#17 深田萌絵×田村秀男 『欧米が恐れる中国EV車不況輸出』

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【目次】

  • 00:00 1.オープニング
  • 00:42 2.需要を無視して生産し輸出する
  • 02:07 3.ガソリン車より安いEV
  • 03:48 4.中国製EVの規制を始めた欧米
  • 07:20 5.消費者のEVニーズも低下
  • 10:26 6.中国投資の危険性
  • 14:57 7.爆弾を抱えている習近平体制

(深田)

政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリスト、深田萌絵がお送りします。

今回は産経新聞特別記者田村秀男先生にお越しいただきました。先生よろしくお願いいたします。

欧米社会はどちらかと言えば、今後は中国の過剰生産がどうなるのかを恐れていると伺いましたが、いかがでしょうか。

(田村)

中国共産党が仕切る市場経済は、非常に極めて異形と言え、システムそのものが破綻を来していることが基本になっています。しかし、どの国の政府もそのまま衰退させるわけにはいかない。

その場合、中国共産党政権が第一にできることは、とにかく「生産を増やせ、増やせ、増やせ」なのですね。

国内需要が不動産バブル崩壊により委縮しているので、何をするのかと言うと、雇用を継続するためにどんどん生産する。一方、生産物を捌かせなければならないので、どんどん安値で売ってしまっている。

(深田)

それは中国の生産ベース型GDP経済の弊害ということですか。

(田村)

そうです。共産主義ソ連型の経済で、中国共産党主導の経済はまさにこれですね。需要サイド、国内の需要を無視していますから、輸出に走る。「安くてもいいから、とにかく売れ、作って売れ」

そこで一番問題になっているのはEV、電気自動車ですね。

中国はEVをヨーロッパ市場から発展途上国まで大量に売っているようだが、EV1台あたりの輸出の単価は、ドル換算で2.7万ドル位だと言われている。というよりも私が計算するとそうなる。

EVが一気に普及するためには、一般のガソリン車つまり内燃機関を使った車並みの価格が求められ、その平均値が大体3万ドルぐらいです。中国のEVはすでにその価格を切っている。

EVはエンジンとかトランスミッションなどかなり高度な機械加工が必要ない。電池と巨大なバッテリーを積まなければならないのですが、これにモーターさえあれば走ります。

あとはスマートフォンのようにITの仕掛けを施して、図体はガチャンと成型加工すればよい。これはイタリアあたりのお洒落なデザインで成型する。

だから、EVは割と簡単にできます。

中国はコストが安いので、販売価格も安い。この攻勢を受けているのがヨーロッパです。ヨーロッパの自動車メーカーは中国で儲けさせてもらってきたが、今度はヨーロッパが安い中国EVに攻められている。これは大変だと規制を言い出した。

他方で、メルセデスベンツ、BMW、 フォルクスワーゲンは中国で儲けさせてもらっているので、なかなか大きな声で規制を言えなくて、非常に困っています。

アメリカに至っては自動車王国なのに、中国製のEVに席巻されてしまうと、ビッグスリーも何もあったものではない。

これは国家安全保障問題だと、中国に優しいバイデン大統領までもが危機感を抱いている。

(深田)

ついにバイデン大統領も中国製EVに危機感を抱いた。

(田村)

そうです。復権を狙うトランプ前大統領は「中国は今度、メキシコ経由で迂回対米輸出をやろうとしている。だったらそのメキシコに100%の関税をかけるぞ」と言っている。アメリカでは中国製EVが大変重要な政治問題になっていますね。

とにかくEVで勝負だというのが習近平政権です。中国は不動産バブル崩壊でどうにもならない。それでも生産では西側に「追いつき、追い越せ」

半導体などハイテクの最先端分野はアメリカの規制に遭っていますが、EVで主導権を取ってしまえば、アメリカの攻勢にも対抗できるので、すごく力を入れているのです。

お互いに譲れない戦いになっている。

(深田)

確かに、テスラのEVも売れなくなり、テスラまで値下げに動いていますね。

その背景にあるのは中国で工場を作ったら、テスラの技術が中国に盗まれてしまった。いいものが中国に盗まれ、安く売られてしまうと問題になっているようですね。

(田村)

そうですね。テスラも収益がどんどん下がっています。

アメリカ自動車市場では、バイデン政権も一時はESGとか再エネとかクリーンだと言って、EVを大いに推奨していたのですが、中国と差が開くと、たちまちやられてしまう。

これにプラスしてトヨタなどが主導しているハイブリッド車、こちらが実用的なので消費者サイド、ユーザーサイドはEVに対してだんだん冷たくなっているのですね。だからテスラは今、大変ですよね。

(深田)

アメリカの何かのアンケートだったのですが、EVを買った人にアンケートをとり、「またEVを買いたいか」と質問をすると、50%以上が「次はガソリン車にしたい」と。

(田村)

不便でしょうがないのでしょう。

EVは技術が高度化していくのでしょうが、巨大な電池を積まなければならないでしょう。あれが発火してしまうのですね。発火すると今度は火が消せない。

(深田)

そうです。リチウムイオンバッテリーの特性で、中が可燃物質でできているので、すごく燃えることと、中の陰極と陽極を分けるセパレーターが事故の衝撃でひびが入ったりするとショートして発火してしまうのです。

(田村)

それは危ないです。

(深田)

中の液体もよく燃えるし、電極もよく燃える。そこに水をかけると、化学反応で余計に火が出てしまい、にっちもさっちもいかないという代物ですね。

(田村)

 そうですね。アメリカは国土が広く、道路網、ハイウェイ網があるので、長距離ドライブが普通ですからね。

(深田)

アメリカのハイウェイを走っていると道の真ん中に黒焦げの跡があります。それはEVが火を吹いたが、消火活動ができず、ずっと燃え続けて、黒焦げになり、燃え尽きるのを待った跡だとアメリカの方がおっしゃっていました。

(田村)

ああいうのを見ると、怖くてしょうがないです。

(深田)

怖くて乗れないです。それからEVはバッテリー交換の費用がすごく高い。

(田村)

結構、高いですね。

(深田)

何十万円、下手をすると百万円を超えてくる。これらがEVのニーズがどんどん下がっている背景ですね。

(田村)

それにEVをどんどん普及させると政治的に中国の天下になってしまう。

中国の強みであるEVに乗せるリチウムイオ電池、バッテリーですが、中国によるバッテリー、リチウムイオン電池の値下げ攻勢はこれもまた凄まじいです。

(深田)

リチウムイオン電池の値下げですか。

(田村)

どんどん下がっています。

過剰生産に大号令をかけている典型例がEVであり、リチウムイオン電池である。しかも今中国全土で、猫も杓子もEVだ、EVだといって関連の工場に投資をどんどん呼び込んでいるのです。

(深田)

欧米はEVに対する警戒をし始めていますが、中国は世界のEV車工場になり、輸出でどんどん儲けたいと考えているのに、ヨーロッパは中国製EVに「ノー」とは言い切れていない。

ただ、EV推進のために『ガソリン車は禁止』というのは、やめようとも言い出しましたね。

(田村)

さすがにそうですね。ヨーロッパは地球温暖化防止対策で温室効果ガスを削減しなければいけないとして、クリーンエネルギーだ、再生エネルギーだと環境主義の発想からEVウェルカムでやってきた経緯があります。

(深田)

そこでEVを推進したところ、中国に市場を乗っ取られてしまったという現実に直面したということですね。

今後の中国経済ですが、過剰生産により他国の市場までクラッシュしそうになっているので、欧米は中国の過剰生産に対して警戒をしているのですが、中国の人民元の動きはどうなのでしょうか。

(田村)

人民元はドルに対してずっと下がっています。本来は暴落してもおかしくない状況ですけれども、中国は管理変動相場制度で、何かあると当局が介入をして一定以上動かないようにしています。それに対して日本は円安で、こちらが人民元よりスピードが早い。

中国が人民元を無理やり安定させている面がある。それでも下がる。

その結果、中国で物を作るよりも日本で作った方が有利、あるいは他の国で作った方がいいということから、日本企業にすれば、日本で作る方が有利になっています。

投資リスクを考えても、中国の隠蔽体質ですね。このリスクは圧倒的に中国の方が高い。だから早く日本へ戻った方がいいです。

(深田)

今日、もと大手商社の幹部の方にお会いして、色々お話を聞きました。「これまでたくさんの企業が中国に投資をしてきたが、中国で儲かったお金を全部持って帰ることができたという話を聞いたことがないのですが、どうなのでしょうか」と伺いました。

その大手企業も「投資をしたら、再投資をさせられるので、お金が増えても日本に持って帰ることができないのです」とおっしゃっていました。少しは持って帰れるが、全額は持って帰れないということですね。

(田村)

対中投資といっても、全部再投資ですね。

中国で多少儲けても、結局は本国に還流させられないわけです。そういう意味では思ったほど成果に繋がらない。再投資を多少は行うけれども、日本企業による対中の新規投資は減っていますね。

(深田)

今後の中国の経済ですが、仮に中国経済がクラッシュしたら、世界にどのように波及していくと読んでいらっしゃいますか。

(田村)

中国はクラッシュさせないように生産過剰でも何でもいいので、安値ダンピングで輸出攻勢をかけていますね。にもかかわらず、中国経済は成長できないと思うのです。

できない場合、何が起きるかというと中国の中間層とか若い層で失業率が非常に高く、不満が鬱積すると、政治的な不満が溜まる。成長率が非常に高い時には共産党に対する疑問や不満は政治的には表面化しなかったが、これからはそっちに問題がシフトするのではないかと思われます。

そういう意味では、習近平体制は爆弾を抱えていると私は見ています。

それだけに、習近平政権はとにかく経済を維持しなければいけない。何としてでも5%台の成長を達成させろと言って、『作れ作れの生産主義』で、安値でもいいから世界に売りまくる。そのしわ寄せがグローバル経済に及んでいる。

(深田)

中国が自国経済を維持しようとして、頑張れば頑張るほど、その他の国は中国の過剰生産によって自分たちの国の景気が悪くなる。引きずられる可能性があるということですね。

(田村)

だから、中国は失業を輸出しているという言い方ができる。

ブリックスとかグローバルサウスとか言っているけれども、これらもやはり同じく負のマイナスの影響を受けているわけで、プレッシャーを受けていますね。

例えば鉄鋼はすごい安値になっている。それから造船業とか肥料などもそうですね。リチウムイオン電池もそうですけれども、ことごとく中国の安値輸出が新興国や発展途上国にプレッシャーをかけています。

そこに不満が高まり、これから年末にかけて、中国の過剰生産、安値ダンピング攻勢は大問題になりますね。

(深田)

どちらかというと、欧米の経済よりも、新興国・途上国側にですか。

(田村)

両方ですね。欧米は高い関税をかけて対抗することはよくあるのですが、新興国、例えばインドやブラジルは鉄鋼などでは中国と対抗して、張り合っています。こういうものでものすごく安値攻勢をかけられる。

当然、これは大変な政治問題になってきますね。

(深田)

今回も田村先生のお話で、中国が過剰生産によって世界中に不況を輸出して、欧米社会を震撼させているということなのですが、中国の問題が中国だけでは収まらない時代になったことは本当に怖いと思いました。

田村先生、今回もありがとうございました。

政経プラットフォームでは、毎回様々なゲストをお招きし、大手メディアではなかなか得られない情報を皆様にお届けします。

『日本を変えるために行動できる視聴者を生み出す』というコンセプトで作られたこの番組では、皆様のご意見をお待ちしています。

また番組支援は説明欄のリンクからお願い申し上げます。

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