#8 キャノングローバル戦略研究所 杉山大志『脱炭素利権の裏』
※エネルギードミナンス: 強く豊かな日本のためのエネルギー政策
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【目次】
- 00:00 1. オープニング
- 00:58 2. 3人家族で10年間に360万円負担
- 04:38 3. 無駄金のグリーントランスフォーメーション
- 07:50 4. 利権と縄張り拡大で国が滅びる
- 11:50 5. 災害時に役立つのはローテク
- 15:21 6. エネルギー政策を叩き直す基本計画
(深田)
政治と経済の話を分かりやすく、政経プラットフォーム、ITビジネスアナリストの深田萌絵がお送りします。
今回は脱炭素利権の裏側について、キャノングローバル戦略研究所研究主幹の杉山大志先生にご解説をいただきます。先生よろしくお願いします。
先生、地球温暖化がほぼ嘘という話と、太陽光パネルがいかに悪か、なぜその悪である太陽光パネルを、これほど我々は推進させられているのか、その裏側にある脱炭素利権について解説していただきたいです。
(杉山)
はい、お金の話からすると、今、その再生可能エネルギー賦課金の値段が上がるので最近話題になりました。皆さんの電気料金に上乗せされて徴収されているのですけど、それがお金を集めて太陽光パネルに補助を出すとか、風力発電に補助を出すとか、そういうことに使われている。
その再生可能のエネルギー賦課金というのが、今度世帯あたり年間1万3000円ほどになるとニュースになった。まず、この1万3000円は氷山の一角に過ぎず、家庭が1年間に電気料金に上乗せされるのは確かに1万3000円なのですけど、企業の方はさらに払っています。それを世帯あたりにすると、3人世帯だったら年間6万円以上を支払っているのです。普通の家の電気代は年間12万円ぐらいなのに、この6万円は何なのか。
もう事実上電気代が1.5倍になっているのと同じぐらい再エネのために、主に太陽光ですけど、事実上電気代が上がっているわけです。企業が払うそのお金は確かに家庭の電気代には乗っていないけれども、企業が払うということは結局皆さんの給料が減り、物価が上がり、世帯の負担になります。これほど払わされているのだというのが、まず最初の点です。
今、日本政府がやろうとしていることはより酷く、グリーントランスフォーメーションをやっています。GXと書いてグリーントランスフォーメーションと言うのも恥ずかしいような名前なのですが、そこでは10年間で150兆円の官民の投資を規制と支援で実現すると言っているのです。
(深田)
「規制と支援」の規制とは何ですか。
(杉山)
無理やり規制して、太陽光をこれだけ入れなければいけないことです。そうすると確かに投資は起きます。無理やり補助金をつけて、電気自動車を買えとか何かをやって、それで買う人がいます。それを10年で150兆円をグリーンに投資をする素晴らしい計画です。
(深田)
それは一大利権ですね。
(杉山)
その通りです。10年で150兆円、毎年15兆円でしょう。GDPの3%です。
(深田)
防衛費の3倍です。
(杉山)
防衛費がこの間大騒ぎしてGDPの2%になったでしょう。その一方で「なぜこちらはGDPの3%なのか」「一体何に金を使っているのか」これが一つ謎です。
このGDPの3%でピンとくる人はくるけど、150兆円を1人当たりにすると10年間で120万円です。3人世帯だったら360万円です。これから皆さんに10年間で360万円を、このグリーントランスフォーメーションのために支払ってくださいというのが今の日本政府です。
そのお金を有効なことに使うのなら良いのだけど、何に投資するのかと言えば、こちらに並んでいる通りです。細かいので口で説明すると、最大の項目は相変わらず、再生可能エネルギーです。風力発電を北海道に建設し過ぎると、風が吹いたら余ってしまうから、北海道から新潟まで送電線を海底に引くと言っていますが、それだけで2兆円程度かかります。
(深田)
銅の価格が高騰しています。
(杉山)
銅の値段が上がった後は、恐らく更に予算が膨れていると思うのです。銅の価格が上がる前の試算だから。さらに、アンモニア発電や、電気自動車はもちろん。
(深田)
水素エネルギー。
(杉山)
水素エネルギーも入っています。どう考えても、今のエネルギーの発電コストであれば、倍増、3倍増にしかならないような話です。そのようなことに1人あたり120万円、3人世帯360万円も取って、無駄なことにボンボンボンボン使うのです。結局、ただ電気代が高くなっていくだけです。日本政府はその技術でグリーン成長するすると言うのだけれども、おかしいです。
(深田)
国民が疲弊します。
(杉山)
このような無駄遣いをして成長する訳ないだろうという話です。投資だから成長なのですが、馬鹿なことしか言わない。投資の原資は誰が負担するのか。できないのです。
(深田)
無理です。GDPの半分は個人消費なのに、国民からお金を掠め取ったら、成長できません。
(杉山)
経済産業省は、そのような当たり前の話ができないのです。
(深田)
経済産業省は、もはや悪の巣窟です。
(杉山)
経済産業省は分からないとしか言いようがない。
(深田)
民間で働いたことがない人たちが、企業に集ることしか考えていない団体なのです。
(杉山)
経済産業省に勤めて長い知り合いは多くいるし、まだその昔は、経済も産業も守る気概がありました。かつては、温暖化対策や脱炭素の抵抗勢力ナンバーワンが経済産業省でした。
(深田)
はい、エネ庁もですよね。
(杉山)
資源エネルギー庁は、資源エネルギーの安定供給のためにできた庁です。今はなぜこのようなことをやっているかと言うと、自民党がここのところ左翼自民党に成り果てており、菅政権から岸田政権に至るまで、このグリーントランスフォーメーションや2050年CO2ゼロをずっと言っています。今の役人は、気の毒なところもあって、その時の権力に逆らうと昇進できないわけです。
(深田)
そうですよね。2014年の公務員制度改革により、政治家にリードを握られてしまいました。
(杉山)
だから、経済産業省の役人も「分かりました」と言って、もう覚悟を決めて完全に寝返ってしまいました。自分たちのこの利権をしっかり確保することには大成功してしまったわけです。なぜなら、10年で150兆円のお金を「規制・支援」で動かせるという役所としては夢のような縄張りができるからです。
この一部として、国債をGX移行債と言って20兆円発行しました。その償還のためにエネルギーに賦課金をかけて、排出権を国が販売し、それで20兆円を集める仕組みが、昨年の法律グリーントランスフォーメーション法で出来上がりました。
さらに、そのお金を回すために、GX機構という外郭団体が新設され、「50人単位で発足する」「将来増える」などすごくオールドファッションです。しかも、これは特別会計であり、税金ではないために国会に通さなくていいのです。ここだけで毎年1兆円程度のお金が回せるわけです。
(深田)
能登半島復興の予算がないから、復興税を作らないといけないと言っている一方で、そのような余計なことには特別会計からバンバンお金が出ています。
(杉山)
そうです。役人の技としてはすごいことやっています。何かあれば、すかさず自分たちの利権や予算や縄張りをガッツリ拡大して、天下り先まで増やしています。問題はこれが国民のためには全くなってないことです。
(深田)
太陽光パネルが売れても中国が儲かるだけ、EV車が売れても中国が儲かるだけで、日本企業は全く実入りがないです。
(杉山)
仮に中国でなくとも、普通に発電するより倍も3倍もお金がかかるような使えないものにお金を使うわけです。ましてや、そのお金が中国に行く。今や日本では、脱炭素利権が強固に出来上がっており、その本丸が左翼自民党です。すっかり宗旨替えして、しょうもないのが経済産業省と資源エネルギー庁です。さらには、企業や経団連も、日本政府におべんちゃらを言っています。ここの企業は、これ程お金が動くために、それなりの事業機会とみています。だから、みんなそこで儲けることしか考えていません。全体としては、このようなことをやったら国が滅びることは、みんな言われれば、おそらく分かっているのですが、黙っています。
(深田)
滅びるでしょう。太陽光パネルで発電しても電気が足りません。
(杉山)
太陽光パネルは年のうち17%しか稼働していません。昼と夜だけ考えても、半分しか稼働しないとわかります。雨の日も曇りの日もある。年中17%というのはなんとなくと分かります。年17%しか回らないため、残りの83%は火力発電を焚いています。よく太陽発電のバックアップのための火力発電所が必要だと主張する人もいますが、ちょっと待てと。バックアップとは、90%程度動いていて、10%をやってもらうことであって、17%しか動かないものが83%を頼ることをバックアップとは言わないでしょう。
(深田)
やはり地震などの災害時のためのバックアップなのでしょうか。
(杉山)
災害の時も役に立ちません。災害の場合、東日本大震災の後、すぐに現地に入って、皆が何のエネルギーを使用しているのか調べたのですけど、災害時に役に立つのは、キャンプ用品、懐中電灯、薪、石油といったローテクです。日本のガソリンスタンドはすごくて、自転車のように足で漕いで油を組み上げるポンプがきちんと置いてあり、それで給油するのです。災害時は、とにかくハイテクがいっぺんに使えなくなる可能性が結構あります。
(深田)
地震時は結局通信も、家庭の電源が落ちていても、使えるのは黒電話だけだという話です。
(杉山)
エネルギーに関して、頼りになるのはローテクだと分かりました。先ほどの脱炭素利権も、ここの企業は、日々目先のお金を追いかけていますが、経済団体や経団連までもがグリーン成長だと言うのは、自分の足を食べているようなものでしょう。
(深田)
ありえないことです。東日本側は電力がかなり足りないので、電力逼迫する時は東日本側の工場は止めなければいけないのです。止めて持ち回りで電気を使って工場を稼働させている状態なのに、経済産業省は何の救済措置もないのかという話です。
(杉山)
一応議論はしているのですけど、根本的な問題は電力システム改革と言われています。東日本大震災の後、電力会社をバラバラにしたことが大失敗です。その前は、東京・関東地方は東京電力、関西地方は関西電力といわゆる垂直統合という発電から総配電まで一貫した会社が、地域の責任を持って行っていました。それを全部バラバラにしたため、全体の電気供給に責任を負う主体がなくなりました。それを国が表面上主体になるのだけれど、役人仕事では全然できてないのです。地域ごとに責任を持った事業者を潰してしまったことが問題の根本にあります。それも直さなければならない。
宣伝になるのですけれど、民間の勇志と一緒に作成した、全部で170ページの非政府エネルギー計画がホームページに掲載されています。現段階で著者は16人です。とにかく、今の日本のエネルギー政策はもうダメダメなので、全部叩き直すということを書いてあります。
(深田)
今のエネルギー政策は滅びることしか書いていないです。
(杉山)
そうなのです。私もこの国に生きていますので、なんとか叩き直そうと思っております。
(深田)
是非とも叩き直してもらいたいです。そちらの計画書は書籍ではなくてホームページですか。リンクをこちらの説明欄に貼り付けておきます。今日も恐ろしい話をたくさん伺い、脱炭素利権で日本が滅ぶことをご説明していただきました。杉山先生どうもありがとうございました。
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