#24― 吉野敏明×深田萌絵『日本の社会保障問題』

(深田)

政治と経済を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。今回のゲストは医療問題アナリストの吉野敏明先生にお越しいただきました。吉野先生よろしくお願いいたします。

今日は先生から日本の社会保障問題について教えていただきたいと思います。

(吉野)

私がいつも定義と歴史の話をしているのですけれども、日本の国民皆保険制度がどのようにしてできたのかの過去を知らないと、今の問題が分からないのです。

もともと日本は国民皆保険制度ではなかったのです。当たり前ですけれど全員自由診療だったわけです。それで業界とか、職域団体とか、会社で入っているような保険はあったのですけれども、政府が介入している大きなシステムはなかったのです。

これは、戦争中は仕方がない。戦争が終わり、これも例によってアメリカと日本の思惑がありまして、アメリカは日本を共産主義にしたかった。それなので国民皆保険にしたかったわけです。

一番強い国民皆保険は旧ソ連がやっていたやり方で税です。治療費は全額無料で、皆で税を払っているから、どこに行ってもただで診てもらうことができるというのが一番極端な共産主義的な医療システムです。

その次が、いわゆる社会主義的なものが、皆で保険料を払って医療が受けられるというものです。それからアメリカがやっているように、自由診療にして民間保険会社に個人で入ったり、あるいは職域保険だったりでやる。自動車の任意保険と同じです。それぞれ自分の価値観で、保険の内容に入ってやるやり方です。

この三つがあるわけですけれども、戦後にアメリカは日本を弱体化するために、共産主義化しようとしていたので、いろんなことを構築していたわけです。ところが日本の医師会は、自由診療は本当に自由なわけで、料金の設定もできるし、したくないことはしなくてもいいし、それをそのようにされると大反対だったわけです。

いろんな事がうごめいていて、日本国憲法が作られたように、サムス准将という人が中を仕切って、最終的には自由党と民主党が55年体制になった最初の選挙で、国民皆保険制度が作られたのです。ベースはやはり軍の恩給制度なのです。

それで問題が起きたのは炭鉱の落盤事故です。日本は戦前のエネルギー自給率が40%もありました。

(深田)

そんなにもあったのですか。

(吉野)

石炭です。

石炭を掘っていたので火力発電がかなり自前でできていたのです。石炭を掘ると当然だんだん深いところ、深いところに行くわけですから事故がたくさん起きて、それで亡くなる人もいるし、手足を切断したり、塵灰で肺炎になって呼吸ができなくなったり、この国のために侍となって戦い石炭を掘ってくれる人たちを誰も手当するシステムがない。これは国民皆保険にしなければいけないという形から議論が始まり、いろんな案が出て、鳩山一郎の時の自民党が公約に掲げていたのです。

社会党は社会党で、共産党は共産党でそれぞれの案を出していたのです。それで今のような掛金を出すやり方になったわけです。当初は炭鉱労働者だけだった。ところが、農家の人たちが私たちも米を作っているのにきちんとやってくれない。それでは農家も入れましょう。漁業は、林業は、サラリーマンはとだんだん入っていったのです。国民皆保険制度にはなっているけども、保険の組合が今でもそうなのですけれど、山ほどあって、ひっちゃかめっちゃかなのです。

今は協会けんぽというが、前は政府管掌って言って中小企業とか個人事業とか小さいところは政府管掌というシステムで民営の会社の保険はやっていたのです。土木なんかすごく強かったのですよ。お金が昔はあった。今は協会けんぽというものに変わって今のようなシステムになっているのです。

当初はすごく利益が出ていたのです。人口構造がピラミッドであるし、寿命が短いし、高齢者は少ないし、保険の掛金がたくさん湯水のようにあって、昔の厚生省はものすごくお金があるところだったのです。

(深田)

今では考えられないことですね。

(吉野)

それで1980年代後半から90年代ぐらいにかけて、クリーンピア問題という事件が起きて、余っている保険のお金を将来絶対足りなくなるのですが、ホテルを作ったり、投資を始めたのです。高知にもあって私学生時代に行ったのですが、すごくいい施設で、人工芝のスキーのジャンプ場やプールがあったり、誰も使っている人がいなくてガランガランで、いつもそこを使えたのですけど、途中からお金が足りなくなってきて売却しようとしても、5円、10円で入札しても買い手が現れない。

そうやってお金が足りなくなって、昔は保険は0割負担でした。サラリーマン本人はいくら治療しても1円も払わなくて良かったわけです。

それが1割負担になり、2割負担になり、3割負担になった。老人保険も今前期高齢者、後期高齢者と言っているが、老人保険が始まった時は0割負担で給付額無制限でした。

(深田)

そうだったのですね。わたし子供の頃には病院に行ったら何割か払っていたような記憶があります。

(吉野)

それはおかしいでしょう。保険は一部負担金がないのが保険金なのです。盗難保険に入って、例えば1000万円の絵画が盗まれた時に、盗難保険で1000万円戻ってくるけど、1000万円支払うが1割負担金を払ってもらえますかとは言わないでしょ。

(深田)

そうですね。おかしいですよね。

(吉野)

おかしいでしょう。自動車事故で事故を起こして、きちんと契約通り、例えば車両保険だったら何百万円まで払える。相手ともし事故を起こしてしまったら7対3、8対2とかの割合が出たら、その割合部分が保険で出るはずです。それが決まったら、3割払ってくださいって言わないでしょう。

地震保険で3割払う、火災保険で3割払う、生命保険で1億円かけたけれど1億円出すためには3000万円払わないと1億円出しませんなど、本当にみんな騙されているのです。

(深田)

そうですね、すっかり騙されてますね。

(吉野)

騙されているでしょう。それで一部負担金を払わないと足りなくなってきているにも関わらず、それでも足りないから税を投入しているというのが今のシステムです。本来保険だったら保険だけで回っていればいいのだから、税金を徴収しているのはおかしいわけです。

これも深田さんにお話してもらいたいところですが、消費税を社会保障費に使うと言っていたのに、実際使っているかどうか全く分からないでしょう。

(深田)

絶対分からないですよ。

(吉野)

目的税ではないのだから。しかし、消費税を入れた時も上げる時も、これは社会保障費に使うのだと、これから高齢者が増えるからなのだと、だから使うのだと言っていたが、また税の問題になるから、これ以上突っ込みませんけれども矛盾だらけです。

(深田)

矛盾だらけだと思います。

(吉野)

これは絶対に直さないといけないし、制度設計がそもそも間違いなのです。つまりこれは炭鉱労働者の怪我に出す保険だったわけです。これが1960年代ぐらいから変わってきて、結核などが出てきて、これはまだ感染症だからわかります。それが1970年代ぐらいになると高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活不摂生な病気の保険が上がるわけです。これが80年代後半ぐらいになって癌が1番になるわけです。

昔は抗がん剤は、例えばプラチナ製剤は1番古い抗がん剤があるが、それでも月6万円ぐらいだったのです。それぐらいだったら、そんなものかという金額ですけど、有名なオブジーボですと、年間3800万円ぐらいかかるわけです。

(深田)

そうですよね。うちの祖母が癌になった時3000万円ぐらい使ったと聞いています。

(吉野)

保険でもそのぐらいかかる。それから重粒子線の治療というのを行うのですけれども、上顎洞癌の時にやるのですが1回照射が44万点なのです。440万円なのです。それを25回とかやるわけです。オブジーボをやりながら重粒子線治療をやっていると3億5000万円とかになるわけです。

(深田)

とんでもない数字ですよね。

(吉野)

本当に今日のテーマに高額療養費の話もありますけれど、いくら何でも3割負担でも1000万円、3億8000万円もかかったら保険で1億円も払わないといけない。本来、保険は0割のはずなのです。3億円かかろうが5億円かかろうが保険に入っていれば契約の範囲内で満額出るはずなのが、出ていないのがおかしいわけです。

(深田)

保険の設計もおかしいと思うのですよね。私は、金融機関にいたので保険の設計はアクチュアリという人がいて、どういう病気に何歳の人が何歳でかかるのかがもう全部統計上出ていて、それで掛金決まるわけですよ。掛金の算出の仕方が間違っているから破綻するわけなのですよね。

(吉野)

そうです。それともう一つはこの日本の国民皆保険制度は共産主義と社会主義と自由資本主義の3つが入っている。

(深田)

すごいですね混合型なのですか。

(吉野)

混合型だから絶対破綻するのです。なぜかと言えば、治療をやったものは一部違うのですけれど、基本的に出来高払いなので、治療をしたり、レントゲン撮影、CT撮影、血液検査、検査をするとかで算定すると、やったものが全部料金になるわけです。これが一律全部1点が10円なのですね。

これが日本橋だったり、私がいるような銀座だったり、土地の値段が高かったり、賃貸量が高かったり、人件費が高かったり、法人住民税が高かったりするじゃないですか。そこで売り上げて、例えば1ヶ月ここのクリニックは例えば100万点あげ1000万円売り上げが上がりましたというのと、地方都市で同じ売り上げならば人件費は安い、賃貸料も安い、税金も安いでは全然違いますでしょう。

(深田)

違いますね。

(吉野)

おかしいでしょう。それが全国一律同じ点数なのが共産主義なのです。

(深田)

確かにそこは共産主義ですね。

(吉野)

それと腕がいい先生の方が、料金が高いはずです。関係ないのです。3回医療ミスをして3人殺している人でも、チームバチスタの栄光の須磨先生ではないけれども、本来だったら失敗率が10%ぐらいなのに、5000症例やって失敗が1回もない人も同じ料金なわけです。インセンティブは分かりませんよね。下手で人を殺しているような治療している人でもお金をもらえるし、実際あまり言うと苦情がくるから言いませんけれども、腹腔鏡の手術で10何回やったら半分は殺しているなんて人もいます。

(深田)

怖いです。

(吉野)

保険で保険のルール通りにやっていれば、それはしょうがないことなになっているわけです。

(深田)

すみません。この番組終わった後に、その病院をこそっと教えてください。

(吉野)

ここは非常に共産主義的なとこです。ところが保険の支払う金額は所得によって大体8段階ぐらいに分かれているのですけれども、すごい山が小さいのです。

カルロスゴーンみたいな人でも、年収が例えば13億円、20億円の人だったら保険料が1億円でもおかしくないのだけれど、上限はマックスなのです。大体十数万円ぐらいで確かに累進にはなっているのだけれども、非常にこれが少ないのです。だから超高額納税所得者がたくさん払っているのだったらいいのだけれども、金持ちになればなるほど得するわけですよ。

(深田)

確かにそうですよね。逆心性みたいな。

(吉野)

今度、実際に給料を出す時はどうするかと言えば、腕の良い先生のところに患者さんが殺到するし、診る人数分たくさん給与を出すから、給料を出す時は資本主義社会の制度でやっているわけで、これを3つやれと言ったら破綻するでしょう。

(深田)

崩壊しますね。

(吉野)

崩壊しますでしょう。そうなのです

(深田)

その問題は、そもそもきちんと考えて作っていないですよね。

(吉野)

最初は炭鉱労働者の人が怪我をするというのは、確率論なわけだからいいのです。甘いもの食べたいとか、お酒をたくさん飲みたいとか、美食化になりたいとかは、要素が慢性疾患というのがすごくあるわけです。それを確率論ではないわけです。食育をしてないわけです。

(深田)

確かにそうだと思います。

(吉野)

食べたい放題食べて、病気になりたい放題になっている人と、全然病気をしなくてほとんど医療機関などにかかってない人、なんでこんな高い金を払わなければいけないのだと思うわけです。それが非常に不平等です。

(深田)

こうやって不平等なシステムをずっと続けていて、しかも保険の制度設計が少し疑問があるにも関わらず、その社会保障費がどんどん高くなっていく、その割には受けられるサービスの質も低下していく。

(吉野)

これは、根本的には私がいつも言っているのですけれども、病気偶然発症説を取っているのです。癌になるのも偶然、アトピー性皮膚炎になるのも偶然、血圧が高いのも偶然、リューマチもパーキンソンも認知症も全部偶然だという理屈で、皆が保険に入っているのだと洗脳がかかっているわけです。

(深田)

そこも洗脳ですね。

(吉野)

洗脳です。私も治療をしていて、昨日もそうだったのですけども、昼は全部インスタントラーメンやカップラーメンを食べている。朝は菓子パンしか食べない。寝る前に必ずアイスクリームを食べている。それで夜御飯は居酒屋で好き放題に中華を食べたり、野菜も全然取らないで、本当に食品添加物の塊りみたいな物ばかりを食べている、それで42、3才で末期の胃がんなわけです。この食事はその人が確かに悪いのだけれど、その人個人が悪いのではなくて、食べ物と病気の関係を知らないわけです。それどころか先週、言いにくいのですけれど有明というところに、癌を治しているところがあるのだけれど、そこの有名な先生が癌は食事と関係ないというブログを出しているのです。好きなものをバランスよく食べれば、何やっても良いのですよと言えば、それは病気になります。

(深田)

うちの祖母は肝臓癌でしたけれど、毎日大酒を呑み、毎日おやつに羊羹を1本食べていましたから100kg超えていたわけですよ。それは病気になりますよね。

(吉野)

それは偶然なっているという話になるわけです。何もかも全部間違えているので最初から全部しなければいけない。すごく大変なので私がどうしたら良いかという案は持っていますけれども、とにかく間違っていることをきちんと皆さんに認識していただきたいです。

(深田)

まずはやはりその保険の制度設計が色々間違っているところがあり、その掛金の設定が間違っている。点数の配分の仕方も都心と田舎で同じ点数なのも間違っている。いろんなところで間違っているから、今その受けられるべきサービスが受けられない、破綻してしまうことが問題になっているということなのですよね。

(吉野)

はいそうです。

(深田)

こうやって吉野先生が社会保障の問題、国民皆保険の問題について明らかにしてくださって、ここから日本がどうやってその問題を解決していけるのかということを改めてお伺いできればと思います。

今回は医療アナリストの吉野敏明先生にお越しいただきました。先生ありがとうございました。

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