#28―深田萌絵×元内閣官房参与加藤康子『E V推進と日本車の未来』

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト深田がお送りします。

産業遺産国民会議専務理事元内閣官房参与の加藤康子先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。

日本の自動車産業の未来ということで、2030年を目途にガソリン車ゼロを掲げられてしまい、もうあと5、6年しか残っていないのですが、いったい我々はどうなってしまうのでしょうか。

(加藤)

どうでしょうね。本当はどんな車を買うかとかは政府が決めるべきではないですね。ユーザーが決めるべきなので、大体こういう車でなければいけないというのは、役人の人や政治家の人には分からないので、本当は市場に介入するべきではないと思う。EVとはそもそも官製市場、要するに補助金によってのみ成り立っている産業なのです。例えば今後EVがどうなっていくか世界的に見てもドイツも補助金を止めたらガソリン車が増えて、フランスは多少補助金があるが、中国や日本の自動車メーカーのEV車には出さないですしね。アメリカもおそらく政権が変われば、トランプ大統領がもし復権したり、「もしトラ」みたいなことになったら、明確に色々な例えばミシガンの部品メーカーのところで国家安全保障上のリスクになる。自国の産業を守る基幹産業を守るために、自動車のEV化はメイドインチャイナが進むだけなので、なんとしても阻止することを明確に推しました。

(深田)

正しいですね。

(加藤)

本当だったら日本経済は、ものすごく自動車産業に依存しているわけですよ。全体で言えばGDPの2割は製造業なのだけど、製造業の中で研究開発費とか設備投資の割合とか見ると29%と26%ですかね。研究開発が29%かな。圧倒的に自動車産業です。日本から自動車産業がなかったら、おそらく日本経済は全く先進のレベルを維持できないです。

(深田)

維持ができない、本当にそうなのです。

(加藤)

トヨタがなかったら本当にサミットにいけないですからね。

(深田)

本当にその通りですよ。IT企業を経営している身としても、エレクトロニクス企業に研究予算くださいとか開発予算くださいとお願いに行っても、彼らはお金が出せないのですよね。じゃあどこから出てくるのかと言うと、やはり自動車メーカーかロボティックス企業から研究予算をいただく形になっているのですよ。

(加藤)

外貨を1番稼でいるのは自動車産業でしょう。2番目が半導体の部品メーカーですね。3番目が自動車部品、4番目が鉄工なのですね。そういうことを考えてみると、全て鉄鋼でもスチール鋼板でもある面で言うと、自動車産業をサポートする企業ですから、自動車産業がなかったら日本経済は成り立たないのですよ。ある面で言うと、1次請けだけじゃない、2次請け、3次請けの中小の部品メーカーが頑張っているから、日本の内燃機関は非常に優れた自動車が作れるサプライチェーンをみんなで頑張っているわけですね。そこのところを日本政府がノーガソリンだとかEVだということになると、そこをぶっ飛ばす話になるので、2次請け3次請けの中小の部品メーカーが弱体化すれば、今度はメーカーも弱体化する。

(深田)

そうですよね。

(加藤)

なぜかというと、開発もクラスタで開発するから、みんなで開発していきますよね。そういう点では今の逆に日本の弱体化に国民や都民の税金を使うという、官製マーケットを作ってどうしてもEVの台数を増やしたいという政治目標のために日本の国力を削ぐことは、非常に矛盾が多いなと思いますね。もしも脱炭素を目指すのであれば、日本の産業を弱体化させないように、今まで日本経済を牽引して地方経済を今も牽引している部品メーカーがきちっと、彼らの立ち位置を維持しながら、競争力を維持しながら、雇用も維持しながら生きていけるような政策に補助をどんどん入れて転換するべきで、中国を支援することが正しいとは思わない。

(深田)

そもそも内燃機関がなくて、電動自動車ばかりになると国家安全保障上の問題に跳ね返ってくるのですよ。なぜかと言えば防衛産業で兵器は電動で動くものではなくて内燃機関の技術がないと何も兵器作れないのですよ。

(加藤)

例えば経産省もそうなのですけれど、日本が内燃機関とかハードに強いことを遅れていると思っている人が結構いるわけです。これがそもそも勘違いだった。ソフトに強くなかったら進んでいると思っていないわけですよ。

(深田)

それ問題ですよ。

(加藤)

そうそれすごい大きな問題なのです。

(深田)

内燃機関は最終的には宇宙航空の部品にもつながっていて、その部品の1つ1つのやはり強さ素材がどういう素材を作るのか、その素材が強くて柔軟性があるとか強いのに柔軟性があるとか、摩擦係数が小さくできるとかいろんな特性を持った素材を開発する力から部品までできている。果ては内燃機関、車から宇宙航空に行くということで最終的には我が国の防衛力を強くしている。

(加藤)

この前、日本鋳造協会で講演させてもらって、いろんな方たちと交流をさせていただいたのですけれど、例えば自由鍛造の現場の工場を見に行ったのですよ。色々と聞いたら本当に純粋に生産製造しているのは5、6社しかない。そこはロケットの部品とかも作っているのですよ。その時に聞いたのは、どういうところとコンペティションになるのかって言ったら、中国製の安いものを中国で作って持ってきて、製造業と偽って、日本品質みたいなこうバンと評価だけして流すようなところ、やはり女性に優しい職場とか、綺麗な職場というところを応援しちゃうようなところもあって、私はやはり日本の仕組みが純粋に製造業、日本で物を作っている人たちをバックアップする仕組みになってないと思うのですね。

(深田)

いや本当その通りです。

(加藤)

工業、産業、製造業にこだわることではなくて、生産者全て、農業の従事者の人、例えばプレスや自動車の部品などを作っているところ全てに言えるのですけれど、生産しているところに、ある面で言うと、きちっと利益が回るような仕組み、今回トヨタさんの決算発表ですごくいいなと思ったのは、下請けの企業に還元して彼らが価格に反映できるように、相当投資をすることをやる。2023年の決算とおそらく24年の予測を見ると利益は若干下がるのですよ。そのくらい投資をすることを言っていました。本当は日本の政府がそれはやらなきゃいけないことで、日本の政府が、中小企業庁がやらなきゃいけないことは、日本の今まで牽引をしてきた非常に優れた部品などを作れる中小企業を思いっきり応援することですよ。だからそれが残念ながらそうでもないのですよね。現場を見ることができていないのもあるのでしょうけど。

(深田)

やはり中小企業を応援もしていないし、製造業も応援していない。そして脱炭素という国民のためにならないスローガンを追いかけているなと思うのですよ。特に電力なども供給が追いついてないのですよね。西日本はまだ原発が稼働しているので電力不足はないのだけれど、東日本は富士川を境に東になると急に電力不足で、ここ数年、製造業さん中小などは、その電力持ち回りで、工場を止めて順番で回すことも要請されている時期もあるのですよ。

(加藤)

大体において、皆さんもおわかりだと思うのですけれど、再エネ付加金がグっと上がったでしょ。皆さんの電気料金に加算されて上がったわけですけれど、大体1世帯あたり年間1万円から1万7000円ぐらい上がっている。それで補助金が5月でストップしますからね。そうするとまた1万円ぐらい上がるのですよ。例えば九州電力の圏内と北海道を比べてみると。九電のところは原発が8割9割動いている。北海道は全く動いてない。そこの違いは1世帯大体年間5万5000円ぐらいになる。それを考えると原発が稼働してないところの電気代が高いか。例えば九州の方が再エネたくさんあるじゃないのと言われるけれど、再エネは全国平等に割られる。どこに再エネがあっても皆さんの電気代に必ず跳ね返ってくるのですね。

(深田)

そうですよね。だから東京都が条例で、これから建てる建物の屋根には、全部太陽光パネルをつけなさいと言っても、その付加金は全国の皆さんがお支払いすることになるわけですよね。

(加藤)

それぞれの家庭で電力会社を通さない形で電力が使われる分にまだいいと思うのですよ。問題はメガソーラーですよ。この前知床半島でも、今問題になっている国立公園の釧路湿原にメガソーラありますけど、おそらく特別な利権が絡んでいるのだろうと思いますが、本当は自然環境を守らなきゃいけない環境省が、自ら自然環境のエコシステムを壊して、太陽光パネルを張って、そして絶滅危惧品種になっているキタサンショウウオを、本当にもう絶滅危惧品種どころか、本当にもう絶滅してしまうところまで追い込むようなことを平気でやる。こういうことに補助金が出て、そしてさらに我々の電気料金に跳ね返ってくるようなものを推進するのは、私は非常に納得いかない。例えば30年から35年ぐらいになった時には、毎年20万トンから28万トンの廃棄が出るわけですよ。これには4種類の有害物質が今確認されています。それは例えばヒ素、鉛それからセレンとカドミウムが確認されていてね。粉砕しても発生しますからね。

そういうものをこれからどうやって処分するのかは大きな問題です。私は全部の再エネが悪いとは言わないけれどでも、これ以上再エネを増やすことは国民のためにならないし、これ以上自然を破壊してね、再エネを増やすことに何のプラスがあるのかわからない。それと同様に日本の雇用を壊すEVにわざわざ政府が補助金を出すことについても、特にBYDとかテスラとか外国で作られたEV車には、補助金を出している国はないわけですよ。そういうのに補助金をわざわざ出して進行するのは良くない。

それから再エネも外資規制は絶対するべきです。今再エネの4割を外国企業が持っているのは、はっきり言って異常ですよ。世界的にそのように外資に国土をバンバン売ったり、認可を下ろすことはないので、国力を弱めることに国民の税金だけは使わないでもらいたいね。

(深田)

本当ですね。まずは2030年ガソリン車ゼロ目標を撤回してほしい。

(加藤)

絶対撤回してほしいし、それには東京都知事に考え方を改めてもらうしかないですね。

(深田)

おそらく次の都知事選に出てこられないという噂も出ているのですよね。

(加藤)

政策が変わったらいいですね。でも国としてはもうマルチパスウェーは認めていて、そこだけはちょっと誤解がないようにしてもらいたいなと思う。東京都は2030年までにノーガソリンというのはまだ掲げているけれど、国は一応この前の広島サミットでEV一本化からマルチパスウェイへと舵を岸田総理は議長として切ったのですよ。そういう点では国は現実路線に戻してきているのです。

(深田)

行きつつある。

(加藤)

自動車化の方も私時々お話しますけれど、ハイブリッドも電動車には含めているという形で非常に柔軟な体制を取っていくようにしているはずなので、そこのところは新聞が書くようなことにはならない。あとは日本の自動車メーカーも各メーカーEV車に投資はしているけれども、例えばトラックなんか1台1億ぐらいするのに、トラックドライバーが少ない中でEV車を買いますか、買わないでしょ。それだったら6時間も充電するのに、困るでしょう。

(深田)

充電渋滞が起こると思います。

(加藤)

そういうこともあって、基本的には売れないものにいくら補助金があっても最終的にはユーザーが日本の場合には消費者が賢いから、今日本のEVの市場は大体2%なのですよ。

それからね、先進国の中でこれだけ言わしてもらいたいのだけれど、この20年間でものすごく環境に自動車産業で1番貢献しているのは日本なのです。

というのは燃費のいい軽自動車とハイブリッドで、過去20年のCO2排出量の推移を見るとアメリカは99%増えているのですよ。ドイツは3%増えているのです。オランダも3%増えている。フランスは1%減。イギリスも9%減。日本は23%減らしています。

(深田)

すごいですねえ。

(加藤)

だから今のまま何も極端に変えなくても日本の環境規制は厳しいので、東京の空は綺麗でしょ。空気も綺麗でしょ。

(深田)

綺麗ですね

(加藤)

それこそインドとか中国行ったらマスクしてもマスク真っ黒になるようなくらいの空気なわけですよ。それに比べると日本は環境大国なのです。日本のように製造業が強くて環境大国であるような国は他にないのですよ。

(深田)

本当にないです。

(加藤)

日本の緑は、山林7割覆っているわけですから、その緑を壊して太陽光を作るなんて。

(深田)

ちょっとね、もうあってはならないことが起こっています。そしてEV推進で我が国の自動車産業の雇用が失われることがあってはならない。

(加藤)

おっしゃる通りです。

(深田)

今、このE Vの推進、リチウムバッテリー型のEV車にとどめを指す本を執筆しております。

(加藤)

おおそうですか。

(深田)

はい、また先生にもご協力いただければと思います。

今回は、今後どうなる日本の自動車産業ということで加藤康子先生からご解説いただきました。先生ありがとうございました。

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