#19ー 深田萌絵×加藤康子 『EVで儲かるのは中国だけ!?』

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。

今回は産業遺産国民会議専務理事で元内閣官房参与の加藤康子先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いします。

EVを推進することが、どれほど世の中にとって良くないことなのか、EVはころぶだろうの予言の書『EV推進の罠』をお書きになられたのですが、今日はEV推進で実は儲かるのは中国だけというところを教えていただきたいです。

(加藤)

この本を書いた時に、深田さんにフェイスブックで応援してもらい、深田さんのファンの方にも、ずいぶんと買っていただきました。ありがとうございます。

あの当時、この本をまとめた時は、世の中は、全部車はEVになってしまうのではないかといった論調の見出しが、ずっと日経を始め、東洋経済やいろんな経済誌に載っていました。政府の方も再エネとEVを主力の政策にするということで、脱炭素カーボンニュートラルでドーンと舵を切ってですね、これから車はEV車だみたいな形で、小泉進次郎環境大臣がダーっと旗を振っていらっしゃった時に、ちょうどこれを出したので、風圧がすごかったです。

(深田)

そうですよね。政府が推進する政策に対して、真っ向から向かって行かれましたよね。

(加藤)

そうなのです。当時はそうだったのです。それであの時に最初のところで、なぜ日本の技術が得意とするハイブリッド車を応援しないのかということを書かせていただいたのです。

(深田)

その通りだと思います。

(加藤)

状況が逆転して世界中に大ハイブリッドブームが来て日本車、特にトヨタは最高の決算。

(深田)

5兆円ですね。

(加藤)

5兆円を超える利益は日本の製造業で初めてです。売上も45兆円というすごい数字を叩き出しました。あの当時、今のトヨタ会長、当時の豊田章男社長が、550万人の雇用を守らなければいけない、全部EVにするのであれば原発も7基も10基も準備しなければいけない、それから100万人ぐらいの雇用を喪失するのじゃないかと、ものすごく厳しい記者会見をしました。あの時にメディアは一斉に反発したのです。

(深田)

私も覚えています。その涙の記者会見を見て、トヨタ社長は素晴らしいなと思いました。本当にこの国の未来を考えていらっしゃいますよね。

(加藤)

そうなのです。ですからマルチパスウェイということを言った時に、誰もが全部車はEVに、未来の潮流はEVだと、声高にモータージャーナリストも経済学者も政府も言っていましたから、その中での非常に勇気のある発言で、その時の頑張りがあったからこそ、みんなに何を言われても、例えばフォルクスワーゲンやドイツ車、テスラに追いつけ追い越せとアメリカのビッグ3もEVに舵を切っていた中で、唯一立ち上がったトヨタ社長の頑張りがあったからこそ、今回の決算発表になったのではないかと思うのです。

(深田)

素晴らしいですよね、本当に。私も以前は自動車メーカーの自動運転の開発の仕事をしていたのです。なので、テストセンター、テストサーキットでいろいろな車が走っているのが見えるのです。その時にやはり現場のエンジニアの方々が、EVだと危ないという認識の中で、試験場を走らせている。そのレクチャーを受けると、これはまだまだ問題があるのではないのかということを目の前で見たので、先生のこの『EV推進の罠』是非とも多くの方に読んでいただきたいと本当に思いました。

(加藤)

ありがとうございます。本当にあの時には孤立無縁のような状態の中でこれを出したので、応援していただいたことを本当に感謝しています。

(深田)

やはりこのEVを推進することは、日本の自動車メーカーは内燃機関が強いので、日本に全然メリットがない、むしろ中国ばかりが儲かるのではないのかと思います。

(加藤)

おっしゃる通りです。帝国データバンクが調査をした内容を見ると、自動車メーカー、その部品メーカーですね。日本では自動車産業に携わる方が550万人もいらっしゃるのですけれど、もちろん組み立て工場だけではなく、ものすごく多くの部品メーカーが2次受け・3次受けという形で、ピラミッドで自動車産業を支えています。そういう自動車部品メーカーこそ地方経済の要になっているのです。そういった方への帝国データバンクの調査によると、EV化によってどういう風な影響がありますかと聞いたところ、47%がマイナスの、負の影響があると答えたのですね。

(深田)

やっぱりそうですよね。私も元々アナリストなので、自動車のアナリストの先輩方などに話を聞いていると、もうすでに自動車の内燃機関のサプライチェーン、中小企業などは、中国の企業、台湾の企業に身売りが始まっていて、目には見えてないけれどもサプライチェーンの断絶が始まっていると伺っています。

(加藤)

アメリカのコンサルティング会社のアーサー・ディ・リトルは、自動車部品メーカー30万人が最終的には雇用を失うのではないかと言っていましたし、あの時トヨタ会長などは100万人に影響があるとおっしゃっていましたね。

(深田)

そうですよね。だからその産業全体のことを考えると、もうEV車になれば今の内燃機関のメンテナンス工なども仕事をかなり失う。そして電動モーターに変われば乗り心地も何もなくなるので、ディーラーも要らなくなる。もうネットで車を買う時代になるというので、その全体を考えれば、それぐらいのネガティブの波及があるのではないのかと理解できます。

(加藤)

でも、実際にネットで買うかと言えば、それはなかなか、テスラはそういうスタイルでやっていますけど。例えば北海道でディーラーがなくて、テスラで買った人は壊れた時にどうするのか。送り返すわけにいかないじゃないですか。だからそういう問題もあって、なかなかネットだけで販売というのはアフターケアの問題があって難しいですよね。

特に日本みたいに車検制度がきちっとあって、車を長く使ってもらうためのサポートがある中で、サポートのない車、テスラなどの場合には、それこそギガキャストと言ってね、例えば後ろをぶつけただけでも全部を変えなきゃいけない、一体型ですからね。それに板金ができないので、どちらにしてももう取り換えないといけない部分があって、お客様にとってはあまりユーザーに優しくない車なので、インターネット販売もできるのじゃないかと。

(深田)

そうですよね やっぱりあの事故に遭うとか、少しぶつけたり傷が入った時のコストも非常に高いですものね。

(加藤)

そうですよ。やはり全取り替えなければいけないことになると、それはもう300万円とか360万円したとかいうのはざらに聞きますので、決してユーザーフレンドリーではないです。納品している時には一体型で非常に綺麗ですけれど、これを修理するとなるとコストが高い。そして非常に不便であるところがあり、EV全部がそうではないですけれどね。

(深田)

やはりEV車を推進しても、今のEV車の中身は結構中国製が多いので、中国ばかりが儲かり、日本の自動車メーカー、特に中小にとっては全然嬉しくないのです。

(加藤)

そうですよ。ダイハツなどは、今色々と言われていますけれども、あのダイハツの工場が止まっただけでも8000社ぐらいの下請け工場に影響があったのですよ。そういうのがですね、大体、非常に部品の数は少なくなりますけれども、そのコストの4割が電池になるわけですよ。要するにエンジンやトランスミッションとか、そういう日本の企業が得意としていたような部分、それからものすごく、3万点ぐらいの部品を作っているいろんなメーカーの、ものすごく微妙なバランス、調整を取りながら、ある面で言うと、日本のメーカーでなければできないような微妙な調整をして、内燃機関の自動車は出来上がっているのです。けれどそれがですね、非常に簡易な作りになって、その4割のコストが電池になるということは、電池が中国製であれば、もう中国に自動車産業の覇権を握られてしまうわけなので、決して構造的にも今のような収益構造は達成することができないですね。

(深田)

そうですよね。そもそもそのリチウム鉱山を中国がかなり押さえていることで、リチウムイオン電池の争奪線というか、そういうのでも日本企業が今負けている。逆にEV不振になったら急にリチウムイオン電池の値崩れを起こすなど、いろんな問題がありますよね。

(加藤)

そうですね。ですから例えば今問題になっているコバルトとかニッケル、コバルトリチウムは、今後非常に多くのデポジットがあるわけですけれど、こういったところもほとんど中国が握っている。資源の全体、コバルトに関してはもう7割8割を握っていると思います。

資源の3割を中国が握り、精製過程の7〜8割を握ることになれば、決して日本の企業にとっての収益率は高くない。ほとんど電池は中国に握られてしまう。そういうこと考えても、やはり内燃機関、550万人の雇用をきちっと守っていきながら、今大体世界の自動車販売台数が8700万なのですね。そのうちの日本メーカーがどのくらい売っていると思いますか。

(深田)

どれぐらいだろう。トヨタで1000万台を超えているので、日産で300、2000万台ぐらいでしょうか。

(加藤)

もう少しいっています。だいたい3分の1を日本のメーカーが、その半分がトヨタです。やはりそれだけの販売台数を確保し、生産台数を確保して、なおかつその収益率も高い。45兆円のうちの5兆円、5兆3000億円という利益を決算で生み出したのは、もうすごいわけですよ。5兆3529億円。すごいですよね。

(深田)

すごいです。

(加藤)

これだけのですね。45兆円の営業収益もすごいけれど、5兆円以上の営業利益を上げることができるようなビジネスモデルは、絶対にEVだったらだめです。

(深田)

そうですよね。これ全部EVだとしたら、利益の多くが中国に持っていかれることですものね。

(加藤)

でもね、中国のメーカーも今価格競争に入っていて、みんなそのBYD、BYDと、日本のメディアはBYDのことを絶賛しますけどね。BYDも決して今は楽ではないはずですよ。なぜかというと新興のメーカーがどんどんどんどん出てきてね。安売りをする中でどんどん淘汰されているわけですね。そういうのを見ると、BYDも確か収益率がすごく落ちているのですよ。

(深田)

なるほど。

(加藤)

このファーストクォーターで40%ぐらい落ちているのではないですかね。

(深田)

そんなにも 落ちているのですね。

(加藤)

それからテスラもここで中国の人員も削減すると言っていますしね。テスラも収益率がすごく落ちているのは、やはり中国で価格競争に入っているからですね。中国が、ご存知のように、いま良くないでしょう。

不動産も良くない。それから金融も良くない。そして次に弾けるのはEVバブルと言われています。新エネ車で中国製造2025の覇権を考えて自動車強国を作るという思い入れはありますが、もう各メーカーが加熱していますから、シャオミなどでも、売っても1台につきそれぞれ損が出るぐらいの価格で売っているそうです。

(深田)

そうですか。これはもう中国の独り勝ちになっているという去年の様相から、今年は一転して、実は中国は今EVバブル崩壊のきざしで危ないという。

(加藤)

危ないですよ。新エネ車が一斉に出していますけどね、シャオミやファーウェイや、スマホの会社が、新しい、それこそポルシェをパクったような見かけはかっこいいデザインのを出しています。

ものすごくいろんなソフトが載っているような車も、北京のモーターショーに次々と出ている。一斉に日本のメディアが「これからは中国の時代」みたいに出していますけれど、出せば出すほど赤字が増えるようなビジネスモデルは健全じゃないです。

(深田)

そうですね。おそらく、中国がよくやることなのですけれども、GDPを増やすために物をたくさん作るうちにその市場そのもの、世界の市場が丸ごと壊れる。おそらくEV市場は、グローバルにクラッシュするのじゃないのかな。

(加藤)

そうですね。だからシャオミもファーウェイも、車が安全でない。事故で衝突したり、いきなり歩道に乗り上げたり。そういうのがいっぱい動画で今上がっています。私は、決算発表でトヨタの佐藤社長が言ったなかで、非常に心残ったのは「あくまでも車屋だ」と。要するに、車として安全に乗れるものというのが一番基本にあって、ソフトウェアはその延長線上に付加価値としてあると。

だけど中国の今の新エネ車の発想はまずソフトで、ソフトがコンロールするスマホの車版ということを目指している傾向があって、それは安全性の記録も歴史的なデータもないわけですから。日本のメーカーはありとあらゆる実験をしながら、ずっと安全性の記録の蓄積をしているわけですよ。それに比べると、非常に簡易な作りで、だって我々がスマホでね、あのSIRIなどかを使って音声で色々とディレクションしても、まともに受け取ってくれないでしょう。それと同じようなことが今起こっている。そしてやればやるほど赤字が出る。

(深田)

はい。もうこれ、地獄ですね。私も数社の自動運転の開発の現場にいたのですけれども、やはりソフトウェアメーカーはハードウェアも分からなければ、そのメカニカルな機械の部分、そして安全性能が、もうすっかり設計思想の中からないのですよね。全くないのですよ。あれだとまともな車はできないでしょうし、形だけ真似ても安全性能は満たせないだろう。

今回、加藤康子先生に「EVで儲かるのは中国だけ」についてお話しいただこうと思ったら、意外とここから中国のEVバブルがはじけるという非常に面白いお話をいただきました。先生、どうもありがとうございました。

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