#18 深田萌絵×石田和靖 『イラン・イスラエル紛争で日本が危ない?』
【目次】
- 00:00 1.オープニング
- 00:53 2.中東から石油の97%を輸入
- 04:26 3.石油禁輸の可能性
- 08:23 4.田中角栄が守り、岸田首相が壊す
- 12:09 5.外国の戦争に関わるべきではない
- 15:19 6.ロシアとの関係を改善すべき
- 18:00 7.岸田政権は戦争継続推進路線
(深田)
政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト深田萌絵がお送りします。今回は越境3.0 チャンネルの石田和靖さんにお越しいただきました。石田さん、よろしくお願いします。
前回は「イラン・イスラエル紛争の行方」のテーマで、大変衝撃的なシナリオを解説していただきました。日本はそもそも石油の多くを中東のオイルに依存しています。今回は本当にイランとイスラエルが全面衝突に入れば、危ないのは日本なのではないのかについて教えて頂きたいのですが。
(石田)
大丈夫ではないです。イスラエル・イランの対立について日本のマスコミが報道しているが、日本はどうなるのかの視点が意外と欠けている印象を受けます。今大変なのは、萌絵さんのいう通り、エネルギー安全保障です。日本は、皆さんご存知の通り、大部分を中東湾岸諸国から輸入しています。中東と言っても、西はエジプト、東はイラン、北はトルコ、南はスーダンと結構広い。その中東の中でも、ペルシャ湾の湾岸諸国から、現在、日本の石油の97%を輸入しています。湾岸諸国はサウジアラビア、UAE、カタール、クウェート、バーレン、オマン、この6カ国です。この6カ国への石油の依存度がおよそ90%だった。残りの石油はロシアなどからも輸入していました。しかし、今の岸田政権はロシアに経済制裁したため、ロシアからの石油が去年から既に一切入らないです。結局ロシアからの石油が止まったため、湾岸諸国への石油の依存が97%まで引き上がった。ロシアからの石油が止まり、さらに引き上がった。この中東湾岸諸国への石油の依存度97%と危ないタイミングで、去年の10月7日にイスラエル・ハマス戦争が起きました。日本はこのままでは危ないのではないか。
(深田)
日本はイスラエル寄りですが、石油の調達先である湾岸諸国との関係をどうするのか、この目線がないことが問題です。
(石田)
日本の石油の輸入先である湾岸諸国は、10月7日にイスラエル・ハマス戦争が始まった約1ヶ月後の11月に、アラブ盟主のサウジアラビアが、イスラム協力機構とアラブ連盟、あわせて57カ国の首脳をサウジアラビアに集め、緊急首脳会談を開きました。これはイスラエル・ハマス戦争を終戦させ、イスラエルのパレスチナ攻撃をやめさせることが目的の会合でした。サウジアラビアが、57カ国の王様や大統領を緊急でサウジアラビアに招集するというリーダーシップを発揮しました。同じことを日本の首相はできないでしょう。緊急で電話で世界中の国に声かけて、57カ国の王様や大統領がサウジアラビアに集まり、緊急首脳会談を開きました。その緊急首脳会談では、イスラエルとアメリカに対する共同避難声明を出した。そして、イスラエルを支援する国への石油の禁輸をするか否か話し合われていました。
(深田)
オイルショックが起こる可能性もあります。
(石田)
岸田政権の上川外務大臣はイスラエルを支持すると表明しています。一方、サウジアラビア側はイスラエル支援をしている国に対して石油輸出を止めるか、決議は出ていないが、既に話として出ています。
(深田)
石油禁輸が議論に上がっています。
(石田)
日本の石油依存は中東湾岸諸国から90%から97%まで引き上がっています。11月時点で湾岸諸国から、これらの石油が止められる可能性があった。これが日本に迫る危険の一つです。
もう一つは、日本の石油は湾岸諸国に依存しているため、ほぼ全ての日本の石油を運ぶオイルタンカーが、ペルシャ湾のホルムズ海峡を通ります。そして、ホルムズ海峡はイランの排他的経済水域でもあります。もし、イランが大きな戦争を起こせば、あの海域は危険になるため、封鎖する可能性が出てきます。そうなれば、日本に向かうオイルタンカーが全部そこで止められてしまう。日本だけではなく、アジア向けの石油の積み出し港が全部ペルシャ湾岸にあるため、他のアジア諸国もかなり困るでしょう。結局、サウジアラビアの石油は日本に一番の入ってきており、日本の石油総輸入量のおよそ40%がサウジアラビア産です。このサウジアラビアの石油も、ペルシャ湾岸のダンマームという積み出し港からホルムズ海峡を通って日本に入ってくる状況です。サウジアラビアは紅海沿岸の方にも積み出し港がある。その石油は全部ヨーロッパ向けです。つまり、中東から日本に向けて運ばれる石油は、イランが戦争準備をすることで、止められてしまう可能性もあります。これが二つ目の危機的な状況です。
(深田)
しかも日本の製油所はほぼ中東の硫黄成分の多いサワーオイル用の製油所が大半です。だから、アメリカの石油を輸入しても日本の製油所が足りない、そもそも対応できません。
(石田)
日本は基本的にこのエネルギーに関しては安定している方です。この安定している状況は1973年まで遡ります。今とほぼ同じ状況が起きており、第4次中東戦争により、イスラエルとアラブ諸国が対立する構図でした。フーシ派が、エネルギーや物資をイスラエルに運ぶ船を全部、紅海沿岸のバブ・エル・マンデブ海峡で止めようとしていました。当時エジプトが、イスラエルに石油や物資などを運ぶ船を止めるために、駆逐艦2隻を派遣しました。このように戦っていたのが第4次中東戦争です。この時、今の日本と同じように、アメリカから中東戦争に参加してイスラエルを支持するよう圧力がかかります。当時の田中角栄総理大臣は、アメリカからの圧力に対して、「我々日本は石油のほぼ全てをアラブ諸国から輸入しているが、イスラエルを支援したら日本に石油は一滴も入ってこなくなる。日本は中立を維持する」と言いました。
日本はちょうど経済成長の最盛期で、石油が不可欠でした。その中でもし、石油が止まったら日本はどうなるか考えた上、田中角栄さんは賢い判断を下しました。しかし、今の政権はどうだろうか。我が国が滅びる路線にまっしぐらです。前半の動画で言ったように、日本がイスラエルという“国”を支持する立場は問題ないですが、今の日本政権はイスラエル“政府”を支持しています。過激派のテロリスト政権とも言い換えられます。
戦争を起こしている側であり、民間人女性子供を3万8千人を殺害するジェノサイドを行っています。国際的にもジェノサイドであると言われていますが、日本の外務大臣はジェノサイドと言わず、未だにイスラエル“政府”を支持しています。田中角栄さんとは全く正反対の対応をしています。1973年の第4次中東戦争での田中角栄さんの判断があったことで、アラブ社会から非常に強い信頼を得ました。その信頼感のおかげで、これまで長い間、中東から安く安定して長期間、石油が運ばれてきた背景があります。そのちゃぶ台をひっくり返そうとしているのが岸田政権です。
(深田)
岸田さんは右派ではなく、発言内容はもともとリベラル寄りです。しかし、裏金問題でよく名前が上がっている安倍派の幹部が、今の安倍派を実質的に握っている状態です。その岸田さん自身が自民党の全派閥を抑えきれていません。安倍派は100人近くいたが、岸田さんは次のトップと有力視されている萩生田さんと組んでいます。萩生田さんは極右のグループです。そして、保守系のメディアでもイスラエル支持の媒体と近い関係にあります。萩生田さんが岸田さんをそういう方向に引っ張っていると見ています。
(石田)
イスラエル・ハマス戦争に関して、中立の姿勢の維持が第一。アメリカからのイスラエルを支援しろという圧力が来るだろう。そこで外交交渉です。日本はアメリカのためにお金を出しています。だから、日本は「これ程アメリカからの言い分も尊重したので、石油が止まれば困る立場上、アラブ側も支持して、中立で頑張りたい」など外交交渉をするべきです。
(深田)
そもそも、外国の戦争に下手に首を突っ込むべきではないです。ロシアとウクライナが衝突した時も、色々な背景があり、ロシア側にはロシア側の事情、ウクライナ側にはウクライナ側の事情があります。外国同士の事情の中で日本はどうするべきか。まず、日本国民はロシアとウクライナから何を調達しているのか、自分たちの物資やリソースがどこから来ているのか、まず考えるべきです。下手に加担すると、ロシアの天然ガスや石油の問題が出てきます。今回のイスラエルの問題では、「中東からの石油にこれほど依存しているのだから、立ち入らないことが日本国民のためである」と判断できるようになるべきです。その判断を全くしない状況が怖いです。
(石田)
つまり、日本はアメリカ民主党政権の言いなりです。萌絵さんがおっしゃったように、まずは日本の国益を考えた上で、日本がやるべきことを交渉材料として使って提案をしていくべきです。しかし、そういった交渉を全くせず、アメリカから言われたことをやっています。
(深田)
アメリカの言いなりになった結果、企業が倒産したのがドイツ。アメリカの言いなりになり、ロシアの天然ガスが止められた結果、天然ガスの価格が上がりました。パン屋さんもかなりの数が倒産しました。かなり多くの製造業界の企業がドイツを捨てて、天然ガスがあるアメリカに向かいました。今の日本を見ると、中東の石油がなくなれば今度アメリカから買うことになるでしょう。
(石田)
ドイツは実際、ロシアの4倍の値段でアメリカから天然ガスを買っています。
(深田)
今の日本はインフレですが、エネルギー価格もインフレの要因の一部です。交易条件の悪化がエネルギー価格から来ています。アメリカから4倍の価格で原油を買わされれば、日本の経済が崩壊します。
(石田)
日本の国益を考えるべきです。賛否両論あると思うが、まずはロシアと話をして協力関係を作るべきです。萌絵さんのおっしゃる通り、石油と天然ガスの超大国であり、日本の近隣国であるロシアと日本の軍事同盟が実現すれば、北方領土も帰ってくるでしょう。プーチンさんがあの小さい北方領土を返さない理由は、日米同盟がある日本に返したら、択捉島にアメリカ軍の基地が作られるに決まっているからです。アメリカ軍の基地が作られると、NATOとアメリカにより西と東でロシアを囲まれてしまう。日本に北方領土と返すわけがない。逆に日本とアメリカの同盟がフェードアウトして、ロシアと日本の軍事同盟を作ることができれば、北方領土は返ってきます。北方領土が返還されれば、択捉島にも国後島にも天然ガスや石油があります。日本がエネルギー自給国になれる可能性を秘めている。中東の原油だけに依存せず、ロシアと関係を強化すれば、ロシアから石油だけでなく、サハリンのパイプラインが作られて天然ガスも入ってきます。北方領土が返還されれば、択捉島国後島から、石油や天然ガスが手に入り、日本のエネルギー環境が全くガラっと変わるかもしれません。さらに漁業権も付いてきます。
去年の夏、北海道の知床半島の南半分の羅臼に行きました。目と鼻の先に国後島がある。羅臼の漁師に友人が何人いるが、今の日本の政府によるロシアへの制裁により漁に出られないと言っていました。「遠くに行くと拿捕されるため、海域が非常に狭められ、なかなか漁に出られない。なんとかしてほしい」と言っています。
(深田)
外国の争い事に深入りすべきではないです。
(石田)
日本ができることは、例えば日本の技術支援や人道支援などはやっても良いです。しかし、今の日本の政権は、ウクライナが武器を買うお金を出しています。イスラエルの支援も戦争継続にしか思えません。戦争継続・推進路線です。去年の5月から、岸田政権が広島でG7を開催しました。翌週に広島で僕の講演会がありました。そこで、広島の人たちに、G7と全く違う。被爆地広島で戦争反対というメッセージが少しでも出るのかと思いきや、あの時に話し合われたG7の会談の内容は、ウクライナ支援を強化、ロシアへの制裁の強化、戦争継続の道を発表しました。わざわざ広島でやることではないだろう。この講演会はおよそ50名参加していましたが、皆さん大反対しました。
(深田)
広島での悲劇を考えれば、戦争推進していいのか、しかも日本国民にとって何の利益もありません。今は電気代も上がっています。インフレにより国民の生活も厳しくなっています。円安も160円間近です。海外によく行かれるなら大変ではないだろうか。
(石田)
窮々だ。1.5倍とか2倍になった感覚です。
(深田)
為替も円安も、アメリカのインフレで物の価格が本当に上がっています。アメリカに行くと2倍になったと感じます。
(石田)
一方で、ウクライナやイスラエルを支援するのは自由と民主主義を守るためと言う人たちもいます。ロシアやハマスを敵対視する論調もあります。しかし、それは本当に自由と民主主義を守る戦いなのか。アメリカが押し進めるものが自由と民主主義なのか。現実の今のアメリカ国内の情勢などをみて、今一度、考えてもらいたいです。例えば、LGBT法案など日本であっという間に決まったが、本当に日本人にとって必要だったのか、それを勝手に決めることが民主主義なのか。
(深田)
イデオロギーよりも国民の利益をもっと全面に考えるべきです。イランとイスラエルの衝突で不利益を被るのは間違いなく日本国民であるというお話を越境3.0チャンネル石田和靖さんに解説して頂きました。石田さん、今回もありがとうございました。
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