントで買収、対日投資、M&A(合併・買収など)することが狙いなのです。

(深田)

今の日本は、企業間の持ち合い株解消で動いているのではないですか。

(田村)

それは前からありますけれども、要するに中国が一番狙いたいのは、ユニークな技術を持っている日本の製造業の中小メーカーです。つまり、FTAで進めるのは単に自由貿易のみならず、投資の障壁を撤廃し、投資をスムーズにさせることも目的にあります。中国習近平政権の最大の戦略は、「中国の製造業を巨大化し、世界で押しも押されもせぬ製造超大国にすること」ですので、それに向けて、EV事業などに重点的な大規模投資をして、生産能力を拡大する政策を実行しています。しかし、そこに欠けているものも相当あります。

日本の場合は、ユニークな中小部品メーカーなど裾野辺りまで、営々と築かれた製造業の歴史があり、他の分野でも製薬やケミカルなど、日本企業の底力が方々にあります。これが羨ましくて、羨ましくて仕方がない中国が、「とにかく買収して、子会社にする戦略」を採るのは、ある意味当然でしょうね。

(深田)

今、自動車産業のサプライチェーンでも内燃機関自動車系の中小企業がかなり狙われているようです。台湾系企業は内燃機関の部品を作っている中小企業メーカーを買いに来ていますね。

(田村)

「円安に乗じて、日本の資本や資産をごっそり獲得してしまおう」という流れになっていますが、果たして日本にとってハッピーなのでしょうか。このような投資侵略を許していけば、日本で作られている付加価値が、向こう側に吸収され、どんどん絞り取られるだけの状態になります。このままでは、かつて日本が優位だった20~30年位前の状況から逆転されてしまい、日本は中国の下請けになるでしょう。

(深田)

確かにそうですね。これはやはり日本と中国の、企業経営に対する考え方の違いなのですが、中国では「今流行っているモノをみんな物真似して作ろう」という競争が主体で、基礎研究をしないのです。

(田村)

出来上がったモノ、出来上がった技術をそっくりそのまま取ってしまうのですね。

(深田)

その一方で、日本の中小企業は、大企業様に自分の会社の部品を入れてもらおうと切磋琢磨して、工夫を凝らして開発を続けますので、日本の大企業の技術の強さは、実は中小企業に下支えされています。サプライチェーンの生まれ方や強さが、中国とは全然違うと思います。

(田村)

中国のEV、内燃機関以外の自動車産業は、もう世界シェアで6割7割を占めており、段トツで、リチウムイオン電池も原材料の調達から製造に至るまで、中国の独壇場になっています。しかし、エレクトロニクス産業から機械産業、自動車産業に至るまで広がっている日本の「裾野のノウハウ」に当たるものが欠けています。既に今、それもかなり吸い取られていますけれども、まだしっかりと守られている「コアになる部分」が、習近平政権はどうしても、喉から手が出るほど欲しいに決まっているのです。

(深田)

中小とはいえ、それなりの規模になってくると、自社の技術は絶対外に漏らさないよう徹底していますから、そのガードを突破する手間に比べたら、買収で丸ごと会社を買った方が、楽々とその技術を中国に持っていけると考えるのが普通ですよね。

(田村)

もう一つの問題として、民主主義でちゃんと透明性がある普通の国ならまだしも、共産党独裁である中国の習近平政権は、全て自分たちの対外膨張戦略の一環として考えているので、軍民両用技術とよく言われますが、自ずと軍事的な産業に繋がってくる側面もあるのです。だから、経済安全保障のコンセプト、まさに安全保障の問題に直結していくのです。

(深田)

確かにそうです。特に内燃機関の部品などでは、ロケットの内燃機関の部品を作っているメーカーさんもかなり多いです。このロケットの技術は、イコールでミサイルの技術にもなるのですから、本来であれば、そういう軍事技術として転用できる分野は、国がもっと管理していかなければいけないものですよね。

(田村)

そうですよ。だから経済産業省が張り切って「経済安全保障だ」「規制だ」と言っていますが、「中国投資、大いに歓迎」というスタンスで、ガサッと丸ごと買われてしまいそうな穴は平気で許してしまうチグハグな対応をしています。

(深田)

本末転倒もいいところですよね。そこで今、経済安全保障といえば高市早苗大臣でしょうか。

(田村)

そうですね。

(深田)

高市早苗さん、経済安全保障のことを色々言われている割には、意外と脇が甘いところも多いような印象があるのですが。

(田村)

それでも一応、岸田政権の中では一番しっかり勉強もしているし、きちんとした情報さえ彼女の頭の中に入れば、ちゃんと対応されるのではないかと期待したいのです。しかし、このFTAの場合、役所別に言えば明らかに経済産業省のベースなので、高市さんは自分の監督省庁がありませんから、どう動くにも基盤が非常に弱いので、岸田政権そのものの脇の甘さだと思いますね。

(深田)

岸田政権の中で、ブレーキ役になる人はいないのですか。

(田村

他に適任の大臣は誰もいませんし、高市さんが、この経済安政保障問題に気づいて、警告を発して、内閣そのものに対して、きちんとものを言わなければならない時なのでしょう。

(深田)

内閣の中で、この経済安全保障の問題や技術流出の問題に関して、目を光らせている担当はいないのでしょうか。

(田村)

一応は経産省が、貿易管理を担当していますが、あくまでも役所の基準や政省令で決めたものです。例えば、安倍さんの頃は、半導体の材料であるフッ素化合物を輸出規制しましたが、今では韓国側に屈して、とうとう解禁しましたので、非常に大きな問題ができました。安倍政権は最適解な規制をしましたが、岸田さんはもうユルユルにしてしまうのです。

特に、半導体製造の一番重要でセンシティブな材料を、日本からサムスンなどの韓国の半導体メーカーに輸出すると、韓国国内だけでなく、中国に横流しをしているとハッキリしてきました。しかし、この問題について、日本側も内心では「横流ししているな」と思っていても、ずっと公にしていないのです。結局うやむやにしてしまい、元の木阿弥になってしまいます。明らかにセンシティブな半導体製造の材料が、韓国経由で中国に流れているのに手が打てない役所のガイドラインや審査など、所詮脆いのです。政治がしっかりしていないと、とんでもないことになってしまう例です。

(深田)

そのような側面もあります。ただ、半導体業界の話を聞いていると、韓国に対して輸出制限をかけていた間も、台湾や欧州を経由して最終的に中国に流れていただけだったようで、現場の方から「抜本的に中国に対して最先端素材を出さない方針にしなければ、実質的な規制は難しい」と見えているのです。

(田村)

その通りでしょうね。まさに文字通り、ザル状態の規制で、色々な基準があるにせよ、規制の網の目からどんどん抜けてしまうでしょう。

(深田)

そうですよ。このグローバルな時代、横流しの道筋をいくらでも変えられますので、韓国がダメなら他のルートにだけなのです。「日本は今後、どのように自国の技術を守るべきなのか」という課題は、ずっと立ちはだかるのではないかと思います。

今回、田村秀男先生から「日中韓FTA、百害あって一利無し」というご結論のお話をいただきました。先生どうもありがとうございました。

政経プラットフォームでは毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアでは中々得られない情報を皆様にお届けします。日本を変えるため、行動できる視聴者を生み出すというコンセプトで作られたこの番組では、皆様のご意見をお待ちしております。また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。

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